●テスラモーターズのマスクCEOは既存の自動車会社を敵視していない
2015/1/3:電気自動車(EV)を作るテスラモーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、既存の自動車会社を敵視しているわけではないようです。そう解説していたのは、
テスラが疾走する「プリウスの道」、エコカーへの熱狂再び(2014/10/30 7:00 日本経済新聞 シリコンバレー=兼松雄一郎)という記事でした。
これによると、マスクCEOは"敵対的な立場をとることを意図的に避けている"とのこと。「EV普及の主役は大手自動車メーカー。テスラは実用例を示し、その取り組みを後押しする呼び水になればいい」なんて言っています。それに"現在のテスラは来年の販売の10万台超えを視野に入れたばかり"であり、"年数百万台を売る既存のグローバルメーカーとは大きな開きがある"というのも事実です。
しかし、既存の大手自動車メーカーはそのような見方をしていません。いくつかの大手自動車メーカーがテスラに出資していましたが、独ダイムラーは2014年10月21日、"テスラモーターズとの資本提携を解消"しました。"テスラを「ライバル」と見なし始めた"からというのが、日経新聞の説明です。
●一方、既存の自動車会社は政治家を動かしてテスラ潰しの法律
これよりもっと露骨なのは、複数の州で成立している"自動車の消費者への直接販売の禁止を徹底する法律"でしょう。"直販モデルのテスラを狙い撃ちしたルール変更"であり、"地元の自動車ディーラー団体の政治的な圧力"によるものとされています。
また、米GMは"テスラの売りである長距離走行"EVを開発を始めますし、"独BMWもEVの新モデルを発売している"そうです。資本提携を解消の"ダイムラーは蓄電池の内製化を進めており、もはやテスラは完全にライバル"だと言います。
そんな中で、"テスラの株主でもあるトヨタ"はどうしているか?と言うと、"EVではなく燃料電池車(FCV)に取り込む考え"だそうです。"プリウスの後継を簡単にEVに渡すつもりなどない"と記事では書いていますが、この判断はどうなんでしょうね。
●トヨタのプリウスを潰すのは、イーロン・マスクのテスラか?
記事では「プリウスの後継」とありましたが、これには理由があります。単なるエコカーというだけではなく、テスラとプリウスの親和性の高さを示すエピソードがあるのです。2014年9月9日にテスラの新車発表会があったのですが、記者が"顧客の何人かに話を聞くと一様に以前はプリウスに乗っていたと答え"たそうなのです! 顧客層が明らかに被っているように見えます。
カリフォルニア州はエコを求める富裕層が多く、トレンドの最先端です。これを実証したのは他ならぬプリウスであり、"テスラのEVは明らかにプリウスの後継車とみなされている"としていました。元記事の「プリウスの道」というタイトルは、プリウスのようにテスラが普及していくかもしれないという意味しています。
しかし、テスラがトヨタのプリウスと違うのは、デザイン性でしょうね。西海岸の富裕層は"とにかく排ガスをより減らす車を求める"としていましたが、テスラはそれだけではありません。記事では、"テスラほど高級感とエコを両立させた「クール」な車はない"という書き方をしていました。ここらへんトヨタはわかっていません。
もう一つ脅威なのは、テスラがここまで「マス広告なし」で戦ってきたということです。ブランド価値が圧倒的に高いためだと思われます。このブランド価値の高さはイーロン・マスクCEOのブランド価値の高さとも言えます。ここらへんもまたトヨタの豊田章男社長にはないものです。
●「トヨタはEVをやる必要はない」というのは本当に正しい判断?
豊田章男社長が海外の取引企業から不興を買っている他の経営方針についてもいつか書きたいんですが、先のトヨタがEVをやらないという話について。まず一つは前述のように、テスラとプリウスの顧客層が競合しているとの判断のためのようでした。燃料電池車で再びテスラから顧客を取り戻せればいいってことでしょうか。ただ、ややギャンブルな感じがします。
もう一つは5年くらい前に読んだ記事にあったことが気になっているためです。記事では電気自動車は従来の自動車のノウハウが違って簡単だと書かれていました。極論してしまうと、「EVというのは家電だ」と。家電なので、電機メーカーも作れてしまう、従来の自動車メーカーは優位性を保てないという話でした。
この話が本当かどうか知りませんが、実際、後発のテスラがこうして画期的なものを作ったのは事実。そして、海外の自動車業界はそのテスラに強い危機感を抱いているわけです。仮に参入障壁が低いとすれば、それは旨みが低いという可能性があります。そうであれば、その分野をまるごと捨ててしまうというのは確かに一つの手です。
しかし、トヨタは世界一を争う自動車メーカーであり、広範に自動車を売ることで成り立っています。最近、トヨタの「マイルドヤンキー」向けなどの営業マニュアルが流出しました。マニュアルの説明には「ヤンキー的な嗜好を持つ」なんて書かれていましたが、こういう層から富裕層まで幅広く売りつけるというのがトヨタの商売です。
業界下位の自動車メーカーが顧客のターゲットを絞るならともかく、広い層に車を買ってもらおうというトヨタとしてはどうかな?と思う選択です。また、そもそもテスラが広げたEV需要がより庶民の方に近づいてきたら、テスラ以外も含めたEVたちに根こそぎ持って行かれないの?とも心配になります。
(…と下書きはこう書いていました。しかし、トヨタの燃料電池車「MIRAI(ミライ)」が発表されると、すごい!という記事がたくさん。日本メーカーだから持ち上げているという可能性もあるものの、ミライはすごい車なのかもしれません。私はピンと来なかったものの、とにかく皆さん好評なのでトヨタは安泰そうです)
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