タイトルが気になるものだったので、ウダPAOマサアキさんという刺青を入れる彫り師のインタビューを読みました。
そのタイトルは
『後ろ指さされない刺青は刺青じゃない』 "社会派"彫り師がタトゥーブームを斬る!(日刊サイゾー 2010.10.08 高田信人)。彫り師の主張としては、意外なものです。
ウダさんは彫り師なのに、現在のかつてないタトゥーブーム(なんですね。知りませんでした)を素直に喜べないようです。それは、
「ワンポイントのものならまだしも、基本的にタトゥーは消せない。彫ってしまった刺青には嘘はつけない。ブームに乗ってやるものではない」
にも関わらず、「とにかくアクセサリーでも買うような感覚で気軽に彫っちゃう人」が多すぎるためみたいです。それで、
「うちでは彫る前には必ずカウンセリングをしているんです。10分で終わるときもあるし、2時間続くこともありますが、なぜ彫りたいのか、今後どうしたいのかを聞いています。そこで目的や覚悟が見えない相手には彫らない」
ようにされているようです。ただ、他の彫り師がこのように良心的であるとは限らないでしょう。安易に彫ってもらう人も多いのかも知れません。
そして、タイトルの「後ろ指」の話です。
「タトゥーを理由にプールや温泉で入場を断られて文句を言う奴」(銭湯でもそうでしょうね)がいるが、それらは「タトゥーを入れるときにすでに承知していたはず」だとウダさんは指摘しています。逆にその覚悟がなければ、「だったらタトゥーなんか最初から入れるなっていう話」になるのかもしれません。
これらについては、
「タトゥー愛好者の中には今の日本の社会環境に不満がある人も多いですが、私ははっきり言って、今のままでいいと思います」
「タトゥーって最近ファッション化しすぎてしまいましたが、単に美しいとかカッコいいだけの世界ではない」
ともおっしゃっています。
また彫り師についてさえ、そもそも「昔からグレーな存在で、昭和の初期などは彫り師は警察の目をはばからなければならない職業」であり、「グレーな存在であることも、日本の彫り物文化のひとつ」だと言い切っています。そして、「むしろ私はこのままタトゥーブームが変な方向に進んで、『タトゥーは芸術だ』なんて言われ始めたらどうしようかと、恐々としていますよ(笑)」と語っています。
あと、おもしろかったのは、
「ファーストタトゥーには小さなものを入れる人が多いと思いますが、ワンポイントタトゥーを入れた人のうち7割くらいの人は、『消そうかなぁ』と考えてしまう」
と言う話です。先に指摘されたような覚悟がないから、後から消すことのできる小さいタトゥーを入れて、そして、そのほとんどの人がやっぱり後悔してしまうようです。
私がこれらの話に驚いたのは、かつて「刺青は恥ずかしいものじゃない」と盛んに主張されている文章を読んだことがあったからです。それはもう何年も前、もしかすると10年近く前に読んだものかもしれません。記憶は相当曖昧で間違っていそうな気もしますが、確かそういう主張だったはずです。
その不確かな記憶で書いていきますが、まず、書かれている方は今回のような彫り師ではなく、研究者か何かっぽかった気がします(愛好者なのかな?)。そして、その方は「日本では刺青に対して差別があるが、間違っている。欧米では刺青は認められている、日本は遅れている」といった風に訴えていたと思います。
私は欧米が正しくて、日本が間違っていると言われると、つい反発したくなるのですが、これは、まあ、差別への反対だとすれば、一応わかる話です。でも、私が読んでいて一番違和感を覚えたのは、「イギリスでは王族(王子)ですら刺青を入れているんだから」と、イギリス王族の威光を笠に着た書き方をしていたことです。(今の王族の話と思いこんでいたんですが、今調べるとどうやら19世紀に日本に来た王子の話みたいです)
日本人が弱い白人、しかも、その王族を持ち出して、日本をさげすむような媚びた態度は、生理的に受け付けられません。イギリスの王子がどれだけ立派なのかは知りませんが、日本には日本の歴史、文化があるのです。当然、それによって、物事の価値観は違ってきます。何でも欧米に従わなければいけないわけではありません。
刺青が後ろ指を差されるべきかについては、個々人によって考えが違うと思います。ただ、少なくともこれまでの背景については考慮されるべきだと思いつつ、今日はここで終わりにします。
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