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ミスで論文撤回は稀で不正が7割 STAP細胞のネイチャーは特に多い


 以前どっかで書いた気がするものの、不正論文の話は書きすぎて見つけづらいです。重なっていたらすみません。

●ミスによる撤回はわずか、ほとんどは不正

 とりあえず、書き始めたきっかけは以下のデータ。
STAP細胞問題とは何だったのか? / 粥川準二 / ライター・編集者・翻訳者 | SYNODOS -シノドス- 2015.04.21 Tue

学術雑誌で一度は公表された論文が「撤回」される場合、その多くは意図的ではないミスによるものだと信じられている。しかしある研究者らが、医学・生命科学系の論文データベース「パブメド(PubMed)」に登録され、そして撤回されたとされる論文2047本を調査したところ、ミスによる撤回はわずか21.3%だった。それに対して、全撤回のうち67.4%は「不正」に起因するものであるとわかった。

その内訳は「虚偽」または「虚偽が疑われる」ものが43.4%、「多重出版」が14.2%、「盗用」が9.8%だった(PNAS 109(42), pp.17028-17033, 2012)。

 整理します。

【医学・生命科学系の撤回論文の内訳】
不正による撤回 67.4%
ミスによる撤回 21.3%

【論文で用いられた不正の内訳】
「虚偽」または「虚偽が疑われる」43.4%
「多重出版」14.2%
「盗用」9.8%

パブメドによる論文2047本の調査

 上記の「多重出版」ってのは、たぶん二重投稿などのことでしょうね。


●STAP細胞論文を載せたネイチャーなどの一流誌で特に多い

 また、ショッキングなのは、上記に続く部分です。
しかもそうした論文が数多く掲載された雑誌トップ10には、小保方氏らの論文が載った『ネイチャー』やそのライバル誌『サイエンス』、そしてその調査報告を2012年に掲載した『米国アカデミー紀要』も含まれている。『ネイチャー』のニュース欄もそれを報じた(Nature 490(7418), p.21, 04 October 2012)。

 虚偽の話の直後でしたので、「そうした論文」=「不正論文」として読んだんですけど、それでいいですよね。世界最高峰である『ネイチャー』や『サイエンス』で、特に不正論文の掲載が多いということになります。

 ただ、掲載論文数の違いがわかりませんので、比率についてはわかりません。1回の掲載論文数や発行回数が多いだけという可能性もあります。

 それから、注目される論文なので不正が発覚しやすいという可能性もあります。二流・三流の学術誌はまともに読まれていないので、不正があっても気づかれないという可能性です。

 記事では以下のような記述もありました。
研究不正の発覚は、ほかの研究者による追試がうまくいかなくて、そのために論文における不正が疑われるようになったことがきっかけだった、という場合も多いだろう。一方で、追試とはあまり関係なく、厳しい同業者たちが論文を精読することで、疑惑が浮かび上がる、やがて発覚する、ということもあるはずだ。STAP細胞問題の場合、論文発表(1月30日)からわずか6日後の2月5日、科学者たちの情報交換サイト「Pubpeer」で、匿名の投稿者が、論文のある写真が切り貼りされている可能性を指摘したことが疑惑の始まりだった。

 STAP細胞については、再現性がうまくいかなかったから不正を疑われたと書いている方もいます。ただ、時系列的には間違いですので、上記の理解が正しいでしょう。

 作者の粥川準二さんは、"「研究不正の有無」と「再現性の有無」とは、本質的に異なる"ということを非常に強調していましたが、STAP細胞問題ではこの二つを多くの方が混同したことが混乱に拍車をかけました。

 粥川さんも批判していたのように、そもそも理研がこれを混同させていましたからね。野依良治前理事長らは科学者失格です。

 載せたかったのは以上。でも、短いのでいろいろと検索かけました。合う話が見つからなくて、ちょっと苦労しました。


●医学・生命科学系で不正が多発しているわけではない?

 上記のデータは、医学・生命科学系の論文データベースでの調査です。私はこの分野での不正が圧倒的に多いものだと認識していました。下記もそういった認識で書いています。

  ■STAP細胞問題など、バイオ(生物)・医学系で研究不正が多い理由
  ■生命科学で研究不正が横行する理由 STAP細胞問題や東大分生研など

 ところが、STAP細胞問題で有名になった片瀬久美子さんがそうではないという話を書いていました。STAP細胞が出る前の投稿です。
「研究不正」をどう防ぐか<上> - warblerの日記 2013-09-05 片瀬久美子

過去の日本における研究不正の114件の事案を分析したデータ*1によると、自然科学系では捏造・改ざん型が多く、特に生命科学分野が多いという結果が出されています。文系分野も合わせた論文不正全体の約4割近くを占めていました。(生命科学分野は研究者が多く、研究者総数に対する研究不正数の割合は他の分野に比べて特に高いということはないのですが、報道などに取り上げられることで目立ちやすくなっています)

*1 松澤孝明「わが国における研究不正 公開情報に基づくマクロ分析(1)」 情報管理Vol. 56 (2013) No. 3 P 156-165

 確かにこの分野は研究者自体も多いとは聞いていました。でも、分野による不正のしやすさに違いはあるんじゃないですかね? とりあえず、具体的な数字が出ていませんでしたので、判断できませんでした。

 なお、出典には以下のリンクがありました。
わが国における研究不正 公開情報に基づくマクロ分析(1) J-STAGE

わが国における研究不正 公開情報に基づくマクロ分析(1)

松澤 孝明1)

