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澤村正也・北大教授らのサイエンス掲載論文撤回 改ざん不正の疑惑


 <澤村正也・北大教授らのサイエンス掲載論文撤回 改ざん不正の疑惑>、<勝手に集まって触媒ができる!効率的で低コストが売りだった…>、<4論文で捏造519カ所、改ざん317カ所!大量の不正が判明>などの話をやっています。

2023/09/21追記:
●4論文で捏造519カ所、改ざん317カ所!大量の不正が判明
2023/09/30追記:
●政府の競争原理導入が全国で研究不正を増加させている? 【NEW】


●澤村正也・北大教授らのサイエンス掲載論文撤回 改ざん不正の疑惑

2022/04/29追記:北海道大が、大学の研究チームが2020年8月に科学誌サイエンスで発表した論文が2022年4月29日付で取り下げられることになったと発表していました。澤村正也教授らの研究チームが2020年8月に発表した論文です。撤回理由は、データに改ざんの疑いがあるためだとされていました。

 研究不正か 北海道大のチームが科学誌サイエンスの論文取り下げ:朝日新聞デジタル(佐々木凌2022年4月29日 9時30分)によると、北大は近く調査委員会を立ち上げ、不正があったのかどうかや経緯などについて調べ、処分を検討するとのこと。つまり、調査前で「データに改ざんの疑い」の段階で撤回。早くて良い対応です。逆に言うと、よほど明らかにまずいってことかもしれません。

 論文の内容は、脂肪酸を有用な有機化合物に合成するための人工触媒を開発したというもの。反応物の構造を調べる核磁気共鳴(NMR)の複数のデータで改ざんの疑いが明らかになったとされており、研究チーム側が自らサイエンスに取り下げを申し入れたようです。

 一方、別記事米科学誌掲載の論文撤回 データに改ざん疑義―北大:時事ドットコム(2022年04月29日)では、<再現性がなく、論文に使われたデータにも改ざんの疑義が認められたため、研究チーム側から取り下げを申し入れた>という書き方。先に再現性がないことが問題になり、そこから改ざん疑惑に発展したようでした。


●勝手に集まって触媒ができる!効率的で低コストが売りだった…

 研究内容についてももう少し知りたいと検索。当時の北大による宣伝ページが出てきました。【2022年4月29日(金)取り下げ】脂肪酸を有用物に変換する画期的な人工触媒を開発~化学原料のバイオマス転換で持続可能社会への貢献に期待~(創成研究機構化学反応創成研究拠点 教授 澤村正也)(2020年8月21日)というタイトルで、すでに今回の取り下げも告知されています。

ポイント
・炭素の鎖の中の狙った位置での化学反応を実現。
・化学反応の位置を正確に測るものさしを持った触媒を開発。
・単純な分子が自然に集まって触媒ができるので低コスト。

 これまでこれらの有機化合物を得るには,枯渇資源である石油に由来する単純な構造の化学原料から多くの化学反応を繰り返して合成するしかなかったのを効率よくできるようにした…というのが売りでした。また、そもそも脂肪酸の合成化学原料は、以下の理由により利用が進んでいなかったともいいます。

<脂肪酸の合成化学原料としての利用は頭部カルボキシ基の化学変換に限られ,尾部の炭化水素鎖はほとんど利用されてきませんでした。これは尾部の構成単位である炭素―水素結合が多数並んでいて,そのうちどれか⼀つを選んで反応させることができなかったからです>

 これを改善した…とされる理由は以下の通り。小見出しになった「低コスト」は本文になかったものの、前述の非効率な方法をしなくて済むから…という意味だと思います。なお、文字をデジタルテキスト化するOCRを使ったのか、サイトでは間違った字が多数ありました。以下、修正し損ねていたらすみません。

<研究グループが開発した触媒は,炭素―⽔素結合を炭素―ホウ素結合に組み替える働きをする金属中心に加え,脂肪酸頭部を捕まえる捕捉部位と両者を⼀定の距離でつなぐ調節部位を持っているので,調節部位の長さに応じた特定の位置の炭素―⽔素結合のみが化学反応を起こし,炭素―ホウ素結合に変換されます。こうして生成する有機ホウ素化合物は,さらに様々な形に化学変換することができます。
 金属中心と捕捉部位を繋ぐ調節部位は,頭部から反応点までの位置を調整する「ものさし」です。ものさしの⻑さを変えることで脂肪酸尾部の様々な位置の炭素―⽔素結合を自在に変換できる可能性があります。このように⽯油由来の原料から光合成によって⼆酸化炭素から作られるバイオマスに原料転換することで,持続可能社会の実現への貢献が期待されます>


●京都大で博士、東大や東工大など在籍…澤村正也・北大教授の経歴

 前述の通り、現在のところ疑義発生後の対応は良いように見え、どれくらいの責任があったかは不明ですが、澤村正也教授についての経歴も紹介しておきます。京都大で博士号をとって助手を勤めた後、ハーバード大、東工大、東大などで研究しているおり、ことごとくハイレベルな大学の名前が並んでいました。

