少年犯罪の話をまとめ。<佐世保小6同級生殺害事件、被害者は会社にもよく来る記者の子だった>、<日本の凶悪少年犯罪・殺人事件は減っている 戦後は現在の8倍も>、<実際には激減の凶悪少年犯罪 増加してると感じる理由は?>、<佐世保で殺人事件が多いのはなぜ?「~~な家庭で事件が多い」説>などをまとめています。
2022/11/11追記:
●佐世保で殺人事件が多いのはなぜ?「~~な家庭で事件が多い」説 【NEW】
●佐世保小6同級生殺害事件、被害者は会社にもよく来る記者の子だった
2014/4/16:
若者の犯罪離れ 治安悪化で日本の犯罪件数・凶悪事件増加…は嘘など、凶悪犯罪の典型である殺人事件は減っているという話は何度も書いています。今回はその少年事件のバージョンといった感じ。
使用する記事
「少年事件は楽に数字を取れる」が招いたこと:日経ビジネスオンラインは、ジャーナリスト・池上彰さんと『
謝るなら、いつでもおいで
』の著者・川名壮志さんの対談です。
『
謝るなら、いつでもおいで
』は、2004年の佐世保小6同級生殺害事件がテーマ。知らなかったのですが、被害者の父親は毎日新聞記者。そして、本の著者・川名壮志さんも毎日新聞記者であり、当時佐世保にいました。
しかも、佐世保支局の構造もあり、川名さんは被害者と顔を合わせる機会が多く、いわば当事者のようなものだったのです。まず、この話が衝撃で何か涙腺に来るものがありました。
川名:毎日新聞佐世保支局は2階が支局で、3階が支局長住宅です。お兄ちゃん(引用者注:被害者の兄)は既に中学生だったから家に帰るとそのまま3階に上がるのですが、小学生の怜美ちゃん(引用者注:被害者)はまず2階の支局に上がってきて、ドアを開けて「ただいま」って言うんです。御手洗さん一家はお母さんを早くにガンで亡くしていて、父子家庭だったのもあると思います。御手洗さんが不在のとき、怜美ちゃんは支局の来客用ソファに寝転がって本を読んでいたりしました。
自分の日常のなかにいた女の子が殺されてしまった。しかも、同級生の11歳の女の子に。僕はまだ入社4年目の記者でしたし、完全に固まってしまいました。
●意味ないどころか迷惑な記者の被害者取材、救いになるケースも
「事件が起こると現場に殺到して、被害者の家族に『今のお気持ちは?』と聞いたり、人の心に土足で踏むこむバカな記者がいます」と池上彰さんはおっしゃっていました。私もああいうものはなくすべきだと思います。ただ、川名記者のした被害者の兄へのインタビューは、彼の苦しみを減らすことにつながったようです。
川名:昨年、お兄ちゃんが事件後10年経って初めてマスコミの前に出たことがニュースになっていましたが、彼は「そのインタビューが救いになった」と話していたんです。自分の思いをマグマのようにずっと溜めていたけれど、僕の取材を受けたことで初めて吐き出せた。1歩前に踏み出すきっかけになった、と。
なお、『
謝るなら、いつでもおいで
』というタイトルは、"初めて取材した時にお兄ちゃんが語った言葉が「謝るなら、いつでもおいで」"だったことに基づいているとのことでした。こちらも目頭が熱くなる話です。
●日本の凶悪少年犯罪・殺人事件は減っている 戦後は現在の8倍も
さて、本題です。引用記事タイトルの"「少年事件は楽に数字を取れる」が招いたこと"やうちのタイトルの「日本の凶悪少年事件・殺人事件は減っている」は、個別の事件の話ではなく、少年事件全体の話。記事では、上記の後、全体の話に移っていっていました。
池上彰さんは川名記者の「子どもは変わったと思いますか?」(今の子は昔と違っておかしくなったという意味)という質問に「『子どもは変わった』と皆、言いたがるんですが、子どもは変わっていません」と答えています。
実際、凶悪犯罪と言える殺人事件に限って見ると、逆に良化していることがわかります。池上さんは、「警察庁のデータを見ると、少年犯罪ってどんどん減っているんですよね。少年の凶悪犯罪がよく話題になるから、増えているように感じるというだけですね」と言っています。
川名記者も調べていました。警察庁の資料に「凶悪犯罪の検挙人員の推移」というのがちゃんとあります。統計にある1949年から2013年のうち、
