この前「天然農薬」というものを初めて知りました。
鰹節に発がん性物質ベンゾピレン EUは輸入禁止・日本は規制なしで使った以下の記事に関連する話が出ていたのです。
カツオ節は毒物?EUが輸入を認めない理由(田中淳夫) - Yahoo!ニュース(2014年12月21日 14時19分)
無農薬野菜では、野菜そのものが天然性農薬様物質を生成するという研究も出ている。それで我が身をかじる虫を追い払うのだという。
他の話はいいとしても、この天然性農薬様物質は本当かいな?と思って検索。すると、他では「天然農薬」という言い方で言及されているのを見つけました。
あまりたくさんの記事が検索で出てくるわけじゃないんですけど、たとえば、以下のもの。
そろそろ無農薬/有機栽培野菜に対する盲信を見直してはどうか - A Successful Failure(2008-08-17)
これはどうも
メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)
(松永 和紀)がベースとなっているみたいですね。
ブログによると、"植物は病害虫などのストレスを受けると体内に天然農薬とも言われる生体防御物質を生成することが知られている"としていました。これがどうも「天然農薬」みたいですね。
だいぶ古いですが、1990年の米カリフォルニア大学のB N Ames博士らの研究によると、"アメリカ人の食事に含まれる農薬物質の99.99%が植物由来の天然農薬である"とわかりました。ほとんど天然農薬なんだそうです。
発がん性の評価もちょくちょく変わってあれなんですが、"1990年当時52種類の天然農薬の発癌性に関して試験がなされていたが、その内の27種類の天然農薬に対して発癌性が認められてい"たということで、バッチリ発がん性物質も入っています。
(ただ、野菜に発がん性物質に入っていることは珍しくありません)
しかし、このことがただちに無農薬野菜=危険という話になるか?と言うと、そうではありません。無農薬野菜が危険だという話ではないのです。
ところが、こちらのブログさんでは、そこらへんの書き方が誤解を招くものでした。
もともと以下のような記載はあったようです。ただ、これは、注釈で下の方に書いていたという形なんですよ。
念のため言及しておくと、我々が通常摂取する量において天然農薬がただちに健康に害を及ぼすことはない。害が及ぶまで野菜を食べようとすると山のような量の野菜を毎日食べ続けなければならない。
で、本文では、「人体への毒性を考慮すべきは、残留基準が厳密に定められている残留農薬ではなく、植物が自ら生成する天然農薬なのだ」と書いていたり、小見出しを「残留農薬よりも天然農薬を気に掛けるべき」にしていたものだから、さあ、たいへん。
脊髄反射的な「農薬が危険と言うのと同様に無農薬野菜が危険だという言説は間違っている!」といった感じの反発を受けていました。
実際には前述のような注釈があるので、頭に血が上ったコメする前に見ておけよという話ではあるものの、誤解を招きやすい書き方をしちゃったってのはありますね。煽った書き方をしすぎました。
おそらく作者が強調したかったポイントとしては、「残留基準が厳密に定められている残留農薬ではなく」の「基準」のところでしょう。残留農薬は基準があり監視されているものの、天然農薬は基準がありませんのでノーガードです。おまけにもともとの量が圧倒的に天然農薬の方が多いのですから、理論上は確かに天然農薬の方がより危ないとは言えます。
とはいえ、天然農薬であっても気を遣わなくちゃいけないほど多い量ではないですから、心配することはありません。で、作者としては、0.01%しかない人口農薬なんかもっと気にすることはないよ…という話のようです。
また、もう少し新しい研究、なおかつ国内の研究も紹介されていました。2005年近畿大学農学部の森山達哉博士らによると、アレルギーを起こすアレルゲンの量は、農薬リンゴより無農薬栽培リンゴの方が平均2倍、最大5倍も多かったようです。これはどうも自己防衛の結果みたいですね。
あと、農薬についてですが、今の農薬が危険なら研究で実証すればいいはずです。農薬によって消費者にどのような健康被害が生じているか?という研究は、そもそも聞いたことないなと思って検索してみました。
しかし、検索して出てくるのは、農薬散布による人体の被害です。これは農薬自体が危険であることは間違いないという話であり、確かに憂慮すべき話ではあるのですが、今やっている消費者の口に入るものとは全く濃度が違うために同じ話にはできません。というか、こっちの話はあまり問題視されませんね。
あと、他にヒットするのは例の意図的に農薬を混ぜ込んだ冷凍食品の件、アクリフーズ農薬混入事件です。これもやはり農薬は危険という話なんですが、結局全く濃度が違う話なので今回の話の参考にはなりません。
結局、肝心の消費者についての話については、農薬散布の話が多すぎるせいかサクッとは出てきませんでした。
ただ、見つからない理由は、普通に人体への影響があるとは証明されていないためじゃないかと思います。人体に影響あるのなら信頼性のある研究を多くやればいいんですけど、そういう話になると陰謀論に逃げちゃうんでしょうね…。
(陰謀論というのは、食品を製造する大企業の圧力で研究が邪魔される、学会で村八分にされるといった話など。また、「信頼性のある研究を多く」というのは、多くの科学者の支持を得ていないだけで、科学誌に掲載されたことのある農薬の研究自体はかなりあるのでは?と想像したためです。世界的科学誌に載ったというSTAP細胞論文が有名になりましたが、無名誌であればさらにハードルが低く、トンデモ研究であっても結構簡単に掲載されてしまいます)
関連
■
鰹節に発がん性物質ベンゾピレン EUは輸入禁止・日本は規制なし ■
身近な食品に含まれる発がん性物質リスト 強さは天然・人工無関係 ■
有機農業は化学肥料よりずっと危険 食中毒では死ぬが、残留農薬では死なない ■
高く売れる野菜は有機栽培・無農薬じゃなくて普通においしい野菜 ■
地産地消のデメリット 自給自足農業は危険で環境にもむしろ悪い ■
食べ物・飲み物・嗜好品についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|