冒頭に追記
2022/04/12追記:
●旧陸軍親睦会が南京大虐殺の嘘証明しようとしてブーメランに… 【NEW】
●旧陸軍親睦会が南京大虐殺の嘘証明しようとしてブーメランに…
2022/04/12追記:ロシアの二度目のウクライナ侵攻で民間人が多数殺されていることに関して、「ロシア軍の虐殺は旧日本軍による南京大虐殺と違って証拠がある」といった主張を見かけたのが気になりました。実際には、旧日本軍が南京で民間人を殺害したという証言も多数あるためです。
その中でわかりやすいものの一つが、後に書いた
死刑の谷寿夫中将、南京大虐殺否定せず 中島今朝吾に責任と名指しの件。南京攻略の際に部隊を率いた一人である谷寿夫・中将は、自分の部隊ではない他の部隊に責任があったとしており、虐殺そのものは肯定した形でした。
また、このページでやっている話も証拠としてわかりやすいもの。偕行社(かいこうしゃ)が南京大虐殺の嘘証明のために証言を募集したところ、大量に虐殺証言が出てブーメランになった…という話です。偕行社というのは、旧陸軍の親睦組織であり、
Wikipediaでは、以下のように説明されています。
<戦後は旧陸軍将校・士官候補生(主に本科たる陸軍士官学校生徒と陸軍航空士官学校生徒)・将校生徒(主に陸軍予科士官学校生徒や陸軍幼年学校生徒)・軍属高等官(将校待遇の陸軍軍属たる文官)および、陸上自衛隊・航空自衛隊元幹部自衛官といったOB・OGの親睦・互助・学術研究組織として、会名をそのままに「偕行社」として運用されている。
元々が旧陸軍の組織であったため、戦後も正会員は上述の陸軍出身者に限られていたが会員の高齢化が進み、1992年(平成4年)に18,715人を数えた会員も物故による退会者が毎年500名を数える状況になり、2001年(平成13年)の評議会において規則が改定され、主として陸自元幹部自衛官の正会員資格が認められるようになった>
●南京大虐殺の嘘証明のために偕行社が証言募集 → 証拠出てお詫び
2015/2/18:産経新聞が南京大虐殺のキャンペーンやったため、関連する話をいろいろ読みました。気になる話がたくさんあり、いくらでも書けそうなものの、とりあえず、今回で最後の予定。最後は特に気になった、偕行社という大日本帝国陸軍の元将校・将校生徒・軍属高等官らが作っていた親睦組織のエピソードをやります。
偕行社は旧陸軍兵士たちから南京事件の証言を募集しました。
これが歴史の真実 成り立たない「靖国」派の言い分/南京大虐殺は「なかった」 百田発言は世界の非常識(しんぶん赤旗 2014年3月6日)によると、"「大虐殺の虚像」を明らかにする狙い"だったとされています。「南京大虐殺は嘘である」と証明したかったみたいですね。
そういう結論ありきのためか、不正と言わざるをえない操作も行われた模様。「偕行」編集担当だった高橋登志郎常務理事によると、証言を集めて論文を書いていた畝本正巳(うねもとまさき)元車隊小隊長・元防衛大学教授は、都合の悪いハイ色やクロの証言は当初不採用にしていたようです。
<畝本サンは当然であるが、シロとあれかしと願う心が強かったので ― もちろんこれが畝本サンのエネルギーの源泉であったが ―
ハイ色やクロの証言は証拠不充分として、没にしていたものもあったのである>
(「南京戦史の総括的考察に反対された方へのお答え」より 「偕行」編集担当常務理事 高橋登志郎
「偕行」の「お詫び」 南京事件-日中戦争 小さな資料集より)
しかし、"一次資料にもクロが出だすと、クロ証言も取り上げざるを得なく"なってしまいました。畝本正巳さんの"従来のシロ主張論は通らなくなっ"てしまったため、"「困った、困った」と苦渋に満ちた顔は忘れられない"と記されています。事件があったことは間違いないようです。
●虐殺証言のほとんどを否定して減らしても3000から6000という結果
南京事件の犠牲者数(南京事件-日中戦争 小さな資料集)の"『偕行』編集部(執筆責任者 加登川幸太郎) 1985年")によると、畝本正巳さんは、「虐殺数を集計することなど今においては不可能事である」とは書いていたとのこと。私も人数の特定は難しいと思いますし、むしろ人数にこだわると論点がずれて危険だと思います。
ただし、畝本正巳さんもある程度の数字を推定。"強いていえば、不確定要素はあるが、虐殺の疑いのあるものは三千乃六千内外ではあるまいか」"としていました。これについて、先のところで高橋登志郎さんは"畝本サンがたとえ3千でも、クロの結論を書くことは非常な決心が要ることであった"としていました。
たとえ3000であっても認めること自体が辛かったという意味でしょう。これは、同時に虐殺者が少なめに推定されている可能性を感じさせます。高橋登志郎さんによれば、"畝本論文の2月号における最終回論文においても、畝本サンはもろもろのクロ、ハイ色証言を殆ど否定されておられる"としていました。かなり削っているのかもしれません。
実際、この後出てくる同じ史料を使用して推測した人数は、1万3000人。ただ、これでもまだかなり少ない可能性がありそう。
