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日本で画期的なベンチャーが育たないのはモノマネしかできないから


 日本でベンチャーが育たない理由という話は巷で溢れていて今さらではあるんですけど、ロボットのベンチャー企業「SCHAFT(シャフト)」の元CFO加藤崇さんの話が興味深かったので…。
(<東大発ベンチャー・シャフト元CFO激白>世界一の国産ロボットはなぜグーグルに買われたのか(文藝春秋SPECIAL 2014冬 2014年12月17日 07:02)より)


 シャフトは東京大学のOBが設立したベンチャー企業で、卓越したロボット技術を持っていました。しかし、グーグルに買収されたことで、結果的に日本から離れてしまいました。

 そういった経緯もあり、加藤崇さんは「なぜ、日本でその可能性に賭けられる人がいなかったのでしょうか?」とよく訊かれるそうです。

 これについて、加藤さんは日本のベンチャーキャピタルのほとんどは、アメリカやヨーロッパでうまくいったビジネスモデルのモノマネしかしないダメだという、極めてショッキングな理由を挙げていました。

 シャフトのロボットの映像を見せると、日本のベンチャーキャピタリストは「ところで、アメリカのヒト型ロボット市場はどうなっているんですか?」「マーケットでの競合他社は?」と、他の動向ばかりを気にするとのことでした。

 一方、加藤さんはこれに対し、次のように答えていたそうです。

「そんなものはありません。ヒト型ロボットの分野では、日本が世界の先頭を走っているんです。アメリカのマーケットを見てもしょうがない。自分たちがどうやって初期の市場を形成できるか考えるべきです」

 素人の私はこれを読んで、「唯一無二なんだ、すごい!」と興奮しました。しかし、プロである日本のベンチャーキャピタリストの反応は異なります。なぜか"ポカンとしている"んだそうです。

 この理由はもう流れでおわかりだと思いますが、欧米のビジネスモデルのモノマネしか考えていないためです。そして、当然のごとくそんなリスクのある斬新な事業には、出資することもあり得ない…ということみたいです。

 画期的であれば画期的であるほど、日本ではベンチャーキャピタルの出資を受けられないという摩訶不思議なことになっているわけです。


 これだけでもたいへん残念な話ですけど、加藤さんが「何より幻滅した」というのは別の点です。先ほどロボットの映像を見せたという話をしましたが、"技術について深掘りして聞く人がいなかった"ということが、一番ショックだったようです。

 加藤さんいわく"産業を丸ごと作り出すようなイノベーションを支えることができる"ベンチャーキャピタリストというのは、「技術そのものを愛している人」だとのことです。

 たとえば、"アマゾン、グーグル、ネットスケープに出資して大成功したジョン・ドーア"さんは、"とにかく技術が好きで、革新的な技術に出合うと、話しながら興奮してきて、手が震えてくる"といいます。

 また、初めて出会ってから四時間半後には買収を提案したというグーグルのアンディ・ルービンさんは、そのとき"顔を真っ赤にして"いたと言います。やはりシャフトの技術に惚れ込み、興奮していたのでしょう。


 グーグル買収以前にしても、日本人にとっては残念な話が並んでいます。たとえば、グーグル買収以前のシャフトを助けていたのは、なんと"アメリカのDARPA(米国国防総省高等研究計画局)からの補助金"だったそうです。

 ここでは特に説明ありませんでしたが、DARPA(ダーパ)というのは革新的な軍事技術を開発している機関です。海外でも投資しちゃうんですね。

 国防高等研究計画局 - Wikipediaでは、"その中でも軍や科学技術基金などの組織が投資を行わない隙間への投資を積極的に行う。そのため、固定観念に囚われない自由度の高い研究への投資を重視している"という書き方もしていました。

 話が逸れますが、こういった革新性のためにDARPAはトンデモプロジェクトの宝庫のようにも見えます。しかし、インターネットの原型を作ってしまうといったものすごい成果も出しています。

 こういうモノになるんだかならないんだかわからないものにも投資するというのは、魅力的です。最近、働かないアリだけじゃない 高齢者に危険な労働をさせる働きアリの働き方で多様性の話を出していましたが、以前からこのDARPAはいいなぁ…と思っていました。

 ですので、民主党で一時チラッと出た「平賀源内記念研究所」のときも非難の声ばかりの中、民主党が下野した後に良いものに変えていけばいいんだから…と好意的でした。
(平賀源内記念研究所は日本版DARPA?)

 こういった多様性は、STAP細胞問題の大失敗として表れた成果主義的な集中投資とは真逆です。

 個人的には成果主義が好きなので擁護したいところなのですけど、こと研究に関してみれば、成果主義は向かないか、成果主義でない部分も強く残していかないといけないという考えに、最近なってきています。


 あんまり長く書いてないんですけど、軽く書くつもりがえらい時間がかかりました。日本が逃したチャンスはもう少しあったので、次回そちらの話へ行きます。 → 世界的な技術があるなら日本を出ろ ベンチャーの育たない日本

 関連
  ■DARPAはトンデモプロジェクトの宝庫
  ■働かないアリだけじゃない 高齢者に危険な労働をさせる働きアリの働き方
  ■平賀源内記念研究所は日本版DARPA?
  ■アメリカでトンデモ研究連発のDARPA 最大の成果はインターネットの原型の開発
  ■日本のベンチャー・起業環境への海外の評価、実は良い
  ■ベンチャー企業の課題・人材問題 家族同然の社員が50万ドル横領
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