無料貸し出しの傘の話。先に言ってしまいますが、貸出システムによってかなり異なっています。
●札幌の「円山動物園」の場合、返却率ほぼ100%
札幌の「円山動物園」では、"雨でも園内をまわれるようにと16年前から傘の無料貸し出しサービスを行っています"。"正門や西門などでおよそ170本の傘を貸し出していて"、"返却率はほぼ100%"です。
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札幌市電「お客様のために、傘を無料で貸し出そう」→返却率わずか××% 2015/5/30(土)7:53 Jタウンネット(ライター:北海道saki))
"動物園の方に秘訣をうかがうと「傘が目立つ緑色をしているということと、『円山動物園専用』という文字が入っていることだと思う」とのこと"。ただ、それより大きい理由があると思います。
園内で使う傘ということで使う場所が限定されていること、そして、何より園外に出るときに回収できるという回収のしやすさの問題です。
●札幌の市電の場合、返却率ほぼ50%
札幌の市電でも、"急に雨が降ってきたときのために車内に傘を置き、無料で貸し出すサービスを10年前から行っています"。"透明のビニル傘で、交通局のシールを貼って貸し出して"たものです。この場合の返却率は以下の通り。
2012年=貸し出し本数4974本→返却数2522本
2013年=貸し出し本数5543本→返却数2960本
2014年=貸し出し本数4674本→返却数2420本
"返却数は半分ほど"と記事では書いていましたが、逆に言うと半分くらいが盗難されているということです。
市電の場合は、"傘の返却は、地下鉄の駅事務室、電車車内、電車事業所"といった感じで、円山動物園ほど便利ではありません。ただ、それなりに返却できる場所があるため、50%というのはちょっと驚く数字ではあります。
●小樽の観光協会の場合、返却率1~10%
小樽でも、"観光協会が傘の無料貸し出しサービスを3年前から実施しています"。こちらはもっと悲惨です。「市内の観光案内所など17カ所で傘の無料貸し出しサービスを行っていますが、ほぼ戻ってきていないのが現状」とのこと。
具体的な数字は以下。ここは返却率も計算してみましょう。
2012年=貸し出し本数1010本→返却数97本 9.6%
2013年=貸し出し本数1525本→返却数20本 1.3%
2014年=貸し出し本数1724本→返却数70本 4.1%
最も良いときでも返却率10%未満、悪いときには1%です。これも逆に言うと、盗難率が90%から99%ということです。借りパクしまくりっ!
こちらもやはりシステムの違いが大きいでしょう。「返却できるところの利便性をもう少し高めていきたい。今は返却できる場所が18時~19時で閉まってしまうところがほとんどで、今後、協力施設を増やしていくと返却率も上がっていくのかなと思っています」とのことでした。
●日本人の民度低い
この記事ではニコニコニュースで見ましたので、反応が読めました。きっと言われるだろうなと思った通り、「民度低い」というコメントがちらほら。
・これが現代日本人の民度だね。世の中は確実に人を騙す方向に向かってる。
・他国の事言えないねー
・以前、京王線の駅でもやってたじゃん。でも返却率悪すぎて結局廃止。現代日本人の民度なんてこんなもの。
・これが美しい国の民度ですね
以下も正論です。
・借りたものを返すのに利便性が悪いとか・・それなら最初から借りるなよ
・返せなきゃ借りなきゃいいのに
・家にまで持って帰って次の日持ち出すのがメンドクサイから返さないかい?だったら濡れて帰ればいい
・返すの面倒って気持ちは分かるが流石に返せよなー
以下、未確認ですが、昔は貸出システムが機能していた…という話も。
・昭和40年代、大抵の駅には貸傘有ったのにね。 それが無くなった理由が悲しい。
あと、民度低いと言いつつ、自説の主張に利用している人もいました。調子いいなぁ~。
・日本人の民度が落ちてるのは道徳教育を蔑ろにしてきたからだけどアナーキー的な考えをある程度許容してしまってるオールドメディアにも原因ある
・日本人の民度。今一度教育の改革が必要
●返金方式にすれば良くない?
実は私が興味あったのは、上記のような批判以外の意見。特に反論・擁護でした。とりあえず、反論より先に、提案系のものから。
・コインロッカーみたいにすれば良くね?
