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インフレリスクなら定期預金より投資は嘘?物価上昇や株価を比較すると…


 もともとは「定期預金はインフレになると目減りするは嘘?物価上昇と比較すると…」などのタイトルで書いていた話。これに別のところで書いていた「株価の値上がり率はインフレ率に負けるときがある」という話を中盤に加えました。インフレに弱い定期預金が意外に良く、インフレリスクで勧められる投資がそこまで強くないという予想外な話になっています。

2015/1/9:
●定期預金はインフレになると目減りする…だから投資を!
●そもそも定期預金が目減りするは嘘?物価上昇と比較すると…
●40年前の卵や理髪店の価格はこんなに安かった!で錯覚
2013/8/21:
●株価の値上がり率はインフレ率に勝てない?実は負ける例も…
2021/06/16:
●「定期預金は危ない!」と投資商品を売るページがたくさん! 【NEW】
●銀行預金が戻ってこないことがあるというのは本当!ただし… 【NEW】


●定期預金はインフレになると目減りする…だから投資を!

2015/1/9:にわかには信じられない話がありました。まず、記事では、「預金はインフレになると目減りしてしまいます。だから株式や投資信託で資産運用することも必要です」という誘い文句について紹介していました。

 これは"アベノミクスと日銀の異次元緩和をきっかけに物価が上昇基調"になるので、「インフレになるから投資しなければ」といった強迫観念に駆られるケースです。

 私はこういう不安を煽ることによって投資を勧めるやり方は異常に嫌います。必ず投資にはリスクがあるため、安易に推奨して良いものではありません。


●そもそも定期預金が目減りするは嘘?物価上昇と比較すると…

 こういった甘言を批判するというのは大いに賛成だったのですけど、何が驚いたって、そもそも「預金はインフレに弱い」という大前提を記事では否定していたこと。リスクがあることを明示していないとか、大げさに言っている以前に、そもそも金融機関が言う「預金はインフレになると目減りしてしまいます」は嘘だと言うのです。

 これを書いていた記事はタイトルも(「預金はインフレに弱い」と思い込むのは早計 :日本経済新聞(投資教育アドバイザー 大江英樹 2014/8/26 7:00)というものでした。この驚きの事実は、投信評価会社イボットソン・アソシエイツ・ジャパンがまとめた消費者物価上昇率と1年定期預金金利の長期推移データからわかります。

 1951年の消費者物価指数を100とすると、60年後の2011年末は653。大きく上昇しているのは事実です。ただ、同様に1年定期で100円預け、ついた利息も含めて継続していくと60年で1105円。なんと定期預金が"物価上昇を1.7倍も上回ってしまいました! 定期預金は物価上昇に弱くないどころか、むしろ強いという結果になったのです。これは私も予想外でした。

 細かいことを言うと、「インフレに弱い」ですので、デフレ突入前で比較すべきでしょう。しかし、デフレ時には両者とも僅かにしか動いていないため、両者が逆転するほど大きな変化があったとは思えません。やはり定期預金の圧勝になることは変わりないでしょう。にわかには信じられない話になりました。


●40年前の卵や理髪店の価格はこんなに安かった!で錯覚

 「預金はインフレに弱い」という思い込みについて、作者の大江英樹さんは「代表性ヒューリスティック」のせいだとしていました。「代表性ヒューリスティック」というのは、"身近なことや分かりやすい例がすべてに当てはまると勘違いしがちなこと"という意味みたいようです。他を検索すると、「特定のカテゴリーに典型的と思われる事項の確率を過大に評価しやすい」といった説明が見られます。

 物価上昇と定期預金の「代表性ヒューリスティック」としては、40年前の卵や理髪店などの値段です。いかに物価が上がったかを強調している金融機関の資料があるものの、実際には家電や航空運賃など、比較にならないくらい値下がりしているものもたくさんあるというのが事実。都合の悪いものは隠しているために錯覚するんですね。

 なお、この話は株や投資信託などの投資が、インフレに弱いとか、定期預金に負けるとか言っているわけではありません。やり方によっては定期預金を上回るケースはいくらでもあるでしょう。しかし、やり方によっては…であり、定期預金を大きく下回るケースもまたいくらでもあります。最初に言ったようにリスクがあるわけです。これも良いケースだけ提示といった感じですね。

 この他に過去の経験でピークだったときの印象が強く残る「ピークエンドの法則」によるインフレの強烈な印象も、理由として挙げられていました。


●株価の値上がり率はインフレ率に勝てない?実は負ける例も…

2013/8/21:一方でインフレ対策として有効と思われる株価ですが、<インフレ期待と株高の蜜月はいつまで>(証券部 黄田和宏 2013/4/9 20:43 日経新聞)によると、インフレに負けることもあるようです。私はリスクが高いために投資はオススメしないのですが、改めてリスクの高さを思わせる話です。

