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サウジアラビア・ムハンマド皇太子がトルコで記者の暗殺命令?アメリカ情報機関が傍受


 表題の件だけでなく、サウジアラビアの話を複数まとめた投稿になっており、「積極的な軍事介入、強引な外交、人権問題、粛清…失政続きのサルマン皇太子」「経済封鎖で要求飲ませるはずが、逆に敵国を喜ばせてしまった理由」といったものもやっています。

2018/10/13:
●トルコでサウジアラビアの反政府系記者が行方不明
●拉致か暗殺か?政府批判を許さないサウジアラビア
●ムハンマド皇太子が記者の暗殺命令?アメリカ情報機関が傍受
●サウジとトルコ・アメリカの関係で重要なイランの存在
2018/10/20:
●生きたまま指を切断して頭部切断? 容疑者の1人はすでに消された?
●砂漠のダボス会議参加見送り広まる中、トランプ政権と孫社長は…?
2018/10/21:
●積極的な軍事介入、強引な外交、人権問題、粛清…失政続きのサルマン皇太子
2021/01/15:
●経済封鎖で要求飲ませるはずが、逆に敵国を喜ばせてしまった理由
2021/02/23:
●サウジアラビア皇太子、カナダにも暗殺部隊派遣か?計画は失敗 【NEW】
2019/03/13:
●原油価格下落、高騰狙うサウジアラビアはOPECプラス構想まで検討
2014/12/17:
●原油価格下落の理由 サウジアラビア激怒でOPEC崩壊、シェールオイルの影響
●原油輸入国なのに原油価格下落を喜ばない不思議な国が世界にはある
2016/1/9:
●若者たちに人気がある指導者をサウジアラビアが処刑で大混乱
●親米国サウジアラビアの変化、アメリカが反対していたのに処刑強行
●原油安の予想外のデメリット サウジアラビアが大混乱したのには理由があった!
●特定の国に入れ込むのは危険?むしろ極端な親米化が仇となった可能性


●トルコでサウジアラビアの反政府系記者が行方不明

2018/10/13:トルコ・イスタンブールのサウジアラビア領事館を訪れた反政府サウジ人ジャーナリストのジャマル・カショギさんが失踪しました。離婚に必要な書類を届けるため10月2日午後1時ごろに領事館に入った後、行方不明になっています。

 カショギさんは、はムハンマド皇太子が推進する国家改造計画やイエメンとの戦争に批判的で、2017年、身の危険を感じて米国に渡っています。そして、アメリカのワシントン・ポストで皇太子らに厳しい記事を書いてきたという方です。

 そのため、領事館を訪れれば拘束されるかもしれないと懸念、入館前に携帯電話をフィアンセに預け、自分が出てこなかった場合、エルドアン・トルコ大統領の側近に電話するよう伝えていた、とのこと。サウジアラビアは親米国なのですけど、トルコだけでなくアメリカが絡む話になっています。
(著名ジャーナリスト、謎の失踪、サウジが暗殺か、トルコと対立  WEDGE Infinity(ウェッジ) 2018年10月7日 佐々木伸 (星槎大学大学院教授より)


●拉致か暗殺か?政府批判を許さないサウジアラビア

 記者が記事を書いてたワシントン・ポストは、サウジが派遣した15人の暗殺チームによって「同氏はすでに殺害された」とトルコ側が見ていることを報じました。記者が一部のサウジ支配層と関係が深いことから「特に危険」と判断されたとの見方も伝えています。

 前国王が亡くなっていて以降、サウジアラビアでは王族を含めて粛清の嵐が吹き荒れています。権力を握っているムハンマド皇太子は特に強引。2017年11月にレバノンのハリリ首相をサウジに呼び付けて約2週間監禁。また同じ頃、王族ら皇太子の反対勢力約200人を拘束し、財産を没収。皇太子自身、3年間で1500人を拘束したことを明らかにしているとのこと。彼ならやりかねません。

