2015/2/6:
●アベノミクスは格差を拡大していない!ピケティ氏の答えは…
●ショック!アベノミクス支持のクルーグマンはピケティも支持
●クルーグマン教授はピケティの経済格差拡大の指摘を支持
●右派のピケティ批判は中傷ばかり…クルーグマン教授が指摘
●クルーグマン教授、保守派の「専門家」をボロクソに批判していた
2014/9/30:
●クルーグマン、安倍政権の消費税増税を批判 5%に戻せ…とも
●太平洋戦争も?「戦争は政治家の利益のためだけ」と批判
2019/11/02:
●右派はなぜか金持ちを優遇する…大臣も「貧乏人は身の丈に合わせて」
●低所得者層より高所得層が有利という厳しい現実に熱すぎる名言
●アベノミクスは格差を拡大していない!ピケティ氏の答えは…
2015/2/6:トマ・ピケティ博士の来日すると、日本はピケティフィーバーみたいな感じに。こんなに盛り上がると思っていなかったので予想外でした。で、ピケティ博士の話をやるのならそのときに良かったんですが、結局旬を外した時期になってしまいました。
ピケティ博士に関しての記事では、アベノミクス批判などともに使われることが多かったです。〈株や不動産などの投資で得られる利益率は、労働による賃金の上昇率を上回る。その結果、財産のある富裕層がさらに金持ちになり、格差拡大は止まらない。是正のためには、富裕層への世界的な資産課税強化が必要〉と理解されているためでしょう。
西村康稔内閣府副大臣は、政府の「雇用者100万人増」や「トリクルダウンの試み」について説明し、「アベノミクスが格差を拡大しているというのは誤解である」と力説したことについても、やんわり反論していたと紹介されていました。
「確かに日本の格差は米国ほどではない。しかし、上位10%の富裕層の所得は、国民所得全体の30~40%まで広がっています。日本がゼロに近い低成長なのに、上位の所得が増えているということは、裏を返せば、実質的に購買力を減らしている人がいるということです。日本の最高所得税率は1960~70年代より下がっています。上位10%の所得が増えているのに、税率が低い状態では格差が広がるばかり。所得税の累進性を高めるべきです」
(
日刊ゲンダイ|「21世紀の資本」著者ピケティ氏がアベノミクスに“ダメ出し” 2015年1月30日より)
私は西村康稔内閣府副大臣が、「トリクルダウン」と言っているのにも驚きました。政府の人がトリクルダウンについて実際に言及しているとは思っていなかったため。ずる賢く言及せずに匂わす程度だと思っていたんですが、本気でトリクルダウンを政策の正当化に使っているんですね…。
●ショック!アベノミクス支持のクルーグマンはピケティも支持
また、ピケティさんは、消費増税や量的緩和についても厳しい見方だったと紹介されていました。こちらの主張にも経済格差という観点があるのが、彼の特徴でしょう。
「消費増税は正しいのかどうか。むしろ低所得者への課税を弱め、富裕層の資産課税を強めるべきです。紙幣を増刷することもいいのかどうか。税制改正より紙幣を刷る方がやりやすいですが、緩和したマネーがどこへ行っているのか分かりません。金融政策だけでなく、財政改革、教育改革、累進性のある税制改革も必要です」
このような話を見て保守派の人は苦々しく思い、この左翼め!と思うかもしれません。実際、ピケティ博士はフランスで左派政党に関わっており、左派よりの政治的な立場のようです。
ところが、おもしろいのが、ピケティ博士が非主流の変てこな経済学派ではなく、王道路線を学んでこういった理論を唱えているということ。安倍政権が「アベノミクスを支持した」として利用していたノーベル賞のクルーグマン教授なんかもむしろピケティ博士の説に好意的で、クルーグマン教授の推薦がピケティ博士のブレイクにも一役買っているようです。
ここがすごくおもしろいなぁと思って紹介したかったんですが、先に言っておくとピケティ博士がアベノミクスを否定しているというのもミスリードであることは指摘しておきます。ピケティ博士はやはりクルーグマン教授がそうであったように消費税増税には否定的であるのですが、アベノミクスの目指すインフレ誘導そのものは支持しています。
●クルーグマン教授はピケティの経済格差拡大の指摘を支持
では、クルーグマン教授の話。ピケティさんを支持しているということに関しては、
ポール・クルーグマン「失敗してるピケティ批判」 — 経済学101(2014年6月6日 by optical_frog)という記事(コラム?)があります。
これは、『フィナンシャル・タイムズ』の経済編集者クリス・ジルスさんのピケティ批判について書いたもの。ジルスさんは、「大金持ちに関する比較的近年の調査推計は,それ以前の税金データ推計よりも小さい」として、「富が少数に集中する明瞭な傾向はない」と主張したそうです。
しかし、クルーグマン教授はこれを完璧に否定。元の言語だとどういう言葉だったのかわからないのですけど、和訳では「ブッブー! まちがいデース!」となっています。
