●正反対の解釈がある…ことわざ「転がる石に苔むさず」はどういう意味?
2015/5/6:今回は転職回数に関する話なのですが、最初は有名なことわざについて。転職回数の話とも関係してきそうな「転がる石に苔むさず」ということわざは、おもしろいところがあります。何がおもしろいか?と言うと、国よって意味が異なることです。
転石苔むさず - ウィクショナリー日本語版では、「転石苔むさず」を"(「転がる石には苔が生えない」から)世の中に合わせ行動を軽々しく変える人は結局成功しないとの警句"と説明しています。悪い意味です。
これは"英語のことわざ"a rolling stone gathers no moss"の翻訳(明治期)"であり、イギリスの解釈に基づいていたもの。一方、アメリカだと同じ語句が、「世の中に合わせて、柔軟に行動が変わることにより、失敗を避けることができる」とプラスに捉えられていると言われています。
●転職回数が多い人は「すぐに辞める人」だから企業が一番採用したくない人
「転がる石に苔むさず」は直接転職のことを指しているわけではありませんが、転職のことを思わせることわざです。そして、転職回数の多さに関しても、「転がる石に苔むさず」と同じように異なった解釈があります。
転職回数が多いことは、今のところ悪いものと捉えられることが一般的でしょう。悪い解釈が普通というのも、「転がる石に苔むさず」と同じですね。たとえば、>
『転職回数が多いのはなぜ?』|転職ならジョブチェン!では、「転職回数が多い」は"転職活動においてとてもネガティブな要素になります"と言い切っていました。
<企業が一番採用したくない人は「すぐに辞める人」です。転職回数が多いということは、それだけ会社を辞めた実績があるということなので、そういう人の採用については、採用担当者も慎重になります>
●経営者が打ち明ける転職を繰り返す人を採用したくない3つの理由
また、後藤百合子さんという経営者の方も、
転職を繰り返す人を採用したくない3つの理由 | All About News Dig(オールアバウト ニュースディグ)(2015年01月15日)という記事を書いています。転職を繰り返す人を採用したくない理由として、以下のような3つの理由を書いていました。
理由1:会社の方針や組織に対して批判的。
転職回数が多い人は一般的に「前の会社ではこうだった」という主張をしたり、「この会社のこういうところがおかしい」と批判したりする人が多い傾向にあるように見受けられる。
理由2:会社のことや待遇をよく知らずに入社してしまう。
転職を繰り返す人に多いのが、入社してから「こんな会社だとは思わなかった」「最初に聞いていた額の給料をもらえなかった」「上司と合わず自分のしたい仕事ができなかった」などの欠点に気がつくというパターン。
理由3:自分の仕事の市場価値を把握していない。
「いくらほしい」のではなく「これまでの経験から自分は何がどのくらいでき、その結果いくら稼げます。ですからこのくらいの額を報酬としてもらいたい」ということをはっきり要求できるくらいのコスト意識をもっていない。
●転職はして良い!合わない会社で無理して働くべきではない
ただ、この経営者の方は、<経営者としてこれまで数百人の方々と面接し採用してきた経験からいうと、2~3年以下という短い年数で何度も転職を繰り返す人を採用することはごくまれ>と書かれていました。これはつまり、実際に転職を繰り返す人が少ないという意味であり、逆に言うと、サンプルは少ないということでしょう。
また、後藤百合子さんは「転職するな」という主張ではありません。面接の機会などを利用して、就職する前にしっかりと相手を理解するのは重要だけど、「もし就職後、やはり自分の考えていたのと違っていた、ということに気づいたのであれば…」として、以下のように親身なアドバイスをされていました。
<できれば2週間以内、長くても3か月以内に辞職することをお薦めします。そうすれば転職を繰り返す人という評価にはなりにくいですし(2週間は労働基準法で認められた試用期間、3か月は通常「仕事や会社が合わなかった」で通せるレベルです)、会社も次の人材探しにすぐにかかれます。お互いに痛みが少なくてすむのです>
●転職回数が多い人、意外に不利じゃない?逆にジョブホッパーを好む企業も
ここまでは至って普通な話だったのですけど、驚いたことに「私どもは、転職回数の多い人を採用するようにしています」という経営者も世の中にはいるんですよ。これが非常におもしろかったのです。
「転職回数の多い人を採用するようにしています」という経営者が語った、その理由。 | Books&Apps(2015年2月17日)では、以下のような理由が書かれていました。
・いろいろな会社を見てきた人のほうが世の中のことを知っている。
・常に「自分の価値」を意識して働いている人が多いように感じる。
・転職は大きなチャレンジ。チャレンジしない人よりも、チャレンジして失敗する人の方が良い。
・ジョブホッパーと言われる「仕事に不満を持っているので、転職を繰り返す人」は、会社に不満ならやめてくれるのだからむしろ助かる。
(引用者注:ジョブホッパーの明確な定義はありませんが、半年~数年の短い間に転職を繰り返す人や転職回数が5回以上などといった人を呼ぶことが多いです)
・愚痴を言い続けて会社をやめてくれない人が一番危険。関係が悪化する。
"常に「自分の価値」を意識して働いている人が多いように感じる"は、先程の後藤百合子さんと正反対のように見えます。しかし、転職を繰り返す人は転職回数が多いことを不利だとわかっているため、一貫性があるか、自分のスキルに自信がある、そのためお買い得だとしていました。本当捉え方が全然違っていておもしろいですね。
なお、「同じ会社で20年頑張ってきました、でもリストラされてしまいました」という、転職回数が少ない人はむしろダメだとしていました。
理由は「その会社の慣習に凝り固まっているし、スキルなんてとっくに陳腐化してます。人脈もない」といった理由です。この会社において、スパッと辞めた人の中にはその後の関係も良い人もいると言っていました。これは人脈ができているという証拠です。
ただ、普通は「転職が多い人を気にしない」か「気にする」という選択肢で、この会社のようにむしろ「転職を繰り返す人を好む」、というところは正直珍しいと思われます。転職繰り返す人好む企業が多いよ!という話ではないので、勘違いしないでくださいね。飽くまで個別事例です。
●日本が転職回数が多い人を嫌うのは、生え抜き志向のせい?
