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大塚製薬やばい?樋口達夫社長高評価のアバニア買収は高すぎる…


2019/07/08追記:
●エビリファイ特許切れで大塚製薬はどうなった?その後の業績は…
2021/07/26追記:
●特許切れしたエビリファイの穴を埋めるグローバル4製品とは?
2022/07/15追記:
●アバニア買収効果は出ているの?大塚製薬HDのヒット商品を見る 【NEW】


●のれん代が問題視されたアバニア買収、大塚製薬樋口達夫社長は高評価

2015/3/1:大塚製薬の記事を読んでいると、のれん代の話が出てきました。のれん代に関しては、以前のれん代とのれん代の償却のわかりやすい説明という投稿をしています。しかし、すぐに忘れちゃうんですよね。何かある度に読み返しています。まあ、すぐ忘れるので書いておいて良かったとも言えるわけですが…。とりあえず、当時は以下のようにまとめていました。

(1)企業を買収すると、買収先企業の見えない価値の分、のれんが発生する。
(2)計上したのれんは、その後は費用として計上しなければならない。
(3)そのために利益が減る。

 大塚製薬でものれん代の話が出ているということから、当然大塚製薬でも企業買収をしていることがわかります。大塚製薬の場合は1社だけでなく、2社買収しており、米創薬ベンチャーのアステックスファーマシューティカルズと米バイオベンチャーのアバニアファーマシューティカルズが該当の会社でした。

 この2社では特に後者のアバニアが大切になります。大塚HDにとって過去最大の買収案件であるためです。買収額は35億ドル(約4200億円)でした。なお、大塚製薬ではなく大塚ホールディングス(HD)の…という言い方をしているのは、大塚製薬が大塚ホールディングスの子会社であり、主力会社でもあるためで。)

 大塚ホールディングスの樋口達夫社長兼最高経営責任者(CEO)はアバニアを高く評価。買収発表の会見で「アバニアの認知症の薬は中長期的な成長に重要だ」と説明しました。アバニアは2011年、人前で突然泣きだすなど自分の感情がコントロールできなくなる症状を治療する世界初の薬を発売するなど、神経に関わる病気の治療薬を得意としているそうです。

 また、買収したアバニアは、認知症関連の有力な新薬候補を持っています。大塚ホールディングスが最も欲しがったのは、開発中のアルツハイマー型認知症の行動障害の治療薬だとも説明されていました。


●大塚製薬では過去最大…高すぎる!アバニア買収で巨額ののれん代発生

 ただ、のれん代という点で見ると、価値が高い会社の買収は困ったことになる可能性があります。前述の通り、大塚HDにとって過去最大の買収案件であったわけですから、なおさらその可能性は高いです。実際、アバニアの"4200億円という買収金額に対して、「高すぎる」と証券市場は冷ややかな反応を示し"たそうです。どうも大塚製薬は特に悪いタイミングで買ったみたいですね。

<アバニアの株価は、14年の年初から上昇基調だった。アルツハイマー型認知症の症状を抑える新薬候補の臨床試験結果が良好と発表され、昨秋に急騰。株価は年初から5倍になっていた。大塚HDはアバニア株式を1株17ドルで買い付けた。直近の1カ月の平均株価に24%のプレミアムをつけた。アバニアが急騰した後に24%のプレミアムをつけたのだ(略)>

 しかも、アバニアは"13年9月期の売上高はわずか7536万ドル(約90億円)、営業赤字が7142万ドル(約85億円)という赤字会社"だそうです。そして、「純資産は1847万ドル(約22億円)」ですので、「買収金額は純資産の190倍」となります。"のれん代は莫大な金額に"なりました。

<のれん代は日本の会計基準では20年以内に毎期定期償却する必要がある。大塚HDの14年12月期末時点ののれん代は931億円で、同期ののれん償却額は38億円だった。アバニアの買収に伴うのれんの金額と償却方法、償却期間については「未定」としているが、のれん代とその償却額が何倍にもなることは確実だ。直近の15年12月期は、アバニア買収に伴うのれんの償却として約150億円を見込んでいる。これが減益になる原因の一つだ>


●大塚製薬やばい?エビリファイ特許切れで焦りから高値買いの買収か

 大塚製薬がもともと買収先を探していたのは、大塚製薬にとって主力であるエビリファイという薬の特許切れが近づいているためでした。大塚製薬はこのエビリファイに依存していたため、特許切れになると一気に業績が悪化するようなのです。これに代替する薬が必要だったことは間違いありません。

 しかし、エビリファイの特許切れが頭にあったばっかりに、大塚製薬には良い買い物をする余裕がなかったとも言えそうです。足元を見られたかどうかはわかりませんが、内容を見ると大塚製薬が非常に高い買い物をしてしまった感じ。M&Aは買う方が負けで、売る方が勝ち 日本人は企業買収に向かないという投稿も思い出しました。

 記事では、"今後は大塚HD社長兼CEOの樋口氏が、主力薬の特許切れ、巨額ののれん代という“地獄”と向き合うことになる"と終わっていました。大きな不安要素が二つもあります。余裕を持ってエビリファイの特許切れ対策を打てなかった代償は、たいへん高いものになるかもしれません。


●エビリファイ特許切れで大塚製薬はどうなった?その後の業績は…

2019/07/08追記:大型買収によるリスクがあると見られていた大塚製薬ですが、大丈夫だったっぽいですね。大塚HD 特許の崖で重ねるヒット  :日本経済新聞(2018/2/20 6:30)では、抗精神病薬「エビリファイ」の特許切れから3年たち、安定した経営への道筋が見えてきた、としています。

