リアル店舗において、万引きの占める割合はかなり高いようですね。その上、万引き犯を捕まえようとすると、なんとお店側が非難されてしまうというときすらあります。この困った万引きへの対策はいろいろとあり、王道のものの他、レンタル万引き犯や再犯防止受講といった変わったものもあったので紹介しています。(2015/4/28)
2015/4/28:
●逃げた万引き犯が死亡して被害者の書店に非難、閉店へ
●万引が多すぎて潰れる店も…スタンダードな万引き対策・防止策は?
2017/07/18:
●大きな声の「いらっしゃいませ!」には意味がある
2015/4/28:
●「レンタル万引き犯」っていったい何?変わった万引き犯対策
●風変わりで特別にみえるレンタル万引き犯、実は日本でもある?
●アメリカでは「万引き犯に再犯防止コースを受けさせる」という対策も
●本当に効果があるの?再犯防止コース受講という防止策のメリット
●おもしろい対策だけど…再犯防止コース受講の問題点
2021/06/29:
●警察官が考えた「謎の言葉」で万引き3割減…なぜ公開してしまうの? 【NEW】
●「万引き防止 実験Ⅱ」のカードを設置するだけで万引き激減する理由 【NEW】
●逃げた万引き犯が死亡して被害者の書店に非難、閉店へ
2015/4/28:まず、万引きに厳しい対応をしたら、お店側が非難されたというちょっと話から。
万引き死亡事故 被害の店が閉店 #探偵ファイル/探偵魂(03/02/01)では、2013年1月30日の毎日新聞が報じた万引き被害の書店が閉店したニュースを掲載しています。
川崎市川崎区の書店で万引きが発覚しました。これだけでは普通ニュースにはならないのですけど、逃げた中学3年の男子生徒が電車にはねられ死亡した事故が起きるという特筆すべきことが起きます。
そして、、万引被害者であるはずの書店側に、市民から「人殺し」といった非難の電話がくる事態に。これにより、書店は、店頭に「尊い命が失われたことについて重く受け止めております」と謝罪する謝罪文を張り出しました。さらに閉店する意向を示しているといいます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030131-00002099-mai-soci
探偵ファイルでは、死亡した父親の「廃業していただけるなら嬉しい。あそこ(本屋)の近くを通るたびにつらい気持ちになるから。ウチの子は、本屋の中でどんなつらい思いをしたか・・・」といった声などを紹介。
近所の人は<私は書店を許せません!「何が何でもパトカーを呼んだりしたら、今の子供は何を起こすか分からない」と書店に言いました><子供相手の商売をしているなら万引きなんてよくある。書店は配慮してくれないと>としていたといいます。
一方、商店街の人からは、「どっちが被害者でどっちが加害者なのか分からない」「 (書店は)正しいことをやったのに腑に落ちない。残念」といった声が出ていたそうです。
●万引が多すぎて潰れる店も…スタンダードな万引き対策・防止策は?
上記の書店の閉店はかなり特殊なのですけど、万引き被害があまりにも大きいために潰れる店舗もあると聞きます。
Q372.万引きが多くて悩んでいます。効果的な万引き対策を教えてください。|ビジネスQ&A|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト](中小企業診断士 沢田 一茂)にも、「万引きが多く、かなり利益を圧迫しています」という店主さんが対策について質問をしていました。
中小企業診断士の沢田一茂さんは、万引きがお店の経営に大きな影響を及ぼすことがあることを肯定。万引き対策が不十分なばかりに、店の経営が成り立たず、万引き被害による利益の圧迫で倒産する「万引倒産」も現実にはあるとしていました。
