スター精密の話をまとめ。<高ボーナス企業スター精密の方針 グローバルニッチと身の丈経営>、<スター精密の方針は売上よりも利益率を重視 身の丈経営も特徴>、<日本のホワイト企業スター精密も中国での製造を強化していた!>などの話をまとめています。
2022/07/04追記:
●日本のホワイト企業スター精密も中国での製造を強化していた!
●良さそうに見えて良くないブルーオーシャン戦略の問題点とは?
2014/11/20:以前書いた
仕事・ビジネスの名言2 「誰もやりたがらない小さい市場を狙いなさい」という投稿。ちょっと昔に流行ったビジネス用語でブルーオーシャンというのがあり、これに関する話です。
ブルーオーシャンの対義語はレッドオーシャンで、激しい事業領域がレッドオーシャンという意味。そして、競争のない未開の大市場がブルーオーシャンになります。ブルーオーシャン戦略はそういった競争のない市場を目指しましょうという戦略です。
しかし、これには大きな問題があります。ブルーオーシャンは最初は確かに競争のない未開の大市場ではあるものの、儲かるとわかれば次々とライバルがやってきて、あっという間に血で血を洗うレッドオーシャンに変えてしまうのです。
そこで、以前取り上げた記事では、「誰もやりたがらない小さい市場を狙いなさい」とアドバイスしていたわけ。儲けの少ないちっぽけな市場に、わざわざ他の企業が大挙して押し寄せてくることはないためです。
●高ボーナス企業スター精密の方針 グローバルニッチと身の丈経営
上記のような話は理論上は確かにわかる話。一方で、「そうは言っても、これ、そううまく行くものか?」とも思っていました。なかなか実現するのは難しそうだと感じたのです。ところが、
1000億円超の市場は手がけない:日経ビジネスオンライン(田中 深一郎 2014年11月18日(火))を読んで、スター精密がこれをうまく実践しているのだとわかりました。
スター精密は有名な会社ではありませんが、
2014年夏のボーナス企業の平均支給額ランキング トヨタVSホンダなどのボーナス支給額のランキング上位の常連であるホワイト企業です。高ボーナスの秘密、スター精密の成功の秘訣といったものが、ここに隠されているのかもしれません。
佐藤肇社長によると、スター精密は先代経営者の時代から、グローバルニッチ戦略を徹底しているそうです。「ニッチ」の基準は、世界での市場規模で約1000億円"で、それを上回る市場は手がけることはないとされていました。
5000億円の市場で2%のシェアをとってもマーケットリーダーにはなれませんが、シェア100%でも1000億円の市場なら、大手は参入してこないという理由。まさに「誰もやりたがらない小さい市場を狙いなさい」になっています。
●スター精密の方針は売上よりも利益率を重視 身の丈経営も特徴
これは売り上げは追わずに、利益率を重視しているところも関係あるでしょう。売上重視なら、大きな市場でリーダーになれなくても、市場が大きいために売上は結構大きくなりるとも考えられます。それで良いという企業もあるでしょう。ただ、スター精密はそうではないんですね。
前述のような競争の激しい市場では、利益率は低くなりがち。極端に独占市場で考えてみるとわかるように、競争が少ない独占・寡占市場の方が利益を出しやすいことがわかるでしょう。佐藤肇社長は「5000億円の企業であれば赤字部門でも継続できるが、当社の規模では赤字など許されない。2ケタの営業利益率を確保しなければ、社員を十分に雇用していけない」としていました。
また、佐藤肇社長自身がキーワードとして挙げていたのは、「むやみな規模の追求をしないこと」です。日経ビジネスオンラインでは「反・規模追求」経営と書き、うちでは「身の丈経営」という言い方にしました。「むやみな規模の追求をしないこと」も結局「利益率重視」によるでしょう。
「身の丈にあった経営を心がけ、決して安易な多角化はしてこなかった。今も、スマートフォンが伸びるとか、ウエアラブル端末が脚光を浴びているとかといった流行には左右されず、自社の保有技術で何が製品化できるか、どの市場なら20%の利益率を取れるかを考えている」とのことでした。
