2013/5/5:
●アップルのiPhoneが売れない理由は、選択肢の少なさなのか?
●選択肢を与えないというアップルの売り方がむしろiPhoneが売れる理由?
●実は選択肢が多い方が売れず1つの方が良いって本当?逆の成功例も
2015/5/14:
●商品をオススメすると、逆に売上が下がる場合があるという不思議
●朝のラッシュアワー時は、選択肢を与えなかった方が売上が良かった理由
●単純ではなく複雑、売れ筋以外の商品を「オススメ」したらまずい場合も
●オススメすることは「選択肢を減らすこと」と言えるかも…
2017/08/22:
●良さそうなのに!懸賞の賞品が増えると、逆に応募者が減る不思議
2016/4/17:
●お店のメニューが一つで良い理由 iPhoneがかつて1種類がなかったのとは別の狙い
●消費者ではなく食べ物屋さん側にメリット!メニューが少ない方がいろいろと楽
●メニューを絞り込む最大の理由は一つに経営資源を集中させるため
●3種類あったら真ん中を選ぶ人の習性というのも知られている
●難しい!新たなメニューを増やすことに否定的でないときもある…
●アップルのiPhoneが売れない理由は、選択肢の少なさなのか?
2013/5/5:
iPhone 5が売れない アップルのiPhone売上不振の理由は何か? では、選択肢の多さの話が出ていました。
iPhoneで同時に売られているラインナップは最新機種とその前の機種の二つしかありません。今だとiPhone5と4Sですね。ここに大きな落とし穴があると思います。つまり、その端末は「自分で選んだもの」ではなく「appleから強制的に与えられたもの」なんです。 人間は他人から与えられたモノよりも、自分自身で選択して手にしたモノに愛着が湧く傾向にあります。 また、多くの選択肢から自分に最適なモノを一つ選ぶ行為に快感を覚えるとも言われています。皆さんもそういう経験あるのではないでしょうか。
しかし、このとき「私は選択したい口ですが、選択するのが嫌だという人はむしろ多いんじゃないでしょうか?」と書きました。アンドロイドとiPhoneという分け方で見ると、確かに世界ではアンドロイドの方が売れています。ただ、機種ごとに見ると、当時でもiPhoneの方が売れていたはずです。
●選択肢を与えないというアップルの売り方がむしろiPhoneが売れる理由?
これに関連して、選択肢の少なさがむしろiPhoneが売れている理由になるかもしれないという記事を見つけました。記事のネタ元は
選択の科学 という本のようです。
2013年4月9日 [橘玲の日々刻々] 選択肢が多すぎると”選択”できないという悩み マーケティングの実験では、選択肢が多すぎると消費者は選択できなくなることが知られています。スーパーの試食品コーナーでジャムを販売する場合、選択肢が6種類よりも24種類あった方が顧客の満足度は高くなります。しかし実際に自分の好みのジャムを見つけて購入するのは、6種類の方が圧倒的に多いのです。24種類のジャムを前にした消費者は、あれこれと試食してみますが、けっきょくどれにするか決められず売り場を立ち去ってしまうのです。http://diamond.jp/articles/-/34411
スティーブ・ジョブズさんの去った後のアップルは変わったという感じがあります。選択肢を与えないという点に関しても、中途半端に選択肢を増やすだけのような製品を出すようになったので、やはり変わったと思う理由の一つになっています。
それでも、アップルはまだアンドロイド製品に比べると選択肢が少ないので、今でも一応通じる話かもしれません。
●実は選択肢が多い方が売れず1つの方が良いって本当?逆の成功例も
ただ、AZスーパーセンターという選択肢の多さで成功した小売店もありますからね。あまり単純には言えないような気はします。
豊富な品揃えに関しては、「しょうゆばかり260種類ある異色のホームセンター」という話も。 ちょうどこのしょうゆの棚を写した動画を見つけましたので、どうぞ。(中略) A-Zスーパーセンター醤油陳列棚VIDEO A-Zスーパーセンター 夏でもストーブ