欧米人らしい「ジルス氏はリンゴとオレンジを比べるようなムリなことをして,結果としてレモン〔不良品〕がでてきたってところ」というたとえをしていました。おそらく本来なら比較できないデータを都合よく比較しているという批判でしょうね。
●右派のピケティ批判は中傷ばかり…クルーグマン教授が指摘
実を言うと、上記ページではピケティさん支持だけでなく、保守派・右派を支持していないことがわかる記述もありました。
"右派ではかなり大きな格差否定産業が続いてる.この否定論は,(中略)首尾一貫した反論をやってるわけでもない.(中略)どれかうまく当たるヤツがあればめっけものというわけだ"
"22年前にぼくが『アメリカン・プロスペクト』に書いた記事をみてもらうといい:「金持ち,右派,事実」"
他に
ポール・クルーグマン「ピケティ・パニック」---格差問題の言及者に「マルクス主義」のレッテルを貼る保守派はこれにまっとうに対抗できるのか? 『現代ビジネスブ レイブグローバルマガジン』---「ニューヨークタイムズ・セレクション」より | The New York Times | 現代ビジネス [講談社](2014年05月19日(月) ポール・クルーグマン)という記事でも「保守派」という言葉とピケティ教授の名前がいっしょに出ています。
フランスの経済学者トマ・ピケティの近著『21世紀の資本論』は、正真正銘の一大現象だ。これまでもベストセラーになった経済書はあったが、ピケティ氏の貢献は他のベスセラーの経済書とは一線を画す、議論の根本を覆すような本格的なものと言える。そして保守派の人々は、すっかり怯えている。(中略)
まあ、頑張ってやってみることだ。この論争に関して特筆すべきは、これまでのところ、右派の人々はピケティ氏の論文に対して実質的な反撃がまったくできていないという点だ。きちんと反撃するかわりに、反応はすべて中傷の類ばかりである。特にピケティ氏をはじめ、所得および富の格差を重要な問題と考える人に対しては、誰であれマルクス主義者のレッテルを貼る。
「マルクス主義者」ってのがさっきの非主流派うんぬんなんですが、さっきも書いたようにどうやらピケティ博士はそういうところではなく、真っ当なところの出身らしんですよね。非主流派じゃないのです。
●クルーグマン教授、保守派の「専門家」をボロクソに批判していた
上記の続きを見ても、クルーグマン教授は保守派に大して極めて辛辣です。
富裕層に対する税率の引き上げを正当化するための診断として使われてしまいかねない、という恐れを抱く保守派の人々は、何をするだろうか?ピケティ氏を強力に論破するよう試みることも可能だが、今のところ、その兆候はまったく見られない。前述したように、その代わりに聞こえてくるのは中傷ばかりだ。
これは驚くことではない。私は20年以上にわたって格差の問題を論じてきたが、保守派の「専門家」が、これまで、自らの理論につまずかずに、これらの数字に対してうまく異議を唱えられた試しがない。(中略)
これまでの右派の標準的な作業手順は、自由市場ドグマのいかなる面で疑問を投げようとも、共産主義者呼ばわりをすることだった。
というか、クルーグマン教授がこんなに保守派・右派に対して批判的なこと言っているってのは知りませんでしたわ。本当ボロクソですね。
●クルーグマン、安倍政権の消費税増税を批判 5%に戻せ…とも
2014/9/30:
本誌独占インタビュー ノーベル賞経済学者クルーグマン 「日本経済は消費税10%で完全に終わります」 現代ビジネス(2014年09月16日)という記事がありましたが、タイトルはちょっと大げさ。本文にはそれに該当する言葉はありません。
ただ、安倍政権の消費税増税に対して批判的なことは確かであり、そのような発言は多数見られました。
「消費増税は、日本経済にとっていま最もやってはいけない政策です」
「消費増税という『自己破壊的な政策』」
「安倍政権は、本当に『しでかしてしまった』」
「もし安倍政権がゴーサインを出せば、これまでやってきたすべての努力が水泡に帰するでしょう。日本経済はデフレ不況に逆戻りし、そこから再び浮上するのはほとんど不可能なほどの惨状となるのです」
クルーグマン教授はある意味タイトル以上に過激は話もしています。なんと「増税した消費税を一時的にカット(減税)すること」を求めています。消費税増税どころか、5%に戻せというのです。これには驚きました。
●太平洋戦争も?「戦争は政治家の利益のためだけ」と批判
あと、インタビューを読んでいると、別な意味で安倍政権支持者の方が耳を塞ぎたくなるようなことを言っていました。戦争批判です。クルーグマン教授は「産業革命以前の戦争というのは、国家が利益を得るために行われてい」たが、「近代国家による戦争は、戦勝国であってもペイしません」としていました。
この言い方だとかつての日本が行った戦争が批判の対象に含まれているかどうかは明らかではありません。しかし、この後「この100年間、いまも世界各地で戦争が起こり続けています」としていたので、日本の戦争も含まれていることがわかります。
