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サンタクロースはなまはげだった ドイツの黒いサンタ(ブラックサンタ)


●赤い服を着て、白い髭を生やしたサンタクロースはアメリカ製

2014/12/22:クリスマス時期を待っていた投稿。サンタクロースの贈物と純粋な贈与という幻想:日経ビジネスオンライン(中山 元 2010年12月16日)という記事で、<サンタクロースと言えば、赤い服を着て、白い髭を生やした老人ということになっている。しかしこれはアメリカのバージョンであり、フランスでは第二次大戦後になってから根付いたものだった>と書いている部分があります。

 この書き方だとアメリカにサンタクロースの起源があると勘違いしてしまいそうですが、サンタクロース自体の起源はアメリカではないと思われます。おそらく赤い服・白い髭のサンタクロースがアメリカ由来という意味でしょう。そして、このアメリカンサンタクロースについて、以下のように説明しています。

<これが根付くようになったのは、アメリカが第二次大戦後のヨーロッパの復旧のために、「マーシャル・プラン」を実行して、多額の援助を与えたころのことだった。それまではサンタクロースは社会の例外者のような存在としてその地位を認められていた。サンタクロースは中世には「喜びの司祭」や「サチュルヌ司祭」、「混乱司祭」と呼ばれていた。これは社会の秩序を乱すとともに、再確立する役割をはたす異様な神である>


●体罰肯定の「鞭打ちじいさん」…サンタクロースはなまはげだった!

 さて、おもしろいのが、上記のような特徴を「日本の東北地方のなまはげがこれに似ている」としていることですね。アメリカ製の非伝統的なサンタクロースではなく、中世に「喜びの司祭」や「サチュルヌ司祭」、「混乱司祭」と呼ばれていた、歴史的に正しい伝統的なサンタクロースが、なまはげ的であるという指摘です。

<なまはげは、「異形の来訪神」であり、「村の青年が鬼面をかぶり、蓑と腰巻をつけ、わら沓をはき、手に木の刃物をもって、2~5人が一団となって、村中の家を訪れる」。伝統的に秩序を無視して、荒々しく家に乱入し、「泣ぐ子いねぁがー、怠け嫁、怠け婿いねぁがー」と叫ぶのである。
 この中世フランスの「混乱司祭」も同じように、村の伝統的な秩序を破壊するかのように、家々に乱入する。そしてこの秩序の攪乱は、悪い子供たちの処罰という秩序の再確立で終わる。司祭は聞き分けの悪い子供たちを罰するので「鞭打ちじいさん」と呼ばれることもあったのである。「彼らは周期的に、時を定めて村を訪れては、そこでダンスをしたり、子供たちに褒美や罰を与えるのである。仮面をかぶって踊っているのが両親や親戚の者だと、子供たちに見破られないように、伝統のやりかたで工夫をこらした、みごとな変装に身をやつして」登場するのである>

 「鞭打ちじいさん」とはすごい呼び名ですね。サンタクロースは体罰爺さんだったのです! 引用部にあった「混乱司祭」が気になって検索しましたが、他には記載が見つからないですね。とりあえず、この記事の話は、フランスの社会人類学者レヴィ=ストロースさんのサンタクロース論に基いているようです。


●商業主義で大変身したサンタクロースは大人にとっても「幻想」

 体罰爺さんだったサンタクロースは、戦後の商業主義にのっかって、かつては「混乱司祭」だったサンタクロースは大変身を遂げます。「罰の側面」だけ"姿を消して、子供たちにプレゼントをする贈与の側面だけが残された"のです。レヴィ=ストロースさんは、"現代においてもなお、大人たちが子供たちにサンタクロースの正体を隠そうとする"ことについて、以下のように書いています。

<わたしたちが心の奥底では、ささやかなものとはいえ、見返りを求めない気前の良さとか、下心なしの親切などというものが存在することを信じていたい、という欲望を抱きつづけていることが、示されているのではないだろうか>

レヴィ=ストロース『サンタクロースの秘密』中沢新一訳、せりか書房、53ページ。



 「純粋な贈与への幻想」という書き方をしていますので、現実にはそんなものないというニュアンスなのかもしれません。元記事は贈与の話ですのでそれがメインですが、レヴィ=ストロースさんは"サンタクロースがなまはげのように異界からの来訪神としての性格をもっていること、実は死の国からの訪問者であることも考察している"そうです。


