日本政府の主張や日本のマスコミ報道だけ見ていると誤解しがちな国際関連の話をまとめ中。<東南アジアが対中国で日本に味方しない理由を、タイの貿易相手国から説明>、<南シナ海問題で経済支援を餌にカンボジアを使おうとする極悪国>、<二国間で話し合うことでしょ…日本に巻き込まれる第三国は大迷惑>などの話をやっています。
●東南アジアが対中国で日本に味方しない理由を、タイの貿易相手国から説明
2014/10/7;相当昔に下書きしていたものを投稿。南シナ海で中越の対立でかなり中国に批判的な態度が見られるなどして、タイミングとしてはむしろ悪いのですが、このタイミングでの投稿となりました。なお、このタイトルの「東南アジアが対中国で日本に味方しない理由」は、東南アジアが日本ではなく中国に味方する…という意味でもありません。
私は日米関係、日中関係を語るときに片方と仲良くしようとするときに、もう片方と喧嘩しなければならないかのように話す人を見て馬鹿だなと思っていました。しかし、私も東南アジアなどアジアの国のことを考えるときに、この馬鹿な思考に陥っていることに気づきました。
中国との問題を抱えている国ですら、日中関係において日本をあまり支持してくれない、なぜ?と私は思ってしまっていたんですね。ただ、これは東南アジアの立場になって考えてみれば当然なのです。
日本とも中国とも関係の深い国が片方と喧嘩する必要はないですし、むしろそれは極めて悪い選択肢です。戦争を起こされると困るという意見が多いようですが、場合によっては程よくいがみ合ってくれている方が、両国から援助などを受けやすいという可能性だってあります。基本的にはどちらにも良い顔をしていた方が得策です。
今回は以前
親日国タイのエリートの見方 中国脅威論、日本・アメリカの重要性という投稿で見たタイの貿易相手国について調べて、日本と中国どちらとも関係を保っていなくてはいけないことを確かめてみようと思います。日本人の中には貿易額が大きくても韓国や中国と絶交すべきだと考えている人も多いのですが、少なくともアンケートで見たようにタイ人のエリートはそういう非現実的な選択肢を持っているようには思えませんでした。
●親日国タイの貿易相手国の1位は日本!それなのになぜ日本に味方しない?
タイの貿易相手国のデータとして一番良かったのは、
地理・タイの気候・産業・貿易 : なるほどの素というブログさんです。<「日本国勢図会 2013/14」「世界国勢図会 2013/14」に基づき、一部データを改訂しました>とありましたので、おそらくそこが元ネタなのでしょう。
<貿易相手国>
輸出相手国 (百万ドル) (%)
中国 27,113 12.0
日本 23,811 10.5
USA 21,659 9.6
香港 16,300 7.2
マレーシア 12,265 5.4
合計 226,404 100
輸入相手国 (百万ドル) (%)
日本 42,225 18.4
中国 30,633 13.4
UAE 14,498 6.3
USA 13,486 5.9
マレーシア 12,347 5.4
合計 228,878 100
輸出相手国2位・輸入相手国1位で、両方の貿易額を合わせると日本が1位です。しかし、輸出相手国1位・輸入相手国2位ですので、中国も非常に大事な国。しかも、傾向としては中国の貿易額が増加の可能性も。前述のアンケートで中国重視の姿勢が目立ったのは、そのせいと書いていた記憶なんですよ。うろ覚えですけど。
●日本・中国・アメリカ、タイの輸出総額・輸入総額の変化を見ていくと…
中国が増えているかどうか見るには過去のデータが必要。検索して出てきた
タイの主な貿易相手国と日泰貿易関係 | グローバル化に立ち向かう 08/21では2009年のデータがありました。ただ、出典は不明。こうした数値を比較するには、算出基準が同じでないと正確に比較できず、問題ある可能性がありますが、とりあえず、これで見ます。
輸出総額:1,525億240万ドル[2009年]
国名/貿易額/(シェア)
・アメリカ 166億6,160万ドル(10.9%)
・中国 161億2,390万ドル(10.6%)
・日本 157億3,200万ドル(10.3%)