AZスーパーセンターは過疎地にありますので、小売店そのものの選択肢が少ないという特殊事情もありますが、どうなんでしょうね? 私は絶対的な法則ではなく、一概には言えないのかなぁと感じました。
●商品をオススメすると、逆に売上が下がる場合があるという不思議
2015/5/14:上記までは2013/5/5に書いた内容。今回加えようとした話の方は実を言うと選択肢の多さではないんですけど、同じ選択肢絡みの話でおもしろいと思ったものです。紹介するのは、ビッグデータの分析に関わる記事。最初に実験の前提となる話からどうぞ。
混雑時に売れ筋以外を「オススメ」すると売り上げが落ちる?:日経ビジネスオンライン 上武 康亮 2015年4月8日 JR東日本ウォータービジネスは2010年にタッチパネルやカメラ認証によるオススメ機能などを搭載した次世代自販機を開発した。この自販機では搭載されたカメラが消費者の属性を読み取り、それに応じて異なる商品を薦めてくれる。例えば、若い男性には朝エナジー系の飲み物をお薦めするといった具合である。(中略) 我々のチームは、(中略)次のようなフィールド実験を行った。首都圏の大型駅にある次世代自販機において、売れ筋商品とそれ以外の商品を選び出し、売れ筋商品だけを「オススメ」した場合、それ以外の商品だけを「オススメ」した場合、何も「オススメ」しない場合、の3パターンについて、朝、昼、夜でどのように売り上げに与える影響と消費者の選択行動に与える影響が異なるかを比べたのである。
結果がおもしろいです。まずは昼間の自販機の売り上げ。何も「オススメ」しない場合と比較して、売れ筋商品だけを「オススメ」やそれ以外の商品だけを「オススメ」は、3%から10%上昇しました。きちんとオススメ効果が出ているように見えますね。
ところが、朝のラッシュアワー時の売り上げは、何か「オススメ」した場合、何も「オススメ」しない場合より3%ほど落ち込んでしまったのです!
●朝のラッシュアワー時は、選択肢を与えなかった方が売上が良かった理由
理由については以下のような説明。
我々の立てた仮説は、「オススメ」をすることにより、各消費者が何を購入するか決めるまでにかかる時間が増えるためではないか、というものであった。「オススメ」がなければ特に何も考えずにいつも買っているお茶やコーヒーを選んでしまうが、「オススメ」を見ることにより、それらの商品について少し考えるため、いつもより時間を使ってしまう、と考えたのである。 すると、朝のラッシュアワー時にはより多くの人が、自分の前の消費者が買うまで待つ時間が増えてしまうため、次の電車に乗らなければならない、会社に急ぐ消費者は購入を諦めてしまうのに対し、比較的時間に余裕のある昼間の時間帯は、他の人が買っているのを見ることで逆に、自分も何か買っておこう、と列に並ぶ人が増えるのではないか、ということである。
一応、補足すると、朝のラッシュアワー時にオススメされて迷って買うのをやめた人が増えたという意味ではないと思われます。悩んでいる人が増えて並ぶ人が多くなり、列を見た時点で買わなかった人がいたという感じですかね? お店で言う「客の回転率が低下した」というイメージでしょう。
急いでいるときは下手に選択肢を増やさずにお決まりのものを買ってもらった方が、多く商品を売れるということになりました。
ただ、"より混んでいる自販機で「オススメ効果」がより強く出ることが分かった"ので、急いでいない時間帯では悩んでもらった方が良さそうです。時間帯によってベストな対応が異なっているのだと考えられます。
●単純ではなく複雑、売れ筋以外の商品を「オススメ」したらまずい場合も
また、実際に買われる商品を見ると、オススメ効果は一般的に大きいということがわかりました。
離散選択モデルを我々のフィールド実験データを用いて推定した結果、「オススメ」表示は一般的に、消費者が「オススメ」された商品を選ぶ確率を大きく高めることが分かった。その効果はかなり大きく、確率にして12%から最大40%以上(略)
