「中卒」で活躍する人が出ると話題になるんですが、さすがに「小学校中退」ってのは聞いたことがありません。しかし、
「緩まない」ねじ革命 2000年の歴史、VBが変える(日経産業新聞2014年8月27日付 企業報道部 武田仁)によると、日本経済新聞では「学歴なし」「就職歴なし」の"経歴を申請書類に記入しながら、経済産業省や東京都の開発資金を受け取っている男がいる"としていました。
NejiLaw(ネジロウ)の道脇裕社長は、"10歳ごろに「僕は今の教育システムに疑問を感じるので、自分の足で歩むことに決めました」と一方的に小学校に“休学宣言”し"ているので、本当に「学歴なし」のようです。
一方、「就職歴なし」というのは書いていないだけみたいですね。小学校を中退した後、"漁師、とび職など様々な仕事を経験しながら"過ごしてきたようです。
道脇社長は"携帯電話が広まる前から、無線機を使って双方向で同時通話できるシステムを作るなど"していたそうですけど、NejiLaw(ネジロウ)はその名の通り「ねじ」を作る会社です。
"従来も「緩まない」を標榜するねじ"はありましたが、"既存の商品は締め付ける摩擦力に頼る"もので実際には「緩みにくい」ねじと呼ぶべきものでした。"ねじの締める力を強くするには、ボルトとナットなど互いのらせん構造を精密に作り込み摩擦力を強くすることが研究者やねじ業界の常識"なのです。
一方、道脇社長は"らせん構造そのものにメスを入れ、摩擦に依存しない「緩まない」ねじを実現しよう"としました。
NejiLawで開発しているネジにはいくつかの種類があるようですが、たとえば、"NejiLawの主力品である「L/Rネジ」のボルト"は、"右回りで締めるナットと左回りのナット、両方に対応した山が作り込まれて"います。言葉だけだと全然わからないのですが、図を見ると何となくわかります。
右回り・左回りのナット両方で固定するのですが、"互いがぶつかると、相手をロック"します。見た感じ、一体化しているみたいですね。
こうなると、片方のナット、たとえば、右回りのナットを緩めようとしても、一体化しているために左回りのナットも動かさなくてはいけません。左回りのナットにとっては右回りは締まる方向ですので、結局緩めることはできないということみたいです。
ただ、私はなぜロックできるのか?がこれでもよくわかりませんでした。あと、外したいときどうするのこれ?と思いました。メンテナンスを想定しているものには使えないのでしょうか?
気になって
NejiLawのサイトトップページを見てみると、L/Rネジにも種類があるみたいです。とりあえず、図もこちら(ページの下の方)を見ておくと、イメージしやすそうです。
サイトにあった「L/Rネジ パーマネントロックタイプ」は「右ねじナットと左ねじナットの接合面に刻まれたラチェット構造によって緩むことの無い締結を実現」と説明があります。「パーマネント」は「永久に」という意味なので、これはその名の通り取り外すことを想定していないということでしょう。
とすれば、他は取り外しを想定していると考えられます。で、隣にあった「L/Rネジ リムーバブルロックタイプ」を見ると、「自在に回転が可能なまま左右ねじナットが一体化、任意の位置で固定可能な上、
取外しも可能」という説明。完璧じゃないですか!
ところで、先ほど"らせん構造そのものにメスを入れ"とあったように、今までにない構造をしています。そのために、製造を委託しようにも金属加工メーカーからは「こんな難しい構造は作れない」と断られる苦難もあったそうです。
ただ、"そこで自ら製造工具や光学的な品質検査手法を開発し、商品化に道をつけた"というのが、道脇裕さんのすごいところ。たぶん良い意味で専門家ではない、壁を作らずに学ぶタイプの人なのでしょう。
こうして作られたL/Rネジのすごさは伝説的です。まだ"開発途上だった4年ほど前"の時点で、"米航空宇宙規格(NAS)に準拠した試験"の方法を試してみると、"合格ラインの17分間まったく緩"みませんでした。これは結局3時間緩まなかったのですが、その3時間で試験装置のねじの方が限界を迎えて、壊れたそうです。
道脇社長は緩まないねじの意義について、「専門技術が必要な溶接などから、ねじによる締結へ切り替えが可能になり、2000億円の新規需要が生まれる」としていました。重工業を中心に幅広く手がける大手製造会社のIHIはまず橋梁での利用を見込んでおり、"航空関連や宇宙開発への広がりも期待しているもよう"です。さらに"福井県鯖江地域の企業と進めるメガネへの利用も近く実現する見通し"(検索すると、福井県は日本製メガネフレームの9割以上のシェアを持つとのこと)だそうです。
また、先のオフィシャルサイトの
Aboutでは、"締結部材としてのねじは摩擦力に依存したものであるために緩み問題は永遠のテーマとされ、今なお人命にかかわる数多くの事故の原因となっています"としていました。
そして、"緩むことのないネジを提供することで、これまでのようなねじ締結体に起因する事故の多くを未然に防ぎ、さらに施工時間の短縮、保守管理費用の削減などによる経済的メリットをも同時にもたらす"ということで、こちらも「緩まないねじ」の意義を説明しています。
紀元前3世紀以来"単純ならせん構造は変わって"いなかったねじに、革命をもたらした「緩まないねじ」の今後の活躍に期待したいです。
追加
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