南京大虐殺、安倍首相も政府も否定せず 日中歴史共同研究も批判で出てきた日中歴史共同研究では、日本側の研究として3つ数字が出されていましたが、その中で最も少ないものであっても2万人。3000人や1万3000人というのは、日本側の研究としてもかなり少ないものだと思われます。
●たとえ虐殺が3000人であったとしても「途方もない数字」とお詫び
以上のように畝本さんは日本軍の虐殺を認めることが心情的にとても辛かったため、編集部の加登川幸太郎さんが代わりに「お詫び」を書きました。
南京事件の犠牲者数(南京事件-日中戦争 小さな資料集)の"『偕行』編集部(執筆責任者 加登川幸太郎 1985年")によると、以下のような内容です。(改行などは変更)
<三千はもとより六千とは途方もない数字である。(中略)
そしてこの同じ史料を使用して推測した別の集計がわれわれ編集部の手許にある。板倉由明氏の集計されたものである。(中略)従って南京の不法殺害は計一万三千人である。板倉氏はこれが「現時点での」推定概数であるとする。これまた、途方もなく大きな数字である。
畝本君の三千乃六千、板倉氏の一万三千、共に両氏それぞれの推定概数であって、当編集部としてこれに異論を立てる余地は何もない。これを併記して本稿の結論とする。
中国国民に深く詫びる
重ねて言う。一万三千人はもちろん、少なくとも三千人とは途方もなく大きな数である。
日本軍が「シロ」ではないのだと覚悟しつつも、この戦史の修史作業を始めてきたわれわれだが、この膨大な数字を前にしては暗然たらざるを得ない。戦場の実相がいかようであれ、戦場心理がどうであろうが、この大量の不法処理には弁解の言葉はない。
旧日本軍の縁につながる者として、中国人民に深く詫びるしかない。まことに相すまぬ、むごいことであった>
(「証言による南京戦史」(最終回) <その総括的考察> = 「偕行」1985年3月号 P17~P18)
●畝本氏を代弁した加登川氏のお詫びをさらに畝本氏が代弁した理由
なお、畝本正己さん自身も、加登川さんが「お詫び」を書いた気持ちを代弁する話を書いています。畝本さんの代理で詫びた加登川さんの気持ちをさらに代弁というややこしいことになっています。しかし、こうやって直接詫びずに間接的にすることで、何とかやっと謝罪できたということでしょう。
畝本正己氏
<会員諸兄のなかには、「なぜ中国国民に詫びる必要があるか。事は戦争である。アメリカの原爆投下、東京の無差別爆撃、あるいはソ連軍の満州進入時の行為・・・など、日本に詫びた国があるか。卑屈になるな」という強い意見がある。(中略)
しかし、米ソがその非人道的行為を謝罪しないことはさておき、われわれが、率直に非は非として詫びることは、なんら卑屈な態度ではあるまい。彼らに勝る道徳感であると思うが、いかがなものであろうか。
私は、まず陛下にお詫び申し上げなければならないと思っている。当時われわれは、天皇の軍隊として戦った。
それが、数千人にも及ぶ不法殺害の疑いをかけられたとあれば、皇軍にあるまじきことである。当時、軍籍にあった者は、深く自省自戒すべきである。
また、蒋介石総統は、終戦にあたり、「仇に報いるに徳をもってす」と、東洋道徳をもって我らを遇した。戦争という異常な事態とはいえ、その非違は、武士道に照らして、率直に中国国民に詫びるべきである。
中国側の過大と思われる告発に対しては言うべきは言うが、われらの非は非とするのが隣人に対する紳士の態度であろう。私は、詫びられた加登川氏の心情を、このように理解するものである>
(
「偕行」の「お詫び」 南京事件-日中戦争 小さな資料集より)
●日本人は劣化した?誠実であろうとした畝本正己氏を見習うべき
前述の通り、畝本正己さんは証言をアンフェアに扱っているところが見られるようです。しかし、それでもできるだけ誠実であろうと、畝本さんが心がけたことは伝わってきます。私も日本人なので評価が甘くなっているかもしれませんが、「立派」とまで言えなくても、誠実さを心がける気持ちは伝わりました。
南京事件についての捏造報道だけでなく、昨今のニュースを見てわかるように、そもそも間違いを認められないというレベルの人は、意外に多いです。畝本正己本さんは、犠牲者数に関してはともかく虐殺があったことは認めるべきだし、ひどいことをしたのだから謝罪すべきとしており、はるかに誠実な態度でした。
そして、虐殺自体なかったという極論はもちろんのこと、過大な人数を言っているから詫びるなとか、少しでも謝罪したらつけ込まれるから謝罪するなだとか、そういう人間として恥ずかしいことは主張していません。欧米が謝罪しないから日本も謝らなくてもいいというのも否定しています。
この畝本正己さんの倫理観からすれば、現在の保守派・右派の主張のほとんどは、日本人として恥ずべきものとして否定されることになりそうです。
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死刑の谷寿夫中将、南京大虐殺否定せず 中島今朝吾に責任と名指し【関連投稿】
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南京事件の犠牲者の人数、産経新聞が30万人~40万人虐殺説を掲載していた ■
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