当初書いていたのは、<体に悪いイメージのマクドナルド、英国は健康・安全性で人気復活>というタイトルの話。これはイギリスの例でしたが、日本でもお医者さんがお年寄りにマクドナルドを食べるように勧めている…とする記事があったので、セットにしてみました。
2022/1/4日追記:
●年をとったら粗食・脂っこいものは避ける・少食…全部間違い!
●マクドナルドが体に悪いは嘘?医者が推奨、高齢者に最適な理由
●マクドナルドは体に悪い?子供に食べさせると叩かれてしまう…
2015/4/16:マクドナルドは資本主義の象徴であるとともに、不健康という話題においても世界で最も叩かれる象徴的な存在だと言えるでしょう。
アングル:子連れ客の「マクドナルド離れ」に歯止めかかるか- ロイター(2015年4月14日10時16分)(原文:Lisa Baertlein記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)という記事も、そういったイメージがよくわかる話でした。
<「夫は間違いなく不快に思うはずなので、私たちは(マクドナルドでの外食を)『秘密の食事』と呼んでいる」と語るウッドさん。(中略)
ウッドさんのような若い母親が、マクドナルドでの食事を内緒にするよう子供に言い聞かせているという事実は、世界最大の外食チェーンである同社にとって、既存のイメージを変えることがいかに大変かを如実に物語っている。(中略)
モーニングスターの外食アナリスト、R.J.ホットビー氏は「(マクドナルドには)依然として健康に悪いイメージがある。修正は可能だが、簡単なことではない」と指摘>
●実はマック自身も「健康に悪い」と思ってる?従業員には非推奨
そして、どうやらマクドナルド自身も、ファストフードが体に悪いものだと思っているようです。
CNN.co.jp : 「ハンバーガーは不健康」 米マクドナルドが従業員に助言(2013.12.26 Thu posted at 11:26 JST)という記事が出ていました。
<今回注目を集めることになったのは、社内サイト「マックリソース」に掲載された写真。チーズバーガーとフライドポテトと赤いカップに入った飲料の写真には「不健康な選択」という説明書きがあり、その隣のサンドイッチとサラダと水の写真には「健康に良い選択」という説明が添えてあった。
さらに、「ファストフードは自宅で料理するのに比べて手っ取り早く値段も手頃ですぐに用意できます。便利で経済的な半面、ファストフードは一般的に高カロリーで脂肪、飽和脂肪、糖分、塩分が多く、太り過ぎになる危険があります」という注意書きも掲載されていた>
従業員に推奨しないものを他人に売っているというのは、とんでもないクソ野郎です。ただし、この体にいいものと体に悪いものがある…という二元論的な考え方は間違いですけどね。以前、
マクドナルドだけでダイエットに成功 ファーストフードも食べ方次第という話もやっています。
あと、ある会社の人が自社製品を身内には悪影響だと勧めないというのは、
子供のスマホ利用は悪影響、ノーメディアを アップルのジョブズ元社長とよく似た話だと気づきました。同じようなことをしても、マクドナルドだと悪い話、スティーブ・ジョブズさんだと良い話、となってしまうのは不思議です。
●マクドナルドにヘルシーさなんか誰も望んでいない…という説も
マクドナルド人気低下の意外な理由 安全性より値段が高いから?で使った記事の調査では、食の安全性を求める声が多数寄せられていました。たとえば、「どういった点が改善されたらもっとマクドナルドに行くか」においてトップだったのが、「食の安全が確保されたら」という項目。61.4%で圧倒的に1位でした。
また、回答者のうちの20代では、「ヘルシーさ」「安全・安心」といった項目で、「悪い」もしくは「やや悪い」を選んだ比率が、全体の比率を上回るという特にイメージの悪さが際立っていました。(他に「コストパフォーマンス」も極めて悪いとなっています)
しかし、このアンケート調査の記事への反応を見ていると、そもそもマクドナルドにヘルシーさなんか誰も望んでいないという意見もありました。項目があるから選んでいるだけで、マクドナルドの健康イメージ向上を本気で望んでいるわけではないという見方です。なお、最初のロイターでも以下のような調査をしていました。
<ロイターとイプソスによる最近の調査(回答者1364人)では、米国の成人の60%が、抗生物質が含まれていない肉を提供するレストランが増えることを望むと答えた。また18歳未満の子を持つ親の40%が、もし抗生物質が投与されていない鶏肉がメニューにあれば、子供をマクドナルドに連れて行きやすいとしている。同調査は、マクドナルドがチキン製品での「脱抗生物質」方針を発表した約2週間後の3月27─30日に行われた>