1) 独立行政法人科学技術振興機構 研究倫理・監査室
J-STAGE公開日 20130601

●論文撤回率が上がっている

 片瀬さんは論文撤回率が上がっていることも指摘していました。
 科学系分野では、日本だけではなく世界的な傾向として間違いや不正が発覚して論文取り下げになる比率が2001年以降に急増しています。*2 (日本と米国は同程度の比率) 日本での論文捏造事件は2005年以降に新聞報道が増えました。報告された捏造の手口は写真データの使い回しが多く、画像解析ソフトの普及によって簡単に画像を切り貼りしたり左右反転などの手を加える事ができる様になったことで、データ捏造の敷居が下がったことも背景として考えられます。画像データの細工は比較的発見され易いので発覚数も同時に増えてきたと考えられますが、こうした手段によらない捏造がさらに隠れている恐れもあります。

*2 A comprehensive survey of retracted articles from the scholarly literature. Grieneisen ML, Zhang M. PLoS One. 2012;7(10):e44118 Figure 5B

 あれ、日本はアメリカと変わらないのか? これも以前見たデータでは、日本の方が高そうな感じでした。

 論文撤回率については、別記事も発見。
論文撤回率は上がっているか? 投稿者 スネハ・クルカルニ | 2014年01月18日 英文校正エディテージ

たいていの論文で見られるのは、連絡先住所が不正確であるといった技術的な間違いだけなので、増刷時に誤植の通知を出すだけですみます。しかし時には、もっと重大な失敗が紛れ込んでいて、その論文をまるごと引き下げなければならないこともあるかもしれません。そのような撤回された学術論文の数が、最近非常に増えています。自然科学のジャーナルと発表論文の数は毎年増えていますが、無効だとして撤回される論文率も増えているのです。こうした傾向は学問分野によらず広く見られます。

 こちらも分野によらないとのこと。ただし、「傾向が」であり、「撤回率が」ではありません。


●別調査でも不正による撤回が多いことを確認

 この記事では、最初と同じ米国科学アカデミー紀要の研究が載っていました。しかし、別データもあります。
PLOS ONE で発表された研究に、学問分野の全範囲にわたり、撤回された論文の分野と特性を把握しようとしたものがあります。撤回された論文を特定するため、主要な学問分野に対する最大の書誌情報データベースのうち42個と、出版社のウェブサイトを調査しました。

著者たちの発見によると、1928年から2011年までの間に、4,449本の論文が撤回されていました。1年あたりの撤回論文数は、2001年から2010年にかけて増加していました。さらに、剽窃や著者主導による二重投稿といった不正行為の疑いによる撤回 (47%)は、研究活動の不正行為やデータ改ざんの疑いによる撤回(20%)や疑わしいデータ/解釈(42%)に、数の上で勝りました。研究によれば、撤回された論文はほとんどにデータの欠陥はなく、たいていの撤回論文の著者は、研究活動の不正行為で告発されていないということです。

 "2001年から2010年にかけて増加して"いたのは、「撤回論文数」であり、「撤回率」ではありません。ここの具体的なデータがないですね。(日本は特殊なんですが、世界的には論文数自体が大きく伸びています)

 とりあえず、整理。足したら100%超えるんですが、これでいいんですかね?

【撤回論文の内訳】
剽窃や著者主導による二重投稿といった不正行為の疑いによる撤回 47%
研究活動の不正行為やデータ改ざんの疑いによる撤回 20%
疑わしいデータ/解釈 42%


●撤回論文が増えている理由は?

 以前どこかで書いたかもしれませんが、見えなかったものが見えるようになっただけで、不正自体が増えているわけではないという可能性も一応あります。
 撤回率増加の理由の一つに、2005年以降、出版社が剽窃や二重投稿を発見するソフトを使い始めたことがあります。ですから、以前は見つけにくかった事例が、今では次々と発見されているのです。

 ただ、不正の動機が増大しているというのもよく指摘されることです。
その上、ジャーナルでの発表は科学者としての能力と成功のもととされており、補助金も論文発表の業績にもとづいて判断されるため、科学者はより多く、より早く発表するのに必死です。このような経緯から、研究者は不正行為に溺れてしまうのかもしれず、自分の研究や論文がすべての面で倫理ガイドラインに則しているか確認する時間を持てないのかもしれません。

 さらに"たいていのジャーナルは、評判が落ちるのを恐れて論文撤回の理由について明確にしません。そのため、撤回についてあまり理解されず、研究もされない"という問題もあります。学術誌側も共犯者的なところがあるようです。

 なお、微生物学者のアルトゥーロ・カサデヴォールさんは「数十年で、撤回率がゼロから0.01%まで増加したという事実は、問題に対する認識の高まりを示すものとして、まさに励みになる」としていて、不正が顕在化したことを歓迎していました。

 「撤回率」が増えたのかどうかわからんとさっき書きましたが、この「ゼロから0.01%まで増加した」というところで数字が初めて出てきました。でも、これもたとえ話であって、本当の数字じゃない可能性がありますね。

 まあ、とりあえず、一般的には撤回率は上昇していると認識されているようです。


 関連
  ■STAP細胞問題など、バイオ(生物)・医学系で研究不正が多い理由
  ■生命科学で研究不正が横行する理由 STAP細胞問題や東大分生研など
  ■論文・臨床研究の捏造大国日本 ノバルティスのディオバンだけじゃない
  ■小保方晴子だけじゃない?論文の書き方を知らない博士・研究者
  ■STAP細胞問題、理研の罪 結論に薄々気づきながら調査を先延ばし
  ■山中伸弥教授、STAP細胞論文が発表されたこと自体が理解できないと語る
  ■研究不正疑惑についての投稿まとめ

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