サンリオは最近苦しいようです。ライセンスビジネスの見直しを市場に嫌気された他、ディズニーの『アナと雪の女王』がヒットしたせいで、アメリカでは売り場が激減という大ピンチ。
で、そのアナ雪を真似て、映画をやろう!となったみたいなんですけど、その参入動機はどうなのか?と思います。そもそも過去に映画事業をやっていて、失敗したこともあるみたいなんですよね。
2014/11/11:
●サンリオの強みは在庫を持たないライセンスビジネスだった
●アナ雪のヒットでサンリオがやばい アメリカで不振、映画に再進出
●失敗フラグっぽいサンリオの映画事業に再参入する動機
2017/10/13:
●ダメそうだった『くるみ割り人形』はやっぱり不人気だった?
●強気のサンリオ、新会社で300億円投入か?英国キャラ使用許諾も
2017/12/09:
●物販とライセンス、どちらもダメなサンリオ
●28歳の孫が昇格、サンリオも世襲で失敗する例に?
●最初はライセンス重視でなかった…MBAの鳩山玲人氏が戦略転換
2020/01/20:
●サンリオには無理?ハリウッドのプロに依頼して映画化予定
2020/06/14:
●92歳まで60年間も創業者が社長で交代遅れる…後継者に決まったのは?
●サンリオの強みは在庫を持たないライセンスビジネスだった
2014/11/11:
サンリオの「KIRIMIちゃん.」「ぐでたま」がすごい 脱キティ依存を書いたのは最近ですが、古い記事を使っていたので今はもう状況が異なるようです。
サンリオ、株価半減の異変から完全復活?脱金儲け&愛される企業への脱皮に難題も- Business Journal(2014年11月11日06時00分)(松井克明)によると、アナ雪のヒットがこの状況変化に関わっています。
ただ、そのアナ雪危機の前にも、サンリオの株価は"13年9月の6000円台から2分の1以下に大きく下落"していたことがあったようです。"後継者と目されていた創業者の辻信太郎社長の長男で副社長の邦彦氏が、13年11月19日に61歳の若さで急死してしまった"とのこと。しかし、現役社長が亡くなってもここまで下がらないですし、本当にそれが原因?と思いますけどね。
"制限値幅の下限(ストップ安)の2410円をつけるなど急落した"と書いているのは、翌年の5月22日のこと。この日のストップ安は明らかに別原因で、"前日に開いたアナリスト向けの決算説明会で、辻社長がハローキティを使った物販事業に力を入れると表明したため"です。
サンリオは"在庫を持たないライセンスビジネスに特化すること"で、自ら商品を作るリスクは避けてきました。これは一種の強みでしたので、それが失われるということに嫌気したのでしょう。ただ、サンリオ広報・IR室は「物販事業の重要性を強調しただけで、ライセンス収入を中心とする事業モデルは変えない」と慌てて否定していたようです。
ただし、「ダイヤモンド」のインタビュー記事『金もうけより愛される会社に 後継者は世襲も選択肢の一つ』では、辻社長が「商品に対するライセンスから、企業の販売促進に使ってもらうライセンス方式への拡大を図るべき」としていたそうです。これもまた収益性に影響がありそうな話です。
実際、記者の「利益目標などが達成できないのでは」という質問にも、「大きな目的は金もうけじゃなくて愛される会社になること」と答えていたと言います。
●アナ雪のヒットでサンリオがやばい アメリカで不振、映画に再進出
しかし、サンリオも別に慈善事業を営もうとしているわけではありません。冒頭で書いたアナ雪のヒットによってサンリオがやばいという話は、逆に言えば、儲ける意思があるためです。
なぜアナ雪のヒットが関係するのか?という話も、先のインタビュー記事にあったようです。「ディズニーが『アナと雪の女王』(ウォルト・ディズニー・スタジオ)を大ヒットさせ、登場人物をTシャツやバッグにして売り出したら、北米におけるサンリオの売り場が半分くらい奪われた」とのことで、どうもアメリカ市場でのピンチということみたいです。
これのせいで「サンリオも映画だ!」となったのかもしれません。「日経MJ」(日本経済新聞社/10月29日号)の記事『「アナ雪」ヒット後の戦略 第2のキティ、映画発で』で、辻社長は「映画の主役の商品がそこまで売れるなら、サンリオもキティやマイメロディに頼るのではなく、映画を製作して主人公のキャラクターの商品化をやらなければならないと思った」とズバリ言っています。
で、実写人形アニメーション『くるみ割り人形』というのをやるんだそうですわ。ただ、これ、7年ぶりに映画事業再参入だとありました。ということは、以前失敗しているってことじゃないですかね?
