プーチンさんの話を少しまとめ。
プーチン伝説も今は昔?ルーブル暴落にプーチン大統領なす術なし 2015/1/2
窮地のプーチン、金正恩に助けを乞う?ロシアが北朝鮮に急接近の謎 2015/3/10
●プーチン伝説も今は昔?ルーブル暴落にプーチン大統領なす術なし 2015/1/2
2015/1/2:どこまで本気なのかわからないんですが、プーチン大統領はプーチン伝説というネタで恐ろしいプーチン=すごいプーチンという風に持ち上げられます。
東欧では独裁者タイプの指導者が好まれる傾向にあるというアンケートを10年くらい前に見ましたが、日本でもそういう人が多いのかもしれません。
でも、今日はそういう話ではなく、ルーブル暴落にプーチン大統領なす術なし…という情けないプーチン大統領の話です。
まあ、本当かなぁ?とも思いますけどね。西側諸国はロシアと対立していますので、割り引いて見なくちゃいけません。
とりあえず、まず、イギリスのザ・エコノミストの記事を。
利上げも為替介入も効果なしのロシア経済:日経ビジネスオンライン(The Economist 2014年12月26日)
危惧されていたロシアの通貨危機は今や現実のものとなり、モスクワのムードはパニックに近づいている。ロシアの人たちが懸念するのも当然だ。ロシアは致命的な組み合わせ――深刻な景気後退とインフレ率の急騰――に向かいつつある。
ロシアが直面している問題の多くは海外に端を発している。この国は石油・天然ガス関連企業に大きく依存している。化石燃料は連邦予算の半分超、輸出の3分の2に寄与している。(中略)過去6カ月間に原油価格はほぼ半分に下落した。12月半ばには60ドルを割り込んで、金融危機以来の最安値に落ち込んだ。原油価格の下落を追いかけるように、ルーブルも急落した。
ロシアがウクライナで戦争を煽ったことが2つ目の大きな国外問題だ。米国と欧州連合(EU)が多数のロシア企業に経済制裁を科した結果、これらの企業は海外での資金調達が困難になっている。(中略)欧米諸国は一段の経済制裁を視野に入れている。
12月15日にも、"ルーブルは対ドルで10%も値を下げ、前回のルーブル暴落(1998年)以来最大の下落を演じ"ました。この際に、"ロシア中央銀行は為替市場に介入、20億ドル(約2400億円)のルーブルを買ったとされ"ています。
しかし、それでも下がったのですから、"この巨額の介入も深夜の利上げも、効果を上げなかった"と言えます。しかも、"12月16日にはルーブルはさらに11%値下がり"しました。
この他に、ロシア政府が"約110億ドル(約1兆3300億円)のルーブル建て債務と600億ドル(約7兆)2400億円)のドル建て債務を抱えている"のですが、こちらも問題化しています。"これらの債務の利回りはそれぞれ15%と8%に上昇"。"これはギリシャの国債よりも高い値"だそうです。
日本国債格下げで中国・韓国を下回る格付け…に多数反応、批判の嵐にでの反応がそうであったように信頼していない人はそれでもへっちゃらでしょうが、格付け機関も"ロシアに対して悲観的"です。
"ロシア中銀は2015年のGDP(国内総生産)が4.5%落ち込むと予測して"おり、"債務が投資不適格(ジャンク)級に格下げされ"る可能性まで記事では触れています。
ロシア関係ではもう一つ、これより前の記事で、朝日新聞のものを保存していました。で、こちらがより露骨に無力なプーチン大統領といった描き方をしていたのです。
ルーブル暴落、世界揺るがす ロシア、打開策見通せず:朝日新聞デジタル(駒木明義=モスクワ、野島淳 ワシントン=奥寺淳、五十嵐大介 ウラジオストク=中川仁樹 2014年12月18日05時02分)
ロシアの通貨ルーブルは16日、1日で2割下がる暴落を記録した。だがプーチン大統領は17日になっても、沈黙を守っている。タス通信によると、ペスコフ大統領報道官は「大統領による声明は予定されていない」と述べた。
プーチン氏は4日の年次教書演説でルーブル安を作り出しているのは投機家だという見方を示し、「彼らが何者かを知っているし、対抗手段はある」と述べた。しかし、この演説の間もルーブルは下がり続け、マーケットに対する無力さが浮き彫りになってしまった。
