アマゾンやそのCEOであるジェフ・ベゾスさんは素晴らしいサービスや画期的なビジネスアイデアを持っています。ただ、良くない話もたくさんあるので、そういった話をまとめ。<アマゾンなどが急成長できたのは、実は脱税のおかげ>、<逆らう会社は大赤字を出してでも潰すアマゾン>、、<スティーブ・ジョブズ亡き後のカリスマ候補ジェフ・ベゾス>、<大儲けしたのに法人税を収めていない上に逆に140億円の税還付!>などをまとめています。
2023/07/16追記:
●パクリや検索結果操作などの組織的不正との報道にアマゾン反論 【NEW】
ジェフ・ベゾス果てなき野望 アマゾンを創った無敵の奇才経営者 [ ブラッド・ストーン ]
●アマゾンなどが急成長できたのは、実は脱税のおかげ
2015/5/17:今回はみんな古い記事ですが、
ネット配信は脱税の温床となってしまうのか(日本経済新聞 電子版 2012/7/26 7:00)は特に古いもの。そのため、現在は状況が大きく異なるかもしれません。ただ、状況が変わっていたとして、過去のアマゾンの成長に寄与していた…ということは言えてしまいます。悪い話には違いありません。
記事によると、「実はネット取引の利用者の脱税行為が、アマゾン・ドット・コムなど世界をまたにかける電子商取引関連企業を急成長させる一因となってきた」とのこと。アメリカの場合の話であり、日本には馴染みがないものですが、「州税の脱税」という話です。
脱税というのは、そう大それたものではありません。アメリカ・ワシントン州に住む消費者が欧州のネット業者サイトから電子書籍や音楽をダウンロードした場合、消費者自身が州に小売売上・利用税(日本の消費税に当たる)を納める必要があるが、金額が小さく、面倒なので税務申告をしなかった――といったケースだそうです。
●自己申告で納税…なので正直に申告している人は半分未満
脱税を正当化するわけじゃありませんが、自己申告で正確に取り立てるということが難しいというのはわかりますよね。制度に無理があります。記事では「脱税が横行するのは、間接税の徴収の仕組みにいわゆる抜け穴があるため」とも書いていました。
<連邦国家の米国では、間接税のほとんどが州税や地方税で、小売売上・利用税(Sales and Use Tax)と呼ばれる。場合によっては購入者個人が税金を納める必要があるが、少額の自主申告のため税務当局が取引実態を把握しにくい。申告義務のある人のうち、正直に申告している人は半分未満という>
衣料品、書籍などモノの取引の場合で具体的な仕組みについて、記事では説明がありました。同じ州内の小売取引では、日本の消費税などと同じで簡単。販売する企業が購入者から小売売上・利用税をもらい納税します。一方、州を越える取引は以下のように、やや複雑なやり方をしているそうです。
<A州の販売企業が購入者のいるB州にオフィス、倉庫などの拠点を持っていれば、A州の企業が購入者からB州の税を徴収し、B州当局に納税する義務を負う。一方、企業が購入者の州に拠点を持っていないときは、購入者がその州当局に自分で申告・納税することになる。>
上記を読んでわかるように、非常に面倒くさいのです。面倒だから脱税して良いということはないですが、申告しない人を増やしそうな複雑さだというのはわかるでしょう。それはともかく、ここで重要なのは、州をまたいだ販売の場合、申告しない人、脱税する人は、それにより利益を得られるということです。
<つまり州を越えてモノを販売する場合、販売企業の拠点が購入者の州にないと、税務申告しない購入者は、住んでいる州の小売店を利用するより税額分だけ安く買えることになる。こうした税制の盲点が、衣料や書籍などのネット通販市場の「追い風」となってきた。(中略)
紙の書籍のネット販売にととまらず、電子書籍でも端末「キンドル」を掲げて快進撃を続けるアマゾン。これまで多くの州に倉庫など自らの拠点を設けず、商品販売に関する納税を回避してきたことで知られる。ただ最近は、州政府が税金を徴収できないことに反発姿勢を強めたことや、配送時間短縮などを目指して方針を徐々に転換。各地に物流拠点を整備する方向に動きつつあるようだ。>
●逆らう会社は大赤字を出してでも潰すアマゾン
上記は州側のしくみの問題が大きく、間接的に脱税を利用しているものの直接的には個人の問題であり、全部がアマゾンのせいとも思えません。一方、
タフな交渉で相手をたたきつぶすのがアマゾンの文化:日経ビジネスオンライン 滑川 海彦 2014年1月21日(火)はもっとアマゾンの冷酷さがわかりやすい話でした。
ダイアパーズ・ドット・コムというおむつのオンラインストアをアマゾンは買収しようとしていました。しかし、ダイアパーズが買収に応じなかったところ、アマゾン自身が利益を度外視した低価格でおむつの通販に乗り出しました。アマゾンは、1ヶ月で1億ドル以上の赤字を紙おむつだけで出すほどの猛烈な安売りです。
ただ、アマゾンの狙いは、ダイアパーズ・ドット・コムをたたきつぶし、会社を売却させるためなので、これで良かったのです。
靴のオンラインストアの大手ザッポスを買収する際もベゾスさんはザッポス攻撃のための通販サイトを開設。そして1億5000万ドルをつぎ込んでついにザッポスを降伏させ、買収に成功したといいます。
●これって不正競争・不当廉売で問題じゃないの?