・香港 94億8,450万ドル(6.2%)
・オーストラリア 85億7,910万ドル(5.6%)
輸入 輸入総額:1,337億9,600万ドル[2009年]
国名/貿易額/(シェア)
・日本 250億2,350万ドル(18.7%)
・中国 170億2,900万ドル(12.7%)
・マレーシア 85億7,560万ドル(6.4%)
・アメリカ 83億7,320万ドル(6.3%)
・UAE 66億6,660万ドル(5.0%)
前述の通り、算出基準が異なっていて比較に適さない可能性はあるものの、この2つのデータをそのまんま比較。アメリカの存在感が薄くなっているという話があった記憶があり、アメリカも加えました。結果、タイと日本・中国・アメリカの輸出総額・輸入総額の2009年から2013年にかけての変化は以下のようになっています。
日本 2009 → 2013
輸出 10.3% → 10.5% +0.2
輸入 18.7 → 18.4 -0.3
中国
輸出 10.6 → 12.0 +1.4
輸入 12.7 → 13.4 +0.7
アメリカ
輸出 10.9 → 9.6 -1.3
輸入 6.3 → 6.3 0
アメリカは輸入額での割合は変わらないものの、輸出先としては減少。日本は輸出で微増、輸入で微減。あまり変わらない感じ。一方、中国はどちらもはっきりと増えており、将来は中国の重要性がさらに高まるだろうとタイ人エリートが予測するのは当然だと思われます。短いスパンですし、先述のように算出方法が異なる可能性があるので心配でしたが、とりあえず、事前に予想した傾向が出ました。
上記はタイの例ですが、片方の国との関係を捨ててもう片方の国につくといった戦略は、どの国もあまり取らないだろうと予想できます。わざわざ貿易相手国を制限してしまうのは得策ではありません。極端な例ですが、付き合いを極めて限定している北朝鮮なんかはあのような惨状ですからね。このため、日本はこうした相手方の事情を考慮した上で、外交をやっていかなくちゃならないでしょう。
【クイズ】馳文科相がユネスコ総会演説で記憶遺産について「透明性向上を」と演説した際に「ユネスコは政治問題を避けるようにしないと。ここは教育・科学・文化の場なんだから」と語ったのはどこの国の代表?
(1)韓国
(2)カンボジア
(3)タイ
●南シナ海問題で経済支援を餌にカンボジアを使おうとする極悪国
2016/7/12:ここから「南シナ海問題で経済支援を餌にカンボジアを使おうとする極悪国」というタイトルで書いていた投稿。南シナ海問題関連のところにもまとめたのですが、こちらのページのテーマに合うと思ったんですよね。海外の国を日本の思い通りに動かすのは難しい…という話です。
ここのタイトル「南シナ海問題で経済支援を餌にカンボジアを使おうとする極悪国」を見て、「中国許すまじ!:と思ったかもしれませんが、この極悪国って中国じゃなくて日本なんです。
中国、南シナ海問題での意外な思考原理と日本への本音|ダイヤモンド・オンライン(陳言 [在北京ジャーナリスト] 2016年7月7日)によると、カンボジアの首相がそう言っていたそうです。
<国連の安全保障理事会は1ヵ月ごとに議長国が入れ替わるが、7月1日から日本が議長国になった。別所浩郎・国連大使は、さっそく記者会見を開き、中国が領有権を主張している南シナ海問題について「強い関心を持っており、要望があれば、国連安保理では同議題を討論する用意がある」と述べた。中国のテレビではその会見の映像を繰り返し放映している。
同時に、
カンボジアのフン・セン首相が現地のイベントで「日本大使が経済支援を餌にして南シナ海問題について日本の主張を支持してもらいたがっている」と語った映像も放送されている>
●中国以外の国が大暴れ!中国はむしろ優等生すぎた南シナ海問題
記事では、日本の報道は「中国だけ独善的に埋め立ている」とするものが多いとしていましたが、どうなんでしょうね? もし本当にそうであれば、捏造的なところがあります。中国の場合は島ではなく岩礁という問題があるものの、あそこらへんは他の国もガンガン進出しているんですよ。
これは、
