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製造業に未来はない 年々雇用を生まなくなる製造業に期待はできない


●製造業が国内に留まれば、本当に雇用は確保されるのか?

2011/11/20、2021/01/09:同じ製造業と雇用に関する「幻想」「誤解」の話として、最初に「工場の海外移阻止!でも製造業が国内に留まって雇用は確保される?」や「円高と国内雇用と海外進出 新製品と新産業」というタイトルで書いていた話を加えました。

 ダイヤモンド・オンラインで2011年10月20日、円高対策=海外進出は、本当に“対策”か ――神戸大学大学院経営学研究科教授 加登 豊と、製造業が国内に留まっても、雇用は減少する 2011年10月20日  野口悠紀雄という記事が同時に掲載。お互いに相反する内容かな、比較するとおもしろいかも?と思って読んでみたところ、私が思った内容とどちらも異なるものでした。

 とりあえず、「製造業が国内に留まっても、雇用は減少する」の方から紹介。タイトルから私の想像したのとは違い、特に海外進出を勧めているというわけではなく、観点としては国内の雇用を増やすにはどうすれば良いかというところのようです。

・確かに、海外移転が進めば国内の空洞化が進み、国内雇用は減少するだろう。しかし、裏命題である「製造業が国内に留まれば、雇用は確保される」と言えるかどうか。
・形式論理学によれば、裏命題と逆命題は等価であり、元の命題が正しくても逆命題が正しいとは限らない。したがって、「海外移転が進めば国内雇用は減少する」ことが正しいとしても、「海外移転が進まなければ、国内雇用は減少しない」ことは、論理的には保証されない。

(2019/06/06追記:なお、その後読んだ分析によると、「海外移転が進めば国内の空洞化が進み、国内雇用は減少する」も事実ではない可能性があります。海外移転する企業ほど国内で雇用を生み出しており、海外移転しない企業はむしろ雇用の増加に大きく寄与していませんでした)


●輸出が増え生産が増えれば雇用も増える…というのは嘘だった!

 興味深い指摘だと思ったのが、工場における生産と雇用の関係でした。輸出が増え生産が増えれば雇用も増える…と思いきや、実際には全く逆に人員削減が行われていたのです。国内工場の活性化が、直接雇用の増加に結びつくとは考えづらいようです。

・鉱工業生産指数の推移を見ると、生産は1991年までは傾向的に増加したことがわかる。その後は増加傾向・減少傾向ともに言えず、周期的に変動するようになった。
・一方、雇用は92年以降傾向的に減少している。2005年以降、輸出主導の経済成長が実現し、鉱工業生産指数が増加に転じた期間でさえ、製造業の雇用は減少を続けていた。
・雇用を減少させながら生産増が実現できた可能性の一つは長時間労働だが、この時期は増えていない。
・したがって、雇用を減少させながら生産増が実現できたのは、製造業が過剰雇用を抱えていたためだと考えられる。だから、雇用を減らしても、過剰雇用が減るだけで、生産が減ることはなかった。
・雇用調整助成金の申請数は200万件近くになっており、過剰雇用は続いている。


●雇用増大のためにすべきなのは、製造業海外移転阻止ではない

 また、輸出ブームによって生じた利益は、従業員には分配されず企業の利益だけ増やしたこともわかっているとされていました。

・2002年頃まで従業員給与は付加価値の55%程度で一定だったのが、輸出主導成長が始まってから下がり、07年度には41.7%にまで低下。福利厚生費も減っている。
・一方営業純益は、付加価値の10%程度だったのが、07年度には21.7%まであがった。

 このため、製造業が海外移転しなくとも、国内雇用は確保されないと考えられます。なぜなら、雇用調整助成金の申請状況からも見られるように、製造業はいまだに大量の過剰雇用を抱えているため、雇用削減を続けると考えられるためとされていました。

 なので、仮に製造業の海外移転が阻止できたとしても、雇用問題が解決されるわけではありません。雇用増大のためには、新しい産業を創出すること以外に方法はないともされていました。製造業には期待できないというのです。これはもともとこのページで書いていた、この後にある2014年の話からもわかります。