ロシア政府は受け身の対応だ。メドベージェフ首相は17日、「市場への強い規制は無益だ。私たちは今後も市場メカニズムに基づいて行動する」と述べた。マトビエンコ上院議長は「悪天候のようなもので、やり過ごすしかない」と平静を呼びかけるばかりだ。
"モスクワ市当局は「外貨による価格表示は違法だ」と警告している"ものの、"モスクワ市内では先週来、商品の値段をドルで表示する小売店も現れてい"ます。理由はロシアの通貨が不安定なため。アップルなんかは"16日、ロシア国内での通信販売を中止"してしまったほどです。
また、スーパーマーケットやイケアなど、輸入品に関わるところは長蛇の列や品薄になるなど、混乱が見られます。輸入品を"値上がりする前に買おうとする人が増えているため"です。さらに物価そのものも上がってきているようです。
"ルーブル安の起点となった原油安そのものは、世界経済全体にとっては依然プラスとの見方が多"く、世界経済は今のところ影響を受けていません。
しかし、"対応を一歩間違えれば、世界的な経済危機に発展するおそれもある"と、朝日新聞は不安視します。ロシアが混乱している中でも、アメリカのオバマ政権が経済制裁の手を緩めない考えのためです。
アーネスト大統領報道官は16日の会見で、「プーチン(氏)の戦略が誤りだったことを示す兆候だ。ロシアは国際社会から孤立している」と指摘。さらに"追加制裁を科すかどうかは「プーチン大統領の決断次第」と述べ、譲歩を迫"りました。
米大統領経済諮問委員会(CEA)のファーマン委員長も16日、「彼らはとても深刻な経済状況に直面しているが、大部分は国際ルールに従わなかった結果で自業自得だ」と発言しています。ロシアに冷たいですし、極めて強気です。
最初に書いたように、私はロシアの危機については懐疑的なところもあります。アメリカ高官の発言を見てわかるように、西側諸国はロシアと対立していますので、マスメディアを含めてロシアが劣勢という状況を印象づけようとしている可能性があります。要するに大げさにアピールしている可能性ですね。
また、朝日新聞では、"ロシアの外貨準備高は11月末時点で約3700億ドルあり、すぐに通貨危機に陥るとの見方は少ない"という情報も出していました。まだ大丈夫だ…という見方です。
ただ一方で、不安視する人がいることもわかります。アメリカもまだロシアは大丈夫だと思ってさらなる制裁を検討しているようですが、思わぬきっかけで戦争が始まってしまうように、国と国との争いに勝つことを優先して、正常な判断力を狂わせる…ということは十分にあり得るでしょう。
クルーグマン教授「消費税増税10%で日本経済崩壊 5%に戻せ」の中では、クルーグマンさんの「国家の指導者が経済的な実績を示せなくなった時、武力を利用して権威を回復しようとする」という話が出てきました。戦争というものは、"国民の注意をそらす"ために行われるものだという認識です。
オバマ大統領も国内では逆境ですので、功をあせって必要以上にロシアを攻撃…というシナリオは考えられそうです。
●窮地のプーチン、金正恩に助けを乞う?ロシアが北朝鮮に急接近の謎 2015/3/10
2015/3/10:"プーチン伝説も今は昔?ルーブル暴落にプーチン大統領なす術なし"を書いたものの、その後ニュースではあまり目立たなかったのでロシアは結局元気になったのかと思っていました。
そしたら、全然大丈夫じゃなさそうな記事が出てきました。
北朝鮮と接近するロシアの思惑と落とし穴 危なっかしい正恩氏の外交デビュー- THE PAGE(2015年3月8日14時05分)(高英起/デイリーNKジャパン編集長)
ここ最近、北朝鮮とロシアの接近が目立っています。金正恩氏が5月にロシアで開かれる「対ドイツ戦勝70周年記念式典」に出席するという話も出ています。もし正恩氏がロシアを訪問すれば、初の外交デビューとなるという意味で注目されています。
