2022/01/15追記:
●デジタル先進国エストニアの電子投票、利用率は高くなかった… 【NEW】
●先行導入していた京都市が電子投票をやめる!実は問題点だらけ?
2015/2/8:京都市が電子投票をやめるというニュースがあってびっくり! 京都市が導入していた電子投票は、専用端末のタッチパネルに触れるだけで投票できるというものでした。開票のスピードアップも期待できるとして、02年に岡山県新見市が市長選と市議選で初めて導入しています。
京都市の場合は、これまで市長選の一部の投票所で電子投票を実施。04年の市長選から東山区の投票所で採用し、08、12年には上京区でも実施していました。しかし、システム故障の懸念や高額なリース代がネックとなり利用が広がらず、これまでに採用したのは全国10市町村しかありませんでした。
さらに、記事報道時点では、実施可能なのは京都市と新見市、青森県六戸町の3市町しかなかった状態で、京都市も2016年の市長選からやめる方針に。機器のリース代などがかさむ割に、国政選挙への広がりが期待できないと判断したといいます。
(
京都市が電子投票撤退へ 市長選一部導入、コストかさむ:朝日新聞デジタル 2015年2月5日15時12分より)
●電子投票のメリットだと思ったコスト面で逆効果…コストアップに
電子投票のメリットはコスト削減だと思っていたんですが、やめた理由はリース代が大きいという正反対の理ものした。国政で使用できないというのも大きそうですけどね。というか、これは投票所に逐一配置するという方式なんですね。私はネットから投票可能なのだと思って読み始めていました。思っていたのと違います。
この方式について、記事では「タッチパネルに触れるだけで投票」としていますが、これは大したメリットではありません。「開票のスピードアップ」の方がメリットですよね。投票所での人員削減の可能性もあり、人件費削減のメリットはあります。でも、今のところそのコスト削減効果を上回るコストがかかるという結果でした。
あと、「タッチパネルに触れるだけで投票」は、"日本の国政選挙はどうして「電子選挙」を導入しないの? | web R25"(2010.07.01 押尾銅山)によると、「自分で書くのがむずかしい障害者も代筆なしで投票できる」というのも書いていました。なるほど、恩恵を受ける人数は少ないでしょうが、そういうメリットもあるんですね。
<電子投票のメリット>
・開票時間の大幅な短縮や人件費の削減
・疑問票や無効票が出ない
・自分で書くのがむずかしい障害者も代筆なしで投票できる
http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/rxr_detail/?id=20100701-00002771-r25
●電子投票最大の問題点はコストではなくて別のもの
一方の問題点の方。こちらの記事ではコストではなく、信頼性という問題点を大きく取り上げていました。確かにこちらの方がネックかも知れません。
・じつは、電子投票でおこなわれた地方選挙はトラブルが相次ぎ、導入した10の自治体のうち、すでに4つの自治体が電子投票から撤退している。
・たとえば、03年の岐阜県可児市議選ではシステムが一時停止し、誤操作で投票総数が投票者数を上回るなど大混乱。非電子投票の再選挙に追い込まれ、同年の神奈川県海老名市長・市議選でも同じトラブルが発生した。
海外事例でも問題が報告されています。アメリカでは、保守派の不正を疑わせるような事例があったようです。
・米国をみても、04年の大統領選で有権者の8割以上が民主党員の地域で共和党のブッシュ大統領(当時)が勝ったり、投票者数が638人なのにブッシュさんが4258票を獲得したりする異常な事態に。電子投票の信頼性が大きな問題になった。
この記事もオンライン方式じゃないのを想定していますね。"電子投票は特殊な機器を使うため、一部の業者に利権が生じるといった心配もある"としていました。こういう癒着の問題は日本の方がもっと危なそうです。
●海外ではどうなの?電子政府の先進国エストニアの場合
上記は古い記事で2010年のもの。"すでに米国の一部の州やインド、韓国、ブラジル、ベネズエラ、フィリピンなどの国では導入されている"と書いていました。しかし、今有名なのはエストニアの例です。"同国の電子投票は、国民IDカードをパソコンに接続したリーダーで読み取り、本人確認を行う仕組み"ということで、私の想定したオンライン方式です。
ただ、セキュリティ面は極めて「杜撰」(ずさん)と指摘する記事が出ていました。信頼性に問題があるとは書いていないものの、そうじゃなくても心配になる内容。
「電子政府先進国」エストニアの電子投票システムは穴だらけ? ――PacSec 2014リポート | サイバーインシデント・リポート(November 25, 2014 12:00 by editor of sprout)では、以下のように書いています。
<「電子政府の先進国」と呼ばれる同国では、インターネット認証とデジタル署名のための電子証明書を記録した国民IDカードを15歳以上の国民に配布し、行政・民間のサービスを利用できる政策を取っている。また行政のデジタル化を進めており、2007年2月に世界で初めて電子投票も行われた。(中略)
2013年、エストニア政府は投票システムの透明性の保つため、電子投票システムの「全体」を公開した。しかし、専門家がチェックしたところ、この公開されたコードは全体の一部でしかなく、主にサーバーサイドのコードでのみであった。おまけに、コードの記述が非常に杜撰なうえ、ソースコードを無断に使用している個所ばかりで、オリジナルコードは10%程度しかなかったという。PacSecの発表者らは「ひどいエンジニアリング技法の数々」と痛烈に非難していた>
●電子投票やオンライン投票でのハッキングなどの不正は可能なのか?
