江戸城再建反対論には、ちょっと変わったものがあります。実を言うと、再建しようとしている天守閣は江戸時代にもなかったもの。江戸時代初期に焼失したものの、当時復興を指揮した保科正之が、天守閣より民を優先しようということで、敢えて再建しませんでした。ここらへんの精神をくんで…などの反対理由が出ているようです。
2014/10/29:
●江戸城再建反対!天守閣はなぜなくなった?再建しない深い理由
●江戸城天守閣再建に反対する理由 保科正之の愛民精神を汲んで
●天守閣がない方が日本精神の現れだし、歴史的にも正しい
●実は現時点でも外国人に人気がある天守閣がない江戸城
2020/11/27:
●保科正之の話より感動?「江戸城の再建案」に人が心打たれる理由
●熊本地震で熊本の人々は生活などの復旧より城再建を優先した?
●江戸城再建反対!天守閣はなぜなくなった?再建しない深い理由
2014/10/29:以前書いた
江戸城や名古屋城の再建計画、費用は?東京五輪で高騰の可能性もという投稿。そこでは、江戸城の天守閣がないことこそが、日本文化というか、日本人の素晴らしい精神性の現れなのだという理由からの反対意見もあると紹介しています。今回はその反対理由の背景についてです。
実は江戸城の天守閣がなくなったのは、幕末などではなくもっと前のこと。1657年に焼失して以降建て直されていないのですから、江戸時代の初期といって良いでしょうね。実は江戸時代に天守閣があったのは、ごくわずかの期間だったのです。
Wikipediaによれば、"1657年に寛永度天守が焼失した後、ただちに再建が計画され"たそうです。しかし、当時4代将軍徳川家綱の補佐役として復興を指揮した会津藩主の保科正之は、「天守は織田信長が岐阜城に築いたのが始まりであって、城の守りには必要ではない」と主張。そして、江戸市街の復興を優先する方針を示し、再建は中止されました。国民の利益より自分たちの利益を優先する現代の政治家に見ならってほしいところですね。
実を言うとこの逸話は、前回再建に好意的だった
江戸城の再建費用350億円 「木造」観光立国の夢 :日本経済新聞(2014/7/5 7:00 日本経済新聞 電子版 商品部 高見浩輔)という記事でも触れています。「家綱の補佐役」などの情報はここからの引用であり、"保科正之は、「今は町家の復旧に力を入れるべきだ」と江戸城天守閣の再建を諦める英断を下した"としていました。
ここらへんを踏まえて江戸城再建に反対する人たちは、この民を思う心を尊重するのであれば、天守がない方が日本人の精神性の現れとしてふさわしいのではないか?という考えのようです。
●江戸城天守閣再建に反対する理由 保科正之の愛民精神を汲んで
この
日経新聞のはてなブックマークや同じく前回紹介した
朝日新聞記事のはてなブックマークでは、以下のようなコメントもありました。
「保科正之の英断を思えば再建しないのが正しい為政者の有り様だろうよ>江戸城天守閣」
「江戸城に天守閣が無いのは保科正之の愛民の表れであり、それこそが歴史的なモニュメントだ。歴史を軽んじた単なテーマパークづくりはやめるべきだ」
「何度も言うけど、保科正之公の顔に泥を塗るのは、江戸の心を持つ人としても勤王の志としてもどうかと…」
「歴史的背景とかどうでもいいから、観光のために目立つものを作ろう、というのは観光立国の真逆を行く考えではないか」
「江戸時代になぜ再建しなかったのかを思い出せ」
●天守閣がない方が日本精神の現れだし、歴史的にも正しい
最初に書いた"1657年に焼失して以降建て直されていない"に関するコメントも紹介しておきましょう。
「1657年以降なかったのであればそれは『ないこと』が歴史的にも自然なのではないか。あることが不自然」
「むしろ天守閣は17世紀途中から存在しないため、江戸時代というと江戸城に天守閣がないのがデフォルトな気がします。にもかかわらず天守閣を立てること時代(引用者注:自体の誤字)が僕には歴史の捏造に見えて仕方ない」
また、日本人の精神性を示すものとしては、以下のようなコメントもありました。海外の人には理解し難いでしょうけどね。
「石垣だけのほうが良い。『荒城の月』『兵どもが夢の跡』が日本の文化」
「城好きではありますが、正直言って再建された天守自体には惹かれないのですよね。むしろ残っている石垣や櫓などを保護することが大事」
