白いカラスに関する話をあれこれ。<江戸時代には白いカラスがたくさんいた?>、<白いカラスは「城を枯らす」ので撃ち殺す!江戸時代の書物で登場>、<全身ではなく、翼の一部が白いカラスを日本で発見>といった話を書いています。(2017/5/20)
2023/09/21:
一部見直し
●日本でアルビノと見られる白いカラスが見つかる
2017/5/20:"全身真っ白 珍しいカラスを捕獲 京都 | NHKニュース"(5月18日 21時24分)によると、5月18日午後、京都府南部の和束町の水田で全身が真っ白な珍しいカラスが見つかりました。
「羽をばたつかせている白い鳥がいる」と通りかかった人から町に連絡があり、町の職員が捕獲しています。なぜ捕獲する必要があるかよくわからん話ですけどね。翌日には逃がすとのこと。
とりあえず、この捕獲によって詳しい情報が判明。体長35センチほどのカラスで、羽だけでなく、くちばしから足まで全身が真っ白でした。
このカラスは、生まれつき色素が少ない「アルビノ」と呼ばれる突然変異のカラスと見られています。アルビノは虚弱体質だというのは誤解ですけど、けがをしている様子はなく、羽をばたつかせて大きな声で鳴いているのに、飛び上がることはないとも書かれていました。これは単に飛ぼうとしていないだけで、アルビノの間違った知識による思い込みかもしれません。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170518/k10010986781000.html
●江戸時代には白いカラスがたくさんいた?
実はこの少し前に、江戸時代には白いカラスがたくさんいたという話が話題になっていました。どうもテレビで取り上げられていたようです。
そして、上記のニュースと合わせて江戸時代に白いカラスがいた証拠と理解している方もいました。ただ、もし仮に江戸時代に白いカラスがたくさんいたのであれば、アルビノが大量発生しているのではなく、そういう種類のカラスだったという可能性もありそうです。
なお、アルビノでたくさんいる…という例もきちんとあり、
赤い目・白い毛のウサギは特別だった アルビノを固定化した種類でやった日本のウサギが有名です。日本では兎=白のイメージなんですけど、実は兎としては特殊なのです。
●白いカラスは「城を枯らす」ので撃ち殺す!江戸時代の書物で登場
この江戸時代の白いカラスの話は正直言って胡散臭いと思ったのですけど、検索してみるとどうも江戸時代後期に肥前国平戸藩第9代藩主の松浦清(号は静山)が書いたエッセイ集『甲子夜話』(かっしやわ)が上記の話の出どころっぽいです。
ただし、『甲子夜話』だと「たくさんいた」という記載はありません。
「白いカラス」江戸時代のエッセイ『甲子夜話』より|貧乏酒によると、"天明の末の頃、京の都の近くで白いカラスが捕獲され、朝廷に献上された"とのこと。朝廷に献上されたほどですから、むしろ珍しかったようです。
この白いカラスは当初、「これはおめでたいことが起こる前兆だ」と見られていました。しかし、その翌年、京都は大火事に見舞われ、御所まで燃えるという災難が起きます。そして、松平信濃守が以下のように、白いカラスは殺すことになっていると言ったそうです。このセリフから「たくさんいた」と誤解したのかもしれません。
「私の実家の中川領内では、白いカラスを見かけたときは使用人にそれを追わせ、銃で撃ち殺すことになっています。というのは、白いカラスは『城を枯らす』ということで、忌み嫌っているからです」
<白いカラスは『城を枯らす』>というのは、要するにダジャレですね。この「城を枯らす」の話は白いカラスとセットで話題になっていて、そのせいで白いカラスが絶滅したと解釈しちゃっている人もいました。やはり今回の話題は、『甲子夜話』が元ネタと考えて良さそうです。
なお、松平信濃守は「田舎の風習みたいなものですが」と付け加えていたため、白いカラスに対する迷信を本気で信じていたわけではないのでしょう。京都で大火事ってのも、そもそも白いカラスが出現した直後の災厄ならともかく、翌年なのですからこじつけすぎでした。
●ギリシア神話と日本…神話における白いカラス 赤烏・青烏もいる
話は変わりますが、うちで過去に書いた
神話・伝承におけるカラスでも、白いカラスがちらっと出ていました。日本の神話・伝説上では、色違い・特徴違いのカラスが存在し、吉祥と霊格の高い順に以下の通り。白いカラスは吉祥ではあるものの、レベルとしては一番下。一方、一番上の八咫烏は普通に黒だとされています。
八咫烏
赤烏
青烏
蒼烏=白烏
また、ギリシア神話の太陽神アポロンに仕えていたカラスは、色は白銀(白・銀とも)だったと言います。こちらも良いイメージのあるカラスであり、美しい声を持ち、人の言葉も話すことができる非常に賢い鳥だったと言います。
これは「白」に関する話だけを取り上げたものですが、八咫烏がそうであるように、白に限らずカラスそのものが昔は結構良いイメージもあったよ…というのが、
神話・伝承におけるカラスのテーマ。カラスが嫌われ者の象徴となったのは、都市化が進んだ近年だけの話かもしれません。
●一見普通…全身ではなく、翼の一部が白いカラスを日本で発見
2017/09/02:全身真っ白のカラスではなく、翼の一部だけ白いカラスが、島根県益田市匹見町の水田地帯で見つかりました。
白い翼のカラス、島根で撮影 地元博物館の見立ては…:朝日新聞デジタル(礒部修作 2017年9月2日15時17分)で出ていた撮影者は、「カラスの翼が白いのは止まっていると気づかないのですが、飛んで初めて分かりました」と話していました。
羽をたたんでいるときは黒い部分しか見えないのかもしれません。翼は右側がおよそ半分、左側も一部が白く見え、爪も一部が白い状態のようです。
県立三瓶(さんべ)自然館サヒメル学芸課の星野由美子さんは、「一部の色素が遺伝子の変異により発現しないで、部分的に白化したのでしょう」と解説。このように一部が白化した野鳥は時々発見されるとしていました。
記事では終始「白化」という言葉を使っていましたが、おそらくこれはアルビノを生じることを意味しているのでしょう。例えば、
アルビノ - Wikipediaでは、"アルビノの個体を生じることは白化(はくか・はっか)、あるいは白化現象という"と書かれています。
ということで、もともと書いていた白いアルビノカラスと同系統で、その一部バージョンだったようです。
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