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国立大文系学部廃止、文部科学省は実学重視? 成果ある学部への転換促す


 文科省、国立大に一部の学部廃止を要請 文系縮小は私立大のため?は大急ぎで書いたし、十分な長さだったし…ということで書けなかったことがあります。その書き損ねた分だけだと今度は短いので、それに足した上でもう一つ投稿します。

●「文系を減らして理系を増やすという意味ではない」が文科省の建前

 向こうで書いたように、政府よりの意見を言う高橋洋一・嘉悦大教授は、「文系は儲かるから、国立は遠慮して私学でやってもらいましょうといえば理解を得やすいかも」とおっしゃっていました。

 これは「私立大の利益のために国立大・文系を縮小します」ということですからよくわからない援護射撃で、むしろ味方を後ろから撃つような行為に見えます。

 政府よりの学者からのこの発言は、文科省の本音は「私立大の利益のために国立大・文系を縮小」したいのではないか?という疑念をいっそう強くするものでしたが、文科省が直接それを認めているわけではありません。

 文科省の建前は、今回の通知は国立大・文系潰しではないというものです。

 たとえば、文科省の担当者は「文系を減らして理系を増やすという意味ではない」と言っています。"見直し後、別の文系学部への転換も可能"という理屈です。
(その学部、本当に必要? 全国立大に見直し通知、文科省:朝日新聞デジタル 高浜行人 2015年6月8日19時18分)

 同様に、読売テレビでは、"文科省は今回の通知について、「一律に文系の学部をなくしてほしいということではなく、各大学に期待される役割を検討して、組織再編してほしい」などとしている"とありました。
(文科省、国立大に“組織見直し”求める通知| ytv 読売テレビ ニュース&ウェザー(06/09 02:16))

 ただ、見直すのは文系学部で、見直し後は文系学部・理系学部からの選択なのですから、100%文系学部を選択しない限り確実に文系は減ります。「見直し後、別の文系学部への転換も可能なので、文系を減らして理系を増やすという意味ではない」は詭弁ですね。

 また、国立大学で文系学部廃止は本当か?文科省通達に人文系学部縮小と危惧のときに引用した先生は、こういった通知は実質的に命令になっているとして危惧していました。


●文科省は国立大に自分たちの強みや特色を明確にするよう求めている

 それから、これも文科省、国立大に一部の学部廃止を要請 文系縮小は私立大のため?で書いた内容なのですが、産経新聞が以前「地域性や得意分野に重点を置いた文系学部の廃止や統合を進める」としていたのは誤報のようです。

 文科省は、各国立大に対して自分たちの強みや特色を明確にするよう求めているというのが、本当みたいですね。

 あまりにも違いすぎる内容だったので私や他の人の読み間違いかな?と産経新聞を読み直しましたが、やはりそう書いていました。証拠のために改めて引用しておきます。
国立大学の人文系学部・大学院、規模縮小へ転換 文科省が素案提示(1/2ページ) - 産経ニュース 2015.5.28 11:29

 組織再編の動きはすでに出ている。弘前大(青森県)は来年4月から人文学部(3課程)を人文社会科学部(2課程)に再編。教育学部でも、教員免許を取得せず芸術や体育を学ぶ1課程を廃止し、2学部で定員を計150人減らす。一方、理系の理工学部と農学生命科学部の定員は90人増やす。

 今後、こうした形で他の大学でも、地域性や得意分野に重点を置いた文系学部の廃止や統合を進めることになる見通しだ。

 ああ、でもこれ、今読んで、やっと意味がわかりました。

 「"地域性や得意分野に重点を置いた文系学部"の廃止や統合」ではなくて、「地域性や得意分野に重点を置いた"文系学部の廃止や統合"」ですね。これでもまだわかりづらいですが、要するに産経新聞の書き方が悪いということです。

 じゃあ、どう書けば勘違いを防げたか?と言うと、たとえば、「地域性や得意分野に重点を置いた考え方で、文系学部の廃止や統合を進める」などでしょうか?


●文科省は実学重視を求めている?

 私は以前の産経新聞の記事では、得意分野潰しだと理解したので、これが一番変だと思いました。ただ、結局前述の通りそうではなく、逆に地域性や得意分野を作りましょうという話なら、そう変な要望ではないように見えるかもしれません。

 ところが、文科省の言う地域の特性というのは、「えっ、そういうの?」という感じで、私の想像していたのと異なりました。いわゆる実学重視くさいですね。

 先の朝日新聞には以下のようにありました。
 通知は「特に教員養成系や人文社会科学系学部・大学院は、組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換する」ことを求めた。例えば、人文社会系の卒業生の多くがサラリーマンになるという実績を踏まえ、大学は地元で必要とされている職種を把握。需要にあった人材を育てる学部に転換するなどといった想定だ。

 文科省によると、自然科学系の研究は国益に直接つながる技術革新や産業振興に寄与しているが、人文社会系は成果が見えにくいという。国立大への国の補助金は計1・1兆円以上。子どもが減り、財政事情が悪化する中、大学には、「見返り」の大きい分野に力を入れさせるという考えだ。

 記事で出ていた小林雅之・東大大学総合教育研究センター教授も、「大学は広い意味の教養を身につける場なのに、工学や経営学など実学が増え、学問の幅が狭まる懸念もある」として、「実学」という言葉を使っていました。

(なお、理系でも物理学などは非実学とされます。出身学部をきちんと調べていませんが、そもそもノーベル物理学賞があるんですから、政府も重視するノーベル賞には繋がっているんじゃないですかね?)


●文科省の読みが当たれば、私立大にとって有利どころか不利なことに

 私は社会のニーズに応えていないと言われるけど、実際には企業は国立大文系を積極的に採用してきたのではないか?と思うのですが、そこらへんはどうなんでしょうね?

 仮に本当に国立大文系が社会のニーズに応えてこなかったのであれば就職率が下がり志望者も減っていき、そこに私立大の付け入る隙が生じていたと思われます。

 ですので、仮にこの社会で必要とされている学部への変更というのが本当に有効だとした場合、私立大にとって有利どころか不利なことになります。社会のニーズに応えた国立大の就職率が上がり、人が集まり出すようになるためです。

 ただ、国による国立大学の文系廃止、本気か? 規模縮小案を文科省が提示で書いたように、政治家や官僚が社会の需要を読めるとは思えません。

 当時書いたように、国は法科大学院で需要を読み違えているためです。また、そのときは書いていませんでしたが、国による博士増産も大失敗で、ピペド問題やSTAP細胞問題を引き起こしています。

 こういった先例を見ていると、また国の余計な思いつきで、何か新たな問題を引き起こしてしまうかもしれないと思います。


 追加
  ■安倍政権による国立大文系縮小・廃止は左翼潰し? 人文科学じゃないと批判的思考力育たない
  ■教員養成課程などで志願者増、理系が低下 国立大文系縮小と逆方向

 関連
  ■文科省、国立大に一部の学部廃止を要請 文系縮小は私立大のため?
  ■国による国立大学の文系廃止、本気か? 規模縮小案を文科省が提示
  ■国立大学で文系学部廃止は本当か?文科省通達に人文系学部縮小と危惧
  ■文科省が指導 小中学生水準の千葉科学大や同意で合格の太成学院大など
  ■AO入試に意味はあるのか? 小保方晴子を生んだAO入試の問題点
  ■学校・教育・子どもについての投稿まとめ

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