2014/11/3:
日本触媒池田全德社長「たかだか13億の中国市場なんか捨てる」
日本触媒の最大顧客P&Gは中国重視の企業
爆発事故が起きたのは「社員全体の共通責任」という社長
当時も自分が社長で消防士が亡くなった事故なのに…
●日本触媒池田全德社長「たかだか13億の中国市場なんか捨てる」
2014/11/3:
中国人観光客よ、ありがとう!訪日客消費が過去最大 韓国も3位と同日の更新になってしまいましたが、
中国市場は"捨てる"、日本触媒の自信 工場の爆発事故から2年。池田全德社長に聞く- 東洋経済オンライン(2014年11月3日08時00分)という記事を。
この2つが同日というのは、これはこれでおもしろいでしょう。ただし、実際にはあちらとはいろいろとかなり違いすぎる話で、比較できるものではありません。
チャイナ・リスクを心配した脱中国自体は以前からの流れですし、私も会社に関わるとしたら中国進出には慎重になると思います。みんなが行くから中国だとか、今度は脱中国ブームでそれに乗るだとかがおかしいわけで、流行を追うよりも自分のものさしを持っている企業の方が成功すると思います。中国軽視自体は全く構いません。
ただ、読み始める前から疑問に思ったのが、そもそも日本触媒って一般人を相手にする企業ではないかということ。なので、「中国市場を捨てる」という話自体に違和感がありました。
で、どういうことか?と読んでみると、新たな工場をどこに作るか?という意味でした。ベルギーのアントワープ、国内の川崎か千葉、米国ヒューストンが候補地。その"一方で、中国のSAP(引用者注:紙おむつ向け高吸水性樹脂)工場の増設を取り止め"たというところで、元記事タイトルの話が出ます。
「中国は地元メーカーが競って工場を建設し、安売り競争に走っている。そういう所で投資しても回収できない。韓国もそうだが、中国には知的所有権上のリスクもある。
ライバル企業が中国で増設しているが、あんな危ないことをよくするな、と思う。当社が03年、中国・張家港に初めて工場を作った時も、私は反対だった。中国の市場なんてどうでもいい。捨てていますから」
「どうしても欲しいなら、高品質のものを高く売ってあげる。現状の中国工場の3万トンが売れれば、それでいいんです。
今の中国メーカーは各省ごとに競ってプラントを作っている。SAPもアクリル酸も、いずれ中国は自給自足するようになるでしょう。それもまたよし。ただし、(中国が)外へ出て来るようなことがあったら、当社はきちんと応戦するよ、ということです。
日本の皆さんは中国を当てにするからいけない。中国はたかだか13億人。世界には50億人の市場があるんですから」
●日本触媒の最大顧客P&Gは中国重視の企業
これ、やっぱりよくわからない話ですね。前述のように日本触媒は13億人に直接売る立場ではないはずです。一般の人との間に入るおむつメーカーに売るのですから、それを「13億人」と言うのも変な話。
そもそも日本工場で作ったSAP(紙おむつ向け高吸水性樹脂)を買ったメーカーが、自分の国で売るとは限りません。というか、今の時代だと他の国でも売る方が普通ですし、それこそ中国で売るということもあるかもしれません。しかも、日本触媒の最大顧客はアメリカが本社のP&Gだそうな…。全体によくわからない話ですね。
2018/06/09追記:P&Gは中国のおむつ市場で成功している会社として有名です。このおむつに日本触媒のSAPが使用されているかどうかはわからないのですけど、日本触媒の最大顧客であるP&Gは、むしろ13億人の中国市場を非常に重視しているとは言えるでしょう。
●爆発事故が起きたのは「社員全体の共通責任」という社長
2014/11/3:あと、気になったのは「安全」についての話。日本触媒は生産の7割を集中している姫路工場で2年前に爆発事故を起こしています。そのことについての池田全德(全徳)社長の発言が以下であり、違和感を覚えました。
「誰が悪いではない。社員全体の共通責任。管理部隊も含め、後ろには誰もいない、自分がゴールキーパーだ、という気持ちを持たねばならない。そのことを口を酸っぱくして言っています。
事故を起こしたのは、普段は使っていない中間貯蔵タンクだった。液を循環させて冷却する装置を「開」にしておけば何の問題もなかったのに、誰かが開いているだろう、と思い込んでしまった。まず、こういう思い込みを排する安全意識を醸成する。
それでも人間は失敗する。分かっていても思い違いもある。そのために、設備でプロテクトする。手始めに、プラントのいろんな箇所に温度計を設置した。100%の安全はないが、99を99.99・・・にしていきたい」
事故が起きた場合、犯人探しをするというのは悪い方向に働くことがあります。また、社員全体の責任というのも間違いではないです。事故・災害・ヒヤリハットが多い工場、少ない工場というのは傾向があり、重大事故はやはり普段から事故などが多い工場で起きやすいです。普段の意識の差が事故などの多さと密接に関わってきていると言えます。
しかし、その意識の差がどこで生まれるか?と考えたときに、トップなど幹部の重要性が出てきます。姫路工場でどのような状況だったかは不明ですが、仮に事故などが多い工場で重大事故が起きやすいとわかっていたのに放置していた場合、幹部の責任は重くなって当然と考えられます。法的にも幹部側の責任が重くなることが多いです。
また、今回の事故の話を聞いても普段から安全意識が高かったようには思えません。常時「開」(バルブ?)じゃないといけないと事故に繋がるものを「閉」にしてしまったというのも、「仕方ないよね」というミスではなく、普段からの安全軽視だったのでは?と思わせます。危険なタンクだとわかっているのであれば、温度監視とアラームつけているだけでも違ったんじゃないかと。何か杜撰な感じの事故の予感がします。
●当時も自分が社長で消防士が亡くなった事故なのに…
とりあえず、この池田全德社長の言い方は、安全に関わる企業の社長として気になってしまいました。
うーん、事故当時は自分が社長ではなく、当時の上司を悪く言いづらいのでしょうかね? それでもここは社員の命を預かる企業のトップとして、曲げてはいけないところだと思うんですが…と経歴を見ると、2011年4月から社長。事故当時も自分が社長じゃないですか!
"2012年9月29日、姫路製造所で化学薬品(アクリル酸)のタンクが爆発し、これが発端となって大規模な火災が発生。これにより、姫路市消防局網干消防署の
消防士1人が死亡し、同製造所従業員や兵庫県警網干署員ら
計36人も火傷などの重軽傷を負った。この事故を受けて姫路製造所の製品生産設備は使用停止命令が出された"
(
日本触媒 - Wikipedia[2014年1月8日 (水) 01:48])
しかも、消防士の方が亡くなって、36人もけが人が出ているのに、この他人事発言。感心しません。
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