世界一古い会社・宮大工の金剛組についての話。ただ、ずっと安泰だったわけではなく、実は手を広げたせいで、39代目・金剛利隆当主時代に倒産危機に陥っています。現在の刀根健一社長は「持続の秘訣は外部環境のおかげ」という謙虚な姿勢でした。(2013/9/19)
2017/10/17:シャープ高橋社長「1000年続くDNAを根付かせる」
●世界一古い会社・宮大工の金剛組 初代当主・金剛重光は百済出身のため激論に
2013/9/19:元記事はタイトルだけ見ると、金剛組ではなくシャープがメインのような感じに見えました。
シャープが目指すあの最古企業 創業1400年超、金剛組に見る企業永続の「意味」 田中 深一郎 2014年8月5日(火):日経ビジネスオンラインというタイトルだったのです。正直、シャープは
シャープの倒産危機は必然?他社社員を「おまえ」と呼んで嫌われるというイメージがあるので、紹介したくありません。
(2017/10/17追記:もともとシャープはどういう話だったのかというのを最後に追記しています。また、ご存知の通り、天狗だったシャープはその後、台湾企業に買収されました。関連:
鴻海買収のシャープもう復活?日本企業は中国・台湾に負けて当然 15年連続の赤字の三洋電機は数年で黒字に)
しかし、金剛組に興味があったので、読み始めました。結果、金剛組の話が大部分でしたので、安心してこちらをメインにやれます。金剛組は"神社や仏閣の建築工事を手がける"いわゆる宮大工の会社です。"飛鳥時代の西暦578年に創業し、1400年を優に超える歴史を誇る日本最古の企業"です。しかも、日本最古どころか「世界一古い会社」ともよく紹介されています。
このことは日本人の自尊心をくすぐる話なのですが、同時に日本人の嫌な面も見えやすい話です。というのも、"聖徳太子の命により、日本初の官寺である四天王寺建立のため百済から3人の工匠が招かれ、そのうちの1人、金剛重光が初代当主となったのが金剛組の発祥とされる"ためです。
これのせいで「朝鮮発祥だ」「いや、百済は今の朝鮮とは繋がりがない別の民族」「百済は日本の属国」「そもそも百済から来たってなぜ言える?」と醜い言い争いをしている人たちが見られます。私も「日本がすごい」って話は好きなんですけど、こういうの好きな人って海外蔑視と紙一重で嫌ですわぁ…。
なお、"朝鮮半島と縁があることもあり、大阪市天王寺区にある四天王寺の境内に近い同社のビルには最近、アジアから多くの観光客が記念撮影に訪れるようになった"そうです。他のところでデータを見ましたが、大阪は東アジアの人からは最も人気のある観光地の一つですので、うまいこと相乗効果になっているのかもしれません。
●39代目・金剛利隆当主時代に倒産危機
私が記事で気になったのは、金剛組の刀根健一社長の話です。先ほど出てきた初代当主は金剛重光であり、苗字は「金剛」です。この苗字の違いを見てわかる通り、刀根社長は金剛一族ではありません。
実は1967年に39代目に就任した金剛利隆さんは、"マンション建設への参入や関東圏への進出など、事業の多角化と拡大に舵を切"りました。"ピーク時には約130億円の売上高の6割を一般建築が占めるようになった"と、拡大路線がうまくいったように見えました。しかし、"バブル崩壊後、こうした拡大路線が仇となり、同社の経営は急速に悪化した"のです。
現在の社長が金剛家じゃないってのは、どうもここらへんの経営悪化が理由みたいですね。以下のような説明がありました。
"刀根社長は小川完二・前社長(現会長、髙松コンストラクショングループ社長)に続き、金剛組の親会社である髙松建設の出身者。企画提案型の営業を強みとする髙松グループのノウハウを生かしつつ、金剛組の再建を進めている"
●刀根健一現社長は「持続の秘訣は外部環境のおかげ」
この刀根社長に、金剛組が1400年超も存続できた理由を問うと、以下のような謙虚な答えが返ってきました。
「第1の理由は、四天王寺さんから継続してお仕事をもらえたこと。そして第2に、信仰心の厚い日本人は、伝統的に神社や仏閣の建物を大切にしてきた。寺社の建築様式の基本は長年変わらずに保たれてきたため、技術革新の影響を受けにくく、伝統工法の伝承に専念できた。もちろん宮大工の技術力など、同業他社が入り込む余地をつくらない要因も何かあったとは思うが、これは推測になる」
