まず、ネガティブキャンペーンの意味から。
●ネガティブキャンペーンとは?
ネガティブキャンペーンとは - 日本語表現辞典 Weblio辞書
三省堂 大辞林
ネガティブキャンペーン 【negative campaign】
相手の政策上の欠点や人格上の問題点を批判して信頼を失わせる選挙戦術。また,広告で他社商品の短所を強調する宣伝方法。
広告用語としては、「ネガティブ・アピール」という似た言葉があるようです。しかし、意味は全然違いますので注意が必要です。
ネガティブ・アピールとは - DBM用語 Weblio辞書
(略)広告される商品がない場合、生活がマイナスになることを指摘する広告コピーの方法。ネガティブ・アピールは、製品やサービスを使用しないことに対する人々の懸念を増し、その製品やサービスを購入しなければ損失なることを強調する訴求方法。車がなめれば、ショッピング・通勤など帯品に困難になるとか、車がないために生活費が20%高くなっているとかこの範疇の訴求方法といえる。
保険や健康食品なんかの宣伝もネガティブ・アピールですかね? あれらは個人的にすごく嫌いです。ただ、今回はネガティブキャンペーンの方がテーマです。
●タコベルによるマクドナルドへのネガティブキャンペーン
マクドナルド人気低下の意外な理由 安全性より値段が高いから?などでやっているように、最近のマクドナルドの凋落ぶりはすごいことになっています。以下もマクドナルド叩きの記事でした。
資本主義の権化マクドナルドの支配から抜け出そう!? 日本上陸の「タコベル」による過激で高品質なネガキャン動画- tocana(2015年4月20日14時00分)(文=ジョー丸山)
日本国内ではまだまだ知名度は低いが、米国滞在経験のある邦人の間では「オープンが待ちきれない」「早く地元にもオープンしてほしい」などという声も多く、SNS経由などでどんどんと認知されはじめている。タコベルは本場アメリカでは手軽な価格でタコスなどがガッツリ食べられるファストフードとして6,500店舗以上ものフランチャイズ展開を行っている人気ファストフードチェーンだ。
世界のファストフード業界のトップ「マクドナルド」に比べると規模は小さいが、昨今タコベルは、斬新な広告戦略で着々と知名度を伸ばし、世界進出を目指している。そんなイケイケのタコベルが、アメリカでよく見られる対ライバル企業へのネガティブプロモーションとして、キングオブファストフードであるマクドナルドを挑発しまくっているCMが話題になっている。
記事は以下のように褒めまくっています。
自主規制文化が根付いてしまった日本の大手メディアでは作ることができないハードな"ディスリスペクト"プロモーションだ。しかも約2分30秒の短い時間の中で、ハリウッド映画並みの大がかりなセットの下、多数の出演者が登場。ちょっとしたアクションムービー並の仕掛けもあり、さすが映画大国アメリカの企業が作るCMは日本のそれとは規模が違うと言わざるを得ない。
ドナ○ドを意識した帝国軍隊が人民を管理、支配する架空国家「ルーティーン共和国(Routine Republic)」で、「同じという事はよい事、人と違う事は悪い事。 幸せとは同じ朝食を毎日食べる事」と体制が人民を管理するための洗脳アナウンスが繰り返し流れるなか、聡明な若者二人組がヨーロッパ風の先進的なシャレオツ王国タコベルへ自由を求めて亡命するというストーリー設定だ。
●マクドナルドのネガティブキャンペーンを無視したスターバックスの対応こそ素晴らしい?