 この時点で、ベイルートの消息筋は「すでにサウジ本国に拉致されたのではないか。どうであれ、ムハンマド皇太子の指令であるのは間違いない」と指摘していたともいいます。


●ムハンマド皇太子が記者の暗殺命令?アメリカ情報機関が傍受

 その後の記事では、さらにムハンマド皇太子の命令であること、すでに殺害されていることが、より確からしい情報として載っていました。そして、これにやはりアメリカが関わってきています。Wedgeの続報によると、サウジアラビアを牛耳るムハンマド皇太子(33)が命じた作戦の一環だったことが、米情報機関の傍受で濃厚になった、というのです。

 ジャーナリストはすでに殺害されたと見られており、トルコ政府系紙はサウジ暗殺チーム15人の顔写真まで掲載しているとのこと。うち1人はサウジ治安機関の検視の専門家で、サウジ空軍の中尉もいたとしています。「骨のこぎり」を携行していたと見られること、事件のあった2日は領事館の職員に臨時休暇が出されていたことなども報じられていました。

 また、米ワシントン・ポストは、サウジのムハンマド皇太子がジャマル・カショギさんを拘束するよう指示していたと特ダネで報じていました。これも、米情報機関がサウジ当局者の会話を傍受したことから明らかになったとされています。太子に近い王室顧問からたびたび電話を受け、帰国すれば要職に就けると誘われており、拘束する計画だったようです。
(サウジ皇太子の“命令”を米が傍受、ジャーナリスト失踪の全貌 2018年10月12日 09時00分 Wedgeより)


●サウジとトルコ・アメリカの関係で重要なイランの存在

 記事によると、米国には、米市民であるなしにかかわらず、拉致や殺害などの危険がある人間に迫っていることを情報機関が探知した場合には、当該の人物に警告しなければならないという法律があり、カショギさんのケースではその義務を怠ったのではないか、との見方も出ているとのこと。このアメリカとの関係は非常に気になるところです。

 最初の記事で引用しなかった部分では、サウジアラビアとトルコの関係が事件以前から悪かったことが紹介されていました。サウジにとって断交中のイランとトルコの関係が深いというのが理由の一つ。そして、このイランはアメリカとの関係でもポイントとなるところ。

 オバマ政権でアメリカはイランと急速に接近した一方で、トランプ大統領がこの関係を崩そうとしていました。トランプ政権はイラン孤立化と中東和平推進のため、サウジを米政策の支柱と位置付けてきたそうです。拉致の危険性を知っていながらアメリカが放置したのは、こうしたトランプ政権の方針も影響したのでは?とも疑ってしまいます。

 ということで、トランプ大統領としてはサウジアラビアに味方したいだろうと思ったのですけど、意外なことに「深刻な状況だ」とコメント。ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)、クシュナー上級顧問が相次いでムハンマド皇太子に電話し、情報の開示を求めたといいます。

 超党派の上院議員22人がカショギ氏の失踪に関与した者に制裁を加えるよう大統領に求める書簡を送っていますけど、これはさらに過激。書簡には、制裁の対象者として「サウジ政府のトップを含め」と記されており、暗にムハンマド皇太子も容赦してはならないことを示唆していました。

 サウジアラビアでは「砂漠のダボス会議」と銘打った投資会議が開催される予定があり、アメリカはムニューシン財務長官が財界の大物たちを引き連れてサウジに大挙押し掛ける予定もあったといいます。トランプ政権なのでどうなるかわかりませんが、これらに影響がある可能性も記事では指摘されていました。

 私はもちろん暗殺や拉致を支持しませんし、日本でも多くなってきた政府批判を許さない姿勢も支持しません。サウジアラビアはこの機会に痛い目に遭った方が良いのですけど…。


●生きたまま指を切断して頭部切断? 容疑者の1人はすでに消された?

