ディズニーランドはブランド力がすごいです。そのおかげで普通ならブラック企業と呼ばれるような労働条件でもアルバイトが次々と集まりますし、マスコミも労働問題や食品偽装問題についてほとんど叩きません。見事なものです。
ただ、ここに来て、そういった見事なブランド戦略に変化が見られている…という記事がありました。タイトルに「安売り」とあったので値下げなのかと思いましたがそうではなく、「ディズニーランドが夢の国というブランドを捨てる」といった内容です。
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ディズニーランド、「夢の国」に「現実」取り入れ“安売り”開始か ブランド低下の懸念も | ビジネスジャーナル 2015.01.22 文=新井庸志/株式会社ホワイトナイト代表、マーケティングコンサルタント)
ブランド戦略の重要な変化を感じられるのが、スペシャルイベント「アナとエルサのフローズンファンタジー」。空前のヒットとなった『アナと雪の女王』に乗っかったイベントです。
何がこれまでと違うのか?と言うと、「松たか子をはじめとするアナ雪の声優陣、歌手を呼んだ」という点だそうです。私はディズニーランドに詳しくないので過去の事例はわかりませんが、作者の新井庸志さんは「決定的に異なる」としていました。
"「声優や歌手が登場したことで、来場者も喜ぶではないか」「大したことではないのではないか」という声が聞こえてきそうだ"と新井さんが書いているように、何が問題なの?と思うかもしれません。私もピンと来なかったです。
しかし、これは夢の国に現実を持ち込むということで、ディズニーランドにとっては本来ご法度なことだったようです。
そもそも、ディズニーランドのコンセプトは「夢の国」だ。どんな人も一歩足を踏み入れたら、現実社会のことは忘れてしまう。周りの人がまったく気にならず100%自分自身も夢の国の住人になれるというのが、ディズニーランドの醍醐味なのだ。それゆえ、前回と同じアトラクションしかなくても、9割以上の人がリピーターとして再来場しているのだ。この9割以上のリピート率というのは驚異的な数字だ。それを支えているのは特定のアトラクションではなく、「夢の国」という世界観なのだ。
(中略)非現実的な世界が徹底されているからこそ、ディズニーランドは唯一無二のテーマパークであったのだ。そこではミッキーも、ミニーも、アリエルも、架空のものではない。来場者と同じ世界のものなのだ。来場者は心底「夢の国」にいることを楽しめる。それがディズニーランドなのだ。
(中略)ディズニーランドは「夢の国」であって、現実とはできるだけ距離を置いたほうがよいからだ。だからこそ、映画版に出演した人々とディズニーランドは距離を置くべきだったのだ。マーケティング的にみれば、話題になるからという理由でディズニーの世界を安易に安売りしてはいけないのだ。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)はディズニーランドと比較されることが多いですけど、大抵「ディズニーランドには敵わないよね」という評価です。
ですので、これまたピンと来ない話ですけど、新井さんはディズニーランドが戦略転換したのは、USJに対して焦りのようなものを感じているのではないかといった指摘をしていました。
USJが近年魅力を高めたことで、関西圏だけでなく日本全国や海外からも集客できるようになってきたからだという理由です。
USJはディズニーランドとはコンセプトが異なるために、いろいろなものを取り入れることができます。「ハリー・ポッター」で成功した他、新しく『進撃の巨人』を取り入れたアトラクションの展開も予定しています。何でもありです。
しかし、ディズニーランドはディズニーというコンテンツのみで勝負しなくてはなりません。ディズニーランドがうらやましがるのもわからなくはないです。
ただ、それでも、ディズニーランドはその世界観を崩してはいけないというのが、前述のような新井さんの指摘ですね。
新井さんは老舗料亭「なだ万」が業績悪化でリーズナブルなブランドを作ったせいで、さらにブランド価値を損失したという例を出していました。
こういった価格面で「安売りしてはいけない」という指摘はよくあります。日本企業は商品の値段を下げるからいけないと言っている海外の人の記事も昔読みました。日本メーカーの商品はアジア向けとしては高いように思えますけど、いわゆる高級ブランドというところまで行くと苦手なのです。
うちでは過去に
売れる高級ブランドと売れない高級ブランドの違い 二極化の理由は?という話もやったことがあります。理想を言えば、こうやって価格ではなく価値で買ってもらえるような強いブランドを作るのが一番ですね。
ただ、新井さんはディズニーランドについては、私が最初に書いたような奴隷アルバイトによる「ホスピタリティも大きな魅力」もあるので、「王座はまったく揺るぎない」だろうとしていました。結局、しばらくは安泰なのです。
新井さんとしては、それでも「このようなプロモーションを続ければ、徐々にブランド価値の重要な部分が毀損してしまう」というのが心配な点のようです。ポイントは、今回の現実世界の取り込みが一時的なものか、本格的な戦略転換なのかという部分ですね。
これについては、今後のプロモーションに注目していかなくてはいけません。
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