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インドネシアで庶民の味方になった日本企業ユニ・チャーム アジアシェア首位


 ユニ・チャームの話をまとめ。<品質が高いとされる日本製品、実は過剰品質?アジアでは売れず>、<日本式が最高という幻想 思い上がらずに現地の人に合わせる努力を>、<インドネシアで庶民の味方になった日本企業ユニ・チャーム>などの話をまとめています。

2021/08/04追記:
●ユニ・チャームがインドネシアで逆風…戦略が難しい理由とは?
2021/12/06追記:
●新興国でも高級品・環境の変化で低価格…矛盾する2つの記事
●ヒット商品が出た!と思ったらあっという間に真似されて…
2022/02/17追記:
●高価格シフトをうまく進めたユニチャーム、純利益過去最高に 【NEW】
●ライバル企業全部減益の中、なぜユニ・チャームだけ過去最高? 【NEW】


●品質が高いとされる日本製品、実は過剰品質?アジアでは売れず

2015/3/29:日本の製品は品質が良いと定評がありますが、過剰品質だという指摘もあります。そのため、いわゆる発展途上国ではむしろ苦戦することが多いです。

 これは引き算が下手というのもあるでしょうね。高機能化、多機能化は得意なものの、本当に必要な機能の見極めができず、削れないのです。最近はサムスンの息切れが目立っており、日本メディアが嬉々として伝えているものの、スマートフォンで言うと、こういった引き算はアップルやサムスンが得意だとかつて言われていました。

 ただ、発展途上国ビジネスを非常にうまくやっている例外的な企業も日本にはあるんです。例えば、ユニ・チャームがそういった企業。ユニ・チャームの紙おむつにおける2014年の世界シェアは9.1%と、米P&G、米キンバリー・クラークに次ぎ第3位。ところが、アジアでは25.2%で、世界大手の中で首位ということで、むしろ日本企業が苦手としがちなアジアの方が得意なようです。


●アジアで成功のユニ・チャームも最初は富裕層向けに売っていた…

 日本発・世界のヒット商品:インドネシア★1枚売りの紙おむつ−−ユニ・チャーム - 毎日新聞(2015年03月08日 東京朝刊【宇田川恵】)によると、ユニ・チャームがインドネシアで販売している乳幼児用紙おむつは、シェア約66%(2014年末)と親たちから圧倒的な人気を集めています。

 紙おむつの販売を現地で始めたのは、2015年に書かれたこの記事の15年前にあたる2000年。当初は富裕層向けの高級品だったようです。初めは一般的な日本企業と同じだった路線だったんですね。使い捨てで吸水性に優れたユニ・チャームの紙おむつは、当時庶民からはあこがれの存在でした。

 インドネシアでは乳幼児に布製のパンツをはかせるのが普通でしたが、1日に何度も洗濯する必要があり、たいへんなことはたいへんです。ただ、ユニ・チャームの使い捨て紙おむつは通常タイプの約30枚入りで約12万ルピア(約1200円、1枚あたり約40円)と、平均月収1万円程度の庶民には高根の花だったといいます。


●進出してすぐ方針転換 さらに品質を維持したまま安くする戦略に

 ユニ・チャームは庶民に手が届く商品を…と、早くも進出した翌年の2001年に戦略を転換します。このスピード感がまず日本企業らしくなくてすごいですね。さらに、感心したのが、品質を悪くして安くしよう…という選択肢を取らなかったことです。

 何を捨てて何を残すか?という先ほどの「引き算」の話で言うと、品質は残す選択をしました。品質を維持したまま、価格を下げることを目指したのです。それは二律背反で無理じゃないの?と思うかもしれませんが、高品質で安い紙おむつも、頭を柔らかくして他の部分を捨てることで達成が可能なことでした。

 例えば、品質として重要なおむつの内側の軟らかさは残しています。一方、外側は別素材に変更。おむつにとってどこが重要か?というのを理解していますね。同様に広告宣伝費も圧縮して、テレビCMもやめました。日本のシャンプーか化粧品か何かの話でしたが、商品価格に占める広告費がたいへん大きいと聞いたことがあります。そういう戦略は途上国の庶民向け製品では向かないのかもしれません。


●日本式が最高という幻想 思い上がらずに現地の人に合わせる努力を

 また、製造現場には低速だが割安な機械を導入し、設備投資を通常の5分の1に抑えるということもしています。これも発想が柔らかいもので、どこを捨ててどこを取るか?という、取捨選択の問題。製造スピードを優先するよりも、設備投資を抑えて低価格の実現を目指したようです。

 それから、特におもしろいと思ったのが日本では考えられない「1枚売り」という特殊な売り方をしたということでした。これはインドネシアでは、大型のショッピングセンターではなく地域の小規模な売店で買い物をするのが商習慣で、一度に多くのお金は使わないという現地の習慣もあるようです。まとめ買いしないんですね。

 最近言っていませんでしたが、こういった地域化した商品づくりの大切さも一時期私はしつこく書いていました。日本のものが良いのだから変える必要ない…というのは、日本人の思い上がりです。開発を担当したベビーケアSBU部長の石井裕二さんは「考えられるだけの不要なものを、徹底的にそぎ落とした」とおっしゃっていました。わかってますね。


