2015/1/18:
●顧客アンケート調査は無意味?意味がないとアップルが言う理由
●アンケート調査のようなものは全部無意味…というのは本当か?
●誰でも作れるという誤解…アンケート調査は有効だが作るのが難しい
2019/01/13:
●本田技術研究所は客が求めているものとは違うものを開発する
2017/05/25:
●モニターによるユーザーテストがたった5人で良い理由とは?
●顧客アンケート調査は無意味?意味がないとアップルが言う理由
2015/1/18:以前、アップルは顧客ニーズについての調査を行わないといったことを書いている記事を読みました。確か「そんなものは無意味」といった調子だったと思います。私は無意味とまで思わないですけど、アンケート調査ではわからないものがあるというのはわかります。消費者自身が何がほしいかをよくわかっていないためです。
消費者自身わかっていない…に少し似た話があったのが、<顧客の「自分評」は大体間違っている>というタイトルの記事でした。正直言ってわかりづらいタイトルの記事だと思うのですけど、具体例を見ていくと大体わかってくると思います。ある工具メーカーのお話です。
このメーカーでは、目立つところに使われている部品に、金属ではなくプラスチックを使用することで、コストを大幅に削減することができるという改善策を考えつきました。しかし、消費者に直接問いかけたところ、この部品に金属を選んだ消費者が圧倒的に多かったのです。これではプラスチックに変更した場合、その工具は全く売れなくなると考えられます。危険な仕様変更だと考えられました。
ところが、意外なことに、実際の買い物で金属の部品がついた製品を選んだ消費者は数十人のうちわずか1名にとどまりました。顧客のアンケートでの回答と異なり、実際には金属であるかどうかをあまり重視していなかったのです。それどころか、自分が選んだ製品のこの部品の素材が金属かプラスチックかを覚えていた人も、ほんの一握りに過ぎなかったという始末。消費者も自身の行動を全然わかっていないんですね。
(
顧客の「自分評」は大体間違っている:日経ビジネスオンライン(ドミートリ・ミシュースティン 、小田原 浩 2014年9月8日))
●アンケート調査のようなものは全部無意味…というのは本当か?
では、消費者に尋ねるようなアンケート調査が全部無意味か?と言うと、そうでもないと思います。このエピソードは続きの部分もたいへんおもしろいです。ここらへんでは、アンケート調査のようなものが有効である場合もあることが示唆されていました。
"追跡調査の質問で、ある製品が他の製品よりも耐久性に優れて高品質であると考える理由を尋ねられると、部品そのものよりも、製品の成形やバランス、形状(場合によっては匂い)について詳しく記述する消費者が多かった"ことがわかりました。
消費者が"デザインや部品から、消費者が壊れやすいかどうか、いつまで使えそうかなどを判断することは通常不可能"です。にも関わらず、消費者は耐久性を重視しているわけですね。これについて、"消費者が「この部品は金属でなければ」と回答したのは、消費者が金属を品質や耐久性と結びつけていたからだ"と記事では、分析していました。
ただし、実際の購入時に判断していたのは、そういう部分的なところではなかったわけです。消費者は消費者なりに、"製品の成形やバランス、形状(場合によっては匂い)"といった部分で、耐久性を判断しようとしたのでしょう。全然正確ではないわけですけどね。
作者は"こういう消費者の感じ方の解明を、顧客へのアンケートやヒアリングに基づいた調査で行うことは通常、不可能である"としていました。そして、"どのデザイン要素が消費者の見方に最大の影響を与えるかを理解するために、消費者が実際の製品を手に取る様子を観察することが必要である"としていました。
とはいえ、追跡調査があって、具体的にどこを重視していたか?ということの概要が見えてわけです。アンケート調査がすべての場面で役に立たないということはないと思います。
●誰でも作れるという誤解…アンケート調査は有効だが作るのが難しい
それから、「最初のアンケート調査が本質となる部分を外していたから」というのも問題だったのでは?と思います。前述の例の場合は特定部分の材質は本質ではなく、"製品の成形やバランス、形状(場合によっては匂い)"といった全体的なイメージの方が重要でした。
本質ではない部分について質問項目を作ってしまえば、当然、実際の消費者の購入行動とは大きく離れてしまいます。どの部分が重要であるか、本質となっているのはどこか?と絞り込んで、余計なものを削ぎ落とす必要があります。
これは製品作り全般においても重要でしょう。最初に少しアップルの話をしましたが、かつてのアップルはこういうそぎ落とし、本質の見極めが得意だと言われていました。そういう良いところは日本の起業としても見習いたいものです。
●本田技術研究所は客が求めているものとは違うものを開発する
2019/01/13:
8割方反対される研究こそ価値がある…本田技術研究所の暗黙知での追記に使った記事では、「アンケート調査では顧客ニーズがわからない」に関わる話もあったので紹介します。
本田技術研究所の松本宜之社長は、「お客様第一主義」を否定するわけではないと前置きしつつ、「お客様の言う通りのものだけを作って提供していても、意味がないと思います」という話をしていました。「お客様がまだ気づいていない先進的なものを提案して、課題解決に役立ててもらう」というスタンスなのです。
(
8割反対されてこそ、価値あるものが生み出せる:日経ビジネスオンライン 2018年5月9日より)
これは内容的に普通の「お客様第一主義」の否定ではなく、本質的には、前述の「顧客は自分が本当にほしいものがわからない」の話だと考えられます。
なお、「お客様」よりも上位なものとして、「世のため、人のため」を位置付けるという話も。この場合、お客が今求めているものとは違っていても、あえてこちらの考えを通すとのこと。これも結局、将来的に正しいニーズなのはこちらだから…ってことみたいですね。
●モニターによるユーザーテストがたった5人で良い理由とは?
2017/05/25:モニターによるテスト、ユーザーテストでのおもしろい話を。
グーグル式仕事術「スプリント」を今すぐあなたがやるべき理由 | SPRINT 最速仕事術 | ダイヤモンド・オンライン(2017年4月21日 田坂苑子)という記事に載っていたものです。
かつてユーザーリサーチの第一人者が数千人のユーザーをインタビューし、最も重要なパターンを見抜くには何回インタビューすればいいかを調べたとことがあるそうです。この結果が驚き。なんと問題の85%がたった5人のインタビューで発見されていた、ということがわかったのです。
つまり、同じ調査でテストする人数を5人より増やしても、追加のメリットはほとんどないと考えられるということ。そうであるならば、残り15%の問題を発見するために多大な時間を費やすより、発見された85%の問題の改善をしてからふたたびテストを行なうほうが理にかなっている、というのが記事の主張でした。
アンケート調査とは書かれていなかったのですけど、「ユーザーをインタビュー」という言い方もしていますので、アンケート調査にもある程度通用する話ではないか?と気になったので、ここに追記しています。これはアンケートに全く意味がないわけではないが、過剰にやる必要はないといった方向性ですね。
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