以前書いたのと同じ話なんですが、大事なことなので二回書きましょう。
以下の記事は最初「ニセ医師に騙されない方法」だと思って、近藤誠さんが「ニセ医師」って言われてるよ!と思いました。でも、「ニセ医療」でした。さすがにニセ医師呼ばわりはなかったですね。
「子宮頸がんは放置していい」に産婦人科医から非難殺到! 宋美玄氏に聞く、ニセ医療に騙されない方法|ウートピ 2015.03.02(三浦ゆえ)
記事では『もう、だまされない! 近藤誠の「女性の医学」』(近藤誠著、集英社)の主張を箇条書きでまとめています。良いまとめです。
・子宮頸がん検診でがんを早期発見、早期治療することが不妊につながる
・それゆえ、検査も治療も受けないほうがよい
・放っておけば自然に治る(放置療法)
・乳がんのマンモグラフィ検査も受けないほうがよい
・なぜなら、切らなくてもいいがんまで手術で乳房ごと切り取られるから
・それはひとえに、医者が手術をしたいがゆえ。そうしないと医師は仕事がなくなってしまう
一方、産婦人科医の宋美玄さんは「子宮頸がんは(中略)予防できるものであり、早期発見して早期治療できれば、最悪の事態はまぬがれ得る病気」だと説明していました。それを放置してしまうのは、それこそ死の危険性を高めます。
では、なぜこのような危険なことをみんな信じてしまうのか?という話が元記事のタイトルになっています。それについては、高校生物程度の基本的な身体の知識を持ってほしいとのこと。学校の話で言うと、実は私も生物は高校で習ってないんですけどね。物理と化学だけでした。
あとは、今まで同じ人がどんな記事をこれまで書いているか見るというアドバイスも。こちらの方がハードルが低いです。ただ、それでも面倒だと思って大半の人が調べないと思われます。私もいちいち過去記事は確認しません。
どういう人が書いているんだろう?に関しては、前回ののときでもあったように近藤誠さんへの評価はたいへん厳しいです。医師は金のためにしなくていい手術をしているという近藤誠さんの主張に関しては、以下のように言っていました。
「自分がお金で動く人は、他人のこともお金だけで動いているように見える、ということだと思います」
近藤さん自身が金のために動いているから、他の人までそうだと思っているんでしょ?という非難です。「泥棒は他の人も泥棒に見える」みたいなこと言いますしね…と書いてから検索したものの、そんなことわざはありませんでした。やっぱり言わないかも。
そういう私の勘違い格言は良いとして、近藤さんの手法について。
宋:海外の論文のなかから、自分に都合のいい論文や、すでにそれを否定する新たなデータが出ている論文をピックアップして引用している、と指摘されています。
既に否定されているものを持ち出すというのは、神によって天地万物の全てが創造されたという創造論者など疑似科学ではお馴染みの手法です。
また、
学術誌掲載論文でも信頼してはいけない STAP細胞とソーカル事件でやったように、雑誌に載ってもいい加減なものは多いです。論文だからと無批判にありがたがってはいけません。
この論文という威光に加えて、近藤さん自身が医学博士であるという権威性でしょうね。医師免許を持っているからこそ多くの人に信じられているのです。権威を否定する人ってのは、それとは別の権威を盲目的に崇め奉ることが多く、不思議に思います。
しかし、最初に出てきたように、安易に信じてしまうことは文字通り「命取り」になりかねません。
宋:病気になった人が洗脳されているのも困りますが、本人は治療したがっているのに、配偶者や家族が放置を希望するため治療を受けられない、という事態も起きています。近藤氏の発言に怒っている医師は数えきれないほどいます。
周囲の人に勧められて治療できないという悲しい話は、以前も紹介しています。ただ、本人がハマるパターンの方が多いんじゃないかな?と個人的には思います。
こっちの話も紹介しており、たとえば、海外で強いエイズ否認主義の話をやったことがあります。
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アメリカ人が信じる「エイズの原因はHIVウイルスではない」 エイズ否認主義の魅力 今読み直して見ると、やはり"エイズ否認主義を切実に求めるのは、当のエイズ患者やHIV陽性と判定されたひとたち"ということで、むしろ本人らがダマされるという内容でした。
一番心配しなきゃいけない本人がハマるというのはとても奇妙なことに思えます。エイズの場合には、"HIV陽性と判定された人たちはエイズになったことを認めたくないので、「エイズとHIVウイルスは関係ない」という説に魅力を感じるのでないか"と類推されていました。
この話は今回の子宮頸がんの治療には当てはめづらい説明でしたでしょうか? ただ、「治療しなくていい」という結論は同じですので、そういうところに魅力を感じてしまうというのはあるかもしれません。
あと、エイズ否認主義の話では陰謀論好きの人との相性の良さについて書いていました。詐欺にかかる人は何度も引っかかることが多いように、近藤誠さんにハマる人は他のニセ医療にもひっかかりやすいのでは?と思います。
もし仮にそうであるのなら、宋美玄さんの「今までどんな記事をこれまで書いているか見る」というアドバイスはあまり効果がないかもしれません。他の変な主張を見て、むしろ大いに共感してしまうのでは?という心配すらあります。
疑似科学に引っかかる人の思考はそうじゃない人からは想像できないところにあり、たいへんに難しいです。特効薬はないでしょう。ただ、逆に言えば、特効薬がないために地道に訴えていくしかないとも言えます。
そういう意味では、ウートピの今回の記事や宋美玄さんの訴えは、たいへん意義深いものと言えるでしょう。もっともっと広まると良いです。
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