2018/10/20:比較にこだわったっても仕方ないんですけど、「北朝鮮より怖い」という感想を漏らす人も出ている今回の暗殺事件とその後のサウジの対応。トルコ当局者の一人は殺害の様子について「(凄惨な暴行・殺害場面を描いた米映画)パルプ・フィクションのようだった」と語ったそうです。

 殺害の様子を録音した音声データを聴いたトルコ当局者の話によると、複数の指を切断し頭部を切り落とし。これを生きたまま行った可能性もあるとのこと。別記事では、その場にいた人に音楽を聞くように…と言っていたとされており、やはり生きたまま切断したと考えるのが自然ですね。

 また、「外でやってくれ。面倒なことになる」と言う仲間であるはずのオタイビ総領事に対しても、「母国に帰って生きていたければ、黙れ!」と脅したといいます。サウジアラビアでは、政府に逆らうと殺されることが多いのでしょうか?
(サウジ記者、おぞましい最期の詳細明らかに 「パルプ・フィクションのよう」 | 47NEWS - This kiji is 2018/10/18 11:2210/19 10:49updatedより)

 さらに行方不明になったその日にトルコを出国していた容疑者の一人 であるメシャル・サアド・アルボスタニ さんが 、サウジ首都リヤドの交通事故で死亡した…という不穏なニュースも入ってきています。これを額面通りに受け止める人はおらず、「サウジアラビアによって消された」と考えている人しかいませんでした。口封じとか、罪の押し付け的なところを想像されいるんだと思われます。
(サウジ記者失踪の容疑者、交通事故で死亡 - Sputnik 日本 2018年10月18日 20:38より)


●砂漠のダボス会議参加見送り広まる中、トランプ政権と孫社長は…?

 共同通信によると、ニューヨーク・タイムズは、特務部隊の一部がサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とつながりがあったと報じていました。3人は皇太子の警護部隊とつながりがあり、1人は、皇太子の今年の訪米に同行していたのも確認されています。皇太子本人は否定しているものの、このような重要な行動が皇太子の了解なしに行われたとは考えられないでしょう。

 また、最初のときにも書いたように、私が気になるのはアメリカの対応。先のSputnikは、アメリカのトランプ米大統領が、今回の事件に毅然とした反応を行っていないとして批判を受けている、とも書いていました。このSputnikは、ロシア政府系メディアですので、最近のトランプ大統領とロシアとの関係悪化も思わせるものとしても興味深いです。

 それから、最初にも書いたサルマン皇太子が企画していた砂漠のダボス会議「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ」について。いろいろ記事を読んでみると、メディアスポンサーだったアメリカのニューヨーク・タイムズやCNN、ブルームバーグ、ロサンゼルス・タイムズなどが参加をとりやめ。HPなど企業からの参加も中止になった他、IMF=国際通貨基金の理事も参加見送り。英ヴァージングループでは、投資計画を中断しました。

 そんな中でアメリカのムニューシン財務長官は依然として、出席の意向を示していて、非常にトランプ政権らしかったのですけど、彼もついに不参加に。我が国では、ソフトバンクの孫正義社長が未だに態度を表明していないらしくて、これも政治家と結びついて金儲けする非常に彼らしい話です。

 ただ、もうこのような状況で会議の開催は無理なのでは?という見方もあります。開催したとしてもしなかったとしても、サルマン皇太子の面目は丸つぶれ。また、そもそも皇太子の交代もあるのではないか?という見方が出ています。私はさらに進ませて、サルマン皇太子勢力の一掃くらいやるべきじゃないかと思いますけど…。


●積極的な軍事介入、強引な外交、人権問題、粛清…失政続きのサルマン皇太子

2018/10/21:サルマン皇太子は、2015年からのイエメンへの軍事介入を主導したと言われています。さらにカタールと断交したほか、人権問題でカナダとも関係が悪化。2017年11月には同皇太子が主導して国内の有力王子や富豪らを汚職容疑一斉摘発しました。そして、今回の政府批判を行うジャーナリストの暗殺事件です。