●インドネシアで庶民の味方になった日本企業ユニ・チャーム

 この結果、1枚2000ルピア(約20円)と従来品の半額の「マミーポコパンツ・スタンダー」が完成します。"07年12月に発売すると、初日から飛ぶように売れた"のですが、反応がおもしろいです。

 先ほど地域の小規模な売店で売るという話があったその店主らが、「庶民の味方だ」と多くの注文を出したのだとか…。これにより、インドネシアで首位になり、アジアでも首位になることができました。

 私は寄付やCSRみたいなのってあんまり好きじゃないんですよね。持続性がないためです。それよりこうやって必要とされるものを提供していくというのが、何よりの社会貢献だと思っています。ユニ・チャームの製品づくりは理想的です。


●ユニ・チャームがインドネシアで逆風…戦略が難しい理由とは?

2021/08/04追記:昔から企業の栄枯盛衰というのは激しいです。ユニ・チャームの場合も環境が変わって首位陥落ということも十分あり得たと思うのですが、まだインドネシアで強いみたいですね。<インドネシア】ユニ・チャーム、シェア伸ばして首位維持>(2021/7/30(金) 11:31配信 NNA)という記事が出ていました。

<衛生用品大手ユニ・チャームのインドネシア法人、ユニ・チャーム・インドネシアは29日、2020年1~12月期連結決算で売上高が前年比1%減の8兆4,340億ルピア(約640億円)だったと発表した。新型コロナウイルス流行拡大の影響で市場が縮小したものの、ほぼ前年並みの売り上げを維持し、主力商品である紙おむつや生理用品の市場シェアはいずれも前年を上回り、首位を維持した。
 商品カテゴリー別の20年の市場シェアは、ベビーケア用品(紙おむつ)が47%、フェミニンケア(生理用品)が45%、ヘルスケア(大人用紙おむつなど)が41%。それぞれ19年の41%、40%、40%から伸ばした。全体の平均では43.3%と、19年時点から1.1ポイント伸ばした>

 環境の変化としては、コロナ禍で国民の購買力が低下し、行動制限で外出や買い物の機会が減るといったことが起きています。ユニ・チャームでも商品の使用頻度や使用量が減ったほか、低価格帯商品の需要が高まり、低価格帯商品の売り上げが好調だったとのことでした。もともと高級路線ではないはずなので、さらに低価格帯ってことですかね。

 例えば、「Fitti」ブランドのベビー用紙おむつや、大人用紙おむつ「Certainty」の売り上げは前年からそれぞれ34倍、25倍と飛躍的に拡大したそうです。とはいえ、これらの低価格商品の売り上げは全体の1割以下。ユニ・チャーム・インドネシアの石井裕二社長は「『マミーポコ』など主力ブランド商品の売り上げを維持しながら、ロープライス商品も市場に浸透させていく」と話したそうです。

 ただ、一般論としては、別の価格帯のブランドが低価格帯のブランドでも制覇するのは難しいと思われます。ブランドイメージが大きく異なっていて消費者には分かりづらいですし、社内で需要を取り合う共食いが起きて消極的になる…といったことが起きます。だからこそ環境変化で首位交代ということが起き得るとも言えるでしょう。ユニ・チャームがこの難題を克服できるか注目です。


●新興国でも高級品・環境の変化で低価格…矛盾する2つの記事

2021/12/06追記:紹介が遅れて時系列が前後してしまったのですが、前回の記事の半年前の2021年1月5日にユニ・チャーム、豊かな新興国でみせた次の一手: 日本経済新聞(2021年1月5日 2:00 )という記事をブックマークしていました。こちらも読んでみたら、前回紹介の記事と全く逆の内容。驚きました。

<ユニ・チャームが過去数十年の成長を支えた新興国戦略の転換に動いている。主力の紙おむつで現地の所得水準に合った一定品質の商品を大量供給する従来の戦略に綻びが生じ、生理用品を中心に高付加価値品で稼ぐ方向に転じている。今年は豊かになったアジアの中間層を取り込む新たな成長モデルの基盤を固める1年となる>

 上記を読んでわかるように、この記事の2021年1月時点では「新興国でも今は低価格より高付加価値品が売れている」というものです。ところが、前回紹介した2021年7月の記事では、「インドネシアでは低価格帯商品の需要が高まり、低価格帯商品の売り上げが好調」という全く逆のものでした。半年でいきなりトレンド転換したんですかね。

 とりあえず、この半年前の記事によると、中国で現地生産しながら販売してきた中価格帯の紙おむつ「マミーポコ」は現地メーカーが品質を高めて価格競争が激化。出生率の低下も考慮し、2019年12月期は現地3カ所の生産拠点で119億円の減損損失の計上。今後も中国の紙おむつ市場の将来性は厳しいと見られています。

 ということで、インドネシアと中国の違いですかね。中国は「1人当たり国内総生産(GDP)が3000ドル(約30万円)を超えると、紙おむつの売れ行きが加速する」というユニ・チャームの独自指標をはるかに超えるGDPが1万ドル前後にまで成長。豊かな国となった中国の場合は、違う戦略を取る必要があるという話かもしれません。