そして、小売店において万引き被害を減少させるには、店舗スタッフの配置や行動、防犯システム、レイアウトの工夫など、あらゆる観点から効果的な対策をとる必要があるとしていました。ポイントは以下。元サイトは非常に詳細に書いていますので、うちではかなり短くまとめています。
【店舗スタッフの配置や行動】
(1)配置 店内で死角になりやすい場所や、万引き被害の多いコーナーには担当者を決めて店舗スタッフを配置。
(2)店舗スタッフの行動 店舗スタッフはお客さまの顔を見て「いらっしゃいませ」など声をかける。顔を見られたと分かれば万引きをしにくい。
【防犯システム】
(1)監視カメラ
(2)センサータグ 入り口の防犯ゲートをくぐると音がなる仕組み。
【レイアウトの工夫】
死角をなくし、万引きされやすい高額商品や小物などはレジ前に配置する。
●大きな声の「いらっしゃいませ!」には意味がある
2017/07/18:
コンビニの「万引き」がなくならない。盗まれやすい商品の傾向とは まぐまぐニュース! / 2017年7月17日 4時45分という記事がありました。タイトルになっていた盗まれやすい商品の傾向というのは、おにぎり等の片手で持てる食べ物類など、手にしやすい小さなものとのことでした。
ただ、正直ここはあまり興味なかった話であり、私が関心あったのはやはり対策的なもの。即効性の高い対策は、防犯カメラの設置・位置変更・増設や防犯用ミラーとしていました。王道路線ですね。また、最初の投稿時に書いていた"顔を見て「いらっしゃいませ」"は、以下のようにやはり効果的だとされていました。
<お客さんが入店した際に、大きな声で「いらっしゃいませ!」と呼びかけるというのも、意外に効果的だとか。この時、お客さんの目を見て挨拶をすると、さらに抑止効果が上がるそうです>
店員さんの「いらっしゃいませ!」がうるさいと文句を言う人も世の中にはいます。でも、大きな声の「いらっしゃいませ!」には、大きな意味があるようです。
●「レンタル万引き犯」っていったい何?変わった万引き犯対策
2015/4/28:先のサイトは非常に良いまとめでしたので、普通の対策はそちらを見るのがオススメ。しかし、変わった万引き犯対策というのもあり、うちで紹介するのはそっちが主体です。たとえば、「レンタル万引き犯」という何だそれ?という不思議なサービスがあります。
カナダの珍商売「万引き犯レンタル」…でもなんのため? : J-CASTテレビウォッチ(2010/9/ 8 13:40)によると、この妙なとりくみはカナダで行われているもの。書店やスーパーなどから依頼されて「万引き犯」をレンタルする商売です。
これを紹介していたテレビ番組では、 「社員研修」という予想がありました。万引き犯を見つける訓練みたいな意味ですかね?
ただ、実際はそうではなく「みせしめ」が目的。この万引き犯はつかまるのが仕事であり、万引き犯のサクラとも言うべきもの。具体的にどうするのか?と言うと、シナリオ通りに店員につかまり、「なにやってんだ!」と叱責され、「すいません。もうしません」と涙ながらに謝罪。その様子をほかのお客に見せて、見せしめとするのです。
ちなみに「犯人」役は無名の俳優がつとめることが多いということですから、プロがやっています。かなり本格的になものなのでしょう。そのせいなのか、これで、実際に万引きの被害がかなり減るという説明でした。
それほど似ているわけではないのですけど、
痴漢被害を防止するコピー 「痴漢に注意」という看板は効果なしを私は思い出しました。犯人の立場になって、どういうのが嫌か?と考えるのは大事ですね。最初の対策のお客さんの顔を見るというのも、その系統でした。
●風変わりで特別にみえるレンタル万引き犯、実は日本でもある?
