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東北大が捏造改竄告発無視の井上明久元学長の不正研究論文、撤回される


 井上明久元学長関連の話を少しまとめ。ベースは当初<井上明久前学長の不正研究疑惑、東北大が捏造・改ざん告発を無視>のタイトルで書いていた話で、撤回があったために、<東北大が捏造改竄告発無視の井上明久元学長の不正研究論文、撤回される>とタイトル変更したもの。これに、<井上明久東北大前総長の論文、捏造なしは変 文科省規定なら不正>をまとめています。

2019/04/14:
●まさか!井上明久元総長の3論文、今頃になってなぜか撤回に
●不正問題放置してきた政府機関「四半世紀前の論文だから調べない」
2015/2/19:
●科学者コミュニティーで議論すべき問題を裁判に持ち込む
●井上明久前学長の不正研究疑惑、東北大が捏造・改ざん告発を無視
●おかしな判決の裁判所すら「再現性は確認されていない」
2016/10/2:
●井上明久東北大前総長の論文、証拠がないのに不正なしと結論
●証拠なしで捏造なしがおかしい理由 文部科学省の規定なら不正
●証拠は「中国・天津の港でコンテナごと海に落ちた」と主張
●論文は悪くない、論文を載せた方が悪いとなぜか責任転嫁


●まさか!井上明久元総長の3論文、今頃になってなぜか撤回に

2019/04/14:研究不正問題は偉い人が絡むほど、追求されなくなります。東北大学の場合は総長(学長)という大学で最も偉い人の疑惑であり、進展はないと諦めていました。が、意外なことに、今頃になって動きが…。正直驚きました。日本金属学会欧文誌編集委員会が2019年3月25日付で井上明久東北大学元総長の3編の論文撤回(RETRACTED)を公表しています。

 井上元東北大総長の研究不正疑惑の解消を要望する会 新着情報 No. 36 | ちきゅう座によると、この論文撤回では、元東北大学附置研所長・名誉教授2氏だけでなく、日本金属学会元会長らも申し入れをしていたみたいですね。追求側にも大物がいたから事態が動いたのかもしれません。

 撤回の理由は「不適切行為」とされていました。ただし、内容的には「不正」と言って良いものだと思われます。例えば、99年論文では、96年論文で用いた製作試料外観写真を、大きさなども異なる別の製作試料外観写真だとして掲載。しかも、99年論文で最も重要な根拠であるX線回折図は、97年論文からの流用だったとのこと。

 注意を怠って考えられないうっかりミスを連発した「不適切行為」とは考えづらいでしょう。状況的に、複数の過去の論文から新しい論文の根拠に使えそうな写真や図を持ちよって、新しい成果を作り上げる「不正」を行ったとしか考えられません。

 なので、「不適切行為」という結論は不思議でしたが、日本金属学会では「不適切行為」と判定された論文については特に「撤回」が定められているわけではないため、今回の行為を悪質なものとは考えているようです。
(井上元東北大総長の研究不正疑惑の解消を要望する会 新着情報 No. 38 | ちきゅう座より)


●不正問題放置してきた政府機関「四半世紀前の論文だから調べない」

 あと、撤回された論文には、文部科学省所管のJST(科学技術振興機構)を代表する研究プロジェクトERATO研究資金を用いたものがあったとのこと。なので、朝日新聞記者は会見で文部科学大臣にJSTへの対応をどうするのかも質問していました。

 ところが、柴山昌彦文部科学大臣(自民党)はこの質問には答えず。さらにJSTの浜田道成理事長にいたっては、「四半世紀前の論文だから調べない」と言い放ったとのこと。「井上[元]総長の研究不正疑惑の解消を要望する会」では、以下のように書いていました。

<JSTはこの問題を自ら主体的に調査をせず、井上元総長や東北大学が組織ぐるみで不正を隠蔽してきたことを批判することも一度もなかった。それだけに時間切れを理由に濱口理事長が研究資金提供機関としての責任を放棄するような発言をするのは許しがたい>
(井上元東北大総長の研究不正疑惑の解消を要望する会 新着情報 No. 37 | ちきゅう座より)

 安倍政権では過去にも研究不正をしている側の方に加担することをやっていて、J-ADNIデータ改竄で厚労省田村憲久大臣、内部告発のもみ消しをはかるで書いています。STAP細胞問題でも複数の政治家が小保方晴子さんが有利になる介入を行っていました。東北大学の対応のひどさを書いてきましたけど、ヤバイことに日本政府自体がそういう方針なんでしょうね…。


●科学者コミュニティーで議論すべき問題を裁判に持ち込む

2015/2/19:寄付金の話があって、今回の話より先に研究不正疑惑の井上明久・東北大前総長、寄付金移転でも監査請求を書いてしまいました。今回こそは、研究不正告発に逆風 井上明久東北大前総長論文で告発側に賠償命令で言っていた、もう一つおかしいと思われる点について。