ただ、これもやはり朝のラッシュアワー時は例外があります。
この結果は唯一、朝のラッシュアワー時に売れ筋以外の商品を「オススメ」した場合には観察されなかった。逆に、ラッシュアワー時に売れ筋以外の商品を「オススメ」した場合には、その商品が選ばれる確率が下がる可能性すらあることが分かったのである。(中略) ラッシュアワー時のように周りに他の人が多くいる場合には、変わった商品を選ぶことで周りの人から特異な目で見られることを避けたいという思いから、売れ筋以外の商品を意図的に避けているのかもしれない(中略)。これは実は心理学ではよく知られた消費者の行動パターンで、「Social Impact Theory (社会的影響理論)」と呼ばれている。
これはより混んでいる自販機とそうでない自販機に分けた実験で証明されました。つまり、より混んでいる自販機では売れ筋以外の商品を「オススメ」しない方が良く、空いているときに推奨した方が良いということです。
●オススメすることは「選択肢を減らすこと」と言えるかも…
…書き終えてみると、何かかなり毛色の違う話を混ぜてしまったのかな?とも思いました。で、無理やり最初の話と繋げてみます。
記事ではオススメした商品の個数は特に書いていませんでしたが、おそらく1つの商品でしょう。これは選択肢を与えない売り方…とみなせなくもないです。
消費者が特に買う商品を決めていなかった場合、素直に選択肢を減らす方向性と考えて良さそうです。ただ、買おうとしていた商品がある場合は増える方向性ではあります。
とはいえ、オススメ商品に当初買おうとしていた商品を含めたとしても、自販機全体にある商品よりは確実に少ないのですから、やはり選択肢は多くありません。
慌てて無理やりこじつけたので非常に粗いですが、こういう見方もアリじゃないでしょうか?
●良さそうなのに!懸賞の賞品が増えると、逆に応募者が減る不思議
2017/08/22:選択肢と関係するかな?ということで、
なぜ副賞付きの懸賞は魅力が低下してしまうのか | HBR.ORG翻訳マネジメント記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー (2017年04月25日 ウズマ・カーン,ダニエラ・クポー)という記事をここに追加。
筆者らの研究によると、豪華賞品のみが当たる懸賞と比べて、豪華賞品以外にも外れても副賞がつく懸賞の方が魅力が減ることがわかっているそうです。後者の方が賞品の総額や当たりやすさが上がるにも関わらず、消費者はそうではない方を好むとのこと。意外です。
これについて、筆者らは、「小さな特典を加えることでポジティブな選択肢の魅力が減る」と一般化した言い方をしています。そして、別の実験では、「小さなリスクをいくつも挙げると、大きなリスクに対する評価が甘くなってしまった」ということも書かれていました。
この別の実験というのは、薬の副作用に関するものでした。発作が起こる可能性がある薬よりも、発作に加えて鬱血や疲労の原因にもなると伝えた薬の方を、「飲んでもよい」と答える人が多いという不思議な結果になりました。同様に、重傷に加えてインフルエンザと軽症の風邪も補償する旅行保険よりも、重傷のみを補償する旅行保険が人気という実験もあります。
これらを一般的に言うと、起こる可能性がより高い軽微な事象を並べられると、重大な事象が起きる可能性を低く感じるとなるようです。例えば、賞品を獲得する可能性が10%だった場合、他の賞品を獲得する可能性が60%と聞くと、その10%がさらに小さく感じられてしまう…といったことが起きるようです。
このような人間の特性はあまり知られておらず、逆効果となっている場面が多いと予想されます。
●お店のメニューが一つで良い理由 iPhoneがかつて1種類がなかったのとは別の狙い
2016/4/17:前半は選択肢が多い方が、消費者がむしろ買わなくなってしまうという話がメインでした。今回読んだ話もタイトルの時点ではそういうものかな?と思いましたが、理由がちょっと違う感じです。