・返金方式にしろよ
・粋じゃないねぇ まあ現実的な方法としては百円程度担保取っておいて、返しに来ると返金とか。コンビニ放置とかあれば子供らが持ってきてくれる。
以前、
日本人のマナーと素行 良心前提の自転車貸出制度が放置多発で崩壊というのをやっています。この例は「100円を預かるデポジット方式」でした。
にも関わらず、自転車の乗り捨てが多く、システムが機能しませんでした。傘と自転車で対象が異なるものの、この結果からすると、単なる返金方式では解決しないものと予想されます。
●使い捨てにしよう
お金の問題や資源の無駄の問題があり、なおかつ借りパク自体は許容するような提案ですが、「使い捨てにしよう」という意見もありました。呼びかけたところでマナーは変わらず、返却が期待できない以上、選択肢としては一応アリです。
・30分位しか持たない紙製の傘に広告印刷して、無料で配布するようにすれば良いと思う。どこか開発しろyp
・傘って広告貼っつけて無料で配ればいいと思うんだよね
コスト面が一番ネックでしょうかね。先の自転車貸出制度は見通し甘すぎだと思うところもありましたが、お金のところで参っていたというのが主な問題です。広告集めで大きく予想を下回ったのが特に効きました。
以下も、それだけたくさん広告料を得られるか?というところが問題になってきます。
・傘に公告入れて無料にすればいいと思う。面倒な返却ありきではなくで紙コップみたいに紙で作って使い捨てでもいいと思う。
・越後屋(現三越)が貸出を始めた時返却される想定ではなく借りた人が使い続ける限り広告となるという考え方だった。そういう事だ。
あと、人件費など見えづらい経費は無視されがちですが、返却場所を増やしたり、広告費獲得強化したりするだけでも、実際にはお金がかかります。
他にちょっと違う方向性のものも。おもしろいと思いますが、これもお金がかかるやり方です。
・そもそも仕組みがおかしいのでこの数字でもおかしくないかと。例えば「返却すると乗車優待券がもらえます」とかしたら30%は跳ね上がるはず。
なお、お金がかかるものが即ダメ!という意味ではありません。要は収支がプラスになれば良いのです。また、マイナスであっても現状より良くなれば、それでもマシになります。
方向性としては、こういった何らかの工夫で対処することしかないと私も思います。返却率が低いこと前提の話をしなくちゃならんのは悲しいですが、まあ、それが現実ですので仕方ありません。
(2015/06/01追記:すっかり忘れていましたが、100円均一店と同じくらいで傘を仕入れることができれば、100円返金方式でお金的なところはほぼ解決でしたね。自転車と違って、傘が極めて安いことに全く気づきませんでした。恥ずかしいです。
なお、「100円傘」と呼ばれるものの、コンビニ傘の場合は数百円することが多く、ビニール傘でもピンきりだとは思います)
●意外に少ない反論・擁護
さて、ここからやっと異議あり!というもの。ただ、意外に多くないですね。以下なんかは反論にも擁護にもなっておらず、批判者を馬鹿にしただけで終わりでした。
・はいはい民度民度
その反応自体が幼稚さを感じさせるものですが、以下にあるように、報道されている場所が変われば全く反応が異なったと思われます。
・これ、韓国、中国の文字がでようもんなら、同じ数字でもたたいてただろうなぁ
●北海道の人だけが民度低い
異議では、北海道だから!という逃げがあるかな?と予想していましたが、思ったより少なかったです。
・あら北の修羅国じゃない
・市内有数のスラム街だからな、市電沿線は。で、チョンチャンが観光で集まり、市民の民度も高くない小樽も戻ってこない。単に貸す相手の民度の問題
前述の通り、
日本人のマナーと素行 良心前提の自転車貸出制度が放置多発で崩壊で書いているように、北海道以外でも悪い話があります。
また、小樽市は盗難率99%です。外国人もしくは北海道の人だけで99%というのは、考えづらいでしょう。普通に他地域の日本人も返却していないと考えられます。
●半分戻ってくるならむしろ民度高い
擁護系のもので最も多かったのは、以下のようなものでした。
・半分「も」返ってきてるのか、と思ったわ。返してもらうことを期待するなら貸出ノートでも作った方が良いよ。
・ショッピングカート持って帰って我が物顔で使う国もあるんだから「半分だけ」って言えてるだけ十分民度は高いよ。でもさっさと返しましょうね^~
・日本の民度は高いなあ。外国だとほぼゼロだろこれ。
・日本人じゃなきゃ1割も返さないだろうな。
日本人としての誇りが本当にあるのでしたら、こういう泥棒を正当化するようなことは言わないでほしいです。
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