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災害被災者に必要なのはカウンセラーの心のケアよりレジリエンス


 東日本大震災に関して、オーストラリアに生まれ、日本に40年以上暮らした歴史学者J・F・モリス・宮城学院女子大学教授へのインタビュー。

 モリス教授は、2011年3月11日、宮城県で被災されています。下記のように紙一重のところで助かりました。
「人は簡単に『忘れてはいけない』という。でもね......」外国人歴史家が体験した3.11 投稿日: 2015年03月12日 07時23分 JST 伊藤大地

家への帰り道、川(砂押川)を渡ってケーキを買いに行こうとしていたけど、疲れちゃって渡らなかった。渡っていたならばここでお話はできなかったでしょう。ケーキが食べたくて渡っていたかもわからない。生死を分けたのは、そんな差です。

 私は記事より先に感想を読んだのですが、メディア批判したものが多くの同意を得ていました。この批判はタイトルになっている「人は簡単に『忘れてはいけない』という。でもね......」に絡んだものだと最初私が思ったので、単純にメディア批判に結びつけるのはどうかな?と感じました。

 確かに個人としては震災の記憶を思い出すように迫られるのは辛いです。被災者ではない人でもテレビ映像のせいで具合悪くなる人もいました。悲惨な光景を競って映すようなマスメディアのやり方は見直されるべきでしょうし、それ以上の気遣いも必要かもしれません。

 しかし、一方で忘れてはいけないところもありると思います。例えば、募金などの支援は事故直後はわっと集まるものの、支援が必要な物は直後だけではないそうです。数年後、10年後という時間が経ってもまだ支援が必要なときがあるのに、そのときには注目されないと言われていました。

 また、私が一番心配しているのは、新たなまちづくりです。津波が来たことを忘れて、また津波被害を受ける地域に今まで通り人が住むだとか、住むにしても避難経路の整備しないだとかといったことは、絶対やってはいけないと思います。東日本大震災の被害が拡大したのは、過去の災害を忘れたせいでもあります。


 ここでの一番の問題は結局メッセージが伝わる人の違いだと思うんですよね。本来そういった意味合いではないものの、被災者など思い出したくないという人が見てしまうと、「悲惨な出来事を思いだせ」と感じてしまいます。

 私が思い出したのが、最近読んだベネッセのダイレクトメールによって、辛いことを無理やり思い出させられてしまったという話です。(改行は変更)
ベネッセの落とし穴 はてな匿名ダイアリー

2015-03-10
■ベネッセの落とし穴

昨年流産した。
初めての妊娠だったのでネットでも情報を集めようと思い
ベネッセのサイトに登録したと思う。(当時の記憶があいまいである)
流産したことはショックだったけど、
家族の支えもあって元気になった。
また妊活頑張ろうって思っていた。

そんなときにベネッセからDMが来た。
「妊娠7ヶ月のあなたへ、安産のために」
と封筒に書かれている安産のためのヨガか何かのDVDを販売するためのDMだ。
わたし、妊娠7ヶ月じゃないけど・・・?
妊娠初期の人が安定期に入る確率は10~15%だそうだ。
その10~15%のお腹のあかちゃんを失った人にも
きっちりとベネッセは宣伝をしてくるんだと初めて知った。

ということはこのあと連絡しなかったら、
生まれるはずがない赤ちゃんあてに、
生まれなかったその子が1歳になったときに、
ずっとDMが来るってことなんだろうか。
ベネッセってすごいなと思ったし、その何パーセントの人を傷つけているという
意識はないんだなと思った。
そのベネッセに今後お金を落とさない人たちが傷ついてもどうでもいいということ
なんだな。

元妊婦に対してもそういうことをしているということは
お子さんをなくしてしまった人にも確実に届くのだろう。
どうにもならないんですか、この仕組み。
年間何万人って傷つけていると思うんです。

最初から登録しなければいいじゃん、と言われたらそれまでかもしれないけど、
妊娠したときは必死だった。
流産したとき、ベネッセに情報登録したことなんて吹っ飛んでた。

 これ読んで私は「辛いだろうな」と思い、大いにわかると思いました。でも、この件ではなぜか「ベネッセが流産をわかるはずがないので無理」とか、防止策を考えていないからこうなっているのにも関わらず「ベネッセはそういうのに気を遣う企業だよ」とか言うコメントが人気を集めていました。

 確かにこれでベネッセが一方的な悪だと言うことは難しいと思います。メッセージを受け取る人によって状況が大きく変わってくる複雑で悩ましい問題です。

 「人は簡単に『忘れてはいけない』という。でもね......」もそういう難しさがあると思うんですよ。ベネッセの場合は宣伝ですので必要性はないですけどね。


 ここまでが記事を読む前に感じた話だったのですが、本文を読んでみるとどうも読者のメディア批判はこの部分じゃなかったみたいですね。本文の「忘れてはいけない」の部分は、単純なメディア叩きには繋がらない内容でした。
この教訓を覚えるか、覚えないか。今回の震災でも、明治や昭和の津波を覚えているところと覚えていないところで明暗が分かれた。

人は簡単に、「忘れてはいけない」と言う。でもね……人は悲惨なできごとを忘れないと明日へ向かって生きていけないんです。私自身の記憶もかなり書き換えられているし、潜伏しているんです。