 産経新聞は、イエメンへの軍事介入では、多額の戦費が財政を圧迫しているなどとして、これらをサルマン皇太子の悪い政治だといった感じで批判的に報じていました。
(サウジ「皇太子無関係」幕引き図るも…王位継承に影響必至 産経ニュース / 2018年10月20日 22時19分より)

 ただ、積極的な軍事介入、軍事予算の増大、他国に配慮しない強引な外交、人権批判嫌い、政府批判者を許さない態度…どれをとっても保守派・右派の価値観そのまま。産経新聞は、自分たちの主張を客観的に見た方が良いでしょう。


●経済封鎖で要求飲ませるはずが、逆に敵国を喜ばせてしまった理由

2021/01/15:ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の失政の関係で、カタールの勝利に終わった湾岸紛争、サウジなど4カ国との和解の背景  WEDGE Infinity(ウェッジ)(2021年1月7日)という記事を。前回の追記で出てきた「カタールと断交」に絡むもの。サウジアラビアなどアラブ4カ国とペルシャ湾の小国カタールが2021年1月5日、3年半に及ぶ断交に終止符を打ち、和解に合意しています。

 佐々木伸 ・星槎大学大学院教授は、これを実質的にカタールの完勝であり、サウジアラビアの一方的な譲歩ではないかと見ていました。理由は、断交までしてカタールに突き付けた要求を何一つ取れなかったためです。それどころか経済封鎖の結果、サウジアラビアとの敵国との関係をカタールを深めてしまいどちらの国にもメリットが出る…という逆効果ともなっています。経済的に締め付ければうまくいく…という主張を好む政治家は多いですので、この失敗には、日本など、他の国の政治家も学ぶところがありそうですね。

<サウジなど4カ国はカタールが中東のイスラム過激派を支援し、イランとの関係を維持していることなどを理由に経済封鎖に踏み切り、その後イスラム原理主義組織ムスリム同胞団への支援停止、イランとの関係断絶、(引用者注:サウジアラビアに批判的な報道をする)カタールに本拠を置くメディア「アルジャジーラ」の閉鎖など13項目を要求した。4カ国はサウジの他、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、エジプトである>
<食料などを外国に全面依存するカタールはサウジやUAEに陸路と空路を完全封鎖されて、たちまち困窮した。だが、ここで手を差し延べたのがイランであり、サウジとの関係が悪化していたトルコのエルドアン大統領だった。イランとトルコはカタールに食料品や日用品を急きょ送りこみ、エルドアン大統領は国土防衛のためとして、軍隊まで派遣した。カタールをイランから引き離そうとしたサウジの思惑は大きく外れ、カタールとイランの関係は逆に強化される結果になった>
<しかも、空域が封鎖されたことが思わぬ副産物を生み出した。カタールはペルシャ湾に飛び出したところに位置しているため、航空機がその領空を出入りするには、サウジやUAE領空を通過せざるを得ない。だが、封鎖によってそれができなくなった。そこでカタールが頼ったのがイランだった。イランの領空を利用して航空機の離発着を可能にしたのだ。カタールはこの領空使用料として年間1億ドルをイラン払っているとされる。(中略)米国の経済制裁で収入が激減したイランにとっても、黙って1億ドルが入るのは悪くはない取引だし、何よりも敵対するペルシャ湾岸君主国の1つと関係を強化できるのは大きなプラスだった>


●サウジアラビア皇太子、カナダにも暗殺部隊派遣か?計画は失敗

2021/02/23:暗殺関係で、別の話もあったみたいですね。サウジ皇太子、カナダに暗殺部隊派遣か 元高官が米裁判所に訴え - BBCニュースという記事が、2020年8月7日に出ていました。中国が他国にまで暗殺部隊を派遣…となると大騒ぎでしょうが、サウジアラビアだとそう大きな話題になりませんね。そういえば、日本でもタイの亡命者が襲われる事件がありましたが、全然話題になりませんでした。