↓以前の作品
●失敗フラグっぽいサンリオの映画事業に再参入する動機
私はこういうのがわからないんですが、過去のサンリオ映画を見てもあまり有名そうなものがありません。目についたものだと、たとえば、『おしん』。ドラマは有名だった『おしん』のアニメーション版がなぜかサンリオのラインナップにあります。
しかし、
おしん - Wikipediaによると、"高視聴率を挙げたドラマとは裏腹に上映打ち切りが相次ぎ、興行的には失敗に終わる。制作費3億円に対し配給収入は約2億円"とさんざん。
"サンリオは「サンリオのファミリー映画はいつも子供が親を引っぱってきた。今回は子供にソッポを向かれたのが原因」としている"そうですが、そりゃそうだろう…という敗戦の弁。明らかに場違いな作品です。
サンリオ作品で私が他に知っていたのは『キタキツネ物語』。でも、これは大昔の映画です。検索したら「35周年」なんて書いています。
私としてはディズニーなんかより国内企業に頑張って欲しいんですが、「他社が成功したから」という参入動機からして既に失敗フラグ立てている感じで心配ですわ…。
●ダメそうだった『くるみ割り人形』はやっぱり不人気だった?
2017/10/13:他の投稿を書いていて、この投稿タイトルが目に入りました。そういや、映画はどうだっただろう?と、
くるみ割り人形 (2014年の映画) - Wikipediaを確認。興行収入はわずか8200万円でした。
小さくチャレンジして小さく失敗なら良いんですけど、これはどれくらいの損益だったんですかね? アナ雪と比較するのは酷にしても、
日本国内 2014年 年間総合興行収入ランキング - 映画ランキングドットコムを見ると、2014年の興行収入ランキングでは最低の35位でも10億円であり、かなり少ないように見えました。
<日本国内 2014年 年間総合興行収入ランキング>
順位 興行収入(億円) タイトル
1 259.2 アナと雪の女王
2 91.8 STAND BY ME ドラえもん
3 66.5 マレフィセント
4 53.8 るろうに剣心 京都大火編
5 45.1 るろうに剣心 伝説の最期編
(中略)
31 10.4 小さいおうち 2014
32 10.3 好きっていいなよ。 2014
33 10.3 ルーシー 2014
34 10.2 X-MEN:フューチャー&パスト 2014
35 10.2 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 2014
●強気のサンリオ、新会社で300億円投入か?英国キャラ使用許諾も
それでも、サンリオは映画重視の姿勢は変わらないようです。翌年である2015年の記事によると、世界市場を見据え映画事業を強化していくために、米国子会社Sanrio Inc.全額出資による子会社「サンリオ・メディア&ピクチャーズ・エンターテイメント」を2015年6月、米国デラウェア州に設立。
一部報道によれば、製作と宣伝費を含む総事業費は200~300億円を見込んでおり、新会社幹部には米ハリウッドなど映画業界の人材を登用するとしているとのこと。うわっ、これ小さくチャレンジじゃないですね。失敗したらヤバイやつです。
サンリオはこれ以前の1月に、英国グループ会社が実質的に版権を所有する英国生まれの人気キャラクター「ミスターメン リトルミス」の映画化権契約を、米国の大手映画会社20世紀フォックス社のアニメ部門「20世紀フォックス・アニメーション」と締結しています。
これは映画で一からキャラクターを育てる形ではなく、すでにある程度実績のあるキャラクターを買う形。この路線だと、たとえヒットしても日本すごい!系の話には全くならないものの、より堅実だとは思います。
なお、2015年当時の海外事業の営業利益は175億円と前期比14.5%減少ということでボロックソ。マジでヤバそうでした。
(
サンリオ、世界市場を見据え映画事業を強化!米法人設立&「ハローキティ」映画化 : 映画ニュース - 映画.com 2015年7月8日 07:00より)
●物販とライセンス、どちらもダメなサンリオ
2017/12/09:サンリオは10月10日に、18年3月期の業績予想を下方修正しています。連結売上高は前期比5%増の657億円の予想から一転、4%減の603億円に引き下げ。営業利益は56%増の108億円を9%減の63億円、純利益は20%増の78億円から26%減の48億円と下方修正で、最終減益は3年連続となってしまいました。
「サンリオピューロランド」のテーマパーク部門だけが増収だったものの、主力の物販とライセンスは減収減益。主力ということもあって、こちら二つの減益の方が大きく効いているようです。
当初の投稿ではディズニーの話があったアメリカの苦戦ですが、ここでは小売業全体がアマゾンにやられているという説明。小売チェーンは次々と閉店し、サンリオがライセンスを供与している米小売チェーン最大手、ウォルマート・ストアーズも苦戦を強いられていることが大きく響いたとされていました。
●最初はライセンス重視でなかった…MBAの鳩山玲人氏が戦略転換
最初の話でライセンス事業の転換という話がありました。私はてっきり長くライセンス中心にやっていたのだと思っていたら、違いました。もともとは物販中心だったようです。
サンリオは1990年代後半が黄金期。女子高生の間でハローキティのグッズを買い集める“キティラー”現象が流行。しかし、ブームが消えると売り上げは年々減少。そこで、現在の社長の息子である辻邦彦副社長が、三菱商事出身、ハーバード・ビジネススクールでマーケティングを学び、MBA(経営学修士)を取得した鳩山玲人さんをスカウトしました。
二人は北米において、物品販売からハローキティのライセンス収入にビジネスモデルを転換。物販に比べて売り上げは減るので一見良くないように思えるのですが、利益率は高まるためにこれで成功。4期連続の営業増益となり、14年3月期には、鳩山さんが米国法人に入社する直前の07年3月期の5倍となりました。
●28歳の孫が昇格、サンリオも世襲で失敗する例に?