殺人で検挙された刑法犯少年(刑法犯の罪を犯した犯罪少年で、犯行時及び処理時の年齢がともに14歳以上20歳未満の少年をいう)の
人数が最も多かったのは1951年の443人。池上さんが生まれた翌年でした。
そのころは1日に少年が1人以上、殺人で捕まっていた計算になります。1950年から1970年までの20年間が、殺人事件で検挙された少年が3ケタの時代。少年犯罪が凶悪だったのは、池上さんが20歳になるまでの時代というのが正解。
一方、最新データである013年は、わずか52人。443人から見ると、なんと8分の1以下になっています。激減していることが明らかです。子供人口の減少があるので、その分も考えなくてはいけません。しかし、少年少女の数は8分の1以下になるほど減っていないのは確実。明らかに日本の凶悪少年事件は減少しています。
●実際には激減の凶悪少年犯罪 増加してると感じる理由は?
では、なぜ少年の凶悪事件が増えているように感じるのか?と言うと、大人の殺人事件や子どもへの虐待問題でも書いてきたようにマスコミ報道のせいというのが大きいでしょう。
私はこれについては注目度が大きい話題だから、もっと嫌な言い方をするとカネになるからと説明してきました。池上彰さんはこの殺人事件が注目される理由をもう少し丁寧に解説しています。
池上:私は1980年からNHKの社会部記者として、警視庁の捜査一課を担当していました。捜査一課は殺人事件を扱うんだけど、殺人事件のニュースを書いても全国ニュースにならないんです。たいていがローカルニュースで終わる。珍しくないからですよ。
ところが、だんだん殺人事件が減ってくると、逆に珍しいからニュース価値が上がる。それに加えて、民放のニュース番組やワイドショーが出てきたことが大きいです。
こういう言い方は語弊があるかもしれないけれど、殺人事件の報道が実は一番ラクなんです。なぜなら、殺人事件が起こると警察が発表してくれるから。現場に行けばパトカーがいて、「絵になる」映像がとれる。リポーターが近所の人にマイクを向けて「怖いですね」と言ってもらえば一丁上がり。安易に数分間の映像ができちゃうわけです。これが捜査二課が扱う汚職事件とかだと、いくら取材しても報道できるか分からないリスクがある。
今、民放ニュースを見ていると、殺人事件ばかりでしょう? 埋めなければいけないから、東京の局であっても、北海道でも福岡でも殺人事件があれば取り上げて、全国ニュースになってしまう。それを見たら「こんなに治安が悪くなっているのか」と思いますよね。
少年事件は大人の事件より衝撃的だから、さらに大きな扱いになります。ある場所でAという少年事件が起こると、別のところでBという全く違う少年事件が起こったとき、またAの事件の話が蒸し返される。だから、少年事件が頻繁に起こっているような印象を受ける。それを警察は「体感治安が悪化している」という言い方をしています。
●不良が人を殺すのは怖くないけど、普通の子が殺すのは怖い?
川名さんはこれに加えて、少年事件が人の心をとらえて離さないのは、「親にとって自分の最も身近な存在でありながら、子どものことは分からない」からでは?としていました。
川名:昔の少年事件って、非行少年とか地元のワルがやっていたことが多かったんです。悪いと分かっていながら、悪いことをする。だから、彼らは逃げます。
けれど、10年前の佐世保小6殺害事件も、昨年7月に佐世保で起きた高校1年生が同級生を殺害した事件もそうでしたが、加害者が逃げないのが1つの特徴です。
(中略)昔の少年事件が「反社会」型とすると、今、注目されている少年事件は「非社会」型と言えると思います。10年前の佐世保事件でも、昨年の佐世保事件でも、加害少女たちは殺害を実行するところまでの計画は用意周到なんですが、その後の計画は一切ありません。
こういう話を紹介してしまうと、「やっぱり今の子どもは自分たちのときと違って怖い」と悦に入る人が出てきそうで困ります。ただ、重要な指摘でもあります。
●理由は今の教育が悪いから?そもそもなぜ人は人を殺すのか?