ところで、前述の二つの記事というのは、実を言うと、どちらも以下の
「転職回数多すぎ」に思う。 | Books&Apps(2014年4月9日 安達 裕哉)という記事への反応でした。「転職回数多すぎ」に関して書いた話へのアンサーだったんですね。
この元記事の方の作者の安達裕哉さんは、「転職回数が少ない人のほうが能力が高い」とする根拠は何一つないだろうとしていました。また、今まで転職しなかったからといって、これからも転職しないという思い込みに根拠もないだろうともしています。
で、日本人は「生え抜き」が好きだから、転職回数で判断するのでは?と考えたようです。リクルートワークスの研究によれば、「中途採用が出世できない」という傾向は、世界各国の中でも日本に特有の現象だとのこと。当たり前のことだと思ったら、日本特有の反応だったみたいですね。
<解雇規制が強い日本の会社は、中途採用には慎重である。そして、年功序列的な考え方、すなわち永年会社に貢献した人が出世する、という構図になっている。したがって、支配的な価値観は、「長く勤める人=価値が高い」である>
ただ、この「長く勤める人=価値が高い」も当然思い込みで根拠はないとしています。安達裕哉さんは、転職回数が多い方が良いとまでは言っていませんでしたが、少なくとも根拠はないだろうという話でした。順番的にはこれが最初でしたので、先ほどの二つの記事はこれに対する反応だったわけです。
●転職回数が多いと不利になるのは何回からか聞いてみると…
以上のように考え方が分かれていましたが、転職回数が多い人への評価は統一される必要はないでしょう。むしろ企業によって考え方が分かれていた方がどちらのタイプにも需要があるということなので、望ましいかもしれませんね。
問題は今どれくらい嫌われているか?です。日本が転職回数が多いことを望む企業が少なければ、やはりほとんどのケースで転職を繰り返す人が苦労することに違いありませんので、そのことを頭の片隅に置いていた方が良いです。そこでアンケートなどの調査が重要になってきます。ただ、見つけたものは2006年と非常に古いものでした。(
転職回数が多いと不利ですか…?/リクナビNEXT[転職サイト]より)
Q1 転職歴は何回くらいから気になりますか?
1回 8%
2回 8%
3回 36%
4回 12%
5回 18%
6回 4%
10回以上 3%
気にならない 11%
(・インターネットでアンケートを実施 ・調査対象:企業の中途採用担当者 調査期間:2006年9月9日~9月11日/有効回答数100件 インフォプラント調べ)
さっきの転職を繰り返す人が好きな経営者は、「うちは、いい人がたくさん入ってくれます。転職回数5回以上の人なんて、かなり歓迎ですよ」と言っていました。この言い方からすれば、世間的には5回がかなり多いものと捉えられていると考えられます。上記の調査において5回以下でも「気になる」とした企業は82%でした。かなりの企業が「気になる」としています。
しかし、気にならないが2割もいるとも考えられます。10社受ければ2社くらいは問題なしです。また、2割のうちの半分は、何回でも気にならないという企業です。しかも、2006年という古い時点での調査ですから、現在ではさらに転職者への抵抗が減っている可能性があります。
それから、3回程度で気になる企業について見てみると、52%で半分程度になっています。この程度の転職回数であれば、2006年時点でも2社に1社は気にしていませんでした。転職回数の多さは意外に大きい不利ではないのでは?と、個人的には感じました。
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