2015/3/26:
●唯一の選考レースの優勝者田中智美がまさかのマラソン代表落選
●マラソン代表を「一発選考」にできない大人の事情
●落選は、第一生命の陸連委員不在が理由?
●不可解な代表選考に、高橋尚子理事「憤慨」
●田中智美(第一生命)が最優先でなかった理由
2019/01/18:
●毎度揉めるマラソン代表選考 本当にグランドチャンピオンシップ(MGC)で解決するのか?
●唯一の選考レースの優勝者田中智美がまさかのマラソン代表落選
2015/3/26:今頃知ったの?と思うかもしれませんが、以下の記事で初めて知った話。
毎度物議醸す女子マラソン代表選考 「一発選考」できぬ理由- NEWSポストセブン(2015年3月25日16時00分) ※週刊ポスト2015年4月3日号
今回、代表切符を手にしたのは、前田彩里(ダイハツ)、伊藤舞(大塚製薬)、重友梨佐(天満屋)の3選手。一方、涙をのんだのが田中智美選手(第一生命)である。彼女が男女を通じて唯一の選考レースの優勝者だっただけに、不可解な選考を疑問視する声は後を絶たない。
確かにこれはひどいです…。かわいそうですね。疑問の声が続々と出ていました。
「(3月11日の会見で陸連幹部に)田中さんは優勝しているし、レース内容も良かったのでは」「これでいいんでしょうか?」(元ロス五輪代表で解説者の増田明美)
「これまで陸連は、順位や勝負強さが大事だといってきたのに、今回はレース前半の積極性を評価しました。180度姿勢が変わっています」(スポーツライターの酒井政人)
「優勝して選ばれないというのはどうなのか」(公務員ランナー・川内優輝選手)
●マラソン代表を「一発選考」にできない大人の事情
こういった怪しい選考を防ぐために、同じ大会に一度に出る「一発選考」にしてはどうか?というのは、過去にも何度も言われてきました。ただ、これはその話が出てくる度に言われているように、できない事情が陸連にあります。きれいな話ではなく、汚い事情です。
「陸連はマラソン中継の放映権で収益を得ていますから、ひとつに絞るわけにはいかないんです」(スポーツライターの酒井政人)
記事にはありませんでしたが、「一発選考」にすると怪我などで間に合わなかった人にチャンスがないなど、それはそれで不運なことにもなりそうですけどね。
●落選は、第一生命の陸連委員不在が理由?
今回選ばれた代表選手と、落選者の所属はそれぞれ以下でした。
代表
前田彩里(ダイハツ)
伊藤舞(大塚製薬)
重友梨佐(天満屋)
落選
田中智美(第一生命)
田中智美選手の落選理由について、以下のような声があります。
「陸連強化委員には天満屋、大塚製薬の委員がいるが、落選した田中の第一生命は委員がいない。それが関係してるというのが、もっぱらの噂です」(スポーツ紙のベテラン記者)
ただ、これでは前田彩里(ダイハツ)選手当選の説明がつきません。ですので、最初は信用しないつもりでいました。ところが、田中選手は重友梨佐(天満屋)選手との争いだったみたいですね。これだと、説明できてしまいます。
●不可解な代表選考に、高橋尚子理事「憤慨」
このことについて、高橋尚子理事は、「田中さんが有利だと思っていた」と発言。「意見を言ったが、返答は代表発表会見と同じ感じで憤慨しました」と続けたそうです。
(
尚子理事 不可解マラソン選考「憤慨」Vで落選・田中「有利だと」 ― スポニチ Sponichi Annex マラソン[ 2015年3月21日 05:30 ]より)
なお、週刊ポストでは、"五輪代表の選考をめぐり、高橋尚子、松野明美、弘山晴美といった名ランナーたちが苦汁を舐め、その都度、陸連批判の声が飛び交った"とありました。高橋尚子理事も微妙な落選の経験者みたいです。
スポニチによると、「私は納得したから次に進めた。選手が納得できる説明がないといけない」と言っていたそうです。
●田中智美(第一生命)が最優先でなかった理由
優勝者が最優先でなかった理由については、以下の解説を読むとわかりました。近年、世界大会への選考基準は事前に明文化されて発表されることになっているそうで、選考基準があるにはあったのです。今回の選考基準を要約すると下記の4つだったとのこと。
1. 仁川アジア大会で金メダルをとること。
2. 横浜、大阪、名古屋の国内選考レースで日本人3位以内になること。
3. 基準2を満たし2時間22分30秒を切ること。
4. 基準2を満たしナショナルチーム所属で「本大会で活躍が期待できる競技者」。
(
松野明美、高橋尚子から田中智美へ。女子マラソン選考問題は終わらない。 (1/3) [今日も世界は走っている] - Number Web - ナンバー 2015/03/20 10:30 金哲彦 = 文より)
しかし、これでスッキリとはいかず。当初陸連が最も期待した1と3の基準は、該当なしとなったため、結局、選考が曖昧になりました。基準2の結果は以下の通りです。
横浜:(1)田中智美 (3)岩出玲亜 (5)野尻あずさ
大阪:(3)重友梨佐 (4)渡邊裕子 (5)城戸智恵子
名古屋:(3)前田彩里 (4)伊藤舞 (5)竹中理沙