これがセンスの良い広告手法か?と言うと、そうじゃないという意見もありそうです。
tocanaでは、"資本主義の象徴・キングオブマクドナルドがここまでこきおろされて何のアンサーもないのは、「小物は相手にしない」と言う王者の余裕なのだろうか?"ともありましたが、実はこういったネガティブ広告に答えないことこそ良いのだという主張があります。
今回ネガティブ広告の対象となったマクドナルドは、スターバックスに関してネガティブ広告をやったことがありました。
スタバが「ネガティブ広告」に反撃しない理由 マクドナルドの攻撃をスルーした、スタバの真意- 東洋経済オンライン(2014年10月25日07時10分)という記事に書かれていた話です。
2008年ごろ、"米国マクドナルドがスペシャルティコーヒー市場参入を表明。全米1万4000店で提供を開始し、1億ドルをかけたプロモーションを行うと発表"しました。そして、"プロモーションの一環として、スタバの本拠地であるシアトルで、「4ドルなんて馬鹿らしい。エスプレッソをどうぞ」という看板を100カ所に出し"たのです。
"英語の原文は"Four bucks is dumb. now serving espresso."「Buck」とは1ドル紙幣のこと。4ドルを意味する"four bucks"と"StarBucks"を掛け合わせた、あからさまな挑発"でした。
"しかしスターバックスはこの広告には、直接の反論はいっさい"しませんでした。CEOのハワード・シュルツは、以下のように理由を語っています。
"わたしたちはなんの抗議もしなかった。しかし、わたしは激怒していた。「攻撃に出なければならない」と私は言った。「喧嘩するのではなく、積極的に自らを定義し、声をあげ、会社の個性を表現したい」"
記事では、"相手の揚げ足取りに終始しているのを見"ると、"「何やっているんだろうなぁ」と思うのではないだろうか"として、"ネガティブキャンペーンは社会に何の価値も生み出さない"としていました。おそらくこの記者なら、タコベルのネガティブキャンペーンも愚かだと言うでしょう。
●スターバックスの広告戦略
さて、スタバが代わりにやったことですが、"「選挙当日、店頭で『投票に行ってきた』と言えば、トールサイズ1杯差し上げます」というキャンペーン"でした。スタバは巷にあふれる広告の価値が下がっていることを知っており、そのような普通の宣伝方法は取らないのだと言います。
他には"たとえば、スタバは広告などにおカネを使う代わりに、店頭で新しいコーヒーを試飲させる"といったことをします。これによって、スターバックスは値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるということみたいです。
ただ、この記事は良い記事だと思いませんでした。ビジネス記事にはありがちなんですが、根拠が書かれていない部分があります。
たとえば、"ネガティブキャンペーンは社会に何の価値も生み出さない"には、根拠が必要です。この場合ならマクドナルドのスペシャルティコーヒー市場参入がうまく行かなかった…みたいなことを具体的に書くべきです。また、スタバのキャンペーンにおいても、キャンペーン前と後でどれだけ売上が変わったか?のような証拠が必要です。
そこらへんをちゃんと出すと、著者の主張は正しいとわかるのかもしれませんが、今のところは何の説得力もない記事だと思いました。
●ネガティブキャンペーンのデメリット
ただ、まあ、ネガティブキャンペーンにデメリットもあると言われると、まあ、そうなんだろうなとは思います。
やはり特に証拠がない話ですが、
商品を売り込むときに、反感をもたれないテクニック「ポジティブ・キャンペーン」 | 「マイナビウーマン」(Update : 2014.11.15)でも、「効果がないとは言えませんが、他社をはじめ、顧客からも反感や疑念を抱かれやすい方法」としていました。
他社の批判に主眼を置くネガティブ・キャンペーンは、必死に訴えれば訴えるほど、聞いている側は冷めていくものです。もしその批判が本当のことだったとしても、その影響で自社製品に興味を持ってくれる人は少ないのです。
むしろ、ネガティブ・キャンペーンをしている側に反感を持つ人の方が多いでしょう。
●ポジティブ・キャンペーンのメリット
この記事でおもしろかったのは、ポジティブ・キャンペーンという逆の宣伝手法を紹介していたことです。やはり根拠はないんですけどね。
ポジティブ・キャンペーンは、本来の営業活動そのものと言えます。一歩進んで、他社の良いところも伝えることもできます。他社に塩を送っているようにも見えますが、顧客としては喜ばしいことです。「他社の良いところも教えてくれるなんて、信頼できる会社だ」とさえ思ってもらえます。
数ある競合の中から一つを選ぶ場合、その性能や性質がどうかということも大事ですが、イメージや人柄も重要な要素になります。「この人からなら買っても良い」と思ってもらえることが営業の目的の一つです。ポジティブ・キャンペーンを進めることで、その信頼を獲得することができます。
ここらへんの話はおもしろそうなので、実例に基づいた話が読みたいですね。
関連
■
マクドナルド人気低下の意外な理由 安全性より値段が高いから? ■
アンケート調査では顧客ニーズがわからない理由 消費者自身何がほしいかわからないため ■
在宅勤務はメリットだらけ 問題点とされた生産性の意外な結果 ■
企業にとって採用応募者が多いことが悪で、少ない方が良い理由 ■
あなたの勤める企業はいい会社?悪い会社? 3つの条件で組織を見る ■
サムスンなどへの日本人技術者の転職を嫌う企業は、むしろ停滞する? ■
ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|