タイトルだと北朝鮮が頼りないといった調子ですけど、記事本文ではどっちかと言うとロシアのヤバそうな話の方が多いです。これはおそらくタイトルをつけた編集が、北朝鮮叩きをした方がおもしろいと思ったためじゃないかと。
上記の引用部の後は以下のように続いており、ロシアが窮地だという見方になっています。ロシア・プーチン大統領が北朝鮮・金正恩第一委員長に助けを乞うといった勢いです。
一方、北朝鮮に対する国際社会の包囲網が厳しくなる中で、なぜロシアは北朝鮮に手を差し伸べるようなことをするのでしょうか。ここには、ロシアが国際社会で置かれている現実があります。
細かいところ飛ばしますが、最近ロシアがピンチなのは以下のようなところ。
経済
・原油価格が暴落
・ロシアの通貨であるルーブルが下落
国際政治
・「ウクライナ問題」で国際社会の反発を招く
・ウクライナ情勢をめぐっては、2014年から欧米がロシアを非難し、国連でも緊張状態
"プーチン伝説も今は昔?ルーブル暴落にプーチン大統領なす術なし"で書いたルーブルの話も出ていますが、そちらでは西の経済制裁が経済面の足を引っ張っているというのも出ていました。国際政治の問題と経済の問題は無関係ではありません。
さて、そんな「凋落(ちょうらく)著しいロシア」(記事の表現)が"アメリカや中国と対立するための有効なカードとして浮上してきたのが、金正恩氏率いる北朝鮮"なのだそうな。金正恩第一委員長がまるで救世主のようです。
北朝鮮は核問題でアメリカや中国の言うことを聞きません。ロシアが北朝鮮に影響力を持ち、核・ミサイル放棄の道筋を作ることが出来れば国際的な評価は一気に高まります。
2013年の核実験や張成沢の処刑をきっかけに中朝関係は悪化する一方で、北朝鮮の「離中近露(中国から離れてロシアに接近)」が、目立ちます。北朝鮮国内では、今年5月からロシアから電気が供給や小麦5万トンが支援されるという情報が流れ、ロシアと国境を接している羅先のビジネスマンは朝露関係の改善に大きな期待をかけています。
もちろん北朝鮮にもメリットはあります。"北朝鮮にとっては、ロシアから新たな支援を得られるという点では魅力的"なのです。
こういったロシアと北朝鮮の蜜月関係は他でも報じていました。
CNN.co.jp : ロシアと北朝鮮が接近 貿易拡大、友好の証も 2015.02.06 Fri posted at 10:38 JST
ロンドン(CNNMoney) 欧米による経済制裁などの影響で景気が悪化しているロシアの商工会議所がこのほど、北朝鮮との貿易促進を目指す特別協力協議会を設置した。
同協議会では、両国間の貿易総額を2020年までに現在の2倍に当たる年間10億ドル(約1175億円)に増やすことを目指す。
また、この2カ国の相思相愛の関係は昨年から見られていたようです。
ロシアは昨年半ば、北朝鮮がソ連時代から抱える債務110億ドル(約1兆3000億円)のうち100億ドルを免除した。
もう一つ、昨年の記事。
ロシア・北朝鮮が経済で急接近、中国をけん制 :日本経済新聞 2014/6/25 7:00
ロシアが北朝鮮との経済関係の強化に躍起になっている。今月上旬に開いた経済に関する両国の政府間委員会ではロシアルーブルでの貿易決済の開始や、北朝鮮に進出するロシア企業への支援措置で合意。北朝鮮の資源開発に関する商談も交わされた。
最初の記事でもロシアは、ソ連に変わって二大大国となった中国を強烈に意識しているといった書き方でした。
ただ、その最初の記事では、"報道各社は既成事実のように報じてい"るものの、"ロシア側からも「金正恩氏が参加する」とは明確に述べられていません"ので、まだわからないという見方も付記していました。
北朝鮮としても"ロシアを訪問すれば冷え込んだ中朝関係の亀裂は決定的"になるため、リスクがあるのだとのこと。また、逆にロシアの招待を断れば、関係が壊れることになりますので、舵取りはなかなか難しいところがあります。
北朝鮮側も綱渡り…であり、北朝鮮・ロシアともに外交手腕を試される局面にあると言えそうです。
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