契約書に書かれているからと言って、なんでも通用するか?と言うとそうではないという話を最初のときに書いていました。その後、<広告の目立たない条件の注意書きも法律違反>、<「個人の感想です」と明記した広告でも違反となる理由>といった話などを追加しています。
2022/07/03冒頭にまとめ:
●契約は絶対ではない 不当な契約はそもそも法的には無効となる
●契約は絶対ではない 不当な契約はそもそも法的には無効となる
2010/9/20:契約書に書いてあることは絶対であり、契約した以上何も文句は言えないと思っている人がいらっしゃいます。ただ、日々流れているニュースを見ていると、それは間違いの可能性が高いとわかるでしょう。例えば、先日あった群馬県のペット販売に関するニュースがそういったものでした。
このペット販売に関する記事<ペット移動販売、買ってすぐ衰弱…死亡例も 2010年9月9日07時07分 >(読売新聞)によると、移動販売のペットショップから犬を買ったら、購入時に強いウイルスに感染しており、すぐに衰弱してしまった…ということがまず起きました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100907-OYT1T00337.htm
これについて、県消費生活課は、"契約書に「返品・返金・交換などには応じない」とあっても、消費者契約法の規定により、消費者に一方的に不当・不利益な場合は無効になる"と説明。また、"ペットの病状が容易に回復しない場合には民法の規定で契約を解除できる"ことも指摘していました。やはり、契約書に書いてあるからと言って何でも受け入れる必要はないということがわかります。
●立場を利用して不当な契約を結ぶケース
もともとこれが気になっていたというのは、コンビニ弁当値引きの問題(
コンビニ弁当の廃棄が多い理由など)に関してです。この問題で、そういう契約したんだから文句を言うのはおかしいと言っている方がいて、本当だろうか?と疑問に思っていたのです。この場合私が何がおかしいと思ったかと言うと、コンビニの本部と店で立場が対等でないこと。当然本部の方が立場が強いため、店側に不利な契約でも押し通せてしまいます。
私がこれで思い出したのは、ドン・キホーテの件でした。昔ドン・キホーテが棚卸し作業を卸業者に無償で手伝わせて、問題になりました。しかし、ドン・キホーテは卸業者が進んで勝手にやったことで、強制した事実はないといった主張を確かします。これは結局優位な立場を利用して、無理を通したという例です。
この立場の違いというのは、契約じゃなくても結構あると思います。たとえば上司は何気なく言ったつもりでも、部下にとっては命令だと受け止めたり、民間を検査する公的機関のちょっとした言葉を検査される側は絶対遵守しなくてはと思ったり…といったこととあると思います。
●合意したんだから自己責任…で喜ぶのは詐欺師
あと、サイトやソフトの利用規約というのも注意が必要なもの。全部読んでいられないほど長い契約書などの中にちょこちょこっと文句を入れ込んで、「はい、もう逆らえません」ってのができちゃったら、詐欺なんて簡単になってしまいます。合意したんだから自己責任…というのは、詐欺する人を助ける論理です。
振り込め詐欺なんかも「相手が勝手に勘違いした」では済みませんし、インターネットでの問題は「ワンクリック詐欺」ってのもそうかもしれません。…と書いてから、
ワンクリック契約 Wikipediaをちょっと見てみたら、これはちょっと違う例だったみたいです。そもそも契約すらしていないという説明でした。
Wikipediaによると、ワンクリック契約(詐欺、登録)とは、ウェブページ上の特定のアダルトなどに記載されているURLなどを1回クリックすると、「ご入会ありがとうございました」等の文字やウェブページが表示され一方的に契約したことにされて多額の料金の支払を求められるものだといいます。
ただ、「契約は当事者双方の意思が合致しないと成立しない」と説明。その意味でワンクリック詐欺は、画像等をクリックするにつれて一方的に画面表示が変わるのみであって、利用者の契約意思表示を確認するべき申し込み画面が存在しないので、そもそも「契約」ではないそうです。
●広告の目立たない条件の注意書きも法律違反
2017/07/15:上記を書いた後、
利用規約に同意すれば、一切文句は言えないのか?や<公序良俗違反の契約例>(同じページの後半にまとめ)など、似たようなテーマの話をいくつか書きました。さらに、今回は新たに広告に関する話をやります。
広告「例外」「条件」の注意書きに気付かず97% 毎日新聞2017年7月14日 22時57分(最終更新 7月15日 02時08分)【曹美河】という記事がありました。
例外や条件を示す注意書きを「打ち消し表示」と言うそうです。企業が広告で商品の効果や安さを強調する際、この「打ち消し表示」が使われるのですが、"消費者が見落とすほど小さかったり内容を理解できなかったりする"ということが、よくあります。動画広告の場合、「2秒以下」のものが最も多いそうです。
消費者庁が実在の広告に近いサンプルで調べたところ、"動画広告で最大97.6%、ネット広告で最大94.2%の人が、打ち消し表示を見落とした"と言います。これはもうほとんどの人に伝わっていないと言わざるを得ません。そして、消費者庁は、"こうしたケースは景品表示法違反で処分の対象になる可能性が高いとの見解を公表"しました。法律違反の可能性が濃厚なのです。
●「個人の感想です」と明記した広告でも違反となる理由
また、「明確に打ち消し表示がされていても違反になる恐れがある」(消費者庁)というケースもあります。これは、私がいつも批判している健康食品やサプリで多い「個人の感想です」といった打ち消し表示がある広告。消費者庁のテストでは、打ち消し表示を明示していても、実質的な効果はない、つまりやはり伝わっていない状態なのです。
このケースでは、「商品を使用しても効果のない人が多数いる場合」という但し書きがあるものの、違反だと考えられるようです。こちらの場合、ちょっと納得できない人もいるかもしれませんね。
ただ、たぶん景品表示法の趣旨としては、消費者に誤認させないことを求めているだろうと思われるので、消費者に伝わっているかで考えるというのが正しいのでしょう。テクニックでだまくらかして客に勘違いさせているわけですから、形だけ整っていてもダメだと考えてください。
●子供が親のクレジットカードで勝手に買い物…取り消しできる?