海外だけか?と思ったら、日本でもレンタル万引き犯はあるのだそうです。
万引きで日給1万円 #探偵ファイル/探偵魂 2006/05/29
Aさんが体験した変わったバイト、それは
万引き
いや、正確に言えば 万引きを防止する為の万引き 。
これは2人1組で、1人が警備員、1人が万引犯になり、依頼を受けたスーパーの中で本物さながらの捕物を演じる。
芝居とは知らない客に 、捕まった万引き犯の無様な姿を見せることで、万引き防止の効果を狙う。
そのまま店を出たところで警備員役の女性がAさんを捕まえる。
泣きながら土下座するAさんの周りに人だかりができる。
店長もその様子を見て満足している。
大成功である。
地方の場合、この“事件”が口コミで街中に伝わるので万引き防止効果抜群だという。
ちなみにAさんも、相方の女性も 、本職は俳優とのこと。
探偵ファイルなので本当かな?と思いましたが、昔の求人募集の痕跡も見つかりました。
(cache) 採用情報|レンタル泥棒の対万引き.com - 万引き対策・万引き防止
応募条件
募集職種
レンタル泥棒(犯人役・補助)
応募資格
年齢:できれば22歳以上の方
性別:不問
その他経験:犯人役は演技経験者のみ
補助役は非演技経験者でも可
※気の合うご友人との二人組みでのご応募OK
報 酬
犯人役:10,000円
補助:5,000~8,000円
●アメリカでは「万引き犯に再犯防止コースを受けさせる」という対策も
変わった万引き犯対策はまだあります。こちらはアメリカの例です。
万引き犯を顧客にした米国の新ビジネス:日経ビジネスオンライン 堀田 佳男 2015年3月3日
日本に限らず米国でも食料品店やスーパー、百貨店などは窃盗、つまり万引きに悩まされている。米国での被害総額は年間130億ドル(約1兆5000億円)にも上る。全米小売警備調査(NRSS)によると、年間の万引き犯は約2700万人(推計)に達するという。
CDCの最高経営責任者(CEO)、ダレル・ハンツマン氏は2010年、この2700万人を顧客にできないかと考えた。(中略)
まず小売店で、万引き犯が店員や警備員などによって現行犯逮捕されたところを想像して頂きたい。事務所に連れていかれ、窃盗したかどうかを問われるところまでは万国共通だろう。すぐに罪を認めない犯人も多い。
CDCと提携している店の社員は、マニュアル通りに「ビジネス」を進める。
最初に「あなたには2つのオプションがあります。警察に来てもらうのが一つ。別のオプションは、罪を認めて320ドル(約3万8000円)を支払って、オンラインの万引き再犯防止コースを受講することです」と言って、2つの選択肢を与える。
多くの万引き犯は後者を選択するという。その場合、その場で必要な手続きを済ませれば“無罪放免”となる。そのまま歩いて店を出られるのだ。320ドルで警察から解放されるということである。320ドルはクレジットカードや銀行小切手など確実に決済できる方法で支払われる。これまで犯人の85%がきちんと支払っているという。
冒頭の話は日本のものでしたけど、厳しそうなアメリカでも"被害届けを出さずに万引き犯を見逃すこと"は結構あるようで、こういったサービスの出番があります。CDCでは、"過去5年で約2万人の万引き犯に320ドルずつを払わせた実績を上げている"そうです。
また、"支払いを済ませても、90日以内にコースを受講しないと警察に通報するという条件がついているため、受講せざるを得ない"といいます。
●本当に効果があるの?再犯防止コース受講という防止策のメリット
ハンツマンCEOは、"起業に際して顧問弁護士たちと法律面でのハードルもクリアしており、問題はない"と説明しています。そして、4つの利点を挙げていました。
1:小売店側の時間の節約につながる
2:警察は万引きで現場に行く必要がなくなり、他の業務に専念できる
3:万引き防止コースを受講するので再犯率がさがる
4:万引き犯は犯罪歴がつかない
「私どもが考案したビジネスモデルによって、警察が窃盗犯を逮捕するためのコストが下がったばかりか、店舗が万引き犯に費やしていた事務的な時間を9割も短縮できたのです。これまでは万引き犯を捕らえた時、書類上の手続きなども含めると2時間から4時間も必要としていました。それが20分で済むようになったのです」(CDCのサイト)
「再犯率がさがる」には根拠があり、"フロリダ州で万引き防止コースを受講した数百人を同社が追跡調査をしたところ、再び万引きをした人の割合は数%にとどまった"としていました。万引き犯は再犯率が高いそうですので、おそらく驚異的な低さなのだと思われます。
●おもしろい対策だけど…再犯防止コース受講の問題点
ただ、作者の堀田佳男さんは倫理的な問題をいくつか指摘していました。
・万引きの罪は金銭の授受で消えることはない
・店側の人間が最初から万引き防止コースを受講するように勧めるケースが増えている。
事務所に窃盗犯を連れていき、書類を作成したり警察に通報したりするのにかかる手間を考えると、「320ドル払えばすぐに帰れるんだから」という流れに最初から持ち込もうとする安易なケースが実際に起きている。
少しばかり大げさな言い方をすると、刑事訴訟法を軽視することになりはしないのか。現行犯で窃盗犯を捕まえた場合、本来であれば犯人の身柄は警察の手に委ねなくてはいけない。
不起訴にするか、罰金だけにするのか、それとも懲役刑にするかといった判断は司法の役割である。スーパーの店員や民間企業が「無罪放免にするから320ドル払って」と個人的に決めるべきことではない。
私も言い方によっては脅迫にならないか?という点は心配でした。ハンツマンCEOは、法的なハードルをクリアしているとしているものの、不安になるビジネスです。
ただ、指摘されたもののうち、"不起訴にするか、罰金だけにするのか、それとも懲役刑にするかといった判断は司法の役割である"は、ちょっと変な話だと思いました。実際にお店側が決めているのは、その前の部分です。
そもそもこの再犯防止コース受講がなかったとしても、被害届けを出すか・出さないかは、お店側が決めていました。このビジネスは選択肢を一つ増やしただけであり、警察に突き出さないという選択は以前から行われていたのです。
まあ、倫理的に抵抗感がある人が一定数いるというのは間違いなく、批判を浴びやすいビジネスだろうとは思います。
●警察官が考えた「謎の言葉」で万引き3割減…なぜ公開してしまうの?