 さて、サウジの件です。記事によると、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子に、サウジの元情報機関職員を殺害する目的でカナダに暗殺部隊を送り込んだ疑いがかかっていると、アメリカの裁判所に提出された書類で明らかになりました。狙われたのは、西側諸国の情報機関との重要な橋渡し役をしていて、3年前にカナダに亡命した元サウジ政府職員サアド・アル・ジャブリさんという人です。

 裁判書類によると、この計画は、2018年に政権を批判していたジャーナリスト、ジャマル・カショジさんが殺害された事件の直後に実行に移されています。ただ、カショジさんの件と違って、こちらは成功していません。暗殺部隊がカナダのピアソン国際空港から入国しようとした際、入国管理局が不審に思ったことから、計画は失敗に終わったとされていました。


●原油価格下落、高騰狙うサウジアラビアはOPECプラス構想まで検討

2019/03/13:2019年1月のOPEC加盟14カ国の原油生産量は前月比80万バレル減の日量3081万バレルと大幅下落。これは減産合意の影響。減産対象11カ国の原油生産量の遵守率は86%で、特にサウジアラビアは、減産合意を下回る水準で減産を行っています。

 サウジアラビアは2月に加え3月もさらに減産する姿勢を示すとともに、米国の原油在庫を減少させるために、同国への原油輸出量を前年の半分以下である日量44万バレルにまで減少させていました。

 加えてアメリカのベネズエラ制裁が発動。シェール革命により米国ではガソリンなどを生産する軽油は潤沢となったが、ディーゼルなどの生産に適した硫黄分の多い原油は依然として輸入に頼っていました。メキシコ湾岸に立地する製油所のディーゼル生産にとってベネズエラ産原油は最適だったのにこれを停止。また、ベネズエラにとっては、原油輸出収入の75%を占める米国向けが停止ということで影響が大きいと考えられました。

 注目されるのは原油価格。制裁により、硫黄分の多い油の価格が上昇したそうです。さらに、「米国での原油供給不足で原油価格が急上昇する」との予想もあったものの、これが実際には上がらず。最近の原油価格は上がりづらい状態になっているようです。

 理由の一つは、アメリカの場合は前述のシェールオイル。増産の伸びに陰りは出ているものの、豊富なため切羽詰まった状況にはなりません。加えて過去6年間好調だった米国のガソリン需要の伸びが鈍化の兆しがあ、米国内の原油の供給過剰感が高まりつつあるとのこと。

 世界最大の原油輸入国である中国でも原油輸入量が減少。中国経済の減速がさらに進む可能性も高いため、ここは期待できないどころか、さらに下がる可能性を感じさせます。

 サウジアラビアは前述の通り、約束以上の減産を行った上で、さらなる減産を行っていました。その他、反発が強く実現可能性の低い、ロシアの率いる非加盟10カ国を加えたOPECプラス構想をも検討。なんとかして原油価格を回復しようと躍起になっています。ただ、前述の通り、原油価格は上がらず、サウジアラビアの憂鬱はまだまだ続きそうな感じでした。
(米国のベネズエラ制裁でも上がらない原油価格 代替調達先の確保で、価格急上昇の期待は沈静化 2019.02.15(金) 藤 和彦より)


●原油価格下落の理由 サウジアラビア激怒でOPEC崩壊、シェールオイルの影響

2014/12/17:最近の急激な原油価格下落の理由について書かれたOPEC崩壊、原油価格はまだ下がる:日経ビジネスオンライン(小笠原 啓 2014年12月17日)という記事。

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・上席エコノミストによる説明の中で、最初に出てくるシェールオイルの部分は、非常にわかりやすいです。"シェールオイルの増産などで供給が増えた一方で、世界経済の減速により原油需要は伸び悩んでいる"ため、下落傾向が続くとしていました。

野神「最大の要因は、米国におけるシェールオイルの増産です。2014年は前年比で日量100万バレル増えて、450万バレルに達する見込みです。それに対し、全世界の原油需要は今年、68万バレルしか増えません。シェールだけで世界の需要増を全てまかない、「お釣り」がくるような状況なのです。
 加えて、イラクやリビアといった国が増産余力を付けてきました。イラクではイスラム国の勢力伸長が一段落し、南部の油田地帯には影響しないとの見方が強まっています。リビアでも治安が好転したことで、原油輸出が回復しています」