不思議なんですが、これ、不正競争・不当廉売みたいな問題はないんですかね? 利益度外視での販売は問題になって良いと思います。これも一つ目と同様、法的に不備があるんでしょうか?
あと、道徳的な問題を無視した場合ですが、上記の考え方自体はビジネス的には素晴らしいと思います。アマゾンが以前やっていた全品送料無料(今は全品ではない)がその考え方であり、短期的には不利益に思えても長期的には利益になるので赤字も恐れない…という大きな視野があります。アマゾンはこういうところが一番すごいと思う点ですね。
それから、"「犠牲になった」ザッポスの創業者や社員たち"ですが、実は"この買収で得たアマゾン株式の値上がりで大金持ちになった"というのはあるそうです。だからやっていい…となるわけではないものの、彼らも利益を得ているという情報を記事では付け加えていました。
●スティーブ・ジョブズ亡き後のカリスマ候補ジェフ・ベゾス
ストックの中からマイナス情報を集めて…というテーマだったんですが、いざやってみると意外に少なかったです。次で最後という寂しいことになっちゃいました。
しかも、これは今までのアマゾンの悪徳さを強調したものとも違っていて、ビジネス的な弱点といった感じです。方向性がかなり異なります。
20年前にアマゾンを発明し、1万年先を読むベゾスの真骨頂:日経ビジネスオンライン 滑川 海彦 2014年1月28日
ジェフ・ベゾスそっくりな考え方をする幹部をアマゾンでは「ジェフボット」と呼ぶ。(中略)ベゾスのビジネス哲学を完璧に吸収し、それと合うように世界観を変えた人々で、顧客から始めてさかのぼらなければならないなど、ジェフィズムもよく口にする――まるで最優先指令(プライムディレクティブ)であるかのように。
――『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』第8章より
スティーブ・ジョブズ亡き後のカリスマはAmazonのジェフ・ベゾスでスティーブ・ジョブズさんの名前を出したように、ジェフ・ベゾスCEOは卓越したビジネスの考え方や遠大なビジョンを持っています。これは逆に言えば、アップル同様カリスマを失うと凋落してしまう危険性を秘めています。
しかし、アマゾンの場合はジェフ・ベゾスCEOそっくりの考え方ができる人がいるんですね。別記事でも同じようなことが書かれており、これはアマゾンの弱点になり得ないのではないか?と書かれていました。
ところが、複数のジェフ・ベゾスCEOそっくりの人で幹部を固めているというのは、多様性において問題があります。記事でアマゾンの弱点としていたのは、そういった部分です。
●スティーブ・ジョブズ氏のような苛烈な性格も垣間見える
なお、以下はジェフ・ベゾスCEOの苛烈な性格を示すような逸話もあり、スティーブ・ジョブズさんとは違うと思うかもしれません。ただ、実を言うと、こうしたエピソードもスティーブ・ジョブズさんでお馴染み。スティーブ・ジョブズさんはジェフ・ベゾスCEOと違って批判する人は少ないのですが、だいぶ美化されていますね。結構やばい人です。
<ジェフボットで側近を固めることは事業をベゾスのビジョンのままに展開するためにはよいが、ベゾス自身が苦手な分野に挑戦する際には不利に働く。独自の汎用検索エンジンの開発はアマゾンのビッグプロジェクトでは珍しく失敗に終わった。その理由は複雑だが、大きな要因が天才的エンジニアのウディー・マンバーがベゾスとの関係に居心地の悪さを感じ、結局グーグルに引きぬかれたことだった。2006年にマンバーがグーグルに移ろうとしていると聞かされてベゾスは激怒して悪口雑言を吐いてしまう>
<数日後、落ち着きを取りもどしたベゾスはマンバーを慰留するが、もう手遅れだった。こうしてベゾスは、小売企業からテクノロジー企業への脱皮で苦労している最中という最悪のタイミングで技術部門統括の側近ふたりを失った。このあと、A9ドット・コムの汎用検索エンジンは失敗に終わり、マンバーが去って1年で開発が打ち切られる>(ここは、『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』第7章より)
今回の話はアマゾン関係のストックからマイナスっぽいものだけ抜き出したものでした。逆に言うと、プラスの話がもちろん余っているということです。こっちの方もそのうちやりたいと思っています。
●大儲けしたのに法人税を収めていない上に逆に140億円の税還付!