2021/06/29:大型スーパー「ベイシアフードセンター常滑店」では、20202年10月、黒地に白字で「万引き防止 実験Ⅱ」という文字を記したカードを置きました。縦7センチ、横5センチで、陳列棚の値札とほぼ同じ大きさのカードだとのこと。このカードをお菓子や卵、ビールなどの売り場に計1千枚以上を設置しています。
さらに、レジ前の床には「防カメピント調整」の文字。カメラを探すように天井を見上げる客もいます。これらの効果は大きく、
「謎の言葉」で万引き3割減 警部が店に仕掛けた秘策:朝日新聞デジタル(山崎輝史2021年6月25日 7時30分)によると、昨年9月から半年間の万引き被害額が、前年同期比で30・7%減少したそうです。
ネットではなぜ手法を公開してしまうのか?といった声が出ていました。確かに疑問が出るところ。ただ、本文を読めばわかる話ではありました。これを発案したのは、お店の人ではなく、県警常滑署生活安全課長の中川元宏警部(46)なのですが、「各店で様々な仕掛けを編み出してもらえれば」とコメント。これをヒントにいろいろやってほしいということみたいですね。
●「万引き防止 実験Ⅱ」のカードを設置するだけで万引き激減する理由
もともと中川元宏警部は、なぜカメラの目を無視して万引きをする人がいるのかが疑問だったそうです。「防犯カメラ作動中」の文言はあるものの、いまいち効いていません。そのときテレビ番組で知ったのが、大阪大の松村真宏教授が提唱して研究している「仕掛学」でした。
「仕掛学」は、人の行動を促すアイデアを研究対象とする学問。例えばゴミを投げ入れたくなるバスケットゴール付きゴミ箱、男性用小便器の「的」のシールなどがそういったものとして、知らているそうです。そこで、中川元宏警部は、さっそく松村真宏教授に連絡を取り、著書を読んで仕掛けを練りました。
松村教授によると、今回のものは、誰かに見られていると感じると、実際には見られていなくても恥ずかしくない行動を取るようになる、「被視感」を利用した仕掛けだとのこと。中川元宏警部も「防犯カメラなどの対策に気付かせて、思いとどまらせるのが狙いです」と説明しています。もともとあった「防犯カメラ作動中」だけでは意識が弱かったのでしょう。
「万引き防止 実験Ⅱ」も何の実験なのかは全く分からないが、この店が何か万引き対策をしていることは感じ取れる…と説明されていました。なぜ対策を公開してしまうのか?に関しては、「万引き対策をしている」と知ってもらうことが目的であるため、手法を知られてもあまり問題がないというのもあるのかもしれません。
なお、似たような効果を利用したものとして、
侵入禁止の警告文も効果?人以上の記憶力持つカラスのエピソードで書いた件を思い出している方がいました。また、もともとここでもリンクしていた
痴漢被害を防止するコピー 「痴漢に注意」という看板は効果なしは、さらに近い例でしょうね。犯罪者には防犯が効いていると知らせるだけで、かなり効果が出るようです。
【本文中でリンクした投稿】
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