「10種類」のメニューがあるラーメン屋より「1種類」のメニューしかないほうが、どうして儲かる?|ダイヤモンド・オンライン 2016年3月10日 小山 昇 小山(小山昇武蔵野代表取締役社長) 生田さんのお店は、メニューが多すぎるから、ひとつに絞ったほうがいい。お店を変えたいのだろうけど、「変化=サービスの拡大」ではないよ。 生田(引用者注:株式会社凪(なぎ)スピリッツ(飲食業/東京都)の生田智志社長) メニューが多いと、たくさんのお客様のニーズに応えられると思うのですが。 小山 これは、資金的・人員的に余裕のない中小企業には致命傷にもなりかねない。(中略) 生田社長は、お客様から最も人気のあった「煮干ラーメン」に特化します。当初は「豚骨ラーメン」など、メニューが10種類以上ありました。メニューが多くなると、それだけオペレーションも散漫になりがちです。
●消費者ではなく食べ物屋さん側にメリット!メニューが少ない方がいろいろと楽
上記だけ見ると、店員のオペレーションや材料の管理、仕入れなどの面を簡単にするという観点に見えます。
BSE(狂牛病)のときにこれが逆に致命傷になったのですが、それ以前の吉野家の強さは牛丼に絞り込んでいたことでした。小さいお店ではほとんど効果はないとは思うものの、チェーン店なら扱う量が多いほど牛肉の価格交渉も有利になっただろうと思われます。
管理を楽にしようという意味では、
実はおいしい立ち食いそば屋、回転率良く食材のロス率少ない という話もそうでしたね。
●メニューを絞り込む最大の理由は一つに経営資源を集中させるため
ただ、今回の話でおもしろいと思ったのは、上記もまたメインの理由じゃないこと。"逆説的ですが、「サービス内容を狭める」という形でサービスを拡大させる"というのが、主な理由でした。強みをさらに強くしているってのが良いですね。
「麺メニューは、『すごい煮干ラーメン』(820円)の1種類だけです。820円は高い、と思われるかもしれませんが、その代わり、煮干には徹底してこだわり、量を1.5倍に。『一に高い、二に高い、三に高くて、四に高い、高いなりに価値がある』。これも、『かばん持ち』のときに小山さんから教わったことです」(生田社長) 自社が提供しているサービスのうち、お客様の需要が最も高いのは何かを見極め、そこにヒト・モノ・カネの経営資源を集中させる。そして、そのサービスに磨きをかけ、その他は縮小するか、あるいは潔く切り捨てる。
●3種類あったら真ん中を選ぶ人の習性というのも知られている
混乱させてしまうようですけど、実を言うと3つ価格の異なる商品があるとき、消費者は真ん中の商品を選びやすいという心理も知られており、これを利用して一番売りたい商品を真ん中になるように持ってくるというテクニックが使われています。
ただ、これは同じ商品でグレードの違う3種類があった場合というもの。今回の場合で言うと、「煮干ラーメン」だけで3種類ある感じです。このやり方なら材料などはほぼいっしょでできるわけですが、1種類のままとどっちが良いかはわかりません。
とりあえず、やたらめったらメニューをたくさんにするというのは、良くないってことは確かですね。「足し算より引き算が大事」という話で、削ることの大切さを示しています。
●難しい!新たなメニューを増やすことに否定的でないときもある…
同じ小山昇さんの話では、<節税するより未来への投資を でも利益の使い切りを目的とすると本末転倒に>(
日本の大手企業、コスト削減が目的化して必要なものまでカット にまとめ)というのもやっています。売上を増やしたお好み焼・鉄板焼店を展開するテイルに対して、小山昇社長は「お店の壁紙を貼り替える」というのをアドバイスしていました。
実を言うと、この話でも新たなメニューを増やすという話が出てきていたのですが、今回と違って否定的な話ではありませんでした。
こういった矛盾のように見える点があることも含めて、どういう場合が良いお金の使い方で、どういう場合が悪いお金の使い方なのかの見極めは難しいと感じます。
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