<学歴>
1984 京都大学工学部合成化学科卒業
1989 同大学院工学研究科博士課程単位取得認定退学
1989 京都大学工学博士
<職歴>
1989 京都大学工学部合成化学科助手
1993 米国ハーバード大学化学科研究員(〜1994)
1995 東京工業大学理学部化学科助手
1995 東京大学大学院理学系研究科化学専攻助手
1996 同講師
1997 同助教授
2001 北海道大学大学院理学研究科化学専攻教授(2006 理学研究院化学部門に改組)
2005 北海道大学環境保全センター長(兼任、〜2011)
2011 北海道大学安全衛生本部 副本部長(兼任)
2016 北海道大学ディスティングイッシュトプロフェッサー
2018 北海道大学化学反応創成研究拠点WPI-ICReDD 教授(兼任)
(澤村 正也 – 北海道大学 大学院理学研究院より)


●4論文で捏造519カ所、改ざん317カ所!大量の不正が判明

2023/09/21追記:澤村正也・北大教授らの論文の件、大学の不正行為調査委員会による調査結果が出ました。記事タイトルを見て驚いたのが、「捏造519カ所、改ざん317カ所」という不正箇所の多さです。ちょっとやそっとの不正じゃなくて、めったにない大量不正。こんなに多いとは予想外でした。

論文の取り下げ、捏造519カ所、改ざん317カ所 北大が調査結果:朝日新聞デジタル(松田昌也 2023年9月20日)
<調査結果によると、調査対象となった主な論文は4本。筆頭筆者はいずれも、澤村教授が所属する北大の化学反応創成研究拠点で特任助教を務めていたフィリピン国籍のロナルド・ラゾ・レイス氏。調査委が、論文とレイス氏の実験ノートを比較検証すると、実験結果が存在しなかったり、実験結果の数値が改ざんされていたりする事例が多数発見された。レイス氏も記録しなかったことがあったことや、異なる数値を記載したことを認めたという。認定された不正行為は、4本の論文で捏造(ねつぞう)519カ所、改ざんが317カ所だった。>
<澤村教授については直接不正への関与はないとされたが、責任著者としてデータの確認作業が不十分で、管理責任は「高」とした。今後処分を決める。>

 不正の目的は不明。ただし、特任助教として雇用され、成果を出さなければという思いを抱き、インパクトのある論文を早く学術誌に掲載したいとの焦りが強くなったと推測されるといいます。レイスさんは2022年5月13日付で北大を退職。論文取り下げのしばらく後でなおかつ半端な時期であり、任期満了ではなく、不正問題による辞任かもしれません。


●政府の競争原理導入が全国で研究不正を増加させている?

2023/09/30追記:地元北大の話題…ということで、北海道新聞が北大の論文不正 信頼揺らぐ事態招いた :北海道新聞デジタル(2023年9月22日 05:00)という社説を書いていました。北海道新聞は有料記事だけ…というイメージだったのですけど、この社説は読めたので読んでみることに。

 前回書いたように、信じられないほどの不正箇所の多さが特徴的。北海道新聞によると、「不正を4年半続け、図表のほぼ半分が改ざんされた論文もあった」といいます。パターンとしては、組織として不正を量産するタイプの不正ではないとは思いますが、北海道新聞はもう少し広く責任を問うていました。

<監督責任のある教授はデータの確認を怠った。組織自体に問題があろう。(中略)なぜ不正が起こり、見抜けなかったのか、徹底した検証と再発防止策の構築が急務である。(中略)
 深刻なのは、不正が長期間、見過ごされたことだ。責任著者の教授は実験結果のデータを確認し、妥当性や不正の有無に注意を払う義務がある。
 元特任助教の実験ノートは記入日が未記載だったり実験結果と異なる数値が書かれたりしていた。論文作成時にノートを確認すれば容易に不正に気づけたはずだ>

 不正の舞台となった研究拠点は、10年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章名誉教授が担った化学反応の研究を発展させようと創設され、21年に特任教授のドイツの研究者もノーベル賞を受賞した…という、北大としては目玉の研究所だったみたいですね。それだけに残念なことになりました。

 また、北海道新聞は以下のように、全国で不正が相次ぐことについて、政府の競争原理導入での有期雇用増加の話を出しています。今回の不正も成果主義の弊害が出た可能性はありそう。競争原理自体は個人的には嫌いじゃないのですけど、研究には向かないのか、日本の重要論文もこれで激減しています。

<政府は現場に競争原理を導入し、有期雇用の研究者が増えている。生き残りのため資金獲得に追われ、研究活動に関わる時間が割かれていないだろうか。
 政府は雇用の安定化を図り、研究に集中できる環境の整備に一層の予算を振り向けるべきである。>


【関連投稿】
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