池上彰さんは「警察の捜査関係者にもすぐに結論を出したがる」し、裁判資料でもそういった表現が多いが、本当は「分からない」ものだと指摘。一般の人もわかりやすい答えを求めたがりますのでそのせいだとは思いますが、池上さんはその前にもメディアの以下のように問題を指摘していました。
池上彰<少年犯罪が起こると、メディアはすぐに「心の闇」とか書くでしょう?「心の闇」ってキャッチーなフレーズだから何か説明されたみたいな気になるけれど、よく考えたら何のことか分からない。何も言ってないんですよね>
2004年の佐世保小6同級生殺害事件の後、2013年になって、佐世保女子高生殺害解剖事件が起きています。そのために教育が悪かったのではないか?みたいな声も出ていました。地元で起きた事件を活かした殺人を防ぐための教育が、佐世保地域でできていなかった…といったことなんだと思います。
しかし、これは単純すぎる無邪気な意見でしょう。実際には、教育では防げない犯罪はあります。そもそもなぜ殺人をするのかがわかっていないのですから、そういった殺人を確実に防ぐ対策も出すことができません。現実に防げない例があるのですから、道徳教育で100%防げると考えるのは「思い上がり」です。
●佐世保で殺人事件が多いのはなぜ?「~~な家庭で事件が多い」説
2022/11/11追記:少年犯罪の事例を追記しようか?とネットを探していると、「佐世保で殺人事件が多いのはなぜ?」といった話が目につきました。ただ、そもそも佐世保で殺人事件が多いかどうかは不明。インパクトある事件が複数あったため、錯覚しているだけ…という可能性があります。
「インパクトある事件が複数ある時点で異常なのは明らか」と思うかもしれませんし、実際に殺人事件が多い可能性もあるでしょう。ところが、それらの場合でも、佐世保が特別ではない可能性があります。というのも、殺人事件が各地で均等に起こる方がよほど考えられないため。特別な理由はなくても偏るのが自然なのです。
ということで、私は「そもそも錯覚しているだけ」という説を推したいのですが、別の説明も紹介。これもまた私は「単純化しすぎるべきではない」として警戒していますし、佐世保での事件とも性質が異なると感じるのですが、「普通の人が起こしてしまう殺人事件は保守的な家庭で多い」という説があるんですよ。
この場合の「保守的」というのは政治的な保守とはイコールではないですが、親和性があります。今回は目安として、市長の政党履歴を見てみることにしました。以下はインパクトある殺人事件が起きた時期とその時代の市長さんの政党所属がわかる話。いずれも保守政党に所属していたことが確認できました。
佐世保小6女児同級生殺害事件 2004年6月1日
佐世保女子高生殺害事件 2014年7月26日
第25-27代佐世保市長 在任期間 1995年4月30日 - 2007年4月29日
<県議4期目の途中、1986年の第38回衆議院議員総選挙へ立候補するが落選。4年後、1990年の衆議院議員選挙で初当選(無所属、当選後自由民主党に入党)>
第28・29・30・31代 長崎県佐世保市長 在任期間 2007年4月30日 - 現職
<1994年2月、市議を任期途中で辞職し、長崎県議会議員補欠選挙に立候補。朝長以外に立候補者がいなかったため無投票で当選し、以後4期連続当選。2004年、長崎県議会副議長に就任(~2005年7月)。県議時代は自由民主党に所属していた>
なお。ひとつ上の「教育が大事」説の教育は幅広いものが考えられますが、中には保守的な内容を思い浮かべた人もいたかもしれません。ただ、今回の「保守的な家庭で多い」説は、大人が正しいとする価値観を押し付けるなど、縛り付ける方向性がむしろ悪い…という指摘。この説が正しければ逆効果になりかねません。
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