ところが、13年11月19日に副社長が亡くなっていたため、成功者である鳩山さんの排除は遅から早かれ起きていたと思われます。14年5月には、父の信太郎社長が機関投資家向けの決算説明会で「販売を重視し、ライセンスビジネスでない方向に重点を置く」と発言。
ドル箱に育ったライセンスビジネスから、元のグッズ販売会社に戻るという“先祖返り”に、市場関係者は首を傾げたものの、現在もこの路線。鳩山さんは後に退社、弱冠28歳の孫が専務に昇格し、世襲路線が明確にという絵に描いたようなダメ展開…というのが、現在の状況だそうです。
(
サンリオ、迷走で経営悪化…56年社長君臨、28歳の孫が専務昇格で世襲確定 2017年12月08日 00時05分 ビジネスジャーナルより)
政治含めて「世襲は悪くない!」、それどころか「むしろ良い!」と訴える人がいるんですけど、悪いケースがかなりありますからね。サンリオも悪い例に仲間入りしそうな感じになってきました。
●サンリオには無理?ハリウッドのプロに依頼して映画化予定
2020/01/20:以前の追記で、一からキャラクターを育てる形ではなく、すでにある程度実績のあるキャラクターを買ったのは、マシなやり方だと書きました。サンリオにはディズニーのように映画で成功して人気キャラクターを作れる力はありません。足りない部分は補っていった方が良いです。
そういう意味では、これもより現実的な戦略だなと思ったのが、
ハローキティがハリウッドで映画化!サンリオキャラクターが全世界映画デビューへ - 映画 Movie Walkerというニュース。この場合、キャラはサンリオで最も有名なハローキティですが、映画の方はプロにおまかせという形です。餅は餅屋にやってもらうというのは悪くないでしょう。
映画は、「ロード・オブ・ザ・リング」などで知られるニュー・ライン・シネマと「センター・オブ・ジ・アース」シリーズなどを手掛けたフリン・ピクチャーが企画。ハリウッドの大手配給会社ワーナー・ブラザース映画が世界配給の予定です。
ただ、これも金額のかけ方によっては、危ない博打になりかねません。できれば他社と協力してリスクを分散したいところ。また、この記事の出ていた2019年3月06日時点でほとんど何も決まっていない状態だったのですけど、その後の続報が見つからず。ひょっとしたらボツになったかもしれませんね。
●92歳まで60年間も創業者が社長で交代遅れる…後継者に決まったのは?
2020/06/14:以前書いていた「弱冠28歳の孫が専務に昇格」の続報。無事世襲が完了するようです。サンリオは、創業者の辻信太郎社長(92)が退任し、孫の辻朋邦専務が昇格する7月1日付の人事を発表しています。最初のときから数年経ちましたので、年齢も増えて、現在31歳だそうです。
これを伝えた記事は、
サンリオ、初のトップ交代 創業60年、決算は大幅減益 | 共同通信というもの。社長交代は1960年の創業以来初めてだというのですから長いですね。
当然、創業者は高齢であり、前述の通り、92歳。カリスマ社長は後継者を選ぶのが遅く下手…というのはよくあることですが、サンリオはどうなるでしょうか。ちなみに2020年3月期連結決算は、売上高が前期比6.5%減の552億円、純利益は95.1%減の1億9100万円と絶不調。ただし、新型コロナウイルスの影響でテーマパークを臨時休業したことが理由だと説明しているそうで、これを信じるなら一時的なものだと考えられます。
【本文中でリンクした投稿】
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