●製造業に未来はない 年々雇用を生まなくなる製造業に期待はできない

2014/10/13:「製造業に未来はない」と言うと、大げさなのですけど、工場の海外移転を阻止して日本の雇用を増やす…みたいな役割は、製造業に期待できないという話です。うちでは同じような話を何度かやっているように、技術の進歩が雇用を奪うという話です。

 ロボットがサッカーで勝つ未来 製造業からは雇用は生まれない|金融市場異論百出|ダイヤモンド・オンライン(加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]【第145回】 2014年8月5日)では、「円安になって工場の海外移転が低調になって良かった」という声があるものの、雇用改善効果としてはあまり意味がないと指摘しています。

 たとえば、経済学者のローレンス・サマーズさんは、2009年に米政府が自動車業界を救済したことは正しい判断だったとは言えるが、長期的には政府が製造業の雇用機会を守ることは不可能だと語ったそうです。

「機械化による農業での大幅な生産性向上により、米国は世界に食料を供給できるようになった。しかし、農業従事者数は大幅に減ったままだ。農業で起きたことが、製造業で起き始めている。ロボット、3Dプリンタによる生産性向上は製造業の雇用者数を世界的に減少させる。米国の未来の雇用は、製造業にはない」

 マサチューセッツ工科大学のブリニョルフソンさんとマカフィーさん、ニューヨーク大学のスペンス(ノーベル賞受賞者)さんらも、「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(14年第7号)において、<人工知能、ロボット、3Dプリンタを駆使したオートメーション化潮流は、いずれ途上国の非熟練労働者を直撃する。さらにその動きは、製造業を超えたセクターへ広がりを見せていく>といったことを指摘していたといいます。


●機械やAiが発達しても人間は必要 ※ただし、必要な人間というのは…

 こうなると、「機械に雇用を奪われる、機械を壊せ!」というラッダイト運動(関連:ネオ・ラッダイト運動 IT技術や機械の発達が人類から仕事を奪う?)に繋がりかねないのですが、この論文では「こういった世界にあって、最も不足し、よって、最も価値ある資源は何だろうか」と、それでも人が必要とされる場面があることを想定しています。

 その場面というのは、「普通の労働でもなければ、普通の資本でもなく、新しいアイデアを考案し、技術革新を実現できる人々だ」というもの。ただ、「普通」の人たちには荷が重い話ですので、やはり機械打ち壊し運動みたいな選択肢を好むかもしれません。

 しかし、好むと好まざるとに関わらず製造業の雇用が減っていくであろうというのは、予想できます。これは「機械化による農業での大幅な生産性向上」の結果を見てわかるように、未来だけでなく過去もそうだったわけで、一貫した傾向なのです。


●工場の海外移転とは無関係に製造業の雇用は減りまくっていた!

 たとえば、歴史的な円高水準の推移が続いていた頃に書かれた、<(PDF)減少の一途を辿る製造業の雇用 - 富国生命保険>では、"輸出依存度の高い製造業の海外進出が加速"し、"それにより製造業の雇用機会が失われるとの指摘"を否定していました。

 なぜかと言うと、海外進出が加速する前の当時、"既に国内における製造業の就業者は減少傾向を辿り、雇用の受け皿としての存在感は低下してい"たためです。製造業の就業者数は、"92年に1,569万人でピークをつけた後は、国内外の需要が増加した06、07年を除くと毎年減少して"います。

 製造業就業者の減少は就業者数全体の減少とは連動していません。"就業者数全体では97年がピーク"なのです。"経済のサービス化が進展するにつれて、サービス業などの就業者が増加しており、新たな産業の創出や既存産業の拡大により雇用がシフトしていた"ということで、製造業の存在感がもともと薄れていたことがわかります。


●現代の製造業はあまり人を必要としない…という不都合な真実

 一方で、これだけ製造業の就業者が減っている中でも、"国内における生産実績は雇用ほど落ち込んでいる訳ではない"というのも、大きな特徴。目をそらしてしまいたい事実なのですが、現代の製造業では、人間はあまり必要ないんですね。つまり、大きな雇用を生み出さないということになります。

 人が減っているのに生産実績が全然落ちていないというのは、当然、労働生産性の向上が理由です。つまり、"就業者が大幅減となったのは、労働生産性が高まったこと"が理由ということで、テクノロジーの発達が製造業の雇用を奪うという前半指摘された現象が以前から既に現れていたということがわかります。

 今回の話ではありませんでしたけど、「円安によって日本に製造業の生産拠点を呼び戻す」という認識がまず間違っている可能性が濃厚で、現実を無視した根拠のない妄想だと思われます。そして、その「工場の呼び戻し」によって国内の雇用を増やそうというのもまた、当然ながらあまり期待できない話です。


●海外進出やM&Aは対策ではない…本当に必要な対策とは?