●高ボーナス企業スター精密の秘密?小さい企業ほど世界を相手にせよ
もう一つおもしろかったのが、規模が小さい企業なのに海外進出を重視しているということです。さっきの「グローバルニッチ」も単なるニッチではなく、グローバルがつきましたものね。小さい企業ほどむしろ世界を相手にする商売をせよ!という常識に反した逆説的な方針になっています。
スター精密は1950年の創業で、わずか12年後である1962年には海外に進出したといいます。このときの「売上高はわずか2億円」しかありませんでした。「現在の物価水準に照らし合わせても、わずか年商10億円ほどの静岡のローカル企業が他社に先駆けて輸出を始めた」と佐藤肇社長は説明します。
当時、海外への輸出を始めた理由は「設備投資にかかる投資の回収を早める必要があったから」というものでした。「日本のマーケットだけを見ていると資金回収が遅れてしまうから、昔から製品を世界各地に同時発売する発想でやってきた」と語っています。
また、「儲かる地域と儲かる商品しかやらない」という方針のため、有望と言われる新興国ではなく、欧米を重視しています。これもまた常識に反するものでしょう。前半の「反・規模追求」なども含めてかなり独特で、一見非常識に見えるものが多いと感じます。
●日本のホワイト企業スター精密も中国での製造を強化していた!
2022/07/04追記:最近は何かとチャイナリスクが言われて、脱中国が叫ばれるものの、むしろ中国重視という企業は多いです。欧米重視されていたスター精密も実は中国重視じゃないかな?という記事をいくつか発見。例えば、
スター精密、中国・大連工場を増設 生産量25%増: 日本経済新聞(2021年11月11日)という記事がそうです。
<スター精密は11日、中国子会社の大連工場を増設すると発表した。増設する工場は2022年2月に稼働する予定だ。総投資額は6億5000万円。
中国向けの工作機械の生産量を約25%増やし、年間3600台の生産体制へ増強する。同国では新型コロナウイルスの感染拡大が沈静化し、工作機械の需要が拡大している>
ホワイト企業であるスター精密が海外で生産を増やしているというのはおもしろいところ。研究によると、海外進出する企業の方がむしろ日本国内の雇用を増やしているらしいんですよ。海外で工場を作ることできちんと稼げるからこそ、日本人の雇用を増やし給料を支払うことができるのかもしれません。
なお、翌年には
スター精密、上海に営業拠点 工作機械の特長訴え: 日本経済新聞(2022年2月9日)という記事も出ていました。1つ目の記事は「中国での製造を増やす」というものでしたが、こちらは「中国での販売を増やす」というものですね。製造・販売どちらの面においても、中国を重視している感じ。そもそも売上が世界最大の地域のようでした。
<スター精密は9日、2022年9月に中国・上海市に工作機械の新たな営業拠点を設けると発表した。アジア市場全体の営業を統括する中核拠点と位置づける。加工などを実演して顧客に製品の特長を訴える大型のショールームを設ける。すでに同様の拠点を整備している日本国内、24年に整備予定の欧州と合わせて営業体制を強化する。
新設する「アジアソリューションセンター」は、中国販売子会社の上海星昂機械(同市)の営業拠点として上海東部・浦東エリアの新興開発地区の3階建てのビルを賃借する。延べ床面積は約1400平方メートル。総事業費は約3億円を投じる>
<工作機械の21年12月期のアジア地域での販売額は約200億円で全体の4割と地域別で最も多く、中国市場はアジア売上高の約7割を占める。中国では22年2月にも大連工場を拡張し、生産能力を段階的に約25%高める。生産能力と営業能力を同時に強化することで、3年以内にアジア地域での売上高を2割程度高める狙いだ>
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