 一方、意外なのは、石油輸出国機構(OPEC)の事情に関する部分です。シェールオイルの増産があっても、OPECが減産すれば本来、供給過多の状況をある程度改善することが可能でした。しかし、実際にはしませんでした。その理由がおもしろかったのです。

野神「サウジアラビアを中心とする湾岸諸国が、需給の調整役を放棄した格好です。(中略)これまでも、真面目に減産してきたのはサウジやクウェートぐらいで、他のOPEC加盟国はそれに「ただ乗り」していました。そんな状況に、サウジは我慢できなかったのではないでしょうか。仮に減産しても、他の国が生産量を維持したら痛みを負うのはサウジだけです」

 まだコントロール可能な範囲だったにも関わらず、敢えてサウジアラビアはその役割を放棄したという見方をしていました。野神隆之・上席エコノミストは、「サウジは(中略)他の産油国に戦いを挑んでいるように思えます」「(OPECは)事実上、崩壊したと言っていいでしょう」ともおっしゃっていました。

 さらに"OPEC総会の場で改めて減産を議論する前に収入を確保しようと、増産に走る国が出てくる"ため、よりいっそう増産されるおそれすらあるようです。

 野神・上席エコノミストは言及していなかったものの、こうなると、原油価格はまだまだ下落するという見通しだ、とも言えそうです。

 なお、ベネズエラやナイジェリア、イラク、リビアなどは、原油価格の下落が国家運営に影響を及ぼすという話もありました。国の収入が減って民衆の不満を抑える資金を失ったり、石油設備などの治安維持コストに響くといった理由です。

 これらの国はだからこそ収益確保に走ることが予想されるわけですが、失敗した場合には大きな動きに繋がるかもしれません。


●原油輸入国なのに原油価格下落を喜ばない不思議な国が世界にはある

 ここまでの話は原油輸出国の不安でした。原油輸入国であれば途端に話が変わってきます。原油の価格の下落はむしろ喜ぶべきことのはずです。ところが、この下落を喜んでいない不思議な国があるそうです。それは何と我が国、日本だそうな。本当かな?と思いますけどね。
原油安で困り顔という異常事態 必要性高まる日銀の“逃げ道”|金融市場異論百出|ダイヤモンド・オンライン  加藤 出 2014年12月16日

 日銀幹部はガソリン価格の下落を見て「困った、困った」と言っている。「2年程度を念頭にできるだけ早期にインフレ率を2%にする」と昨年春に宣言してしまったからだ。10月31日には、円安誘導を事実上強化するために追加の金融緩和策を決定した。

 "ニュージーランドをはじめ、幾つかのインフレ目標採用国はエネルギー価格など外生要因でインフレ率が目標から逸脱しても、中央銀行の責任を問わないとしている"そうです。これは理に適っていると思われます。

 ところが、"岩田規久男副総裁は、エネルギー価格が下落しても、それによって浮いた購買力が他の品目の価格を押し上げるので全体のインフレ率は低下しないと、以前は強く主張していた"そうです。日銀にはニュージーランドのようなルールがありません。

 アメリカは原油価格下落を歓迎していますが、日本は"米国よりもエネルギー輸入依存度がはるかに高"いため、本来はアメリカ以上に喜ぶべきことのはずです。しかし、日銀が"交易条件の改善を円安で相殺する政策"を取っているという主張です。

 9月に日本経済団体連合会・経済同友会と並ぶ「三大経済団体」の一つである"日本商工会議所が行ったアンケートでは、120円以上の円安を望む企業は約3100社中、わずか1.3%だった"という市場との乖離も見られます。日銀が本当に原油安を嫌がっているかどうかはさておき、不思議な方向性に進んでいるとは感じます。