2011/11/20、2021/01/09:ここから、「工場の海外移阻止!でも製造業が国内に留まって雇用は確保される?」で書いていた2011年の話に戻ります。これはもともと海外進出を勧める記事と、勧めない記事がダイヤモンド・オンラインで同時掲載されてるのでは?と思ったのがきっかけでした。

 そのもう一つの記事は、円高対策=海外進出は、本当に“対策”か ――神戸大学大学院経営学研究科教授 加登 豊というもの。ただ、これもまたタイトルで私がイメージしたのと違い、海外に進出するな!というものではなし。海外に進出することではなく、それを通じて得る「価格決定権」が大切であり、目的なんだよという話でした。

・円高で直面する危機を乗り越えるための方策は、多くが指摘するように積極的なM&Aを通じた企業業績の回復と、海外進出による原価・費用低減が主要なものである。
・しかし、だれもが考え実践している円高対応のためのM&Aや海外進出は戦略ではない。
・この二つの対応策に戦略性を付与するには、「価格決定権の再獲得」と「世界市場の日本化」を達成することである。


●他社と変わり映えしないのに「会社が苦しい、なぜだ?」と言う人が多すぎる

 この記事では、「価格決定権の再獲得」の話がメイン。利幅が十分に大きければ、円高によって海外競争企業に対するコスト競争力が相対的に低下しても、まだ満足レベルの利益を享受することができるので、国内にとどまってビジネスを継続することもできるとしていました。ただ、この場合でも海外進出は選択肢としてあるようです。

 また、海外生産で製造原価の低減に成功しても、決して価格の引き下げを行ってはいけないとされていました。海外企業は、二桁の売上高営業利益率(例えば20%)が達成できないのであれば、市場には参入しないし、市場にとどまることはないとされていました。

 さらに、価格決定権獲得チャンスは、新製品開発とされていました。ただ、これはハードルが高いもの。開発の基本方針は、「どこにでもある素材や部品を使って、どこにもない製品を開発する」こととなっています。

 他の企業関係の投稿を書いていて思うのは、やっぱりその会社独自のものがあると強い!という当たり前すぎる話です。ただ、逆に他社と変わり映えしないのに「会社が苦しい、なぜだ?」みたいな悩みを言う人も多いですから、思いつかない人も多いことなのかもしれません。


●決して安売りをしてはならない・とにかく利益を大きく…は本当か?

 なお、「どこにでもある素材や部品を使って、どこにもない製品を開発する」のうち、「どこにもない製品」はわかりやすいでしょう。一方で、「どこにでもある素材や部品を使って」というのはちょっと変わっていると思います。これは、供給体制が崩れて供給が滞ることがままあることを意識しているようでした。

 そして、「画期的な新製品が開発できたときには、決して安売りをしてはならない」とまた強調。とにかく利益の割合が大きいものを作るようにとしつこくおっしゃっていました。

2019/06/06追記:以上のような話だったのですけど、小売業では利益の割合を低く抑えて他社が参入できないような状態を作り出し結果的に市場を独占することで利益を得る…といった企業の成功例もあります。製造業においても「とにかく利益を大きく」が正しいかどうかは、ちょっと怪しいかもしれません。


【本文中でリンクした投稿】
  ■ネオ・ラッダイト運動 IT技術や機械の発達が人類から仕事を奪う?

【関連投稿】
  ■アメリカ製造業復活の現実 工場は戻ったが雇用は戻らなかった
  ■日本はもう製造業の国ではない・実は日本の人件費、先進国では低い方
  ■日本は製造業と工場を捨てよ 海外へ製造委託でファブレス化が正解
  ■非効率化は優れた失業対策?無駄が多い方が仕事が多く、効率化は働き口を奪うのか?
  ■仕事・ビジネス・就活・経済についての投稿まとめ

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