健全なる精神は健全なる身体に宿る?部活でいじめ・体罰横行の現実で使った
スポーツやめたいけど、やめられない 苦しむ子どもたち:朝日新聞デジタル(中小路徹、後藤太輔 2014年9月3日13時36分)という記事。
これは向こうで書いたように、怪我した女子中学生に対して怪我したこと自体を罵倒したり、ミスした子を「あなたのミスで全国大会に行けなかった」と責めたり、子どもを平手打ちや足蹴にしたりした異常なコーチの話でした。
ただ、この記事ではもう一つ異常だと感じる話がありました。母親も深みにハマっており、これだけのことがありながら"やめることを積極的に勧められ"ませんでした。
その理由の一つは、"自分が学生時代に一つのスポーツを全うした経験"があったこと。これは体罰経験者の多くが体罰経験者になるという話を思い出す、前回のテーマに関連する話です。
そして、もう一つ一番興味深かった理由が今回に関連する話。「もしかしたら日本代表も、という期待が捨てられなかった」という点が気になりました。
早大教育・総合科学学術院の堀正士教授は、「個性を重んじ、一つの才能を伸ばしてあげたいという一心で親がスポーツを勧め、子どもが従うことが多いが、『スポーツがダメなら自分には何もない』『親に認められるには、スポーツを続けないといけない』と子どもに思わせる両刃(もろは)の刃(やいば)でもある」と言っていました。
「親 期待」というキーワードで検索をかけてみると、たくさん出てくるのは親の期待で苦しんでいます…という個人の相談です。ただ、個人の相談ですので、一般論としては語れません。
比較的汎用性がありそうなのは、
親の期待について - カウンセリング 大阪・東大阪・奈良の心理オフィスステラ|面談・電話のような、専門サイトでしょうか? こちらでは以下のように書いていました。
親は子供に期待をします。
当然と言えば当然でしょう。
でも、この期待が親のエゴに基づくものでありますと、その子供が親の期待を背負い込み、その影響から生き辛さを抱えてしまいます。
エゴに基づく親の期待。それは、親のために何かを満たす期待です。
子供が何かをすること、達成することから親は満足を得るのです。これは、子供の側に立って考えると、親の期待を満たすために行動している、頑張っているとなってしまいます。
もっと言うと、親の期待を満たすために生きていることにつながるのです。
(中略)
親の期待・価値を押し付けられた子供は、生きるため、怒られないため、悲しませないためと思い自己を抑圧して親に合わせます。その代償として無感情、思考の減退、自己信頼感の欠如等様々な生き辛さを背負うのです。
一方で、親が期待することが良いのだ!という人もいるだろうと思って、こちらも検索。で、出るには出たのですが、教育会では非常に評判の悪い和田秀樹さんが1,2番目あたりで出てきてしまいました。まだ調べ中の方なんですが、正直、あんまり紹介したくないなぁ…。
親の期待が子どもを伸ばす!?|ママノート 小学1年生 2012年8月15日の記事
今回は、親の期待と子どもの成長に関して
『心の強い男の子の育て方
』(学研パブリッシング刊)の著者である
和田秀樹先生に伺います。
これからの時代を生き抜いていく心の強さを持った
男の子に育てるためにはどうしたらいいでしょうか。
和田 「お母さん方が、男の子に対してそのような期待をかけるのは、
ごく自然なことでしょう。
一方で、そういった親の強い期待がプレッシャーとなって、
子どもによくない影響を及ぼすのではないかと
心配される人もいらっしゃるかもしれません。(中略)
しかし、これは心理学の数々の研究から
明らかにされていることなのですが、
実際のところ、子どもの心は大人が考えるほど
弱く傷つきやすいものではないのです。
むしろ、プレッシャーなどのストレスがある程度かかることで
成長していくと言えるのです。
適度なストレスをバネにして、
それに耐えられるレベルに心がたくましくなっていくのが
健全な成長なのです。
ストレスがよくないプレッシャーとなるのは、
それが強すぎて子どもの今現在の能力をはるかに超えている場合、
もしくは、弱すぎて成長に何の役にも立たない場合です。
大人が一方的に『これはストレス要因だ』と決めつけて、
子どもの経験の場を奪うのではなくて、
積極的に挑戦させていきたいものです」
内容は一応そんなに極端なものではありませんが、「いきなり実現不可能な高い目標を期待して 強いプレッシャーをかければよくないストレスになります」と言っていますので、「プロになってほしい」みたいなのはダメじゃないですかね、これ?
