私はもともと主力の事業がいつの間にか変わっている…という企業が好み。サブの事業が伸びてメインになる企業では伸びる企業が多いと感じていました。で、これを裏付けるような調査を発見。事業構造の変化や積極的な合併買収を行う企業は、そうではない企業よりも業績が良いという調査結果になっていました。
2015/1/19:
●会社の伝統的な事業をやめてしまう企業はむしろ良い企業?
●これから伸びる企業=変化する企業 M&Aや事業構造の変化が大切
●合併買収などは良い?悪い?上場企業について比較してみると…
●伝統を守らない!本来メインだった事業を捨ててしまう企業もある
2021/11/13追記:
●後発で成功のユニ・チャーム、異業種参入と棲み分けの良い見本 【NEW】
●会社の伝統的な事業をやめてしまう企業はむしろ良い企業?
2015/1/19:私が「良い企業の条件」として繰り返し言っているものは、いくつかあります。そのうちの一つがかつて主力だった仕事を捨てて、新しい仕事をメインにする…という変化する企業です。最も想定しているのは、多角化しているうちに本業が変わるという形です。
このように変化して成功した企業については、何度も紹介しています。今パッと思い出したのは、
日立造船は船舶部門を手放しているし、日立グループでもないや
小林製薬の「小さく生んで大きく育てる」企業買収 新市場を創造といったあたりですね。
そんな感じの変化する企業について見たものかな?という日経ビジネスオンラインの記事がありました。
【独自調査】変革企業71社を全公開:日経ビジネスオンライン(宗像 誠之 2014年10月27日)というものです。
●これから伸びる企業=変化する企業 M&Aや事業構造の変化が大切
ただ、「企業の変革」の度合いというのは、明確に数値化するのが難しいもの。この場合はどうしたか?と言うと、大手コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニー・ジャパンの助言に従い、「M&Aの有効活用度合い」か「事業構造の変化率」で測ることにしたとのことでした。
<調査の概要>
・M&Aか事業ポートフォリオの組み替えを積極的に実施している企業を高変革企業と定義。
・1990年以前から上場しており、直近売上高が1000億円以上の事業会社499社を対象。
・変革度の高低は、2003~13年度の事業セグメント構成変化が30%以上かどうか、または1996~2013年度のM&A累積買収金額が時価総額の30%以上かどうかで判断。
・好業績かどうかは、1990~2013年度の年率売上高成長率及び年率利益成長率がともに上場企業の平均を上回るかどうか、または、一方が平均を下回った場合、それが同じセグメント内の企業の平均を上回っているかどうかで、判断した。
(出所:ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンの資料を基に本誌作成)
「事業構造の変化率」というのは、おそらく私の想定している変化する企業そのものでしょう。ただ、企業の合併や買収であるM&Aについては想定していませんでした。
M&Aによって結果的にメインの仕事が変わることはありますけど、M&Aって難しくて失敗することが多いんですよね。あまり好きではないです。ただ、この2つの指標で定義した変革企業と業績との関係を見ると、この定義での変革企業の重要性が示されました。
●合併買収などは良い?悪い?上場企業について比較してみると…
499社のうち「高変革企業」と定義されたのは、137社でした。そのうち業績も良かった変革に成功した企業は71社。一方、業績が結局良くならなかった変革失敗企業は66社でした。わずかに変革に成功した企業が多いものの、変革失敗企業も多いです。これだけ見ると、あまり変革が良いことのようにも見えません。
ところが、無変革企業の内訳を見ると、変革のありがたみが見えてきます。無変革企業においても137社という多くの企業が好業績だったものの、業績の良くない無変革企業はこれよりずっと多い225社もあったのです。こうして見ると、明らかですね。
高変革企業 業績高 71社 > 業績低 66社
無変革企業 業績高 137社 < 業績低 225社
私は途中でM&Aのリスクについて懸念しましたが、記事では"ベインの調査結果を見る限り、変革に挑まないより、リスクを取って挑んだ方が企業の未来が拓ける可能性が高くなる"といった書き方をしていました。たとえリスクであっても挑まなくてはいけないという見方のようです。
●伝統を守らない!本来メインだった事業を捨ててしまう企業もある
なお、最初に適当にリンクした2社は実は今回言及されていないような変革の仕方をしていました。まず、日立造船は
日立造船は船舶部門を手放しているし、日立グループでもないというタイトルでわかるように、メインだった船舶部門を売っぱらってしまいます。
一方の小林製薬は
小林製薬の「小さく生んで大きく育てる」企業買収 新市場を創造というタイトルではわからないものの、会社ができた当初にやっていた卸事業を赤字でもないのに売却しています。全売上高の64%を占める大きな事業でしたので、これは思い切った変革です。また、M&A(買収)においても、小林製薬は私好み。ビッグニュースになるような大きな企業ではなく、規模の小さい企業を買ってうまく育てているのです。
…と書いてきたんですが、変革(成功)企業71社を見たら、私の挙げた2社は両方とも入っていませんでしたね。変革はしたけど、失敗したの方に入っているのかもしれません。事業の売却があると定義の一つ「売上高成長率」では悪くなりそうですからね。
●後発で成功のユニ・チャーム、異業種参入と棲み分けの良い見本
2021/11/13追記:ユニ・チャームについての話を読んでいて、ここは「異業種参入」と「棲み分け」のどちらの例としても良い企業だな…と思いました。で、どちらのテーマの投稿に追加するかを迷って、「異業種参入」系のこちらに。ユニ・チャームは今おむつやマスクなどの衛生用品で有名ですが、最初は全然違ったはずなのです。
最初は何メーカーだったっけ?と
Wikipediaを見ると、建材メーカーでした。建材の製造を開始したのが1961年で、わずか2年後には生理用ナプキンの製造を開始。そして、タンポンやナプキンなどの生理用品や紙おむつで日本国内のトップシェアとなりました。見事な転換ぶりです。ちなみに当時の社名は「大成化工」。名前が似ていますが、大成建設とは資本関係等はないそうです。
一方、私が書こうと思っていた異業種参入はペット事業。ペット事業に参入したのは1986年と遅かったのですが、こちらも成功。イギリスの市場調査会社ユーロモニターのデータによると、ユニ・チャームは、国内のキャットフード市場では、マース ジャパンと並び最大手の一角で、国内組ではすでにナンバーワンとなっています。今では立派に主力事業のひとつです。
この原動力となったのが「棲み分け」だったと考えられます。ユニ・チャームの強みは、おいしさや素材にこだわった「グルメ系」でした。よりわかりやすく「棲み分け」の力が出たと思われるのが、さらに遅れて参入した健康系キャットフードの分野。飼い主に徹底して話を聞くことで、不満を解決する他にない商品を開発することで伸びました。外資系ばかりだったこの分野でも日本系トップとなる2位にまで成長しています。
ペット事業は後発でも「グルメ系」で棲み分けして成功、健康系でも後発でしたが他社が解決していない不満に特化して成功…という似たような形です。また、そもそも現在の主力である「乳幼児用紙おむつ」というのも、ユニ・チャームが世界初で開発したもの。他社と違う新しいジャンルを作ってしまうというのは、成功の秘訣みたいです。めちゃくちゃハードル高い話ですけど…。
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