 裁判では「科学者コミュニティーで議論すべき問題だ」と言われていました。私もこれ自体には同意します。ただ、「科学者コミュニティーで議論すべき」というのは本来、井上明久東北大前学長にこそ言うべき話なんですよ。科学者の中での問題解決を放棄し、訴訟に持ち込んだのは井上前学長の方でした。責める相手を間違っています。

 ここまでは前回も書いた内容なのですけど、もう一つ問題だというのは、井上前学長だけでなく、東北大も科学者コミュニティーでの議論を放棄していること。<東北大の井上明久前総長の研究不正疑惑 外部調査しないと幹部が決定>(怪しい井上明久東北大前学長論文不正問題 損害賠償裁判では勝利にまとめ)という話をやっていますが、私が取り上げるずっと前から東北大の疑惑調査に対する消極的な姿勢、もっと言えば隠蔽しようとする姿勢は目立っていました。

 前回も引用した読売新聞での愛知淑徳大の山崎茂明教授のコメントは「司法の場では限界があり、学術論争で決着させるべきだ」の後に「不正があると疑われた時点で学術界が事実をもっと調査する必要があった。自浄作用が機能していなかったと感じる」と続いていました。
("東北大論文 控訴を棄却" 読売新聞(YOMIURI ONLINE)2015年02月18日)

 東北大の調査は極めて不十分だったのです。ここらへんの大学の不可解さは、研究不正疑惑の井上明久・東北大前総長、寄付金移転でも監査請求でも感じさせました。


●井上明久前学長の不正研究疑惑、東北大が捏造・改ざん告発を無視

 東北大の姿勢については、前回も引用した河北新報が書いてくれています。こちらの<論文損賠訴訟>大学側、説明の姿勢欠く | 河北新報オンラインニュース(2015年02月18日水曜日)では、裁判の記事とは別に、東北大への問題指摘だけで一記事書くという熱心さでした。

<井上明久前東北大総長の論文不正疑惑をめぐっては、旧帝大の元トップに疑いの目が向けられるという極めて不名誉な事態が2007年以降、8年近くも続いている。(中略)
 井上氏の論文には、訴訟に加わった教授グループ以外にも学内からデータの捏造(ねつぞう)や改ざんを指摘する告発が相次いでいる。しかし大学が新たな調査に踏み込むことはなく、再現性を認めた報告書を根拠に告発の門前払いを続けてきた。


●おかしな判決の裁判所すら「再現性は確認されていない」

 上記で略した部分には、「再現性はある」とした東北大の報告書を否定する情報が載っていました。今回の裁判で出された井上前学長の共同研究者である横山嘉彦元准教授の報告書です。これがあったせいで、馬鹿なこと言っている裁判所ですら「前学長の説明で疑問が解消されたとは言えず、論文にある実験の再現性も確認されていない」としました。とっくに大学が調査を拒否する論理は崩れているのです。さらに河北新報は以下のように続けます。

<13年3月には、井上氏の論文3本に同じ試料写真が掲載されていた問題で学内に調査委員会が設置されたものの、ガイドラインが定める「おおむね150日以内」という期限を超えても結論が出ていない。
 東北大の一連の対応は「研究不正の嫌疑に科学的な説明を尽くす」という研究機関として当然の姿勢に欠けていると言わざるを得ない>

 東北大は絶対におかしいです。にも関わらず、この件はあまり注目されていません。批判が不十分です。河北新報が「8年近くも続いている」としていたようにこの問題は以前からあるものであり、本来でしたら今さら注目される可能性は低かったかもしれません。しかし、今はSTAP細胞問題のおかげで不正研究に関する注目度が上がっていますので、チャンスがないわけではないと感じます。

 マスメディアはもっとこの話題を取り上げて問題視するべきでしょう。このまま終わらせてはなりません。


●井上明久東北大前総長の論文、証拠がないのに不正なしと結論

2016/10/2:<東北大論文不正>「実験結果捏造ない」 | 河北新報オンラインニュース(2017年02月07日火曜日)によると、大学が設置した外部有識者による調査委員会は、金属ガラスの生成に関する1996年と97年、99年の論文について、同じ試料写真が使い回しされていたことを認定しました。

 ここだけ読むと、明らかに不正なのですが、「写真を取り違えた」とする井上さんの主張を認め「実験結果の捏造(ねつぞう)ではない」と結論付けてしまいました。これを認めてしまったのはまずかったですね。井上さん側の主張がかなり不自然であったためです。

 STAP細胞事件でも書いたように、もし本当に「写真を取り違えた」のであれば、正しい写真があるはずでしょう。しかし、「当時のデータが失われており、客観的に証明するのは難しい」として、データがないにも関わらず不正なしと認定してしまいました。これが通用するのなら、すべての不正が「データをなくしました」で言い訳可能であり、大問題です。