<インフレ調整後で株価を評価するためには株価を消費者物価指数(CPI)で除して「実質株価」を算出する必要がある。まず米国についてみると、ダウ工業株30種平均は1万4000ドル台の過去最高値圏にあるが、実質でみると、2000年前後や2007年ごろと比べて1割ほど低い水準にある。インフレ率がプラス圏の米国でさえ、2000年以降は株価はインフレに負けている。
http://www.nikkei.com/markets/column/scramble.aspx?g=DGXNMSGD09063_09042013000000

 上記の部分でも既にアメリカは株価がインフレ率に負けているという話が出ているように、株価とインフレ率の関係が強固であると筆者がみなしているわけではなさそうです。株価とインフレ率の相関性が高いわけではない…というのは、別の例も出ていました。やはりインフレなら株を買うと安全…という単純な話ではなさそうです。

<期待通り、物価と株価が上昇して実体経済の回復につながれば良いが、問題はインフレ期待と株価の「蜜月関係」が今後も続くのかだ。今月8日、仏ソシエテジェネラルが興味深いリポートを出した。「日本はジンバブエではない。イスラエルでもない。しかし、イスラエルでは1972年から87年に物価が1万倍になり、株価は6500倍になった。この経験を日本にあてはめると日経平均は6300万円になる」
 (中略)現在の日本の状況と同一視はできないが、ここで参考になるのが物価が不安定化したイスラエルでは実質ベースで見た場合、株価は物価上昇に追いつけなかったということだ。


●「定期預金は危ない!」と投資商品を売るページがたくさん!

2021/06/16:「定期預金 インフレ」で検索して、検索結果のページタイトルを見てみました。タイトルと検索結果で見える本文の一部を見た感じは、「定期預金は危ない!」と不安にさせて投資商品を買わせようとしているページと、定期預金はインフレに弱くないという事実を伝えているページの半々くらいでした。

 検索結果の中の一つ銀行預金は安全か? インフレとか、ペイオフの話… | トウシル 楽天証券の投資情報メディアを見てみると、投資を勧めているのかと思いきや、意外にバランスが取れた良心的な内容。定期預金で損するケースに触れてはいるものの、極めてまれなケースであると説明しています。これなら理解できる説明ですね。

<「銀行預金はインフレになったら、実質的に目減りしてしまうので、インフレ時に強い投資商品を持つべきだ」という営業トークがあります。預金金利がインフレ率に負けてしまうので、銀行預金の実質的な価値が目減りしてしまうという話です。
 実は、この説明は、過去の実証研究では、必ずしも正しくありません。ここでは、詳しい説明を抜きに結論だけ書きますが、過去の定期預金金利とインフレ率を比較すると、おおむね定期預金金利はインフレ率を上回っています。つまり、銀行預金は、インフレで目減りすることはなく、対応できていることになります>


●銀行預金が戻ってこないことがあるというのは本当!ただし…

 上記の後、<ただ「おおむね」という言葉を付けたように、完全にインフレに対応できるわけではありません。インフレ率が跳ね上がる状況では、銀行預金はインフレについて行けないケースがあります>と続いていました。そして、その例というのは以下のような消費税増税の話であり、預金がほぼ無価値になる!みたいな大きな跳ね上がり方ではなく大したことない話です。

<例えば、過去、消費税率引き上げのタイミングでは、預金金利はインフレ率に負けています。経済危機が来て、インフレ率が急に上がるような局面が来たら、預金金利がインフレ率を上回ることは難しいと思われます。
 従って、平時では、銀行預金はインフレに対応できる一方、非常時では、インフレ対応は難しいと考えられます>

 大したことある話としては、合算して元本1,000万円までとその利息は保護されるという「ペイオフ」が機能しなくなるときの説明で出てきた話。<バタバタ銀行が倒れるような状況で、政府も余力がなければ、1,000万円までの預金保護は難しいのではないでしょうか。結局、ペイオフも平時においては機能するものの、非常時においては機能しない可能性が高いと思われます>という説明があったんですよね。

 とはいえ、このほぼ起きない危機のために、リスクある投資にガンガン投入して平時に資産を失っては本末転倒でしょう。楽天証券では「リスク分散が大事」という結論になっていましたが、実際には定期預金を残しておくというのも大事なリスク分散。投資した資金がゼロ(投資対象によってはマイナス)になるリスクを考えた上で、投資への投入資金を計算してください。

 というか、そもそもバタバタ銀行が倒れるような状況で、政府も余力がないときにでさえも大丈夫である安全安心な投資商品って何が想定されているんですかね。そういうときは海外もヤバそうですが、日本ではない海外の投資商品でしょうか…。ここらへんのリスク分散先として、彼らが何を想定しているのかも気になるところです。


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