web R25は2010年の記事で、エストニアは2014年。間の2012年には、アメリカのワイアードの記事で、
電子投票が浸透する日はやってくるのか?(2012.11.21 WED)というのがありました。アメリカでも、オンライン方式をしているところがあるようです。
2009年には、ハワイ州ホノルル市議会の改選で初めての完全なデジタル選挙が行われました。有権者はそれぞれコード番号を受け取り、これを使って投票を行うためのサイトにログインするといったやり方です。ただ、これまた信頼性が課題だとされています。やはり信頼性が最大のネックですね。
・「New Scientist」の記事は、ハッカーに対する懸念が、電子投票やオンライン投票のシステムに対する不信感をいかに増大させているかを明らかにしている。
・インターネット投票はとりわけセキュリティ上の理由から、まだ州や連邦レヴェルの選挙ではまだ認められていない。
・伝統的なシステムでは、不正を行うためには投票用紙を物理的に改ざんする必要がある。これに対し、「オンラインシステムを用いる場合のリスクは、悪意のある人物が記録された大量の票を簡単に改ざんすることができることです」と、カリフォルニア大学バークリー校のデイヴィッド・ワグナーは述べている。
信頼性に関しては、象徴的なエピソードもありました。2010年にコロンビア特別区は、学校評議会の選挙のために用いるデジタルシステムをテストしようと考えて、選挙のあとから投票結果を改ざんするようハッカーたちに呼びかけました。結果、ミシガン大学の情報学の専門家、アレックス・ハルダーマンさんは、たったの36時間で、物語上の架空の人物を学校評議会の議長として当選させることに成功。やはりダメみたいですね。
●成功例としてはブラジルやオーストラリアがある!
一方、記事ではブラジルを成功例として挙げていました。オンライン投票ではなさげですけどね。
ブラジルでは、1996年からDRE(電子的直接記録方式)と呼ばれる電子投票システムで投票を行っています。有権者は、ディスプレイとキーボードの付いた小さな装置を利用。機械は候補者のリストと関連する画像を表示します。投票するには、キーボードで数字を入力するだけ。操作が終われば、投票を行ったことを確認する証明を受け取ることができます。
ただし、成功例とされたブラジルでの方式にも批判があります。ブラジリア大学情報学教授ディエゴ・アラーニャさんは、投票者の匿名性を保証するために記録された投票をシャッフルするアルゴリズムに欠陥があるのを見つけました。
オーストラリアのある州では、もっとセキュリティの高いものを利用しています。ただ、これは結局オンラインではないので、京都市と同じくコストの問題が出てくると考えられます。
●電子投票で高齢者と若者の投票率はどうなる?
話は変わりますが、
投票率の低い選挙は意味がない選挙なのか?マスコミの偏向報道でも書いたように、投票率が高くある必要はないと私は思っています。権利を行使したくない人はしなくても良いのです。個人的にはわけもわからずに投票する人が多い方が、政治が望ましくない方向に進む危険性すらあると考えています。
そういった投票率が高くあるべきかどうかは別として、オンライン投票は投票率の上昇をもたらす可能性があります。これは人によってはメリットだとみなすでしょう。
うちでは過去に
政治不信と投票率は関係なかった?というのも書いています。ここで出てきた研究では、単に投票しやすいところに投票所があるというだけで、投票率が上がることがわかっていました。したがって、ネット投票ができれば、おそらく投票率が上がると考えられます。ワイアードでは、このことに関係する意外な話がありました。
<驚くべきことにこのシステムにより関心をもっているのは、コンピューターにあまり慣れていない年配の人々だということをアンケートは示した。この結果はおそらく、物理的に投票所に足を運ばなければいけないという現在の不利益が原因なのだろう>
これを知ってしまうと、もともと高い老人の投票率がさらに上がると反対する人も増えるかもしれません。ポジショントーク的で嫌ですけどね。ただ、そうは言っても、私はデジタルに親しんだ人の方が投票のハードルが低いこと、もともとの投票率が低い分上昇余地が大きいことから、若者にとって有利に働くものと予想しています。
●デジタル先進国エストニアの電子投票、利用率は高くなかった…
2022/01/15追記:最初のときに「すごそうでいてすごくない」とされていたエストニアの電子投票。もう少し詳しい話が知りたいと思って記事を検索してみました。検索結果の中から今回は、2019年03月18日の
IT先進国エストニアの電子投票はどれほど進んだか - ZDNet Japan(Kalev Aasmae (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎)という記事を読んでみます。
これを読んで「勘違いしていた!」と思ったのが、エストニアも100%電子投票ではないということ。2019年3月に実施されたエストニア議会選挙では、投票の半数近くがオンラインで投じられるという新記録が出たという話がありました。つまり、電子投票の割合はこれまでかなり低かったようです。
オンライン投票は、投票日の10~4日前までの期日前投票期間に実施されます。投票日当日にオンライン投票を行うことはできません。電子投票の実施期間と併設、あるいは、電子投票の実施期間後に、従来型の投票所が設立されているかどうか知りたかったのですが、記事ではここらへんの話は不明でした。
投票所の有無が気になった…というのは、私が最も期待していたコスト削減効果というメリットが弱くなってしまうため。従来型の投票所が残ってしまうと、結局、多くのコストがかかってしまいます。電子投票が増えた分、投票所を開設する日数や規模を削減できる可能性はあるものの、私の期待はもっと上でしたので、勝手にがっくりしてしまいました。
【本文中でリンクした投稿】
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