台湾も南沙諸島に滑走路建設 太平島をベトナム・フィリピン・中国と係争などで書いた話。なので、"中国メディアは、「米日欧のメディアが中国だけを指弾するのは公平とはいえない」と心の中では思っている"としていました。
そこらへんは知っていたのですが、中国はむしろ優等生的な態度を取っていたために出遅れているという思いがあり、今挽回しようとしているという見方だとは知りませんでした。
<暗礁埋め立ては、ベトナム、マレーシア、フィリピンと台湾はいずれもきわめて早い時期からやっており、それぞれ、空港も作っている。それに対し中国は、国力の増大に伴い、遅ればせながら動き始めた。(中略)
そもそも中国は、当事国同士で問題を解決するという原則を1982年以降、ずっと堅持している。2002年、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は「南シナ海における関係国の行動規範に関する宣言 (DOC)」に調印し、領有権を巡る紛争の平和的解決を目指し、敵対的行動を自制することを確認している。その後、各権利主張国が、新たな油田、天然ガス田の開発、新たな建築物の修築、開発のための移民、埋め立ての継続など、現状を変えるような新しい行動を取った際も、中国は比較的抑制的だった。中国は2013年までいかなる石油、天然ガスの採掘も行わず、埋め立ても行わなかったのである。
しかし、こうした状況が長続きすることは不可能であり、不公平であるし、南シナ海紛争の解決にも不利なものであるということで、ここ数年になって中国も行動を取るようになった>
なお、意外なことに、"中国と周辺14ヵ国中、12ヵ国との国境線は既に確定している"とのこと。しかも、"その過程において、中国側もある程度譲歩し、先方に対して配慮もしてきた"といいます。中国は今までも話し合いで国境線を確定させてきた国だったんですね!
ただ、"これらはすべて双方の関係が良好な時に話し合ったもの"でした。「そりゃそうだろう」と思うかもしれませんが、この中国のやり方が普通だと思ったということは、今の日米のやり方が間違っているということになります。日米は関係悪化を促す方向性ですからね。
●二国間で話し合うことでしょ…日本に巻き込まれる第三国は大迷惑
それから、途中で出てきた「当事国同士で問題を解決するという原則」に関して中国の報道では、フィリピンに対しても批判するよりも、「南シナ海問題は当事者同士の交渉によって解決すべき」という主張が多いようです。また、この二国間で解決すべき問題というのが、日米の態度に中国が苛立っている理由でもありますし、巻き込まれる第三国が戸惑っているところでもあります。
冒頭のカンボジアの「日本大使が経済支援を餌にして南シナ海問題について日本の主張を支持してもらいたがっている」がそういった戸惑いのひとつ。カンボジアはもともと中国寄りの国なので不思議ないかもしれませんが、そうじゃない国でも日本の外交はたいへん不評なのです。クイズにしたのも似たような話でした。
【クイズ】馳文科相がユネスコ総会演説で記憶遺産について「透明性向上を」と演説した際に「ユネスコは政治問題を避けるようにしないと。ここは教育・科学・文化の場なんだから」と語ったのはどこの国の代表?
(1)韓国
(2)カンボジア
(3)タイ
【答え】(3)タイ (
日本と中国がユネスコを政治利用 インドネシア・タイなどが困惑より)
実を言うと、私は第三国の理解を得て味方につけるというやり方は良いと以前書いていたんですよね。むしろ迷惑がられて嫌われてしまう…というのは予想外でした。考えてみると、第三国が利益のない争いに加わっても損なだけですものね。日米はやり方をもう少し考えないといけなそうです。
【本文中でリンクした投稿】
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親日国タイのエリートの見方 中国脅威論、日本・アメリカの重要性 ■
台湾も南沙諸島に滑走路建設 太平島をベトナム・フィリピン・中国と係争 ■
日本と中国がユネスコを政治利用 インドネシア・タイなどが困惑【関連投稿】
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