●初詣の意味と由来 初詣は明治時代に鉄道会社が捏造した伝統だった?
2014/12/30:正直言うと、
江戸時代の人は初詣をしなかった!年末年始の雑学30(2014.01.01 07:30:19 by ガジェット通信)は、おもしろくない話も多かったです。ただ、タイトルになっている初詣のうんちく「初詣は江戸時代の人はしていない」はおもしろかったですね。「初詣は元々はある組織のステマだった」とも言えるのです。
<実は明治時代に盛んになった風習で、元々川崎大師の宣伝で使われたらしい。明治30年代まで川崎大師のキャッチフレーズ的なものだったようである。川崎大師そのものは鎌倉時代からある寺だが、今のように立派になったのは幕末から明治にかけてである。
初詣に近い「恵方詣」すら幕末に盛んになった行事で、非常に新しいものである>
(宝島社「
神道を知る本
」など)
<明治時代に電鉄会社が、自分の沿線にある神社仏閣を「恵方」だという一大キャンペーンを張ったので初詣が大流行した。この時、陰陽道で言う恵方は全く無視されたので一部から批判も出たが、なんとなくなし崩し的に広まってしまったというのが真相のようである>(宝島社「神道を知る本」)
●ガジェット通信記事こそが捏造?一応初詣に似た行事はあった!
この話はおもしろいことは間違いないものの、
初詣 - Wikipedia(最終更新 2014年12月27日 (土) 11:17)と説明が異なっていて不安になります。Wikipediaの出典を見ると、ほとんど
鉄道が変えた社寺参詣―初詣は鉄道とともに生まれ育った (交通新聞社新書)
からでした。
2つの記事の信頼性については出典を調べてみないとわからないんですが、とりあえず、書き方を見るとWikipediaの方が丁寧で好感を持ちました。Wikipediaによれば、もともとあったのは、「年籠り」という習慣です。ここから「元日詣」が生まれ、「初詣」に繋がっていったという書き方でした。
<元々は「年籠り」(としこもり、としごもり)と言い、家長が祈願のために大晦日の夜から元日の朝にかけて氏神の社に籠る習慣であった。やがて年籠りは、大晦日の夜の「除夜詣」と元日の朝の「元日詣」との2つに分かれ、元日詣が今日の初詣の原形となった>
「元日詣」という名前からして、既に初詣っぽさが多分にありますね。Wikipediaでは、「元日詣」が行われていた時期については、はっきり明記されていないのが残念でした。ただ、"江戸時代末期までの元日の社寺参拝としては、氏神に参詣したり、居住地から見て恵方にあたる社寺に参詣(恵方詣り)したりといったことが行われた"と記述があります。
●「初詣」の方が儲かる!鉄道と初詣の関係が深いのは事実
また、Wikipediaでも初詣と鉄道の関係は書かれています。参考文献が何しろ
鉄道が変えた社寺参詣―初詣は鉄道とともに生まれ育った (交通新聞社新書)
という、その名からしてズバリなものでしたしね。鉄道の影響自体は、大きかった模様です。
江戸時代までは元日の恵方詣りのほか、正月月末にかけて信仰対象の初縁日(初卯・初巳・初大師など)に参詣することも盛んであった。研究者の平山昇は、恵方・縁日にこだわらない新しい正月参詣の形である「初詣」が、鉄道の発展と関わりながら明治時代中期に成立したとしている。
関東では、明治5年(1872年)の東海道線開通により、従来から信仰のあった川崎大師などへのアクセスが容易になった。それまでの東京(江戸)市民の正月参詣は市内に限られていたが、郊外の有名社寺が正月の恵方詣りの対象とみなされるようになった。また、郊外への正月参詣は行楽も兼ねて行われた。平山によれば「初詣」という言葉は、それまでの恵方詣りとも縁日(21日の初大師)とも関係のない川崎大師への正月参詣を指すのに登場したといい、1885年(明治18年)の『万朝報』記事を管見の初出と紹介している。鉄道網の発達に伴い、成田山新勝寺など郊外・遠方の社寺にもアクセスは容易となり、また京成電鉄や京浜急行電鉄、成田鉄道(現・JR成田線)など、参拝客輸送を目的として開業された鉄道会社も登場した。競合する鉄道会社間(国鉄を含む)では正月の参詣客を誘引するために宣伝合戦とサービス競争が行われた。当初は鉄道による有名社寺への「恵方詣り」の利便性が押し出されたが]、年ごとに変わる恵方に対して「初詣」という言葉がよく使われるようになり、大正時代以後は「初詣」が主に使用されるようになった。
年によって対象の神社の変わる「恵方詣り」では、鉄道会社にとっては不都合だったのでしょう。鉄道会社が「初詣」を必要としていたというのは、よくわかります。
●多くの民族伝統は「非伝統」的で「捏造」であるという事実
今回の話を書いていて思い出したのが、
民族の伝統もナショナリズムも捏造され発明された非歴史なものです。Wikipediaとガジェット通信ではかなり温度差があったものの、これらの話は伝統の捏造的な要素を感じました。日本の伝統もかなりの部分が捏造だと指摘されていて、私は信じきれないところがあったのですが、今回の初詣の例は強烈でしたね。
また、「恵方詣り」で思い出したのが、節分の時期に定着してきた「恵方巻き」です。これも企業のキャンペーンによって「伝統化」されつつある行事ということで同じです。方角についても実際の恵方の方角とは異なる簡易な説明をして、気にしないことも多いですからね。これもまた同じく方角が廃れる可能性はありそうです。
こういうでっち上げによる伝統の創造は、これからも起きていくんでしょうね。歴史的経緯を知らない今定着している伝統行事は批判されないものの、現在進行系の恵方巻きなんかはよく叩かれています。嫌だなぁと思うかもしれませんし、私も不快には感じるのですが、今起きている伝統捏造の様子を実際に観察できるというのは、ある意味、おもしろいかもしれません。
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