2023/07/01:
一部見直し
●IQが20違うと会話が成立しない理由判明?情報を持つ人は相手も過大評価してしまう
失敗は「そこ」からはじまる
の一部を抜粋し、編集して構成した記事を読みました。
なぜコカ・コーラは顧客を裏切る意思決定をしたのか?|失敗は「そこ」からはじまる|ダイヤモンド・オンライン(2015年1月20日 フランチェスカ・ジーノ,柴田裕之)という記事です。
この記事に出ていた実験の話は興味深かったものの、タイトルになっているコカ・コーラの例との類似性についてはしっくり来なかった話。コカ・コーラの失敗というのは、1985年にペプシの追い上げを恐れて味を変更したときのことです。大部分では好評を得たたものの、一部の強行な反対者らにより流れが変わり、やがて激しい抗議運動とともに旧コカ・コーラの復活となったという話でした。
一方、私が興味深かったという実験は、以下のようなものでした。
<ジョージ・ローウェンスタインとドン・ムーアとロベルト・ウェーバー(この実験が行われた当時、3人はカーネギーメロン大学の同僚だった)は、同校の経営学の学生に、ある重要な細部が異なる2つ1組の画像をいくつも見せた。参加者は次の3つの条件のどれかに割り振っておいた>
「無情報」条件 参加者には、画像について何の情報も与えなかった。
「情報」条件 参加者が画像の違いを探す前に、その違いを教えた。
「選択」条件 参加者には、料金を払って違いを教えてもらえる選択肢を与えた。
そして、"どの条件でも、参加者には、「無情報」条件の参加者が違いを突き止めるパーセンテージを推測するように指示し、その予想の正しさに応じて謝礼を支払"うことになっていました。この実験で注目すべきは正解率そのものではなく、「無情報」条件の参加者の正解率についての予想が正確かどうかです。非常に興味深かったのが、"情報を与えられた参加者が、与えられなかった参加者と比べて、このパーセンテージを大幅に過大評価した"といいいます。
「無情報」条件の参加者のうち、画像の違いを突き止められた人は約20%でしたので、なかなか難しい問題であったようです。彼らはその難しさをわかっていたせいか、正解率をおよそ30%と見積りました。なかなかいい線を言っています。
ところが、画像の違いを探す前にその違いについてあらかじめ情報を与えられていた参加者の場合は、58%と大きく異なる予測をしました。最初から教えてもらったり、自分で探す苦労をしていなかったりするせいで、問題の難易度を大きく見誤ったのかもしれません。
また、「選択」条件組の結果も興味深かったところ。"情報を手に入れないことにした参加者は、このパーセンテージをおよそ35%と予想"しました。「無情報」条件組よりやや高いですけど、大きな差はありません。この差については、誤差の可能性もあるでしょうし、今回は気にしなくていいでしょう。
問題は29%いたお金を払って正解を聞いた人たちの予想です。"彼らは、情報を与えられていない参加者の約55%が違いを突き止めるだろうと推定"しました。「情報」条件組の58%とほぼ同じで、やはり正解を知ってしまったせいで過大評価したようです。
しかも、こちらの人たちは、わざわざ自分の予想を悪くする情報にお金を支払ってしまったということになります。かなりキツイですね。記事では、<参加者は自分の特権的な情報を、それを持たない他者に投影したばかりでなく、自分の判断を偏らせるような情報にお金を払い、自分の受け取る謝礼を一貫して減らしたのだ>と書いていました。
記事では、過大評価したのは、"それを得るのにお金を払った事実を正当化するためだろう"と説明。説明自体は理解できるものです。ただ、この実験の場合は「情報」条件組と大差ありませんでしたので、私はお金を支払ってしまった事実はあまり関係ないと感じました。正解情報を知っているかどうかの方が本質的でしょう。
なお、最初に少し紹介したコカ・コーラの事例は、"発売前のフォーカスグループ(引用者注:フォーカスグループとは、グループ対話形式で行うマーケティングリサーチのこと)の調査では、ほとんどの人が好意的な反応を見せた"と書いていたので、有料情報が判断を誤らせたと言いたかったのかな?と思います。
しかし、この事前のマーケティングにおいても、"一部の人が声高に異議を唱え、フォーカスグループのほかのメンバーに影響を与えて、反対陣営に鞍替えさせ"ていました。兆候は見えていたどころか、実際にその後起きたことそのもの。また、フォーカスグループという調査方法自体が少数の人々の意見であり、全体の意見と捉えるのは危険だとも言われています。
ということで、そもそもコカ・コーラの事例は、正解情報を知る人と知らない人で差が出たという例としてピッタリ当てはまるのだろうか?とも思います。別のところがポイントとなっているような気がするんですよ。私には全体にしっくり来ませんでした。
コカ・コーラの事例は置いておいて、情報の有無が他の人の理解度の予想を誤らせるというのは、たいへん重要な指摘。このことで、専門家などが一般人の理解度を勘違いしてしまう理由を説明できます。情報に詳しい人ほど、「他の人だってこれくらい知っているだろう」という間違いを起こしやすくなるのです。これは結構困ったことですよ。
そういえば、これは以前やった
ダニング-クルーガー効果 上から目線の人や自信家はむしろ愚かであることが多い「アメリカ人は30カ国中数学25位、科学21位、自信は1位」で出てきた「平均以下効果」も思い出させるものでした。「平均以下効果」は、ある物事を得意である人が、自分のその物事の得意さについて過小評価してしまう、他の人はもっとできるはずだと思って自信を持てないというものです。
この平均以下効果を示す人はそうじゃない人より成功しやすいとしていました。平均以下効果は必ずしも悪い話ではないのです。しかし、今回の話題である情報があるほど大衆の反応を見誤るというのは、良いことではありません。対策が必要そうですね。
…で最初終わろうと思っていましたが、この話だけだと興味を示してもらえない感じがあったので、タイトルのように「IQが20違うと会話が成立しない理由」という話に無理やり結びつけてみました。実を言うと、「IQが20違うと会話が成立しない」という言葉は個人的に嫌いですし、IQの高さ=頭の良さみたいな考えも嫌いです。
でも、ここでは単純にIQの高さを知識量の多さに置き換えて、相手に対して「これくらい知っているだろう」と過大評価してしまって会話が成立しづらくなる…という解釈にしてみました。「IQが20違うと会話が成立しない」は相手を馬鹿にした感じがありますし、知識をひけらしながら「常識でしょ」みたいな顔をしている人も軽蔑するのですが、実際悪気なく勘違いしてしまうということはあるでしょう。
無理やりこじつけはしたものの、結構当てはまる説明な気がしてきました。
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