●若者たちに人気がある指導者をサウジアラビアが処刑で大混乱

2016/1/9:2016年は新年早々に、サウジアラビアによる宗教指導者の処刑という重大ニュースがありました。以下のニュースの後、サウジアラビアがイランと断交。さらにバーレーンとスーダンなどもイランとの断交を発表し、明らかに混乱が起きています。
イラン、サウジの処刑に猛反発 群衆が大使館襲撃  :日本経済新聞 2016/1/3 19:57 (2016/1/3 21:23更新)

 【ドバイ=久門武史】イスラム教スンニ派の大国サウジアラビアは2日、国内でのテロに関与したなどとして死刑判決を受けた47人を処刑したと発表した。サウジ王室に批判的だったイスラム教シーア派の有力な宗教指導者ニムル師が含まれており、シーア派国家のイランは激しく反発。抗議する群衆が首都テヘランのサウジ大使館を襲撃するなど、混乱が広がった。

 シリア内戦やイエメン情勢などを巡って鋭く対立する両国間の関係が一段と悪化するのは避けられない。中東でスンニ、シーア両派の対立を背景とする緊張が高まる恐れもある。

 死刑が執行されたニムル師については、ウォール・ストリート・ジャーナルが詳しかったです。
サウジで処刑されたニムル師はどんな人物か - WSJ  By Ahmed Al Omran 2016 年 1 月 4 日 09:24 JST

 二ムル師はイスラム教シーア派教徒で、サウジ東部のアワミヤ(Awwamiya)という小さな町で育った。イランで宗教教育を受けたあと、1990年代初頭にサウジに戻った。同師は、サウジの支配者層を批判する激烈な説教で知られ、2003年から08年までの間、何度か投獄された。内部告発サイト、ウィキリークスによって公開された当時の米国公電は、同師について「二線級の政治活動家」と表現し、「地元で人気を博し、とりわけ若者たちに人気がある」と評していた。後にニムル師は、中東民主化運動「アラブの春」に触発されたシーア派の抗議行動の背後にいる指導的な人物として登場した。この抗議行動は2011年に始まり、サウジを揺るがした。

●親米国サウジアラビアの変化、アメリカが反対していたのに処刑強行

 最初このニュースの見出しを見てこれが絶対やっちゃいかんやつだ…と憂鬱な気持ちでクリックしましたが、同時に気になったのはアメリカの反応です。もともとサウジアラビアはイスラム諸国で最大の親米国でした。今回の処刑はアメリカにとって明らかに悪い話ではあるものの、サウジアラビアに配慮するかもしれないとも思ったためでした。

 ただ、報道を見ていると、もともとアメリカは処刑しないようにと働きかけていたのを無視された形だそうです。また、サウジアラビアの方も、アメリカが嫌な顔をするのを承知の上というか、むしろわざとやった感じですね。
米国の「イランびいき」に苛立つサウジ:日経ビジネスオンライン 菅原 出 2016年1月8日

 シーア派の若者たちの間で絶大な支持を集めていたとされるニムル師を処刑すれば、イランをはじめシーア派社会で激しい反発を招くことは事前に十分に予想されていた。米政府もサウジ政府に対して同師の処刑に踏み切らないよう自制を散々呼びかけていたので、サウジアラビアがイランの反発や同国とのさらなる関係悪化を承知の上で今回の措置をとったことは間違いない。

●原油安の予想外のデメリット サウジアラビアが大混乱したのには理由があった!

 日中関係・日韓関係もそうであるように、外交問題というのはたいていの場合、国内の問題が密接に関わっています。サウジアラビアも国内問題で追い込まれたという解説でした。これは原油安のマイナス面とも言えます。原油価格下落の予想外のデメリットでした。
 「サウジアラビアが現在の政策を継続した場合、原油安により、歳出維持に必要な金融資産を5年以内に使い果たす恐れがある」と国際通貨基金(IMF)が警鐘を鳴らしたのは昨年10月のこと。長期に及ぶ原油価格の低迷で2015年のサウジアラビアの財政赤字は国内総生産(GDP)の20%相当に達し、当局は外貨準備の取り崩しや8年ぶりの国債発行を余儀なくされた。

