やっかいな超大国ドイツとどう付き合うべきか もはや米国に次ぐ覇権国家に | JBpress(日本ビジネスプレス) 2015.3.30(月) 加谷 珪一
英BBCがまとめた世界世論調査によると、このところ、ドイツの対日感情はかなり悪化している。「日本が世界に良い影響を与えている」と考えるドイツ人の割合は急低下しており、2011年の調査では58%だったところが、最新の2014年では28%と半減した。
このところドイツの日本に対する風当たりが強まってきているのだ。
3月9日、ドイツのメルケル首相が日本を訪問したが、日本側は歴史認識問題をめぐって完全にドイツ側に翻弄された。あまり知られていないが、ドイツは厳密な意味で第2次世界大戦の戦後賠償は行っていない。ドイツは大戦後、米ソの対立によって東西ドイツに分裂したが、西側諸国は1953年「ロンドン債務協定」を結び、最終的な賠償については東西ドイツの統一後、平和条約を締結するまで棚上げにすることについて合意したからである。
ドイツは統一までの間、ナチスの不法行為に対する補償は積極的に行い、ナチスが行った犯罪については自国の手で徹底的に裁いてきた。しかし、1990年に東西ドイツ統一が実現した時には、平和条約は結ばれず、代わりにドイツ最終規定条約が締結された。同条約においては、戦争に関する問題はすべて解決済みという認識になっている。結局のところ、ドイツはその政治力を最大限駆使し、賠償を行わずに戦後処理を事実上終結させることに成功したのである。
ドイツとしては、せっかく終了した戦後処理について蒸し返されたくないという思いが強い。日本政府要人による一連の歴史認識問題に関する発言は、戦後の基本的な国際秩序を壊すものと映っている可能性が高い。同じ戦後秩序に対する認識といっても、敗戦国であったドイツのそれは、戦勝国であった米国とは大きく異なっている。こちらの事情も分かってほしいという、日本側の「思い」はドイツには通用しない可能性が高い。
ドイツは日本の量的緩和策についても厳しい批判を行っている。その根底にあるのは財政問題に対するドイツの頑な姿勢である。
ドイツは、日本政府の突出した債務水準を世界経済におけるリスク要因であると考えており、量的緩和策については一種の財政ファイナンスと解釈しているようである。
通常、各国の中央銀行が他国の金融政策を正面から批判することはないが、ドイツ連邦銀行が日本の量的緩和策について批判的な見解を示したことは注目に値する。ドイツ国内では、構造改革を自力で進められない日本といったネガティブな記事も目立つ。
日本とドイツの「戦争責任問題」はどこが違うのか?[橘玲の日々刻々]|橘玲の日々刻々 | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン 2015年3月31日
首都ベルリンが陥落すると、ドイツ東部ではロシア兵によって数十万人(200万人ともいう)の女性が強姦されました。冷戦で国土が東西に分割されたばかりか、スターリンはポーランド東部の領土をソ連に編入する代わりに、ドイツとの国境を大きく西に動かし、ドイツの領土のおよそ4分の1をポーランドに割譲させました。これによって1000万人以上のドイツ人が追放され、リンチや強姦などの報復行為で210万人が死亡または行方不明になったといいます。
ドイツの「戦争責任」を取材したジャーナリストの木佐芳男氏によれば、こうした“被害体験”によって、「第二次世界大戦におけるドイツ軍の加害行為を謝罪すべきだ」と考えるドイツ人は、一般市民や政治家はもちろんリベラル派の知識人のなかにもほとんどいないといいます。
戦争で多大な被害を受けた英仏がドイツに寛容だったのは、第一次大戦で過酷な賠償を取り立てたことがナチスの台頭につながった歴史の教訓があったためです。ソ連の核兵器保有は、西ドイツの戦争責任を追及するよりも、西側陣営にとどめておくことを死活問題にしました。そのうえヨーロッパの国はどこも「植民地」や「侵略」で大なり小なり手を汚しているので、それを持ち出すと収拾がつかなくなるのです。
それでは、ドイツはなにを謝罪しているのでしょうか。それは、一方的な「加害」であることが明白で言い逃れのしようのない罪、ホロコーストについてです。
しかしその罪は、ドイツでは「ナチス」によるものとされています。ドイツ国民の「責任」とは、ヒトラーという“オーストリア生まれの外国人”を指導者に選んだことです。このような都合のいい責任の分離は、天皇の名のもとに戦争を行なった日本では使えません。
冷戦下の国際政治が、ドイツの謝罪と隣国の寛容を可能にしました。これはもちろん戦後ドイツ外交の大きな成果ですが、その条件がないところでは日本と同様の戦争責任問題が起きるのもまた事実なのです。
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