というか、「目標」と「親の期待」ってのは別の話ですけどね。「目標」と「夢」でも異なります。私も厳密に分けていないときがあるのであれですが、ここらへんごっちゃになっていること自体が悪い方に作用しそうです。
親の期待なしでプロになった例としては、
将棋の羽生善治、親の期待なし・子供の頃の目標なしで上達の話があります。同様の例はないか?あまりないのではないか?と探すと、
親が子供に期待をかけるのは100%間違い | Gボイス(北村晴男)が出てきました。
北村晴男弁護士はワタミ擁護で過労自殺を軽視するような発言をするなど、主張としては嫌な感じのことを言う方ですが、今回は関係ありません。お子さんの北村晃一さんが、プロゴルファーになったということで、今日のテーマにはピタリと合っています。
北村弁護士によると、ゴルフの成績は良かったものの、サッカーをやったり、野球をやったり…。内心ゴルフをやって欲しいとは思っていたようですが、特に言わなかったようです。
そして、大学入学前に肩を壊して野球を断念。北村弁護士が"何か言ったわけではなく自ら決断して"、"3年生のはじめくらいに進路を考えて相当悩んだ末に、ゴルフをやりたいと言い出したん"だそうです。
もし、子供がゴルフに取り組んでいる親御さんがいらっしゃれば、“プロになって欲しい”などと親が望んではいけないと思います。プロになれる人はやっぱり1000人に1人。たまたまそういう才能に恵まれていればラッキーであって、そうじゃなければ本人が一番つらい。親の期待は子に伝わりますから。環境を整えてあげるのは親の責任ですが、そこから先どうなるかに親の期待を込めるのは100%間違いです。
そもそもそういう環境の中でゴルフをできること自体が、その子にとって素晴らしいこと。試合に出れば、勝つためにどうしたらいいかを自分で考えて、準備して、努力して、苦しい思いもして。でもそれは自分が勝ちたいからやる。仮に結果が伴わなくてもそれは素晴らしいことです。
仕事でもなんでも誰だって目の前の課題を解決するために努力をしなければいけない。それを好きなことで体験できるのだから。スコアが悪いときに親は絶対に子供を叱ってはいけない。そんな時に叩かれたり怒鳴られたりしたら、その子はスコアをごまかす最悪のゴルファーになってしまう。
晃一は22歳から本格的にゴルフを始めてたまたまプロになれましたけど、ダメならおのずと諦めたでしょう。自分に合ったもので生きていくしかないんですから。野球でもゴルフでも何をやるにしてもやるのは本人なので。環境を用意したら、親は一歩引いてあげないと子供は成長しないです。そういう中でもっとジュニアからでもゴルフを楽しんでくれる人が増えればいいですね。
過労自殺擁護はゲスですけど、ここでは良いことおっしゃっていますわ。
話の流れ的に入れ損ねてしまったのですが、親の期待に関する論文も見つけました。個人の体験談じゃないので、こういうのが一番良かったですね。
(PDF)"親からの期待が大学生の自尊感情に与える影響" 春日秀朗・宇都宮博(立命館大学大学院文学研究科・立命館大学文学部)というものです。
論文では"子どもにとって親の期待は,時には励ましとなり,発達を援助する"というものもありますが、様々な論文から引用された内容は、基本的には悪い方の影響について言及しているものが多いです。
長いのでそれっぽいところを当てずっぽうで持ってきますが、この論文で行われた調査の結論らしきところは以下の部分です。
「人間性期待」が「励み」,「教育・就職期待」が「重荷」に正の影響を与えていた。「人間性期待」は一般的な社会的規範に則ったもので,子どもにとって受容しやすく,望ましいと考えられる。反対に「教育・就職期待」はよい成績を残す,よい会社に入るなど,実現することが困難であり,またそのための努力が必要であるために「重荷」と感じると考えられる。
ここで言う「人間性期待」「教育・就職期待」というのは、それぞれ以下のようなものです。
「人間性期待」……「人に優しくしてほしい」など
「教育・就職期待」……「良い成績を取ってほしい」「いい企業に就職してほしい」など
今回のテーマは「教育・就職期待」の方ですね。結局、「励み」と感じられる子であればプラスに作用するため子供次第ということにはなるのですが、どちらかと言うと「教育・就職期待」はやはりマイナスに作用することの方が多いようです。
なお、論文の最初の部分では、"期待がまったく無いと「張り合い」や「見守り」といったものをなくし,発達に悪影響を与える可能性もある"といったことにも触れていました。私も親が期待しない…という態度を露骨に見せることも良くないと考えています。無関心ですとか、子供の能力を見限っているだとか…です。
とある考え方によると、「褒める」ということすら相手をコントロールしようとすることであり良くないそうです。これはこれで極端だとは思いますが、期待してその達成を望むことで結果的に子供に期待を押し付けるのではなく、子供がやろうとしていること、やっていることを「認める」という態度が良いのでは?と私は考えています。
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