●体に悪いイメージのマクドナルド、英国は健康・安全性で人気復活
誰もマックに健康を望んでいないというのは、わらかんでもない見方です。消費者調査はあてにならないところがありますしね。ただ、イギリスのマクドナルドの場合は、何とヘルシーさで人気が復活したんだそうです。もちろんイギリスのマクドナルドもご多分に漏れず、不健康イメージはしっかりと定着していました。
別にイギリスでのマクドナルドが、以前から特殊だったというわけではないようです。
【ルポ 世界のマック】安心・健康で英国は復活していた:日経ビジネスオンライン( 篠原 匡 、蛯谷 敏 、小平 和良 2015年3月31日)では、まず、以下のような話がありました。
<マクドナルドUKは今から10年ほど前、健康志向の高まりで「マクドナルドはカラダに悪い」というイメージが定着。店舗のリストラを余儀なくされるなど、業績が悪化していた>
そこで、イギリスのマクドナルドは、顧客の健康・安全志向に転換。業績回復にも成功します。
<今ではポテトの塩分は2003年比で4分の1となり、「塩なしポテト」まで選べる。全メニューからトランス脂肪酸を排除し、シェークの脂肪分も34%減らした。食材の産地は牛肉やポテトなどを中心に英国にこだわり、英国産比率は55%。卵は全て放し飼いの鶏から採っている。2013年、英国や欧州の外食やスーパーを揺るがした牛ひき肉への馬肉混入事件でも、マクドナルドUKは無傷だった>
このイギリスの復活を成し遂げた人は、今年3月1日に米マクドナルドCEO(最高経営責任者)に就任したスティーブ・イースターブルックという方だそうです。米マクドナルドでも、"就任した直後の3月5日、マクドナルドは米国内における新たな原材料調達方針を発表"。"飼育に抗生物質を使っていない鶏肉のみを調達することなどが柱"として、早速彼らしい仕事を始めています。
イースターブルックさんは"2006年にマクドナルドUKのCEOとなり、2010年には欧州を統括する立場に昇進"。ただ、すんなりと昇格したわけではなく、"2011年にマクドナルドを離れ、英外食チェーンのピザエクスプレスやワガママ(日本食)の社長に就任"しています。なお、日本食のワガママは、
イギリス日本食ビッグ4が世界へ 本場感よりローカライズが成功の秘訣で出てきたところですね。イギリスの日本食最大手です。
●アメリカのマクドナルドの課題は従業員の質の低さで依然苦戦
アメリカでも彼なら「変身」をやってのけるか?と言うと、"イースターブルック氏が直面している問題の根は深い"と記事は指摘しています。アメリカのマクドナルドの不振の原因は、現場のモラル低下と、新興チェーンの攻勢だそうです。
<米ニューヨーク(NY)・ハーレム地区のとある店舗。「忙しくなると、ポテトを最後まで揚げずに出してしまうこともある。従業員が減って、そうでもしないと回らない」。(中略)
現場のモラルが低下する背景には、低い賃金に対する不満がある。店舗の従業員は最低賃金に近いところで働いており、昨年5月の株主総会前には、本社前で賃上げを求めるデモが発生して100人以上が逮捕されたほどだ。
さらに深刻なのは、モラル低下がサービスの劣化を招き、客離れが加速していることだ。米国での客数は2014年は前年比で4.1%減となっている>
最初の「ハンバーガーは不健康」と掲示していたマクドナルドのサイトは、"もともとマクドナルドの従業員に家計のやりくりを指南する"ものだったそうです。実はこの記事のときにも従業員の給料の安さが問題になっていました。
(ちょうど昨日でしょうか、日本マクドナルドが従業員の給与を下げるというニュースが入ってきました。アメリカと逆に日本は高すぎという可能性はあるものの、この記事の問題意識からすると日本マクドナルドの決断は逆効果だと評価されるでしょう)
<今年7月の時点で、例示された1カ月の支出項目の中に食費やガソリン代がないことや、収入の欄に「2番目の仕事」という項目があることがマスコミに取り上げられ、CNNMoneyは「マクドナルドの賃金だけでは暮らしていけないことを同社が認めた」と伝えていた>
また、「新興チェーンの攻勢」の方についても少し捕捉。ライバルチェーンってのが、例によって"食の安全や健康を打ち出し消費者を魅了している"というものですね。
マクドナルドはまずい?マックが最もおいしくないハンバーガーと評価で出てきたようなところです。
●中国ではむしろ食の安全性が高いイメージのマクドナルド
別記事ではマクドナルドが中国でも不調だと書いていました。ただ、マクドナルドが不健康で安全性が低いから人気がない…ということではありません。中国ではむしろマクドナルドの方が食の安全性が高いイメージがあるようです。
