航空会社の日本撤退の話をまとめ。<海外航空の日本撤退の理由は成田縛り?カタール航空,ヴァージン・アトランティック航空が撤退>などをまとめています。
2023/01/23追記:
●エアアジアも日本撤退…ただし、単なる事業縮小ではない狙いも? 【NEW】
●海外航空の日本撤退の理由は成田縛り?カタール航空,ヴァージン・アトランティック航空が撤退
2015/2/6:スカイマーク破綻も国の方針の影響が強いという批判があります。その前のJAL(日本航空)とANA(全日空)の国際線枠配分でも、国にはおかしなところが見られました。そういった中、海外航空会社が相次いで日本を撤退する理由にも、国の方針の問題が絡んでいるとする記事が出ています。
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航空業界の「成田縛り」って何? どんな影響が出ているの? | THE PAGE(ザ・ページ) 2015.02.05 07:00(The Capital Tribune Japan)
<日本から外国の航空会社が撤退していくのは、基本的には需要がなくなっているからなのですが、理由はそれだけではありません。背景には「成田縛り」という行政指導の影響が大きいとの声があります>
「成田縛り」とはどんなものか?と言うと、"国土交通省が成田空港に発着枠を持つ航空会社に対して、羽田空港に国際線を新しく就航させる場合には、成田発着便を残すよう求めている行政指導のこと"だそうです。
この指導には実は法的根拠がありません。勝手にやっているだけです。しかし、"航空会社にとっては、実質的に政府からの命令と解釈されています"。「お願い」と言いながら実質的には「命令」である…こういったことは力関係や立場が異なる間ではよくあることです。
国土交通省が「成田縛り」を指導する理由は、"便利な羽田空港に路線が集中してしまい、成田空港を存続させることができなくなってしまう"ためです。成田空港が不便であるため、自由にやらせていると、みんな羽田空港に行ってしまうとのことでした。
<成田空港を運営する成田国際空港株式会社は政府が株式を所有する国有企業で、多くの公務員が天下っています。また、空港の整備業務や空港ビル内に入居する店舗など、経済的な波及効果も少なくありません。このため、成田空港が存続できなくなると、様々なところに影響が出てくるわけです>
イギリスのヴァージン・アトランティック航空最後の便は2015年2月1日。その翌日には、カタール航空が日本路線からの撤退を検討しているとの報道されました。一応、"ヴァージン航空は、デルタ航空との共同路線拡大を理由として"いますし、カタール航空も撤退理由がわかっているわけではありません。
しかし、"航空会社にしてみると、採算性の悪い成田便を残したまま羽田便を新設しても、日本路線全体としての利益は薄く"なるため、成田縛りの影響がないとも考えづらいようです。
ひょっとしたらこの成田縛りの問題はTHE PAGEしか書いていないかもしれないと思って、念の為に検索してみました。以下の記事によると、ヴァージン・アトランティック航空は成田縛り以前に、そもそも成田空港しか使わせてもらっておらず、収益性の高い羽田空港への参入が認められなかったようです。
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ヴァージン・アトランティック航空、2月1日で日本撤退 日本語案内も終了 : Traicy 2015年01月28日13時37分
<ヴァージン・アトランティック航空は、1988年に日本支社を開設。翌89年に東京/成田〜ロンドン/ヒースロー線に就航し、約25年以上に渡って運航を続けてきた。東京/羽田への就航が実現せず、収益性が高いビジネス需要の獲得が見込めないことから撤退を決めた>
先ほどのTHE PAGEは、"海外の航空会社との競争が緩和される"ため、成田縛りが日本の航空会社の保護政策になっているといった指摘もしていました。ヴァージン・アトランティック航空に至っては、羽田枠ゼロ。最初にANAとJALで格差があるという話をしましたが、それ以上に海外航空会社には格差があるようです。
こういった日本の会社を守る政策には賛成の方が多いようですけど、実は本当に国民の利益になっているかは微妙なところ。"日本の航空料金は世界的に見ると突出して高く、国民の負担は極めて大きくなってい"るためです。同様のことは輸入物の高い関税にも言われており、「隠れた税金だ」といった指摘もされています。
一方、以下の記事によると、ヴァージン アトランティック航空の撤退との合わせ技で、成田縛りは国内航空会社であるANAにも悪影響を及ぼしそうな感じです。
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ヴァージン アトランティック航空、日本撤退 25年9カ月で By Tadayuki YOSHIKAWA 2015年2月1日 21:00 JST
<2009年からVIR(引用者注:ヴァージン アトランティック航空)とコードシェアを実施してきた全日本空輸(ANA/NH)では、成田-ロンドン線の利用者を羽田-ロンドン線に振り替えた。一方、羽田から国際線を運航する際、成田から同じ国へ向かう便を残す、いわゆる“成田縛り”があるため、ANAの羽田-ロンドン線を今後どのように扱うかが課題となる>
ただ、成田縛りがあるからと言って、国内航空会社が羽田空港から撤退してしまうということはありません。また、さっきの例からしても羽田枠は国内航空会社に有利になってそうです。成田縛りがあることは、海外航空会社の方が悪影響が強く、相対的に国内航空会社に有利に働くという話なのだと思われます。
●エアアジアも日本撤退…ただし、単なる事業縮小ではない狙いも?
