ノーベル平和賞、パキスタンの少女マララさんら2人に :日本経済新聞(2014/10/10 18:12)によると、"2014年のノーベル平和賞をパキスタン出身の少女、マララ・ユスフザイさん(17)とインド出身のカイラッシュ・サティアーティ氏(60)に授与する"ことが発表されました。
ノーベル平和賞はその性格上、多かれ少なかれ政治的なものにならざるを得ません。しかし、
ノーベル平和賞予想 候補に憲法9条を持つ日本国民(日本人全員?)で書いたように、あまりにも政治色の色濃いものは避けられるべきです。そういう意味では今年の選出は良かったと思います。
で、今回はマララ・ユスフザイさんの話。"マララさんの17歳での受賞はノーベル全賞を通じて史上最年少"とありましたが、どちらかと言うと昨年受賞するのではないか?と大きく取り上げられていたパキスタン人の方です。
ただ、このマララさんのノーベル平和賞に対して、同じパキスタン人らが素直に祝福できるか?と言うと、そうじゃない人も多いのでは?と予想されます。日経新聞によれば、平和賞の受賞は「子供や若者の教育の機会のための活動が評価された」というものです。しかし、マララさんの場合特に女性の権利についての活動が多く、これが多くのパキスタン人の反感を買っていたのです。
こういった反発の強さは、1年前の
マララ・ユスフザイ感動の国連演説にパキスタン世論はまっぷたつ · Global Voices 日本語(2013/09/03 5:51 GMT)という記事で非常によくわかります。
マララさんは、16歳の誕生日である2013年7月12日に、ニューヨークの国連本部で国連青少年会合に向けて力強いスピーチを行いました。しかし、その翌日、パンジャーブ州知事シャバズ・シャリフさんは、以下のようにツイートしたそうです。
マララのスピーチは上出来だ! これ以上の出来が望めるだろうか-世界中のウケを狙って書かれたと見える(国内外で相手構わずご機嫌取ろうとしてるね)
このツイートは"激しく批判され、数時間後には削除された"そうですので、ツイート内容に賛同する人ばかりではありません。しかし、こういった批判はこれだけではないのです。
12万7千もの"「いいね!」を集める Josh e Junoon (Tsunami of Imran Khan)のフェイスブックページは、 マララを中傷し、彼女がタリバンに攻撃されたことを否定する内容のポスターをシェアしている"そうです。
「世界7不思議の8番目、それがマララ。頭髪を剃らずに行なわれた初の脳神経外科手術。カラシニコフで銃撃しながらエアガン程度の傷を負わせた初のタリバン。意識が戻るやいなや紙とペンを求めて「ここはどこ?」と尋ねた初の脳外科手術患者。我々メディアの心に届いた弾丸は別として、穴ひとつ開けなかった世界初の銃撃。そして、この物語に異議を唱える者は人類愛の敵となる。」
マララさんは襲撃事件について、"多くのパキスタン人から茶番ややらせだと言われてきた"ようです。どうもこういった批判を行っているのは、「右翼支持者たち」が中心のようですね。彼らは"彼女のことを今や西側の手先のCIAのスパイと見なしている"と書かれていました。
また、スコットランド技術賞を受賞した電気技師は、「もしマララが本当にパキスタン(#Pakistan)の代表なら、テロリズムを拡散する無人機攻撃のことをなぜ彼女は忘れているのか」といったツイートもしていました。無人機問題に関する話も多いようです。
ただ、「無人機問題でブンブン言ってマララを中傷し非難している全ての人へ。あなたがたはブンブン言う以外に、無人機問題のために何かしてきたのですか?」という"パキスタン人ジャーナリスト、Mohsin Sayeed (@MohsinSayeed)により、こうした批判一色から形勢は逆転した"とされていました。
「批判一色」という言い方ですので"無人機の件に触れないことを非難する人たち"は、相当多かったのでしょう。結局、上記の指摘ツイートで黙りこんでしまったようですが…。
なお、無人機攻撃に関してマララさんは、記事と同じ年である"2013年10月にアメリカのオバマ大統領と面会した際は、無人機を使ったアメリカのテロ掃討作戦をやめるよう求め"ています。この批判は全く使えなくなりました。
ジャーナリストのAjmal Jamiによると、パキスタンの"ムッラー(聖職者)は、彼女の「陰謀」だと断言している"としていました。右派とともに宗教がマララさんを快く思っていないようです。
このパキスタンの現状に関する説明は、ジャーナリストのZainab Imamさんの解説が一番わかりやすくまとまっていました。(改行は変更)
マララとその家族が中傷されてきた理由は、彼女を襲撃したのが絶対ご機嫌を損ねたくない好戦的な人たちだから、というのが主なポイントだ。
しかし、また別のより深い問題がここに指し示されている。女性に対する偏見が私たちの頭にあまりに根強くしみついていて、自信に満ちた女性がこの国に最善のことを現実に望んでいても、私たち国民は彼女のことがほとんど信じられないのだ。
パキスタンにおいては、「社会的規範」がどんなに屈辱的であろうと黙って受け入れ敬意を払わない限り、まともな女性市民となり得ないのだ。
逆説的に言えば、こういった状況だからこそマララさんの活動は評価されたわけで、そうじゃなければノーベル平和賞に選ばれることもなかったのかもしれませんが、その道の険しさのよくわかる内容でした。
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