 エビリファイは特大ホームラン級のヒット商品で、連結全体の4割を稼ぐ薬でした。当初心配されたように、このエビリファイは特許切れで売上は減少中。予想通りの結果です。記事タイトルの「特許の崖」とは、これのことを指していました。大げさな気がしますけど、売上グラフで見ると崖のように落っこちているということでしょう。

 一方で、小粒ではあるもののいくつもの新薬がグローバルに浸透し始め、独自の機能性食品・飲料も貢献して、2017年12月期は2期ぶりの増収増益でした。「2期ぶり」ですので苦しいときがあったようですが、復活した形。樋口達夫社長は自信を深め、決算説明会で「収益の多様化を達成できた」と語っていたそうです。


●特許切れしたエビリファイの穴を埋めるグローバル4製品とは?

2021/07/26追記:その後、大塚製薬ホールディングスの業績を見てみると、「絶好調」な感じです。大塚HD 20年12月期決算 事業利益は上場以来最高益の2169億円を達成 グローバル4製品が業績伸長 | ニュース | ミクスOnline(2021/02/15)によると、2020年12月期連結決算の事業利益は上場以来最高益となる2169億円(15.9%増)を達成したとのこと。エビリファイで稼いでいた時代の記録すら更新したようです。

<医療関連事業はグローバル4製品(エビリファイメンテナ、レキサルティ、サムスカ/ジンアーク、ロンサーフ)が伸長し、14.5%増収。2021年の業績予想は、イーケプラとスプリセルの契約終了による約700億円の減収要因をグローバル4製品とNC関連事業などでカバーし、2020年と同水準を維持する計画を示した。樋口達夫代表取締役社長兼CEOは記者会見(電話会議)で、「グローバル4製品を中心に薬剤満足度の向上に寄与する多くの製品ラインナップを揃えることができた」と述べた>

 連結売上収益も、前年比1.9%増収の1兆4228億円。うち医療関連事業はグローバル4製品が4297億円(前年比14.5%増)となり、やはりグローバル4製品が引っ張っている感じですね。4製品の中では、エビリファイメンテナは名前からして、明らかに大塚製薬系の薬でしょうか。気になるのは、買収したアバニア系の薬が好調かどうかです。

 とりあえず、2番目にあった「レキサルティ」だけ調べてみました。すると、これもエビリファイ系みたいですね。エビリファイの後継薬と説明する記事があります。先のエビリファイメンテナの方も見たら、錠剤と同じ成分で注射剤にして飲み忘れを防ぐ抗精神病薬。つまり、特許は切れたものの、依然としてエビリファイ系が引っ張っている…という状況のようでした。


●アバニア買収効果は出ているの?大塚製薬HDのヒット商品を見る

2022/07/15追記:特許切れしたエビリファイの穴を埋めたというグローバル4製品。先に名前のあったエビリファイメンテナ、レキサルティはいずれもエビリファイ系でした。今さらですが、残りのふたつサムスカ/ジンアーク、ロンサーフについても調べてみることにします。

 まず、サムスカ/ジンアークを検索。大塚製薬創製「JINARC」(ジンアーク) 欧州初となるADPKD治療薬の販売承認を取得|ニュースリリース|大塚製薬(2015年5月28日)によると、以下のように大塚製薬が以前から開発していた薬。なので、これもまたアバニアを買収した効果ではないようでした。

<大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口達夫、以下「大塚製薬」)は、「トルバプタン」(製品名:海外「ジンアーク(JINARC®)」、日本「サムスカ®」)が常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)の成人患者さんの治療薬として欧州で初めて欧州委員会(EC)から販売承認を取得しました(5月27日付)のでお知らせします>
<「JINARC」(海外製品名:ジンアーク、一般名:「トルバプタン」)は大塚製薬が独自に開発した薬で、ADPKD(常染色体優性多発性のう胞腎)の治療薬として欧州で初の承認。2014年3月に日本で、2015年2月にカナダで承認された>

 最後のひとつ抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)ロンサーフはよくわからず。というのも、売っているのは、大塚製薬ではなく大鵬薬品であったため。なぜ?と思ったら、大鵬薬品は大塚ホールディングス株式会社の完全子会社なんですね。結局、アバニア由来かどうかの方はよくわかりませんでした。

 ただし、アバニア買収の理由とされたのは、「認知症関連の有力な新薬候補」でしたので、抗がん剤であるロンサーフはやはりアバニアとは関係ないんじゃないかと思われます。ひょっとしたら未来においてアバニア買収効果が出る可能性があるかもしれませんが、今のところ全く役に立ってなさそうでした。


【本文中でリンクした投稿】
  ■のれん代とのれん代の償却のわかりやすい説明
  ■M&Aは買う方が負けで、売る方が勝ち 日本人は企業買収に向かない

【関連投稿】
  ■ポカリスエット=POCARIの汗という意味で、海外だと汗臭いと嫌われる国も
  ■企業の海外進出戦略の成功例. ~ヤマハ、大塚製薬、ソニー~
  ■小林製薬の「小さく生んで大きく育てる」企業買収 新市場を創造
  ■使い捨てカイロ世界一は小林製薬 桐灰化学買収後、中国、アメリカと次々と制覇
  ■企業・会社・組織についての投稿まとめ

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