●ヒット商品が出た!と思ったらあっという間に真似されて…

 中国限定ではなく全体の数字だと思われますが、ユニ・チャームは、売上高の約4割を占めるとみられる紙おむつなど「ベビーケア事業」の投資を縮小。生理用品の「フェミニンケア事業」で4割、介護用パンツなどの「ヘルスケア事業」に全体の3割、ペットフードなど「ペットケア事業」で3割を振り向ける方針を示しています。

 戦略転換の柱となるのが売上高全体の約2割を占めるとみられ、利益率が高い生理用品。高価格帯の商品を拡充し、20年秋に中国で発売した生理用品「ソフィHOT暖℃」を発売し、中国1位の恒安国際集団を追い上げ。流通価格は現地メーカーの数倍、ユニ・チャームの既存商品や花王の「ロリエ」と比べても1.5倍程度の水準だというので、本当高いですね。

 ただし、日用品業界では各社の技術力で目立った差はなく、商品コンセプトそのものに特許が認められにくいため、ヒット商品を1つ出せても、しばらくすると市場には似たコンセプトの競合品が並びやすいと指摘されており、この路線でもなかなかたいへんそうな感じ。この「すぐ真似される」は中国がパクリ大国だからということではなく、どの国でも言われる課題です。

 技術的な差がなくなって売れなくなるという話は、うちだと、コモディティ化対策の例 レゴは機能ではなくストーリーで売って成功が関連する過去投稿。こうした関係により、ユニ・チャームの生理用品もすぐ稼げなくなる可能性があり、日本で成功している介護用パンツやペット用品など、次々と新しい市場を開拓していく必要があるかもしれない…と記事では書いていました。


●高価格シフトをうまく進めたユニチャーム、純利益過去最高に

2022/02/17追記:前回、高価格帯の商品を拡充している…という話を書いたばっかりなのですが、ユニチャーム純利益最高 21年12月期、高価格シフト進む: 日本経済新聞(2022年2月15日)という記事が出ています。前回追記の記事は新しくなかったとは言え、早すぎですね。本当なんでしょうか。

<ユニ・チャームが15日発表した2021年12月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前の期比39%増の727億円となり、3期ぶりに最高を更新した。生理用品では高価格帯へのシフトを進めるとともに、乳幼児用おむつでは複数のブランドを使い分けて価格競争の影響を極力抑えた>

 とりあえず、上記にある通り、過去最高益だったのは事実。また、「高価格シフト進む」であり、これで高価格シフトが完了したという意味ではないですね。記事では、上記に続けて<原材料高が続くなかで一層の高機能路線を続けられるかが業績拡大を左右する>と書いていました。試練は続きそうです。


●ライバル企業全部減益の中、なぜユニ・チャームだけ過去最高?

 なお、売上高は8%増の7827億円、本業のもうけを示すコア営業利益は7%増の1224億円、売上高に対するコア営業利益率も15.6%と高水準で、何もかもが全部良いという状態。これは業界全体の傾向というわけでもないようで、ユニチャームの業績の好調さは海外の競合と比べても際立っており、ライバルは軒並み減益だったようです。

 では、なぜユニ・チャームだけが競合他社と違って成功したのか?という答えが、前述の高価格シフトでした。国内での生理用品の価格帯別の内訳は21年12月期が高価格が8%、中価格が72%、普及価格は20%。19年と比べ高価格の比率を5ポイント高める一方で普及価格を4ポイント下げ、採算を保ちました。

 生理用品はオーガニックコットンを100%使用した商品や、蒸れにくい冷感加工を施した商品を新たに投入して中国やインドネシアなどで売り上げを伸ばしています。日本だけでなく、中国やインドネシアでも高価格商品がウケました。特にインドネシアでも高価格商品が成功したというのは、驚きですね。

 高価格の生理用品と大人用おむつは価格競争が厳しい乳幼児用おむつより採算が良いのですが、実を言うと、乳幼児用おむつでも、高価格帯と普及価格帯のブランドのすみわけが力を発揮。ユニ・チャームは、高価格帯の「ムーニー」と普及価格帯の「マミーポコ」という2つブランドがあるのが良いらしいのです。

 どういうことか?と言うと、同じブランドで様々な価格帯の商品を手掛けている競合他社の場合、ブランド内の安い方の商品に引っぱられて高価格商品の値段も下がり、利益が落ちるって話みたいでした。一方、別ブランドであるユニ・チャームの場合は高価格商品は値下がりしないといった説明です。

 ただ、この戦略は全然真似できないものではないために、他の企業がパクるのは簡単じゃないかと私は思いました。今後、ライバル企業が猛追を見せるかもしれません。また、記事では、国内の新型コロナウイルス下で生まれたマスク需要の反動や前述の原材料高を警戒。ユニ・チャーム一人勝ちの状況が続くかは不透明です。


【本文中でリンクした投稿】
  ■コモディティ化対策の例 レゴは機能ではなくストーリーで売って成功

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