(中略)あれだけ鮮烈な経験をして、忘れなきゃ生きていけない場合だってある。子供を亡くした方とか、その方々は引きずるんです。3.11で私自身は何の被害も受けてないのにそれを冷静に語れないかというと……。

……実は私は10歳の時に父が目の前で帰らぬ人となるのを見ているわけ。私にとって、それが重なっているんだろうと思うんです。パカっと開けて頭の中の配線は確認してないけど、たぶんそうだろうと思う。

だから、私個人は、忘れたい、でも忘れられない、そうやって死ぬまで引きずるんです。

でも、地域としては一生懸命、風化させないためにやる。歴史家としてもね。実際、今回のことについて残した書物が100年後に読まれるかというと、読まれないでしょう。次に、大きな災害がどこかで来たら、東北は忘れられます。(中略)

ただ、許せないのは、原発を建てるために過去の津波被害を過小評価してきたこと。

歴史の記録は確かなものではないんです。モヤの中でなにかをつかむような作業です。そこからわかるのは、福島原発を建てたところは慶長三陸地震(1611年)の津波をかぶってるはずです。ただそれは地名とか、神社の名前とか、そういうものからしか再現できないですが、何かは残されていた。それを無視して原発を建てた時点から、慶長の津波はなかったことになった。記録から抹消されてきたんです。あのようなことは、絶対にやってはならない。

それがこれからの、私の歴史家としての使命です。

 メディア叩きコメントの本当の由来は上記の部分じゃなくて、以下だったのだと思われます。結局、私が勘違いしていました。
ところで、災害発生後に「被災者の心のケア」ということがうんざりするほど語られたんだけど、何が心のケアか。ほとんど誰も知らない。

――ひとり歩き。

そう。ひとり歩きしてた。「被災者に寄り添う」と。寄り添うって何なのか。

「心のケア」というとね、カウンセラーが来て「大変だったんだね、ちょっと悩みきかせてよ」というのをイメージするけど、違うんです。

それまでは、悲惨なできごとを経験した人がストレスを受けて、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になるというふうに考えられていました。今、新しい考え方の理論的根拠になっている『サイコロジカル・ファーストエイド』という文献では、「人はそう簡単にはPTSDにならない。人には自分で立ち直る力がある、それを高めれば多くの人たちは立ち直れます」と書いてあるんです。

他人に助けてもらうんじゃなくて、自分で立ち直る力をつける。この力をレジリエンスといいます。たとえば、水を渡すのでも、「ほら、水だ、飲め、ありがたく思え」っていう渡し方じゃなくて「大変だったんだろうね、水だよ、もう安心ですよ」と。こういうメッセージを送るだけでも、自分の友達や仲間と繋がることでもレジリエンスが高まります。

子供たちに「学校は安全で安心できるところだよ、遊べる場もあるし、友達もいる。先生は守ってくれるよ」って、伝えられればそれだけで支援になるんです。津波があったから、学校という場所に関しては、安全だよ、安心だよ、というのは難しいですけどね。

カウンセラーがいなくても、自分たちで立ち直れる、そのことをまず学校の先生に伝えるために、ワークショップを開いたり、「ケア宮城」という名前で、宮城県の教育委員会と二人三脚で活動しています。きっとこの取り組みは、どこかで災害が起こった時にまた力になるだろう、そう思ってやっています。

 マスメディアは「人には自分で立ち直る力がある」ことをもっと伝えるべきだ!というメッセージでしたら、私も賛同します。もっと知られるべきことでしょう。私もこれとは別に一つ書いてみようと思っています。

 同日投稿の東日本大震災と外国人 日本人的な美徳の嘘と差別報道のマスコミでもモリス教授の話を扱っていますが、ここではレジリエンスの参考にレジリエンス (心理学) - Wikipedia(最終更新 2014年11月28日 (金) 04:29)を引用して終わりにします。
レジリエンス(resilience)は「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」などとも訳される心理学用語である。心理学、精神医学の分野では訳語を用いず、そのままレジリエンス、またはレジリアンスと表記して用いることが多い。「脆弱性 (vulnerability) 」の反対の概念であり、自発的治癒力の意味である。

(中略)「脆弱因子」を持っていたとしても、「レジリエンス因子」が十分であればそれが働き、深刻なことにはならない。 その「レジリエンス因子」には「自尊感情」「安定した愛着」から「ユーモアのセンス」「楽観主義」「支持的な人がそばにいてくれること」まで含む。

国内では小塩真司らによる研究もあり、レジリエンスは「新奇性追求」「感情調整」「肯定的な未来志向」の3因子で構成され、また苦痛に満ちたライフイベントを経験したにも関わらず自尊心が高い者は、自尊心が低い者よりもレジリエンスが高いとする。

 関連
  ■東日本大震災と外国人 日本人的な美徳の嘘と差別報道のマスコミ
  ■震災時に役に立ったものリスト 支援物資や防災準備の参考に
  ■原発事故避難で妻が焼身自殺 損害賠償請求の遺族に大バッシング
  ■千羽鶴は迷惑?震災被災地でいらないものリスト 寄せ書き・古着など
  ■九段会館天井崩落事故で元会長らの立件断念 東電に続く人災指摘の軽視
  ■社会・時事問題・マスコミについての投稿まとめ

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