作者の金哲彦さん自身は、"最終選考レースの名古屋が終わった時点で選ばれるだろう3人は、優先順位でいうと前田、田中、伊藤だと考えていた"そうです。
ただ、金哲彦さんは以下のような"日本人だけの順位で比較した"ものを出しています。最初の時点でも田中智美選手は1位ではないと予想されていましたが、こちらだと「田中智美(第一生命) VS 重友梨佐(天満屋)」になったことがよりわかりやすいです。
横浜:(1)田中智美
大阪:(1)重友梨佐 (2)渡邊裕子
名古屋:(1)前田彩里 (2)伊藤舞
レースでは3位だが日本人1位の重友は自己ベストタイムが2時間23分23秒、ロンドン五輪代表に選ばれた経験もあり田中より上に見えなくはない、と指摘。レース内容も記録も良かった名古屋から2名が選出されたのは当然である一方、残るは田中と重友2名のどちらにするか、たいへんな議論になったと想像しています。
しかし、金哲彦さんは今回の選考について納得しているわけではありません。やはり前述の高橋尚子さんの落選例などを挙げながら、「期待できる競技者」というどんな解釈もできるフレーズをなくさない限り、「これからも解決しないのかもしれない」としていました。
曖昧選考があるとこうした問題は繰り返されるというだけでなく、週刊ポストであったような「陸連強化委員の意向が働いたのでは?」という極めて不名誉な疑いも出てくるでしょう。もし陸連が痛くもない腹を探られて嫌だと思うのなら、明快な選考基準を作るべきでしょうね。
●毎度揉めるマラソン代表選考 本当にグランドチャンピオンシップ(MGC)で解決するのか?
2019/01/18:いつも揉めていたマラソン代表選考ですけど、20年東京五輪のマラソン代表選考からついに改正。「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」という選考会が生まれ、大きく変わりました。これは最初のときに書いた大人の汚い事情も考慮したもので、結構考えられています。
MGCに出るには、17年夏から19年春までに行われる(1)国内主要大会のMGCシリーズ(2)ワイルドカード(国際陸連公認大会)の2つで記録や順位の定められた数字をクリアする必要があります。このうちの国内主要大会が、前述の陸連にとって大事なスポンサー様の大会で、その重要性を維持することができました。
そして、本番のMGCは一発選考の形で男女各2枠を決定。一発勝負と言いつつも前述のように予選があるため、一発屋を排除できます。早くにMGCの切符を獲得した選手は、積極的に海外レースに参戦できるというメリットも生まれたとのこと。今回の選考方法でマラソン復活の兆しがあると、これを紹介した記事はベタ褒めでした。
(
MGCって何?東京五輪マラソン代表選考を解説 - 東京五輪・パラリンピック300回連載 - 五輪コラム : 日刊スポーツ 2018年11月8日10時10分より)
ただ、男女各2枠って少ない!と気づくと思います。実は、スポンサー様の大会は予選以外にも、「MGCファイナルチャレンジ」というもので使われて、男女もう1人ずつ決定します。私はこのしくみを最初に聞いたとき、結局、最後の1人で揉めるのは同じではないか?と感じました。
ところが、今回の記事の説明だと、MGCファイナルチャレンジでは、「派遣設定記録を突破し、最も記録のいい選手が選ばれる」となっていました。本当に記録だけしか見ないのであれば、明確ですね。確認のために検索して、
(PDF)東京2020オリンピックマラソン日本代表選手選考方針を見てみると、以下のようなややこしい書き方でした。
3.選考基準
編成方針に基づき、以下の優先順位により、日本代表選手を選考する。
(1)MGC優勝者
(2)MGC2位又は3位の競技者の内「MGC派遣設定記録」を突破したMGC最上位の競技者
(3)選考基準(2)を充たす競技者がいない場合、MGC2位の競技者
(4)MGCファイナルチャレンジにおいて、「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」を突破した記録最上位の競技者。ただし、MGCシリーズに出場(完走)、又はMGCの出場資格を有することを条件とする。
(5)選考基準(4)を充たす競技者がいない場合、選考基準(2)を充たしていないMGC2位または3位の競技者
4.選考方法
(1)選考基準(1)、(2)、(3)による選考は、MGC終了時点において、即時内定とする。
(2)選考基準(4)及び(5)による選考は、MGCファイナルチャレンジの男女それぞれの全指定競技会終了時点において、即時内定とする。
なんだかわかりづらいものの、問題となりそうだと感じた「MGCファイナルチャレンジ」に関しては、「記録最上位」と明記されています。なるほど、これなら基準が明確。ここまで来るのに本当に長かったですが、日本のマラソン界もやっと成長したようです。
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