以前、
日本の一人当たりGDP、ドル換算で過去最高にというのをやっています。このとき見た3調査のうち、IMF版ではルクセンブルクが1位でした。
2010年/IMF
1位 ルクセンブルク 108,832 US$
2位 ノルウェー 84,444 US$
3位 カタール 76,168 US$
以下の記事では、これとは違う数字を使っていました。ただし、ルクセンブルクがダントツで1位であることには変わりありません。
(
失われた20年、実は日本の生産性は成長していた 労働、資本、どこで効率が高まったか分析が必要 大津 敬介 2012年8月23日(木))
1位 ルクセンブルク 年間948万円
2位 ノルウェー 年間638万円
3位 アメリカ 年間519万円
こっちの方がダントツ感が強いですね。記事では、3位アメリカの2倍近いと強調していました。ちなみに日本は17位で394万円ですから、確実にルクセンブルクの半分以下です。
しかし、ルクセンブルクが高いのには、からくりがあるそうです。
ただし、ルクセンブルグは税優遇措置のため金融機関など付加価値の高い国外企業の誘致に成功しただけでなく、人口が50万人ととても少なく、労働力の6割を隣接するフランス・ドイツ・ベルギーからの越境通勤者に頼っており、計算上国内居住者1人当たりの実質GDPが非常に高くなっているという背景がある。
人口のごまかしがあるという形であり、高いのも納得。「ダントツ世界一」という結果をそのまま受け取るわけにはいかないようです。
じゃあ、ルクセンブルクは大したことないのかな?と思うと、そうではありません。上記の後には、以下のような話が出ていて拍子抜けしました。
この12万5000人の越境労働者を国内居住者に含めた場合、ルクセンブルクの1人当たり実質GDPは757万円程度と下がるが、2位であるノルウェーの638万円よりもまだかなり高い。
ダントツではないけど、やっぱりまだまだ高いのです。
ルクセンブルクは労働生産性でも13,052円でトップです。ただし、これまた"ルクセンブルクの労働力調査は国内居住者に限定されて"いるという問題があります。
そこで"越境労働者を労働者数に含める"と、労働生産性は1時間当たり8,324円となります。2位のノルウェーに抜かされますが、ノルウェーは8,370円ですのでほぼいっしょ。したがって、作者の大津敬介さんは「ほぼ同水準」という言い方をしていました。
ちなみに3位はアイスランドで7,080円、日本は20位で4,580円です。
ルクセンブルクは小国であり、日本のような島国でもないですけど、上記を見た感じ、"付加価値の高い国外企業の誘致に成功した"「税優遇措置」というのが、ポイントでしょうか?
ただ、フィナンシャル・タイムズはこれにたいへんお怒りのようで、社説でルクセンブルクの税優遇措置を批判していました。
[FT]EUはルクセンブルクの税優遇を許すな(社説) :日本経済新聞(2014年11月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ルクセンブルクは人口わずか50万人だが、世界で2番目に豊かな国だ。この繁栄に欠かせないのが欧州連合(EU)の中心に位置する地理的条件で、おかげで周囲の経済大国との取引や輸出が可能になっている。もっとも、同国の経済を実際に支えているのは金融で、銀行の資産は国内総生産(GDP)の20倍にのぼる。海外から非常に多くの資金が流入しており、投資先としては世界10位にランクされる。
こうした資金流入の多くは節税目的であることが明らかになりつつある。
何に怒っているのかと思ったら、税金の問題でした。これ系の話はいろいろと複雑ですね。
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アップル課税逃れ 米にもアイルランドにも会社(住所)がない状態 ■
世界最大のタックスヘイヴンはイギリス(ロンドンのシティ)とアメリカ 節税と言うか脱税的な課税逃れもあるのでは?と見ると、"コンサルティング大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)から流出した大量のファイルでは、数百社にのぼる多国籍企業がこの小国でいかに実態のない事業を立ち上げているかが示されている"とも書かれていました。
上でアップルの話をリンクしたら、そのアップルも思いっきり出ていました。"既に米アップルとアイルランド政府との間で行われた問題のある取引の証拠が明らかになっている"という記述です。
なお、3つ目のリンクが
世界最大のタックスヘイヴンはイギリス(ロンドンのシティ)とアメリカとあるように、実際にはきれいごとを述べている国も裏では汚いことをやっているらしいです。
ルクセンブルクの手法はたいへんハードルが高そうですので、やっぱり日本が参考にするのは難しいかもしれません。
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