「シンガポールにサービス残業はない そもそも残業が基本禁止」と「シンガポールのホワイトカラーエグゼンプションは残業などしない」をまとめた話。このうち、「ホワイトカラーエグゼンプション」という言葉は使われなくなって、「働き方改革」と言われるようになっていますね。
ただ、シンガポールの話を読むと、「働き方改革」でホワイトカラーの残業代ゼロを今日本がすると悲惨なことになりそうだ…と感じました。というのも、もともと仕事のやり方、残業への考え方があまりにも日本と違うので、日本の場合、残業代ゼロとなるだけで残業はそのまま残ってしまいそうなためです。
シンガポールの場合、サービス残業はないどころか、そもそも残業が基本禁止。ホワイトカラー・エグゼンプションのような人たちでもそうで、残業させると上司からも部下からも怒られるほど。特に部下から怒られるってのは、日本では考えられないでしょうね。
また、過度の長時間労働は「仕組み上」できなくなっており、この仕組みがない日本がやると長時間労働は是正されないでしょう。むしろ労働時間を増やしてしまう可能性もありそうです。
●シンガポールにサービス残業はない そもそも残業が基本禁止
2014/11/11:元記事は残業がメインの話ではありません。
昭和の母のように働き、上司を「アニキ」と慕え!グローバルで評価される“浪花節処世術”5大ポイント|ダイヤモンド・オンライン(岡田兵吾 2014年6月25日)というもので、グローバルな企業社会での人々の働き方は、意外に"日本の浪花節にも通じるウェットな部分もたくさんある"というテーマ。その筆頭にたまたまあったのが、残業の話なのです。
記事では、「シンガポールでは、サービス残業は基本、ない」としていて、全くないとは言っていません。欧米の多国籍企業、現地企業だけでなく、日系企業においても、基本的には「サービス残業がないという点だけは共通している」そうです。
ただ、新人の場合は評価が「最初の3ヵ月で決まる」ということで、多少事情が違うようです。この3ヵ月は「残業なし+有給+病欠」を満喫し切ってはいけないと作者は言っていました。「朝は一番に出社し、一番最後に帰る」ように、めちゃくちゃ働け!というアドバイスです。
ここらへんはむしろブラックな感じで、日本企業と変わらない働き方に見えます。とはいっても、この時期すらかなり日本感覚での「めちゃくちゃ働く」とはかなり異なるのかもしれません。早朝出勤は可能だが残業は基本禁止なので、時々ちょっと長く働く程度に留めるとされていたためです。
●残業が多いやつは仕事ができないやつ…と評価されてしまう
また、残業は3ヵ月だけに留めないと、仕事効率が悪い印象を与えてしまい、逆効果なので注意が必要だとのこと。仕事ができない人扱いです。とりあえず、3ヵ月以降は緩急をつけて少しサボっていても「あの人はやるときはやる人だ」と大目に見てもらえるそうです。
前述の通り、この記事のメインは、グローバルな企業社会での人々の働き方は、意外に"日本の浪花節にも通じるウェットな部分もたくさんある…というものでした。ここで出てきた処世術の中でもう一つ非常に日本的なものを感じたのが、<上司大好き、「アニキ」と慕え>というものです。
作者は上司や会社に媚びるのが嫌で、"大学卒業後に外資系コンサルティング会社に入社し、個人の実力主義を追い求め"たものの、結局媚びるのが一番良いのだそうです。"社会という人が集まって形成される集団にいる限り、こういった人間による評価システムから抜け出すことはない"ものだと、達観されています。
●長時間労働が必要な職種は少数で、なおかつ高給で最初から同意の上
上記の記事は
日本の「残業代ゼロ論争」にモノ申す!(上) 残業ご法度なシンガポールで面食らった僕 周囲と衝突して学んだ「仕事圧縮」のオキテ|ダイヤモンド・オンライン( 岡田兵吾 [マイクロソフト シンガポール シニアマネジャー] 2014年7月16日 )のリンクから飛んで読んだものです。
こちらの新しい方の記事によれば、シンガポールでは管理職・専門職だけでなく、事務職、新卒社会人、非正規社員(時給制以外の非正規社員)も、「年収1000万円以上」の日本のホワイトカラーエグゼンプションに近い労働形式にあるそうです。
コンサルティング会社など、長時間労働が必要な職種はもちろんあるといいます。ただ、このような業界はもともと他業界よりも給与水準が高く、また昇進も早い傾向があるので、ワーカーたちも長時間労働を納得済みで入社、勤務しているため問題はないとのことです。納得ずくなんですね。
そういえば、うちの
残業時間の長い職種ランキング コンサルタント,システムエンジニアは?あたりでも、コンサルタントは残業は多くても給料が高いって話をやりましたね。しかも、日本の調査では有給休暇も取りやすい職種となっています。長時間労働でなおかつ有給休暇もとれない職種もあり、そちらが真のブラック労働といった感じです。
●シンガポールでは過度の長時間労働は「仕組み上」できない…これが大事
記事ではその他に、"スタートアップのベンチャー企業も長時間労働職場として知られるが、株式上場時や企業売却時に多額の収入が入る“ハイリスク・ハイリターン”な仕事であるため、こちらも特別に長時間労働には寛容"としていまいた。
私はベンチャー創業者世代の過労をむしろ好感する書き方をしたことがあります。しかし、これを従業員に求めてはいけないとも書いているんですよ。上記のように、長時間労働の末に得られるリターンが全く異なるという理由です。役員に比べてリターンの少ない社員にこれを求めちゃうと、途端にブラック労働に変わります。
一方、"シンガポールの中小・零細企業では、十分な従業員がおらず、1日8時間以上の労働を強いられる会社もあるよう"です。しかし、"ある一定時間以上の労働を社員に強いると、人材開発省"から"クレームが入り、営業ライセンスを剥奪されてしまう"とのこと。制裁が極めて「手厳しい」のです。
そのため、"こうしてシンガポールでは、過度の長時間労働は「仕組み上」(ここが大事!)できないようになっている"としていました。ただ、日本でも一応罰則はあるんですけどね。制裁の厳しさ以前のところで形骸化してしまっています。他の問題でもそうなんですが、日本ではルールだけあっても守られなくては意味ない…というのが多いです。どうしたらいいんでしょうね、こういうのって?