●証拠なしで捏造なしがおかしい理由 文部科学省の規定なら不正

 こういった逃げ方をされないためだと思われますが、実は文部科学省のガイドラインで、「被告発者が生データ(中略)など、本来存在するべき基本的な要素の不足により証拠を示せない場合は不正行為とみなされる」と規定しています。ルール通りなら、完全に不正なのです。これなら今回の調査自体が不正ですわ。
科学技術・学術審議会 研究活動の不正行為に関する特別委員会 研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて 研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書 第2部 4 告発等に係る事案の調査-文部科学省

 第2部 競争的資金に係る研究活動における不正行為対応ガイドライン

 IV 告発等に係る事案の調査

3  認定

(2) 不正行為の疑惑への説明責任
①  調査委員会の調査において、被告発者が告発に係る疑惑を晴らそうとする場合には、自己の責任において、当該研究が科学的に適正な方法と手続に則って行われたこと、論文等もそれに基づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない。そのために再実験等を必要とするときには、その機会が保障される(42(2)3イ)。
② ①の被告発者の説明において、被告発者が生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬等の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により証拠を示せない場合は不正行為とみなされる
(中略)

(3) 不正行為か否かの認定
 調査委員会は、上記(2)①により被告発者が行う説明を受けるとともに、調査によって得られた、物的・科学的証拠、証言、被告発者の自認等の諸証拠を総合的に判断して、不正行為か否かの認定を行う。証拠の証明力は、調査委員会の判断に委ねられるが、被告発者の研究体制、データチェックのなされ方など様々な点から故意性を判断することが重要である。なお、被告発者の自認を唯一の証拠として不正行為と認定することはできない。
 被告発者が自己の説明によって、不正行為であるとの疑いを覆すことができないときは、不正行為と認定される。また、被告発者が生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により、不正行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示せないとき(上記(2)2)も同様とする。
http://www.peeep.us/1f447247

●証拠は「中国・天津の港でコンテナごと海に落ちた」と主張

 これもSTAP細胞の話の方で紹介しているのですが、井上さんの論文絡みでは、胡散臭い言い訳もあります。井上明久さんの不正はトップダウン型で、共同研究者に圧力をかけて実際の不正をやらせていたのでは?という疑いを持っている方がいます。そして、その実行犯の疑いを持たれている方には、中国人留学生がいました。

 そういった井上明久さんの共同研究者の1人である張涛・北京航空航天大(中国)院長は、当時の実験内容を記したノートや作製した金属ガラスについて、2003年に帰国する際、「韓国の運送会社に依頼して送ったが、中国・天津の港でコンテナごと海に落ちた」と説明していたのです。

 そんなうまい具合に失くなるものなのか?とにわかに信じられません。本当にそういう事故が起きたのであれば、事故の記録などで証明すべきてでしょう。


●論文は悪くない、論文を載せた方が悪いとなぜか責任転嫁

 今回の調査では、もう一つおかしなところがありました。科学技術振興機構が調査を求めていた実験データ改ざんの疑いについても報告書は、論文の誤りは意図的ではなかったと認定しているのです。この「意図的ではなかった」ってのが、またよくわからない話。STAP細胞問題でも書いたように、本来、悪意があったかどうかは関係ありません。

 また、補足説明がなくて意味がわからなかったんですが、「論文発行機関の査読の甘さを指摘した」として、論文を載せた方が悪いと言い出していて笑いました。

 確かに論文発行機関も、激甘査読で通しちゃうってのは問題。ただ、井上明久さんみたいな有名な研究者の場合に起きやすい問題であることを考えると、責任転嫁としては特にひどいと思います。本人がそう主張したわけではありませんが、ネームバリューで間違いだらけの論文を通しておいて、論文発行機関が悪いってのもおかしな話。一番悪いのは、論文の執筆者側であることは間違いありません。

 文部科学省ガイドライン無視は多くの調査で行われており、今回の件だけではないのですが、東北大学の前総長という超お偉いさんなので、事実が捻じ曲げられた印象が強いものでした。この件はもっと問題視されるべきです。


【本文中でリンクした投稿】
  ■J-ADNIデータ改竄で厚労省田村憲久大臣、内部告発のもみ消しをはかる
  ■研究不正告発に逆風 井上明久東北大前総長論文で告発側に賠償命令
  ■<東北大の井上明久前総長の研究不正疑惑 外部調査しないと幹部が決定>(怪しい井上明久東北大前学長論文不正問題 損害賠償裁判では勝利にまとめ)
  ■研究不正疑惑の井上明久・東北大前総長、寄付金移転でも監査請求
【関連投稿】
  ■裁判で井上明久東北大前総長の主張否定の新証拠 横山嘉彦准教授の論文
  ■研究不正疑惑についての投稿まとめ

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