「再建の天守閣が良かった試しがないし、むしろ何もない安土城跡が一番興奮した」
●実は現時点でも外国人に人気がある天守閣がない江戸城
外国人観光客向けとしては、「そんなことより皇宮警察を侍にしろって」「外国人呼びたいなら侍と忍者置けよ」といった意見も出ていました。
海外の人は忍者大好きですよね。初期の頃は
愛知県が忍者を募集したら85%が海外からの応募 外国人忍者好きすぎだろ…など何度か忍者と海外の話を書きました。日本はもっとこの忍者パワーを生かすべきです。でも、それこそ歴史無視になっちゃいますけどね。
なお、日経新聞によれば、天守台"付近を歩いてみると、意外なほど多くの外国人観光客が訪れていることに気づく"そうです。"すぐ隣の大手町で働くサラリーマンでも足を延ばす人は少ないが、「江戸」を感じたい外国人には特別な魅力があるのかもしれない"としていますし、現時点でも日本人より外国人の方が関心が高いのかもしれません。
●保科正之の話より感動?「江戸城の再建案」に人が心打たれる理由
2020/11/27:検索していたら、
まさかの「江戸城の再建案」に人が心打たれる訳 | 東洋経済オンライン( 黒川 清作 : 漫画家 / 三浦 正幸 : 監修 )という話が出てきました。私は、江戸復興を指揮した保科正之が、天守閣より民を優先しようということで、敢えて再建しなかった…というエピソードの方がぐっと来るのですけど、そうではないという人ももちろんいらっしゃるわけです。人それぞれですからね。
で、タイトルにあった<「江戸城の再建案」に人が心打たれる訳>にあたる部分はどこか?と読んでみたのですが、よくわからず。とりあえず、ここで出ていたのは、「単純に見てみたい」という話。さらに「(法的問題がなければ)すべての人々が見てみたいと思うはずです」と断言。当初書いていた再建を望まない人たちを無視していました。お金の問題もなぜか無視されています。
また、江戸時代に店主が焼失したときには城下の復興を優先したものの、熊本地震で熊本の人々はまず城の復旧に走った…と主張。そのように人を惹きつける力が城にはあるとしています。ただ、これもお金の問題を無視していますね。私は本当に好きな人達が責任持ってやるのならOKなんですけど、問題視しているのは税金が使われる可能性です。
●熊本地震で熊本の人々は生活などの復旧より城再建を優先した?
あと、熊本地震ではそもそも城以外の復旧を望む人もいたわけで、生活などの復旧より熊本城を優先して…という人がほとんどということもなかったでしょう。これ、新型コロナウイルス問題のさなかである2020/09/08に投稿された話で、「生活よりも城再建」というメッセージをこのタイミングで出してくるのはすごいと思いました。
それ以外には、「城を作るということは、熊本の人々のような土着の精神を根付かせること」といった主張も。裏を返せば、東京の人々には、土着の精神が根付いていないという主張です。都内に元からいた人の中には反発する人もいるでしょうし、都外から来た人は江戸城だけで途端に土着の精神を育めるのか?といった話に。やっぱり説得力ある話にするのは無理があり、めちゃくちゃな主張をせざるを得ない感じでした。
というか、
江戸城や名古屋城の再建計画、費用は?東京五輪で高騰の可能性もの方では、江戸城再建機運が高まらなくてNPOが四苦八苦…という話もやっているんですよね。それだけ再建を望む人が少ないということだと予想されます。また、再建を望む人が少ないということは、寄付だけで再建することも難しそうだぞ…という話。「江戸城の再建案」に心打たれる人は、現実にはあまりいないのかもしれません。
【本文中でリンクした投稿】
■
江戸城や名古屋城の再建計画、費用は?東京五輪で高騰の可能性も ■
愛知県が忍者を募集したら85%が海外からの応募 外国人忍者好きすぎだろ…【関連投稿】
■
生類憐れみの令の勘違い 捨て子や病人も対象・厳罰ではなかった? ■
宮本武蔵、佐々木小次郎との巌流島の戦いで実は無遅刻だった ■
宮本武蔵卑怯者説は真実?巌流島の決闘で約束を破って集団リンチ ■
雑学・歴史についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|