2021/07/22追記:また少し違った「契約は絶対ではない」という例を。今回は、業者側が詐欺するつもりだったわけではないのですが、契約を取り消すことができる場合があるという例です。
ネットショップに登録したカード番号。子どもが勝手に買い物したらどうなる?【サイバー護身術】| Prebellという話でした。
こちらによると、子供が通販サイトに登録されていた親のクレジットカード情報を使って、勝手に買い物をしてしまった場合、キャンセルできる場合があるとのこと。未成年者が親(法的には「法定代理人」)の許可なく結んだ契約を取り消しできる「未成年者契約の取消し」というものがあるそうです。ただ、適用には要件をすべて満たすことが必要とされていました。
・契約時の年齢が未成年(現在は20歳未満)であること
・契約当事者が婚姻の経験がないこと
・法定代理人が同意していないこと
・法定代理人から、処分を許された財産(小遣い)の範囲内でないこと
・法定代理人から許された営業に関する取引でないこと
・未成年者が詐術を用いていないこと(成人であると偽っていないこと)
・法定代理人の追認がないこと
・取消権が時効になっていないこと(未成年者が成年になったときから5年間、または契約から20年間)
この「未成年者契約の取消し」というのは、返金に至るまでの手続き、事実の証明、書類のやり取りなど、相当な手間と時間のかかる作業であり、やっぱりたいへん。また、事業者によっては、返金はするものの、当該アカウントが凍結される場合もあるということでこれまた面倒くさいです。事前に防止するのがやはりベストでしょうね。
●契約は絶対ではない!契約しても無効になる公序良俗違反の契約例
2010/9/21:同じページの前半にまとめた話で書いていた、契約していてもそれが絶対ではないという具体的な例について。この例がわかる良い資料が見つかりました。京都大学では講義資料をウェブ上で公開しているようで、松岡久和教授の民法I(民法総則・親族)の
講義ノートを見ることができます。
ここの第11回 法律行為の自由と制約(1)-強行法規違反・公序良俗違反のPDFが、役に立ちそうだったのです。具体例があるもののうち、今回の趣旨に特に関係しそうなものだけ、抜き出していきます。
【法律行為の適法性】
4 脱法行為
・脱法行為:直接的には強行法規に反しないが実質的に禁止を潜脱する行為
①法律行為解釈により強行法規を直接適用して無効
例 賃貸借契約という名目による割賦販売(かっぷはんばい)規制の潜脱(引用者注:よくわかんないんですが、賃貸借=リース契約と言いながら、実は割賦販売していること?)
【社会的妥当性】
1 公序良俗違反
・意義:強行法規違反に該当しなくても社会的妥当性を欠く法律行為を規制する。
2 公序良俗違反の具体例と最近の傾向
2-1 公序良俗違反の分類と具体例
①犯罪やこれに類する社会的非難性の高い行為
例 密輸・談合・贈収賄・裏口入学斡旋
②婚姻秩序や性道徳に反する行為
例 愛人契約←→ 重婚的内縁
③加害目的で行う行為
例 未登記第一譲受人を困惑させ不当な利益を得る目的でなされた第二譲渡契約
④自由を不当に拘束する行為
例 芸娼妓稼働契約、長期にわたる契約、限定のない競業禁止特約
⑤合理的な理由のない差別的取扱い
判例 日産自動車男女定年差別事件(下記に説明)
⑥暴利行為:他人の無知・軽率や窮状につけこんで不当な利益を得る行為
例 担保丸取り、過大な違約金条項、異常な高利貸し
⑥’詐欺まがい商法(現代型暴利行為)
例 ペーパー商法、霊感商法、原野商法、海外先物取引、ネズミ講
⑦優越的地位を濫用する行為
例 不合理に長い試用期間を定めた雇用契約、保険契約における専属的合意管轄
⑧その他、取締法規違反などに加え、行為態様がとくに非難性の高い場合
判例 山一証券損失補填特約事件-証券市場の価格形成機能を歪め証券取引の公正と証券市場に対する信頼を損なう反社会性の強い行為
●日産の「女性は男性より早く退職」の規定、公序良俗違反で無効に
上記に出ていた例のうち日産自動車男女定年差別事件は、Wikipediaに
日産自動車事件としてありました。これによると、最高裁判所は判決で、男女別定年制(日産自動車は就業規則で定年を男性55歳、女性50歳と定めていた)は民法90条の公序良俗違反により無効であるとしたそうです。
当時、厚生年金保険が支給開始年齢が男女で差がありました。これは国がそもそも差別していた!という話です。そのためか、被告企業はこの厚生年金保険が支給開始年齢が男女で差があったことを裁判で主張。ただ、最高裁判決が正当性の判断は示されなかったそうです。また、今は男女雇用機会均等法第8条で、男女別定年制の禁止を定めているということで、国もやっと改善しました。
あと、他のところを読んでてわかったのですが、上で出てきた裏口入学、愛人契約などが無効というのは、契約が無効なのでお金を返してもらえるという意味では無さげ。どうもお金は戻って来ないみたいなのです。 殺人依頼とかもきっとそうなんじゃないでしょうか…。
後ろ暗いことは、やっぱ最初からしちゃいけないってことですね!
【本文中でリンクした投稿】
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