2019/06/30:脱税に絡む話での追記。アメリカではトランプ大統領が2017年12月に署名した大型減税を受け、連邦法人所得税をゼロに抑える米大手企業が急増しています。減税前でもゼロの企業は多かったようなのですが、トランプ大統領の減税でその数はおよそ倍となったそうです。
こうした実態がわかったのは、米シンクタンク、税制・経済政策研究所(ITEP)が発表した報告書。この報告書によると、フォーチュン500選出企業のうち2018年の所得税(連邦法人所得税の省略形?以下、その解釈で書き換えています)をゼロに抑えた企業は60社でした。60社には、超有名企業が名前を連ねています。
リストには、ゼネラル・モーターズ(GM)、IBM、デルタ航空、電力最大手のデューク・エナジーや石油メジャーのシェブロンなどといった世界トップクラスというビッグネームがズラリ。ただ、中でも批判を集めているのは、やはり我らがアマゾン・ドット・コム。よりによって、増収増益の2019年1~3月期決算を発表したばかりだといいます。
この絶好調アマゾンの2018年の課税対象となる純利益はおよそ112億ドル(約1兆2500億円)でした。米国の連邦法人所得税は21%であるため、本来であればおよそ23億ドルの連邦法人所得税を納めるはずだったのがゼロになったとのことです。
ただ、さらなる衝撃があります。これらの話を伝えたのは、
アマゾン「所得税ゼロ還付金1億ドル」の衝撃:日経ビジネス電子版(長野 光 日経ビジネスニューヨーク支局記者 2019年5月1日)という記事。法人所得税ゼロなだけでなく、逆に国から1億2900万ドルもの税還付まで受けていたといいます。こちらは日本円ですと140億円くらいですので、かなり大きいですね。
●パクリや検索結果操作などの組織的不正との報道にアマゾン反論
2023/07/16追記:脱税ではないのですけど、不正の話を見かけたので、この投稿にまとめようとブックマークしていました。
アマゾンがインドで不正行為、国内や米議員から調査・解体求める声 | ロイター(2021年10月15日)という記事です。2021年の話ですね。
< 米上院のエリザベス・ウォーレン議員(民主党)が電子商取引大手アマゾン・ドット・コムの解体を求めたほか、インドの小売業者はアマゾンに対する政府調査を求めた。いずれもアマゾンがインドで商品を模倣したり、検索結果を不正操作したりしていたとするロイターの調査報道を受けたものだ。
ロイターは13日、数千件に及ぶアマゾンの内部資料に基づき、同社がインドで模造品を製造したり、独自のプライベートブランドを後押しするために検索結果を操作したりする組織的なキャンペーンを展開していたと報じた。インドは同社にとって最も大きい成長市場の一つ>
インドでもインドの小売業者を代表する団体「全インド・トレーダーズ連盟」は14日、同国政府はアマゾンに対する調査を開始すべきと表明。一方、詳細については説明しませんでしたが、報道についてアマゾンは「これらの主張は事実に反しており、根拠のないものだと考えている」と反論していたそうです。
ジェフ・ベゾス果てなき野望 アマゾンを創った無敵の奇才経営者 [ ブラッド・ストーン ]
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