2023/01/23追記:えらく紹介が遅れましたが、日本撤退絡みで
エアアジア、日本撤退に透けるしたたかな戦略:日経ビジネス電子版(飯山 辰之介、日経ビジネス記者)という記事をブックマークしていました。これは新型コロナウイルス問題の初期の話で、もともと赤字だったことが最もわかりやすい撤退理由です。
<マレーシアを拠点とする東南アジア最大の格安航空会社(LCC)、エアアジア・グループが日本事業から撤退すると報じられた。(引用者注:新型コロナウイルス問題により、)世界的に渡航制限が敷かれグループの経営が悪化していることや、日本市場の回復が見込めないことがその理由という。
(中略)エアアジアの日本事業は赤字が続いていたため、(引用者注:新型コロナウイルス問題による)未曽有の危機を乗り切るために事業を断念せざるを得なかったとの見方は間違いないだろう>
さて、私が興味あったのは、これ以外の理由。タイトルでは<日本撤退に透けるしたたかな戦略>と書かれており、記事本文でも、<一方で、エアアジアが東南アジアで進めてきた新事業と照らし合わせて見ると、今回の撤退には別の側面も浮かび上がってくる>としていました。記事を読んでみると、これは別事業に集中するためという話のようです。
<収益源を多様化するため、エアアジアは18年ごろから新しい事業に着手していた。それがデジタル事業の拡大だ。フェルナンデスCEOが今、ライバルと見ているのは航空会社ではなく、配車サービス大手のグラブ(シンガポール)やゴジェック(インドネシア)といった東南アジア域内でスーパーアプリ(1つのプラットフォームで様々なサービスを利用できるアプリ)を展開するデジタル企業だという>
<フェルナンデスCEOがライバルと見るグラブやゴジェックは配車や決済を軸にしており、通販などその他のサービスについては基本的に他社に依存している。一方、エアアジアは空運で培った商品や食品販売のノウハウなどを活かし、ほぼ自前でネット通販からホテル予約まで展開する。こうしたサービスをポイントプログラムでつなげ合わせ、相乗効果を狙っていくものと見られる。日本で楽天が手掛けるデジタル事業と似ていると言えるかもしれない>
<東南アジア各紙の報道によれば、フェルナンデスCEOは「デジタル事業については新型コロナ危機が顕在化する以前、2年前から注力しており、パンデミックによって取り組みが加速した」と話している。この観点からすると、エアアジアの日本からの撤退は新型コロナ危機を受けた経営の縮小均衡策というより、デジタル事業の強化に向けたグループ内の事業再編の一環として捉えられる。つまり選択と集中だ>
<ここから新事業を成長させるハードルはとても高い>とされており、正直無理そうな感じ。ただ、違う事業を柱として育てよう…というのは良い方向性でしょう。同じ日経ビジネスオンラインの別記事では、本業を変える企業の方がそうでない企業より伸びやすい…というデータを出していたことがあるんですよ。
ホテルがこうした事業転換の成功例に学ぶ場合、団体客から個別客に変える…といった小手先の変化ではなく、そもそも宿泊とほとんど関係ないことをやる…というのが正解だとも以前書いています。そうは言ってもこの事業転換案は、思いつくことすら難しいのが現実。エアアジアはそこをクリアしており、失敗したとしても、この時点ですごいと思います。
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