2014/12/17:
●WHO勧告の自殺事例報道からするとマスコミも一般人もヤバそう
●芸能人の自殺報道より後追いが増える自殺者の職業とは?
●芸能人よりも政治家などの方がずっとが多い理由は何か?
●自殺者が出たときはWHO勧告「自殺を予防する自殺事例報道」を参考に
●WHO勧告の自殺事例報道からするとマスコミも一般人もヤバそう
2014/12/17:STAP細胞問題の笹井芳樹理研CDB副センター長(当時)が自殺をはかって亡くなったときに、自殺報道に関するWHO勧告を知りました。
(関連:
WHO勧告「自殺を予防する自殺事例報道のあり方」の自殺予防対策、
著名人などの自殺報道の影響で増加は本当? ウェルテル効果の研究)
<WHO勧告の「すべきではないこと」>
・写真や遺書を公開しない
・具体的で詳細な自殺手段を報告しない
・単純化した理由付けをしない
・自殺を美化したり、扇情的に扱わない
・宗教的な固定観念や文化的固定観点を用いない
・悪人探しをしない
このWHO勧告を知ったせいで、私は笹井芳樹副センター長に関するマスコミ報道には終始批判的でしたし、ネットでの言論も望ましくないものだと感じていました。過去の調査結果からすると、自殺者を増やすような状況になっているのでは?という懸念があったのです。
そういった経緯もあり、
「著名人」自殺報道がもたらす負の連鎖:日経ビジネスオンライン(上田 路子、松林 哲也 2014年10月20日)という記事に興味を持ちました。この作者も"笹井氏の死に関する報道を契機として日本全国で自殺者数が増えるのではないか"と心配していたそうです。
●芸能人の自殺報道より後追いが増える自殺者の職業 政治家などが多い理由
作者らの研究における自殺報道後の自殺の増加率を見ると、自殺報道があった場合、その直後に自殺者数は急上昇します。推定結果によると、自殺報道のあった当日には自殺者数は4.6%(95%信頼区間:2.4‐6.7)増加し、報道後10日間の平均的な増加率は5.5%(95%信頼区間:4.6‐6.5 )でした。
そして、自殺者数の増加傾向は10日ほど続くとありました。ただ、図を見ると、自殺前の増加率が0ラインの上下をさまよっているのに対し、20日程度までは0を下回らない期間が続いていました。
統計的な有意性の問題があるのかもしれませんが、激増じゃなくても20日程度まではまだ自殺者を増やしている期間が続いてるようにすら見えます。
●芸能人の自殺報道より後追いが増える自殺者の職業とは?
ところで、作者は最初の方で、<笹井氏のケースのように、著名人であっても芸能人ではない人物の自殺が報道された場合、それを契機として自殺者数が増加するということはあるのだろうか>という問いを投げかけていました。
これは、<報道の対象が芸能人でない場合、一連の報道が自殺者数の増加を引き起こすことなどないだろうと思われる方がいる?ということを想定した問いです。
結論をすぐに言ってしまいますが、作者らの1989年から2010年の間に起きた 109名の著名人の自殺に関する報道のタイミングと日別の自殺者数を分析した研究によると、芸能人だけでなく、政治家、スポーツ選手、大企業の経営者といった著名人についても、自殺についての報道があった後には自殺者数が急増しています。
109名の著名人の内訳は、芸能人(25人)、政治家(主に国会議員、7人)、地方自治体の長(13人)、芸術家(作家、映画監督など20人)、スポーツ選手(10人)、会社経営者(19人)、大学教授(15人)でした。
そして、グループごとに分析してみたところ、自殺報道後に自殺者数が一番増加したのは政治家(主に国会議員)という意外な結果になりました。芸能人が一番ではないのです。政治家の自殺が報道された後の10日間に自殺者数は平均で14.8%増加"したそうです。
さらに意外なことに、芸能人の自殺報道の影響は比較的少なく、報道後10日間の自殺者数の増加率は4.7%という結果を得ました。芸能人のうち死亡後の記事が2つ以上あった10人に分析を限っても、増加率は同じ程度でした。
政治家"次に影響が大きかったのは、同じく政治家と言って良い地方自治体の長(6.7%)、そして会社経営者(6.6%)ということで、芸能人はこれらよりさらに少ないのです。
●芸能人よりも政治家などの方がずっとが多い理由は何か?
この結果について、作者らは影響の大きさは報道量に比例するせいではないか?と考えていました。私も真っ先に思いついたところです。
読売新聞の記事数を見ても、政治家が死亡した後の平均記事数は6.71と他のグループの平均を大きく引き離しています。職業そのものの違いと言うよりは、単純に報道での扱いの大きさの影響の方が強いと思われます。
また、スキャンダルを抱える人物や犯罪の容疑がかけられている人物に人は共感しづらいため、自殺行為をまねる、といった行為も行わないと過去の研究では考えられてきたそうですが、これもこの文sネキにおいて否定されそうです。"政治家グループに含まれる7人のうち少なくとも3人が、"生前スキャンダルや種々の疑惑を抱えていたため。
作者はそれ以上突っ込んでいませんでしたが、スキャンダルがあることはむしろ自殺報道への興味を招き、報道の活発さに繋がる可能性すらありそうです。
●自殺者が出たときはWHO勧告「自殺を予防する自殺事例報道」を参考に
笹井芳樹副センター長の報道において実際に自殺者を増やしたかどうかは、結局記事では書かれていませんでした。たぶん実際に調べたわけではなかったのだと思います。
ただ、この研究の結果を素直に当てはめると、かなりの後追い自殺を誘発したおそれがあります。笹井芳樹副センター長はSTAP細胞に関する問題のまっただ中であり、その報道量は極めて多かったためです。
また、報道の内容は昔に比べて大きく改善している、と作者はしていたものの、笹井芳樹副センター長の件でのマスコミ報道はまだまだ配慮に欠けているとも感じました。WHO勧告のタブーに引っかかるものも見られています。
それから、ネットではマスコミだけではなく、誰もが情報発信者になれるということにも注意。今回の事例でもWHO勧告のタブーにモロに触れているコメントが多かったので、
WHO勧告「自殺を予防する自殺事例報道のあり方」の自殺予防対策を参考に、読者の方も今後はご注意ください。
【本文中でリンクした投稿】
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WHO勧告「自殺を予防する自殺事例報道のあり方」の自殺予防対策 ■
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