●日本ではフランスよりドイツの黒いサンタ(ブラックサンタ)が有名

 以上はフランスの話であり、私もサンタクロースはフランスの話がベースだと記憶していました。また、このサンタクロースは、黒いサンタやブラックサンタなどとも日本では呼ばれているという認識です。ところが、サンタクロース - Wikipedia(2014年11月27日 (木) 13:46)を見てみると、フランスの話は一切なし。そして、黒いサンタはドイツの風習だと書かれていました。

 こちらだとサンタクロースは双子だとあります。この伝承は全然記憶にありませんでしたね。なお、Wikipediaの説明でも、やはり日本のなまはげとの類似性に言及されています。かつてのサンタクロースがなまはげ的であるというのは、日本人にとってはかなり連想しやすいものなのかもしれません。

<ドイツの古い伝承では、サンタは双子で、一人は紅白の衣装を着て良い子にプレゼントを配り、もう一人は黒と茶色の衣装を着て悪い子にお仕置きをする。容姿・役割共に日本のなまはげに似ており、民俗学的にも年の瀬に来訪する年神としての役割の類似が指摘される>


●現代でも消えない体罰サンタクロース 悪い子にはおしおき!

 また、現在のドイツにおいても、"聖ニコラウスは「シャープ」と「クランプス」と呼ばれる二人の怪人を連れて街を練り歩き、良い子にはプレゼントをくれるが、悪い子にはクランプス共に命じてお仕置きをさせる"ということで、形を変えながらも罰の面は残されています。さらに他の地域でも、クリスマス以外の時期に類似の伝統が見られます。

<スペイン・イタリア・ポーランド・メキシコなどのカトリック教徒が多い国では、顕現節という祝祭があり、伝統的にはこの日(1月6日)に子供たちはプレゼントをもらう。イタリアでは良い子にはプレゼントやお菓子、悪い子には炭を配って歩く魔女ベファーナの伝承がある。ハイチではトントン・ノエル(サンタクロース)と一緒にトントン・マクート(麻袋おじさん)が回り、悪い子はトントン・マクートが袋に入れてさらってゆくとされる>
<アイスランドでは、サンタクロースに相当する妖精として13人のユールラッズがいる。「スプーンを舐めるサンタ」など13人に明確なキャラ付け、名前などの設定が決められているほか、父(グリーラ)、母(レッパルージ)、そしてペットのユール・キャット(クリスマス猫)などもいる。エーシャ山に五千年住んでおり、12月12日から毎日ひとりずつおりてきて、良い子にはお菓子、悪い子には生のジャガイモを靴のなかにいれていく。24日に勢揃いし、25日からひとりずつ山に戻る、という>

 「悪い子には生のジャガイモ」に笑いました。おもちゃなどを期待していて、「生のジャガイモ」だとがっくりきしゃいます。とはいえ、ジャガイモはれっきとした食べ物なのですから、茹でれば食べられますよね? 意外に悪くないプレゼントかもしれません。


●黒いサンタクロースにドイツ説とフランス説…どちらがデマなの?

 以上ですが、Wikipediaでフランスの例が見られないことについて補足。これは、最初の記事とWikipediaのどちらが間違い…ということはないと思います。

 というのも、最後に引用したように、フランス・ドイツ地域以外でも、性格の似た伝承が見られます。Wikipediaがフランスの伝承を今のところ網羅していないというだけで、両地域について似たような伝統があるのではないか?と、とりあえず、理解しておきます。

 …で終わろうとしたら、ドイツの伝統的な風習における、聖ニコラウスの同伴者であるクネヒト・ループレヒト - Wikipedia(2013年10月28日 (月) 17:59)では、フランスの例にも触れていましたわ。うっかり見逃すところでした。黒いサンタクロース伝承はある程度普遍性がありますね。

<ヨーロッパの各地には、「悪い子」を懲らしめる聖ニコラウスの同行者 (Companions of Saint Nicholas) が伝えられており、アルプス周辺のクランプス、北西ドイツのBelsnickel、オランダやベルギーのズワルテ・ピート (Zwarte Piet) 、フランスのLe Père Fouettardなど、いくつかのバリエーションがある。クネヒト・ループレヒトもそうした「聖ニコラウスの同行者」の一種である>


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