<北京や上海の店舗では最近、昼時ともなるとレジの前は人で埋め尽くされる。ある20代の男子大学生は「安全性は、マクドナルドの方が町の小さな食堂よりも信頼できる」と語る。マクドナルドは「チキン問題」の当事者とも言えるが、客足は戻りつつあるように見える。それが、「他と比べれば安全」という消極的な理由でも、そこには一定の価値があるからだ>
食の安全で問題を起こした中国のマクドナルドが、それでも「他よりは安全」と見られているというのは皮肉ですね。ただ、これは逆に食の安全というイメージの重要性を物語る、象徴的なエピソードになっています。
●マクドナルドよりコンビニの方がそもそも不健康では?塩分を比較
過度な減塩も間違いなく体を害するため減塩にも注意が必要ですが、マクドナルドの健康について検索していたらおもしろいページも見つけました。
マクドナルドVSコンビニ食品 塩分で見た不健康対決 - とある医学生の雑記帳(2014-03-07)とする記事で、以下のように比較しています。
<マクドナルド商品の塩分>
ポテトM 0.6(g)
ポテトL 0.8(g)
テリヤキマックバーガー 2.3g
ハンバーガー 1.5g
アメリカンファンキーBBQ ビーフ 3.8g (マック最凶メニュー)
<コンビニ商品の塩分>
コンビニさけおにぎり1.4g コンビニうめおにぎり2.2g
コンビニ弁当 4.5g
<「マクドナルドは健康に悪いからせめてコンビニでおにぎり3個ぐらい買おう」なんて思ったりする時期が僕にもありましたがマクドナルドを遥かに上回る塩分量になってしまいます>
こういうマクドナルドが体に悪いとか、コンビニ食が健康に悪いとか、逆にどこどこはヘルシーだとかは、あまり本質的な問題ではないです。結局、最も重要なのは、すべての食事を合わせた全体のバランスですからね。ただ、まあ、消費者はそこまで考えられませんから、ヘルシーなイメージを作り出して売りつけるという商法は、現代では非常に重要なのだと思われます。
●年をとったら粗食・脂っこいものは避ける・少食…全部間違い!
2022/1/4日追記:日本でお医者さんがお年寄りにマクドナルドを食べるように勧めているらしい…という話があったのは、<医師が高齢者に「マクドナルド」勧める驚きの理由 人生100年時代の健康に必要な2つの要素>(東洋経済オンライン / 2022年1月2日 14時30分)という記事です。
これは、医療法人社団悠翔会理事長・診療部長の佐々木淳さんの著書『
在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』から一部抜粋・再構成した記事だとのこと。以下のような高齢者にありがちな会話は、いつの間にか衰えて、寝たきりや要介護になるリスクがあるとしていました。
「年をとったら、粗食にするほうがいいんだ」
「最近、肉とかの脂っこいものは避けているんだよ」
「年寄りのひとり暮らしだし、食べられる量を少し食べていれば十分」
https://news.infoseek.co.jp/article/toyokeizai_20220102_478690
●マクドナルドが体に悪いは嘘?医者が推奨、高齢者に最適な理由
なぜか?というと、年をとってからの食事量低下や低栄養は、てきめんに筋肉量減少・体重減少に繋がるためとのこと。筋肉量や体重が減ると「転倒骨折」や「誤嚥性肺炎」を起こすリスクが上昇。また、これによる入院でさらに筋肉が落ちて衰弱が一気に進んでしまう…といったことも起きやすくなるそうです。
<こういった衰えの悪循環を防ぐ唯一の手段が「しっかり食べること」。高齢者が人生のラストステージを健康に生きていくには、「日々しっかり食べること」が必須であり、年をとればとるほど、ちゃんと食べるようにしていく姿勢が求められるのです>
高齢者の食の基本は「1にカロリー、2にたんぱく質」とされていました。世間で流行っているダイエットとは真逆ですね。高齢者はとにかく十分なカロリーの確保を最優先にして、いかにもカロリーが高そうなものを意識して摂るようにしていくべきとのこと。なので、マクドナルドなどのハンバーガーや牛丼、ピザ、フライドチキン、餃子がおすすめだとされていました。
なお、これらの話は飽くまで「高齢者」のものであり、それ以外の世代にはやはり「健康に悪いもの」と思うかもしれません。ただ、前半で書いたように、マクドナルドでダイエットに成功した人もいます。結局、全体のバランスや運動など他の要素との兼ね合いなんですよね。悪い食べ物があるというのはわかりやすいのですが、事実ではありません。
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