作者の田中深一郎さんは、"代々受け継がれた企業文化や技術力といった内部要因ではなく、外部環境こそが最大の要因だという答えはやや予想外だった"と書いていました。私も意外だと思います。
ただ、作者は以下のように続けていました。
"逆に率直な分析がゆえに納得感がある。14世紀に渡る社歴を現代人が振り返って美しい理由付けをするのには無理があるし、恐らく初期の当主たちにとっても、金剛組がこれほど長く続くことは想定外だったに違いない"
●32代目・金剛喜定当主の遺言を無視した金剛利隆社長
こういった謙虚さは、逆に言うと持続の秘訣かもしれません。バブル期の失敗はこの謙虚さとは逆方向のものでしたし、おそらく過去の金剛組の人も非常に重要なところと認識していたのでしょう。
というのも、"金剛組には、32代目の金剛喜定氏が遺した「遺言書」が伝わ"っていたそうですが、この内容というのがまた興味深いのです。たとえば、以下のようなものとのこと。
「身分にすぎたことをするな」
「お寺お宮の仕事を一生懸命やれ」
バブル期に手を広げたことはこれに明らかに反します。経営悪化を招いてしまった39代目の金剛利隆社長は、"「32代の遺言を守れなかった」と悔やんだ"そうです。
金剛組の刀根社長は「1400年続いたことの価値は、我々より外部の人が評価してくれている」ともおっしゃっているようです。このような姿勢こそ、金剛組の価値なのでしょう。
●企業が変わり続けることは重要だけど…
ところで、私はむしろ会社の存続のためには変わり続けなくてはいけないという話の方を、今まで好んでよく紹介してきました。時代が変われば今ある仕事が将来もあるとは限らないためです。ただ、金剛組の場合は自らの価値を見間違えたというのもあるでしょう。私は強みを発揮できない異業種参入は評価しません。
(関連:
これから伸びる企業=変化する企業 M&Aや事業構造の変化が大切)
金剛組の強みは間違いなく「長い歴史と専属の宮大工集団という『ブランド』」でした。髙松建設が存亡の淵にあった金剛組の支援に踏み切ったのも、"金剛組が堺市などに持つ加工センターや、伝統の宮大工集団の技術力"のおかげだそうです。
「古いものは、一度なくなってしまうと二度と元に戻せない。積み重ねてきた人も技術もなくなってしまう。商人の町、大阪の同業者として、それを座して見過ごすことはできない」と支援を決めたというのです。
これも結局、32代目の「遺言書」と繋がる話でした。
●シャープ高橋社長「1000年続くDNAを根付かせる」
2017/10/17:
世界最古の企業ランキングの日本企業 池坊華道会・西山温泉慶雲館(最古の旅館)・古まん・善吾楼・金剛組・源田紙業・田中伊雅仏具店・法師というのを書いたので、ついでに見直していて、シャープの件が気になりました。
シャープは倒産こそしなかったものの、その後、台湾企業の鴻海に買収されています。で、元記事で出ていた話はどういうものだったか?と、投稿全体を修正したついでに読み直し。すると、結局、シャープは導入のところで、触れているだけでしたわ。
書かれていたのは、経営再建中のシャープ髙橋興三社長が、「シャープが次の100年、200年、300年、1000年続いていけるようなDNAを根付かせることだ」が最も大事だと言っていたということ。また、髙橋社長は、金剛組に関する書籍に目を通し、社内でも企業永続の模範として同社について言及することがあるという話でした。
ただ、こんな立派そうなことを言っていたものの、髙橋社長時代のシャープもさんざん。無能呼ばわりまでされています。とりあえず、当時好意的に紹介しなくて良かった、とは思いました。
【本文中でリンクした投稿】
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世界最古の企業ランキングの日本企業 池坊華道会・西山温泉慶雲館(最古の旅館)・古まん・善吾楼・金剛組・源田紙業・田中伊雅仏具店・法師 ■
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