 これによって、サウジアラビアは目下大幅な歳出削減を進めています。ただ、当然、国民には不満が溜まります。
 サウジアラビアにおいて、社会不安の抑制と治安維持のために、政府の補助金は不可欠の要素である。いわゆる「アラブの春」が吹き荒れた2011年に、サウジ政府は新たな社会保障や賃上げ、そして公共住宅に1000億ドルを上回る資金を投入する「バラマキ」を行うことで、国民の不満を抑え込んだ。(中略)

 体制維持に最も重要なスンニ派の保守勢力の不満を和らげるために、イランとの対立を煽ることは、少なくとも短期的には現サウジ政府の利益に適っている。国内政治の文脈で今回のサウジ政府の行動を見ると、増大する国内の不満をサルマン体制に向かわせるのではなく、外に向けさせる狙いがあった、という推測が成り立つであろう。

●特定の国に入れ込むのは危険?むしろ極端な親米化が仇となった可能性

 記事では、国内事情として、サルマン国王への不満が王族内から出るのを懸念したという話もしていました。サルマン国王は80歳という高齢ですが、2015年に即位したばかり。

 イギリスの皇位継承順位、最後のひとりはドイツ人 不人気なチャールズ皇太子を王位につかせたくないイギリス国民で昔ちょっと触れたように、人気があった当時の国王が亡くなることで混乱するおそれは以前から言われていました。しかも、今の状況は明らかに以前より難しくなっています。また、アメリカとの関係では、アメリカなどがイランとの核合意をするなど、イランに近づいていることがサウジアラビアにとっては許せません。

 以前書いた中国人民元が日本円を抜く主要通貨に 基軸通貨ドル崩壊も現実味は、タイトル変更前は「基軸通貨ドル崩壊に現実味 サウジアラビアの反米化と中国人民元」というものでした。サウジアラビアのアメリカ離れは近年の一貫した傾向です。

 アメリカのサウジアラビアとイランに対する関係、サウジアラビアとロシアやシリアに対する関係でも言えますが、一方との関係を改善するともう一方の関係が悪くなるというのは難しいですね。

 じゃあ、今回のような選択肢を取らずに、アメリカがイランやロシアと激しく対立を続けていたら平和か?と言うと、そうではないでしょう。そもそもアメリカのロシアとの関係改善は、ISISの問題がにっちもさっちも行かなくなったためです。

 アメリカは対立関係にある一方に肩入れして仲良くするということをよくやってきました。サウジアラビアを強烈な親米国としたことも、もちろんメリットがあってのことただったのでしょう。

 しかし、ここに来てデメリットが大きくなってきたようです。考えてみると、対立関係を煽れば煽るほど、関係を変えようとしたときの拒否反応は強くなって当然ですからね。このことは日本の外交でも言えるでしょう。あまりに偏って特定の国と仲良くしたり仲悪くしたりするのは、短期的には良くても長期的には得策ではないかもしれません。


【本文中でリンクした投稿】
  ■イギリスの皇位継承順位、最後のひとりはドイツ人 不人気なチャールズ皇太子を王位につかせたくないイギリス国民
  ■中国人民元が日本円を抜く主要通貨に 基軸通貨ドル崩壊も現実味

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  ■日本のメタンハイドレート埋蔵量では、天然ガス輸出国になれない
  ■似てる?日本とイスラエルの共通点、ベンアリ駐日大使が指摘 日本人とユダヤ人は共通の先祖を持つ!日ユ同祖論
  ■もう既に日本は資源大国 メタンハイドレートやレアアース以前の問題
  ■サウジアラビアなど中東でも日本アニメは人気?日本人も知らないアニメがなぜか高い知名度
  ■地元のトルコ人も知らない世界で7番目に効く温泉、アララト山の近く アララト山はノアの箱舟伝説で有名
  ■海外・世界・国際についての投稿まとめ

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