●部下を残業させると上司に激怒されてしまうシンガポール
2014/11/13:
日本の「残業代ゼロ論争」にモノ申す!(上) 残業ご法度なシンガポールで面食らった僕 周囲と衝突して学んだ「仕事圧縮」のオキテ|ダイヤモンド・オンライン( 岡田兵吾 [マイクロソフト シンガポール シニアマネジャー] 2014年7月16日 )から残業に関するエピソードを。
シンガポールは原則残業は禁止とされていましたが、そこではこれは残業代ゼロとも言われるホワイトカラーエグゼンプションにおいても同様のようです。ホワイトカラー・エグゼンプションなら残業しても良い…という理解じゃないみたいなんですね。
作者が部下を残業させていたところ、上司に「お前は誰の許可を取って、部下に残業させているのか!?」と激怒されたことすらあったそうです。作者はプロジェクトに遅れていたためだと説明しました。日本ならこれで上司も納得でしょう。しかし、上司はそれを何とかするのがマネージャーの役割だろうと指摘。納得してもらえませんでした。
●シンガポールのホワイトカラーエグゼンプションは残業などしない
それから、娘を「病院に連れて行きたい、夕方4時頃に早退させてくれ」というインド人の頼みを断った結果起きたトラブルの話も。日本では考えられないでしょう。
大病ではない普通の風邪だし、"専業主婦の奥さん、同居しているお母さん、そして従兄弟も一緒に家族全員で今から病院に行く"と仰々しいことになっていたので、仕事を優先するように…と作者は頼みました。結局、"何度も家族に連絡する彼に無理強いし、午後10時頃まで働かせた"そうです。
その翌日、彼に前日のことを軽く謝りました。作者は部下の家庭のことも気にかけているいい上司でしょうか? いいえ、シンガポールでは違います。インド人の部下はむしろ激怒しました。「今回は事情が事情だけに許す。しかし、今度このようなことがあれば俺は会社を辞めるし、お前を決して許さない」と言い放ったそうです。
困った作者が部下たちに納期が厳しい状況を伝え、どのくらいであれば残業可能か聞いてみました。この答えが、また日本人には信じられないでしょう。「月2回であれば、午後9時まで頑張る!」です。これが「ホワイトカラーエグゼンプション」の実態なんだそうです。日本政府や日本企業が想定している「ホワイトカラーエグゼンプション」とはおそらく全然違うでしょうね。
●長時間労働なのは要するに効率の問題?日本人の仕事の仕方は無駄が多い
ところで、マネージャーは残業をさせずに、どのように期限の厳しいプロジェクトを成功させるのでしょう? 作者が"今まで一緒に仕事をしてきたアメリカ人たち"は、作者"以上に長時間働く者も多かった"そうです。結局長時間労働をしています。しかし、その彼らから見ても、日本人の仕事の仕方は無駄が多いと感じるようです。
"アメリカ人たちは、膨大に膨れ上がりがちな仕事の無駄を可能な限り削ぎ落とし、絶対に落とせない仕事の根幹だけを処理している"とのこと。同様の「無駄なものを省け」というアドバイスは、以前やった
仕事が早い人になるには? 効率よく仕事をこなす7つのコツなどでも出てきました。
今回の記事であった"無駄の削ぎ落としのプロであるアメリカ人や、シンガポールで働く人々がいつも疑問に思い、なぜか僕(引用者注:記事の作者)に提言してくる「日本人の仕事削ぎ落としポイント」"は、以下の2点です。ただ、これは部下の使い方という前述のエピソードとはちょっと合わないですね。
(1)対面での打ち合わせを効率化せよ
わざわざ飛行機で出張して会わなくても、電話会議やテレビ会議を使えば良い。深夜の電話会議は会社じゃなくて自宅でもできる。
(2)複数いる意思決定者を整理せよ
上の許可がいるなら、最初からその1人の意思決定者に会う方が良い。何回も同じ話し合いの場を持つ必要はない。
とりあえず、仕事の無駄を可能な限り削ぎ落とし、絶対に落とせない仕事の根幹だけを処理するという点はポイントだと思われます。
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