また、この直前は「戦争というものが、誰もが望まない惨劇であることは言うまでもありませんが」ですので、当然ながら戦争という行為自体を批判していることもわかります。
経済の停滞期に景気を良くするために戦争を起こすイメージがありますが、クルーグマン教授はそうではなく、戦争は"国民の注意をそらす"ため、"自分の政治的なポジションを守る"ために起こされるといった説明でした。以下もその類の発言です。
「政治的に得をするために国家の指導者が戦争に走る」
「どんなばかげた戦争をする悪い指導者であっても、常に支持率は上がるものなのです」
「国家の指導者が経済的な実績を示せなくなった時、武力を利用して権威を回復しようとする」
戦争をする国の指導者をけちょんけちょんに言っています。これには頭に来る人も多いんじゃないですかね…。
●右派はなぜか金持ちを優遇する…大臣も「貧乏人は身の丈に合わせて」
2019/11/02:クルーグマンさんの話じゃないんですが、追記すべき適切な投稿が思いつかなくてこちらに。「なぜかどこの国でも右派の方は金持ちに肩入れするよね」という繋がりで、この投稿を選択しました。安倍政権が2020年度から始まる新しい大学入試の英語で、民間試験を活用しようとしていた話の絡みです。
当初の予定では、受験生は、新しい「英検」や「GTEC」(ベネッセが実施)など七つの民間試験で、試験前に選んだ2回までの成績が大学へ通知されることになっていました。ただ、民間試験の場合、それぞれの学生の地元で受けることができないという問題が発生します。
多くの場合、民間試験は都市部で実施されるため、離島や都市部から離れた場所に住む受験生は、試験の会場へ足を運ぶ必要があり、さらに、宿泊費までかかる人が出てきます。もちろん試験は無料ではないため、ここでも費用がかかるでしょう。
また、本番前の練習ということで、敢えて大学に通知せずに試験を受けておくという使い方も考えられます。受験生の家庭環境や居住地によって、差が生まれやすい制度でした。
こうした「公平性」に多くの批判があったため、安倍首相の側近としても知られる萩生田光一・文部科学大臣にこういった質問が出ました。すると、よりによってこの公平性について、「自分の身の丈に合わせて2回(の英語民間試験)をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」と回答してきました。
(
「身の丈」発言は英語入試を「正しく」表した - 刀祢館正明|論座 - 朝日新聞社の言論サイト 2019年10月30日より)
辞書で「身の丈に合わせて」を引けばわかりますが、これは経済力などで自分のレベルをわきまえて合わせよという意味で使われます。「貧乏人は貧乏人なりに頑張って」という内容だと考えざるを得えず、日本語を知っている人なら良い解釈は不可能です。
今回の場合は、特に最後の練習にテストを受けるパターンで考えるとわかりやすいですね。お金持ちは何度か練習してから本番の2回を受けてもいいけど、「(貧乏人は何度もテストを受けようとせず、)身の丈に合わせて2回をきちんと選んで勝負して頑張って」と言っているわけです。
●低所得者層より高所得層が有利という厳しい現実に熱すぎる名言
このように日本であっても海外であってもお金持ちを優遇するのは右派。法人税減税に熱心なのはどこの国でも大体右派ですし、社会保障など福祉的なものを嫌うのも右派です。本来、右派はお金持ちを優遇する思想ではないと思うので、不思議なんですけどね。
これは元からあった右派の思想というのではなくて、反対勢力の思想の反動的なものでしょうか。中道のリベラルや左派は明らかに低所得者層に味方しています。リベラルの立憲民主党の枝野幸男代表は、理想通りには行かない現実を冷静に認めつつも、非常に熱い正論を言っていました。名言でしょう。
「現実的には生まれ育った家庭環境によって教育の機会はすべてイコールにはならないという現実があるが、いかにイコールにするかが政治の役割だ」
(萩生田大臣の「身の丈」発言追及へ 立憲 枝野代表 | NHKニュース 2019年10月26日 より)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191026/k10012151821000.html
なお、国民民主党の玉木代表は、「地方出身者として発言に強い憤りを感じる。すべての子どもにひとしく学ぶ機会を提供する環境を作ることが教育行政の肝だ。格差を容認するような発言は看過、容認できず、強く抗議したい」と言っていました。
海外はともかく日本の右派・自民党の場合は、都市部ではなく地方優先というのも特徴だと思うのですけど、今回のケースでは逆に地方の人たちを切り捨てるものに…。地方の皆さん、バカにされてますよ。
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